『貧者の晩餐会』イアン・ランキン
イアン・ランキン『貧者の晩餐会』BEGGARS BANQUET (C)2002 延原泰子・他訳 ハヤカワ・ミステリ 2004.3.15刊
今年、桐野夏生の『OUT』がノミネートされて話題になったMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞を『甦る男』で受賞した、リーバス警部のシリーズでおなじみ、イギリスのミステリ作家、イアン・ランキンの短編集。
リーバス警部の活躍する7編を含む21の短編が収録されている。良きランキン入門書ともいうべき本。ふだんは分厚い長編ばかりでつい手が出なかったという人もこれなら気楽に読めるだろう。
個性的な警部リーバスものの謎解きもいいし、それ以外のミステリ短編もひねりといい落ちといい、大いに楽しめる。身の回りにあるネタを鮮やかに切り取って、切れ味鋭く人生の一断面を見せてくれる腕はすばらしい。
私の好みは、「唯一ほんもののコメディアン」(これは怖い)「深い穴」(ダガー賞最優秀短編賞受賞作/自信を持った"おれ"はどうしたんだろう)「自然淘汰」(最後の逆転が…)「不快なビデオ」("夫と妻にささげる犯罪"ものは数々あるが…)、リーバス警部ものでは「一人遊び」「聴取者参加番組」「イン・ザ・フレーム」といったとこか。
33p-「一人遊び ―リーバス警部の物語―」延原泰子訳
〈自分は正しい、正しい行動を取ったという満足感があったとはいえ、それと同時に、自分を救いがたい卑劣漢であるようにも感じた。それどころか、自分の母親に刑を言い渡したようにすら感じていた。〉
「正義」というものは難しい。自分の信じるところを貫くしかないのだろう。
私も自分を信じ、自分の信ずる道を歩んでゆこうと思う。
「趣味」カテゴリの記事
- 私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『富嶽三十六景』-楽しい読書390号(2025.06.15)
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)陶淵明(11)「帰去来の辞」1-楽しい読書389号(2025.05.31)
- 私の読書論196-<後世への最大遺物>としての紙の本を!-楽しい読書388号(2025.05.15)
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)陶淵明(10)「乞食」-楽しい読書387号(2025.04.30)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 週刊ヒッキイ第688号-『左組通信』復活計画[38]『LL』復刻(11)LL11 1996年秋号(後)(2025.06.21)
- 私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『富嶽三十六景』-楽しい読書390号(2025.06.15)
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)陶淵明(11)「帰去来の辞」1-楽しい読書389号(2025.05.31)
- 私の読書論196-<後世への最大遺物>としての紙の本を!-楽しい読書388号(2025.05.15)
「海外ミステリ」カテゴリの記事
- 私の読書論193-私の年間ベスト3-2024年〈フィクション系〉初読編『エクトール・セルヴァダック』ヴェルヌ-楽しい読書383号(2025.02.28)
- [コラボ]<左利きミステリ>第6回海外編(後)再発掘作-楽しい読書382号(2025.02.15)
- [コラボ]<左利きミステリ>第6回海外編(前)新規発見作-週刊ヒッキイ第680号(2025.02.15)
- レフティやすおの楽しい読書381号-告知-私の読書論193-私の年間ベスト3-2024年〈フィクション系〉再読編『ホビットの冒険』(2025.01.31)
- 2025(令和7)年、明けましておめでとうございます。(2025.01.07)
Comments