脳の性差と非利き手使い
* 私は脳や神経科学について研究している学者ではないので、これから述べる事柄については、あくまで素人の個人的な勝手な解釈であるとお考えください。
男性の脳と女性の脳との違いを脳の性差と呼びます。いくつかのことがいわれてはいますが、統計的に見て平均値で差がある、傾向が見られるということで、明確に何かが違うというものではないようです。
ただ、左右の脳の連絡機能は女性の方が優れているのではないかと考えられているそうです。
大脳の働きではっきりと男女で差があるのは言語機能で、男性が左脳を使っているのに対し、女性では左脳と右脳を使っている。女性は左右の脳をうまく連絡させて使っているらしい、というのです。
(ここで言う「男性・女性」とは基本的に右利きの人のことのようです。和田テストでは、右利きの人で男性は99パーセントが、左利きでも70パーセントの人が左脳に言語機能があり、残りの人は右脳にあるというデータがあるそうです。脳の対側支配―右脳が体の左側の運動を、左脳が右側の運動をコントロールしていること―と利き手の違いは関係があるが、かならずしも一致しない、ということです。)
さてここで(運動機能の問題は別にして)、女性の場合、言語機能が両側の脳にあるとすれば、非利き手で言語活動である書字を行う(字を書く)ことは必ずしも不自然な行為ではない、ということになるのかもしれません。
今、私のサイトで行っているアンケートで、「左利きでも字は右手で書くべきか」というものがあります。この中の選択肢に「女の子は右手で」という項目を用意しています。
これはそのような意見の親御さんが現実にいらっしゃるということで設定したのですが、この考えもあながちおかしいとは言えないかも知れません。
(実際の理由は、まったく異なるもので、見栄えがどうのこうのといったもののようです。この項目に関して、性差別ではないかと言う意見もありましたが、その点に関してはサイト「レフティやすおの左組通信」の「左組通信4」をご覧ください。)
もちろん、運動機能についてはまったく無視されているので、その点は大いに問題があります。
また昨今、手で字を書くことが少なくなっている状況下で、運動機能に劣る方の手で微妙な動きを必要とする書字を行おうと訓練するのは、それだけの労力に匹敵する価値があるのか大いに疑問でもあります。
しかし、ひとつの仮説として、女性においては非利き手で書字という作業を行うことは言語機能の面から言うと必ずしも不自然ではないかもしれないと考えられる、ということは知っておいても良いかもしれません。
現実に右手使いにした人も大勢おられるわけで、そういう人でうまく適応しているという方は、そういう理由によるのかもしれません。
もちろん、何度も言うようですが、それだけの理由で非利き手使いを行うのは、やはり不自然な行為であるというべきでしょう。
書字のような複雑な作業は、言語機能のみならず運動機能をも制御する側の脳で行うのがやはりベストと考えられます。
今回参考にした本『脳を探検する』のなかで、著者は「脳を鍛えるために両手を使おう」と提案されていますが、両手を使うとは、
右も左も同じように使えるようにという意味ではありません。食事のときに左右どちらの手でもお箸が使えるとか、どちらの手でも字が書けるということではありません。つまり「利き手は利き手らしく、そうでない手は、そうでない手のように左右どちらも使いなさい」ということです。脳に左右で分業があるのですから、手の使い方も脳の分業と直結した使い方をしなければならない―両手をそのように使い分けねばならないのです。
と、書かれています。
* 参考文献 *
『脳を探検する』久保田競 講談社 1998年刊
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Comments
コメントありがとうございます。
マウスに関するコメントでしたが、ここに自分のコメントを書かせてください。
実は聞き手は右手ですが、マウスは左手で使っています。
左手はマウス、右手はキーボードを叩いたりしています。
近日、左用のマウスがあるという商品を見つけたので、私のブログで紹介したいと思います。
Posted by: E-Mono | 2004.09.10 09:01 AM
E-Monoさま、こちらこそ、コメントありがとうございます。
(記事内容とは、外れるようですが続けます。)
私今は左肩痛があり、右使いしていますが、当初マウスは利き手の左手でした。
右使いして感じたことは、利き手とは違う方で操作する方が何かと便利だということでした。利き手を空けておくということですね。
ただ左利きの場合、利き手をあけておけるとはいえ右使いは効率的にはもうひとつです。
通常のパソコンはenterキーなどが右ですので…。
その点、右利きの方は左手使いが効率的だと思います。利き手は空けておけるし、テンキーやenterキーなどの操作の邪魔になりません。
左用のマウス楽しみにしています。
では。
Posted by: レフティやすお | 2004.09.10 11:17 PM
管理人様はじめまして。
私は左利きで女ですが、ペンとマウス等は右に矯正しています。
他の事はすべて左手で行いますので、
元々強い左利きであるのだと思います。
過剰なストレスや疲労に襲われたとき、右手で文字が書けず、
左手を使うことがよくあります。
以前右利きセットでドラムを叩いていたときには右手が腱鞘炎になりました。
……と、思っていたのですが、対人関係等で当時強いストレスを抱えていた為、
右手が一時的に使えなくなったのだと思います。
また、ストレスはどもりの原因ともなります。
今も負荷残業のため、思ったことがすぐに言葉として出てきません。
今私が抱えている問題は矯正のために起きた物であると考えています。
長々と失礼しました。
Posted by: | 2004.09.30 11:01 PM
匿名様、コメントありがとうございます。
医者ではないので診断はできかねますが、たぶんに右手使いへの変更が貴方の心身に影響を与えているものと考えられます。
私は左利きの「矯正」(私はこの言葉は不適切な表現で誤解を与えるので、原則として使うべきではないと考えています。4.2「(左利きの)矯正」を死語にしよう 他参照)―特に女性の場合について、考えることが多いのです。それは昔から男の子に比べて右手使いへの圧力が強いからです。機会あるごとにこの問題を訴えるように心がけています。
しかし現実はなかなか思うようには改善されていないように思われます。まだまだ右手使いを「しつけ」と考える人が少なくありません。特に女の子において。
ここでは、ひとつの可能性として、女性の場合書字のみうまく行くケースがあるのはこういう理由があるのではないか、と考えられるということで書いてみました。(繰り返しになりますが、だからといって右手使いをすすめるものでも、容認するものでもありません。)
女性問題に取り組む方々でも、この女の子に対する右手使いの問題を真剣に取り上げてくださる人は少ないようで、残念です。(少なくとも昔私がアプローチした際には、なしのつぶてでした。もっと重要かつ緊急の問題を抱えておられたのかもしれませんが…。)
貴方と同種の発言が、いわゆる左利きサイトや掲示板などにも多く見られます。それらを左利き問題の理解の一助にしてほしいと思います。
また私のサイトにも気軽に御訪問ください。たいしたお相手はできませんが…。
Posted by: レフティやすお | 2004.10.01 10:50 PM