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2004.04.20

水栓ハンドルから考える

「左蛇口に右水栓」にコメントをいただきました。それを元に少し考えて見ます。

栓をひねるくらいなら、左利きの人でも右手で右側の栓を開け閉めするのは容易ではないかという感じもするのですが、そうでもないのでしょうか。/というのは、右利きのあっしなんかでも左手でドライバーを使うこともあるので、なんとなくそう思った次第です。/ただ、栓が右についているということが不公平であることは否定できませんが。

ここに「利き手」と「使い手」のおもしろいところがあります。
人間を長くやっていると自然に身につく動作というものがあります。条件反射といいますか。
たとえば同じ水周りで言うと、水洗便所の便器の水栓のレバーというものはたいてい右手を伸ばしたところにあります。いくら私が左利きだからといっても左手を伸ばしてこれを使うことはありません。無意識に右手を使っています。
通常「利き手」といえば無意識に、知らず知らず使ってしまう手と考えます。しかしこの場合は違います。これは左手ではむずかしい、右手が早くて便利、と身体が学習しているからでしょう。
状況によって「利き手」と「使い手」を分けることはよくあります。しかし、これは両手が使えるという必要条件があってのこと。

もし、右手が不自由ならどうでしょうか。左手でほとんどのことをしなければいけない状況になったときはどうすればいいのでしょう?
もし左右同じ条件に設定されていたら、問題なく使えます。しかしこのように右手でないと使いずらい状況であれば、問題があります。

本当は、単に左利きの人のためだけではないのです。こういうあらゆる状況を考慮して設計することがこれからの社会には大切な要素になってきます。
ユニバーサルデザインという考えがそれです。誰にでも使いやすいものを、という発想で作ってゆくことが重要だと思います。

もうひとつの落とし穴があります。「これぐらいのことなら」という発想がそれ。
ホントにこれぐらいのことなら問題にならぬ、とみんなが考えるなら本来右用と左用が半々、50:50で存在してもいいはずです。誰もが右手と左手を同じ比率で持っているわけですから。
ところが右用ばかりが世に氾濫しているのはなぜでしょう? 
これは逆に「これぐらいのこと」だからこそ「利き手」が選ばれるのではないでしょうか。「これぐらいのことだから」―日常茶飯事のことだから、とっさに使いやすい手である「利き手」を使おうと考えるわけですね。

右利きの人が左手を使う状況を考えると、たいていは右手がなんらかの理由でふさがっている場合が多いのではないでしょうか。あえて左手を使うという状況が作られている場合ではないかと想像します。
右手に子供を抱いているため、左手を使わねばならない、あるいは重い荷物は右手でしか持てないのでを左手を使わねばならない、等。
これは左利きの人が右手を使う場合と同じです。右手を使いたい、というより、右手を使う方が手っ取り早い、あるいは使わざるを得ないと判断した時でしょう。頭が判断するときもあれば、身体が判断するときもあるわけです。

先に「平等に不便になる選択」を提案しました。そのときに、真ん中に投入口のある自動販売機なるものを例えにしました。
今回の、水道の蛇口の水栓ハンドルこそ真ん中に設置し、どちらの手でも使えるようにするべきかもしれません。

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Comments

うちのサイトやココログで家庭用浄水器の左手対応がかなり進んでいることを書きましたが、水栓の左手対応も相当進んでいます。
これを知らないことは、せっかく左利きについて考えてくださったメーカーさんの誠意を踏みにじるものです。また、私のサイトなど、ほかの左利きサイトもちゃんと読まず、自分の演説をしたいだけと受け取られても仕方ないものです。
やすおさんはかなり長い間左利きについて考えていらっしゃるようですが、昔の演説の再放送ではなく、いま変化している嬉しい事柄についても目を向けてください。

Posted by: ひでゆき | 2004.04.21 12:30 PM

ひでゆきさん、コメントありがとう。
私はできうる限りひでゆきさんのサイトのみならず、いくつかのサイトを拝見しています。特に貴方のサイトでは常に最新の情報を扱っておられるので注意しているつもりです。
浄水器の左利き対応商品のこともひでゆきさんのサイトで知っておりました。私も生産現場にいたものですから努力しているメーカーの立場も理解しているつもりです。大いに感謝するものです。そのようなメーカーや商品を紹介することも大切で、ひでゆきさんのお仕事を非常に評価しております。私の方でも少しずつそういう情報を取り上げていければと考えています。

今回こういう記事を上げたのは、一般論としてまだまだ考慮されていない状況があるということを言いたかったのです。
努力している人々に対するフォローに欠けるという批判は受けます。その点は三菱さんにしろ他のメーカーさんにしろ申し訳ないと思います。
現実に、使い手を選ばない蛇口の上に上下上げ下げ式レバーのついたものがかなり普及しています。公共の場では自動式もあります。
しかし、セパレートタイプにはこういうものがあるということです。

>昔の演説の再放送ではなく、いま変化している嬉しい事柄についても目を向けてください。

この点はその通りだと思います。せっかくの良い変化に目をつぶって、昔の愚痴や文句ばかり言っていても流れを乱すだけで、百害あって一利なしです。明るい未来を志向することを目標にしているのですから。言葉もありません。

ただ言わなければならないことは言わなければならないわけです。改善されていることを認めてより以上のものにと願う部分と、改善されていない部分を指摘して改善を促す部分とがあると思います。

Posted by: レフティやすお | 2004.04.21 11:04 PM

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