「左利き」表記は左利きに優しいか?
近年「左利き」と銘打たれた商品や「左利き対応」と明記された商品が少しずつですが増えてきました。左利きにとってはうれしいことですが、実はちょっと気になるという人もいるのです。
さらにいうと、一方ではハサミなどで、「左手用」という表記もあります。
以前私は、「左利き用」ではなく「「左手用」と表記しよう」 という一文を書きました。
私自身は使い手を選ぶ片手使用の道具類には「右手/左手用」の表記がふさわしいと考えています。
これは来るべき「左右共存社会」に対応した表記をめざす、という意味も含めて、単なる「左利き用」では右利きの人には無縁のものという印象を与えてしまい、普及にブレーキをかける恐れがある、という考えによるものです。
利き手と実際に道具を使う手が人により異なる場合があるという観点から、使い手をあらわす表記に変えていこうというわけです。
一方で、実は「左利き用」という表記に対する影の部分をも考慮に入れたものでもあったのです。
今まで書かなかった影の部分というのは、「左利き」に対する感じ方・考え方の世代間格差とでもいうべきものです。
近年、左利きに対する考えは大きく変容してきました。今では、左利きが左手を使うことに対して異を唱える人は少なくなりました。右手使いを考える人もいますが、その理由としては、あくまで右利きが多数派で社会の構成が右利き用にできているため、左利きは不便だろうからできる範囲で右手を使わせようとするものです。
それに対してかつては、私が小さい頃などは圧倒的に「左利きは恥ずかしいこと」でした。「左手使いは恥ずべき習性」と考えられていました。「直すべきもの」、「矯正の対象」でした。
そのような時代に年少時代をすごしてきた人々にとっては、「矯正」に成功した人であれ、半ば成功した人であれ、失敗した人であれ、自身が「左利き」であるということを認めることはたいへん勇気のいることなのです。
ある人が言いました。
最近は左利き用のなんやかんやが出ているけど、いざ手にとって買うとなると躊躇してしまう。店員さんがこっちを見てるようで、嫌だ。「左利き用」と大きく書いてあるのを見ると、黄門さんの印籠を見せ付けられた悪代官じゃないけど、思わず引いてしまう。とても人に見せられない。レジに運べない。せめて、左手用ぐらいならましかとも思う。子供用なんかだと子供にとか孫に、といって買えるけれど…。
若い人には理解できないことかも知れませんが、私にはよく理解できます。こういう気持ちになるのは十分納得できるのです。
「左利き用」あるいは「左利き対応」といった表記も、人によっては「小さな親切大きなお世話」になりかねないのです。
そ~っと書いて欲しい。できればこの言葉を使わずに、なおかつわかるような表記を考えて欲しいのです。
せっかく左利きの人のことを思い、努力して工夫を凝らして作ってみても、使う人の心まで理解していなければ、結局は売れないという事態にもなりかねないのです。
もちろんそんな人ばかりではありません。時代は変わってきました。しかしそんなユーザーもいるのだという事実を理解していただけたらうれしく思います。
このような人を“隠れキリシタン”ならぬ“隠れ左利き”と私は呼んでいますが、ここに左利きの問題の難しさの一端が現れています。
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