「左利き矯正」成功者は利き手誤認?
左利きに関してこういう人たちがいます。
「私は記憶にないのですが、小さい頃に矯正されて右手を使うようになりました。矯正による弊害や後遺症が言われますが、まったくストレスを感じたこともなく、言葉にも問題はなく、特に困ったこともありません。」
「左利きを矯正されたらしいが特に記憶がない。今では何でも右手でできるので、親に矯正してもらったことをうれしく思う。」
「私の例で言うと、左利きは矯正できる。小さい頃に左手を使えないようにして、右手を使うようにしてやれば、一週間ほどで直る。」
これらは、いわゆる左利き矯正(昔はこう呼んで躾の一環として右手使いを強要した)に成功したという人たちです。
しかしこれらの人たちのうちの何人かは、単なる利き手誤認者ではなかったのか、と私は思います。
もちろん成功したという人のすべてがそうだというのではありません。あくまでも何人かの人はそうではないのか、と疑問に思うのです。
これらの人に共通する要素のひとつは、本人が記憶にないほど小さいころに「矯正」が行われたという点です。
利き手について研究した本に書かれているのは、利き手が固まるのは7,8歳で、それまでは成長の過程で利き手が右左と転換するというのです。
利き手が固まる前にどちらかの手を使わせることに決定する場合―6歳で小学校に入学するのですから、当然そうなります―、どの時点で利き手を認定するかが問題になってきます。
偶然左手をよく使う時期に、親が早とちりしてこの子は左利きだ、右利きにしようと考えたとしたら、本来右利きの子はすぐに右手使いに慣れるかもしれません。結果的に「左利きの矯正」に成功したことになります。親は子にそのように話すでしょう。ところがこれは親の認識にすぎないのです。親にとっては事実かもしれませんが、真実ではないかもしれません。
逆に「右利き」とされてしまう子もいるかもしれません。右利きで不器用という人の中には、本来は左利きだった人もいるかもしれません。あるとき左手でやってみると、こっちの方がうまく行くという経験をされた人もいるようです。
小さい頃、まだ子供の能力が柔軟なうちだから成功するというのですが、単なる誤認である可能性もあるのではないでしょうか。
私がいわゆる利き手転向者の言を信用しないのには、このような疑問が常に心の中にあるからです。本当に自分の「真実の利き手」を知っての発言かどうか、つい眉に唾をつけてしまいます。
私は利き手の判定に、教えてもらって身に付けた動作を含めてはいけないと考えています。あくまで自然な動きの中で、どちら側をより多く、あるいはより巧みに、より素早く使うかを見なければならないのです。本性を見定めなくてはなりません。
さてさて事ほど左様に、利き手の認定というものはむずかしいものなのです。
世の親御さんたち、十分心してください。
*ただし大部分の人の場合、右利きであれ左利きであれ偏向の度合いが強いので、ある程度の年齢になるとかなり明確になるようです。
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