『見えないグリーン』ジョン・スラデック
『見えないグリーン』 INVISIBLE GREEN ジョン・スラデック 真野明裕訳 ハヤカワミステリ文庫 1977年作
娯楽のための読書の本である。
本格ミステリ、本格推理小説、本格探偵小説、などと呼ばれる本格もの。そのなかでも特に本格モノのファンが喜ぶ密室ものを扱った連続殺人もの。この密室ものの長編小説としては、世界的に有名な一冊である。
SF作家スラデックが書いた私立探偵サッカレイ・フィンの登場する本格もの、『黒い霊気』に次ぐ長編第2作。
エドワード・D・ホック編『密室大集合』という密室ものの短編傑作集の「まえがき」で紹介されている作家、編集者、批評家、ファンが選んだ古今の名作密室長編のリスト(全15作)の14番目(タイ)に挙げられているのが、本書である。
ちなみに上位5点を挙げると、『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー、『魔の淵』ヘイク・タルボット、『黄色い部屋の秘密』ガストン・ルルー、『曲がった蝶番』ジョン・ディクスン・カー、『ユダの窓』ディクスン・カーター。
15作中半分ぐらいは読んだ事になるが、読んだ時期がばらばらなので、どれがおもしろかったという比較はできない。
ただあまり期待しすぎると、肩透かしにあうということだけは言える。
で、本書。これも密室の謎解きは例によって例のパターンともいうべきもので、それだけを取ればちょっと…、というものだが、新しいといえば新しい。
<素人探偵七人会>のメンバーが殺されてゆく連続殺人もの。会の主宰者である女性の探偵ごっこ(彼女がアメリカ人の探偵サッカレイ・フィンに事件の依頼をする。イギリス人社会におけるこのアメリカ人との対比もおもしろい。)など、いかにも興味深い小道具を随所にちりばめて、オーソドックスな探偵小説らしいムードを盛り上げているのが、楽しい。
本格もののファンは必読、楽しめます。
ただ、ピーター・ラヴゼイが私の好きなピーター・ダイヤモンド警視(同世代だ)シリーズで、同じような探偵小説好きの集まり「猟犬クラブ」のメンバーの密室殺人を扱った作品『猟犬クラブ』を発表しているが、私はあちらの方が好きだし、出来もいいと思う。
密室もの素人探偵小説愛好家もののパスティーシュ(?)としてはおもしろいが、その程度ではというのが私の印象。
「解説」の鮎川哲也もかなり高い評価をしているようだが、そこまで持ち上げるのもどうかなぁ…。
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