『サイレント・ジョー』T・ジェファーソン・パーカー
『サイレント・ジョー』 SILENT JOE T・ジェファーソン・パーカー 七搦理美子訳 早川書房
サイレント・ジョー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
2001年MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀長編賞受賞作。
ハンディキャップを持つ青年が人生の真実を求める物語。
昼は保安官補として刑務所の看守として、夜は郡政委員である養父の護衛として働く物静かな(サイレント)ジョーはある日、目の前で養父を銃殺される。養父を護衛できなかったことを悔やみ、養父殺しの犯人を追及するが…。
硫酸ベイビーと呼ばれた少年ジョーの前に現れた理想の男ウィル・トロナ、しかし彼はより大いなる善のためには小悪も辞さない策略家でもあった。<友人には手を貸せ、敵はうまく利用しろ>。 いったい彼はどんな事件に関わっていたのか…?
24歳の主人公ジョーと養父、さらに実父、そして実母、愛するパートナーを失った養母との関わり。顔の傷跡というハンディキャップを克服して生きるジョーにとって初めての恋愛。これらの人間関係の緊張の中で、事件を追求するジョーの一人称で進められる物語は、ミステリとしてのおもしろさもさることながら、親子の人間物語としてのおもしろさ、ハンディキャップをいかに克服して生きるかというジョーの心の物語としてのおもしろさが光っている。罪と許しの物語でもある。
「そいつはただの傷痕だ。誰だって持っている。きみのは外にあるというだけのことだ」
そう、人はみな傷痕を持っている。今もうずく傷痕を。私も持っている、人の目にふれないところに。
美しい顔を見たときどう思うかという問いに、「その人は運がいいと思います」と答えるジョー。
私も右利きの人を見ると、そう思う。「運がいい人だ」と。
人間の美しさとは? 人間の罪とは? 人間の運とは? そんなことを考えさせられてしまった物語でした。
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