« なんで「左利きイメージ調査」なん? | Main | 左利きのバリアフリー »

2004.03.14

「右利き」または「利き手」の問題を考える

右利きの人のなかには、「利き手」というものがあるという事実を知らない方がいます。
じゃあ、どうして右手を使うの? と訊くと、「しつけ」だと思っていた、という答。
なるほど、箸を使うのも、字を書くのも、大人から教えられるものです。
それではそれ以外の身のこなしとかで右手を使うのはどう考えていたの? と訊くと、それは自然にそうしていただけで、特別私は右手をよく使うとか、左手を使わないな、とか意識していなかった、そうです。
学校に上って、いろいろ新しいことを習うときも、右手ですることに何の疑問も抱いたことがなかった。ごく自然に誰もがそうしているように振舞ってきただけ、だそうです。

使いやすい手―「利き手」という神経回路があって初めて右手を使うのだという認識は持っていなかったそうです。
最初におとなから右手を使うことを「しつけ」され、以後何でも自然と右手を使うのだと思っていたそうです。
このような人なら、左利きの子に対しても右手を使うことを「しつけ」として「強制する」(もちろん悪意もなければ、強制―押し付けるという意識も持ってはいない)ことを当然のことと考える可能性があります。「左利きを矯正する」という都合のいい表現もあるのです。

左利きの人のなかにはかなり高い割合で、この「左利きを矯正する」ということばを嫌う人がいます。

「矯正」とは、
「欠点などを正しく改めさせること。まっすぐに直すこと。/「歯列―」「非行少年を―する」」三省堂国語辞典 

これでは「左利きを矯正する」という言い方では、左利きが「悪い」ことになります。そんなはずがありません。左利きは持って生れたひとつの性質であり、個性です。背が高いとか、色白であるとか、癖毛であるとか、人の思うにならぬ要素のひとつで、その人個人に責任のあるものではありません。それを否定的に扱うのは個人の勝手かもしれませんが、品のよい趣味とはいえません。

話を戻して―
私が言いたいのは、「利き手」という概念を理解していない、ゆえに利き手である右手をよく使う人を「右利き」と呼び、左手が利き手の人を「左利き」と呼ぶという事実を理解できていない人が存在する、ということです。
そしてこのような人たちが、左利きを無意識に迫害する可能性があるのではないか、ということです。

結論は、このような人がいなくなるように、「利き手」という概念を啓蒙してゆかねばならぬのではないか、と思うのです。

ちなみに「右利き」「左利き」といってもその度合いは人によりけりで、ある程度どちらでも使える、あるいは動作によりどちらかを使うといういわゆる両利きに当たる人もいて、それはバラエティー豊かです。ただ数的に多いのは「強度の右利き」と分類される人たちで、その対極に「強度の左利き」があり、その中間に「両利き」もしくは「左利きに近い右利き」や「右利きに近い左利き」といわれる人たちが分布する、と考えられているようです。

(逃げ口上のつもりはありませんが、私は利き手の科学的研究をしているものではないので、科学的に見て妥当でない、間違った記述があるかも知れません。その点は含みおきください。)

【追記】2012.1.16
*利き手と左利きの研究に関する本:
(日本)
『左対右 きき手大研究』八田武志 化学同人(DOJIN選書 18) 2008.7.20
―1996年11月刊『左ききの神経心理学』以降、世界で研究された成果を一般向けに読み物とした本。
(イギリス)
『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス/著 大貫昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006.10
―20年にわたる利き手・左利き研究の成果をまとめた本。
(世界)
『「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎』デイヴィッド ウォルマン/著 梶山 あゆみ/訳 日本経済新聞社 2006.7
―自身左利きの科学ジャーナリストが、左利きの謎に挑み世界を駆けるサイエンス・ノンフィクション。
  

|

« なんで「左利きイメージ調査」なん? | Main | 左利きのバリアフリー »

心と体」カテゴリの記事

左利き」カテゴリの記事

Comments

たしかに、うなずけます。矯正とは、悪いものを良くすることですから、左利きを矯正するという言い方は差別用語でしょう。また、左利き、右利きといっても、たしかに、100パーセントどちらかということはありません。私なんかでも、仕事では両方の手に同じ働きをさせますもの。右でモンキーをまわすことがあれば、左でまわすこともある。左手でもかなり器用な動きをさせますね。車のギアーチェンジレバーを操作するのは左手ですわねえ。

Posted by: ミスター投稿 | 2004.03.16 11:45 PM

投稿さん、ようこそ。やっちゃんです。
いつもコメントありがとうさんです!
利き手のこと、左利きのことを少しは考える機会を持って頂けたようで、うれしく思います。

今長島さんが右半身不自由になっていると報道されています。誰でもこういうことが起こりうるわけで、右利きといえど利き手ばかりにこだわらず、左手用も用意しておかないと、とんでもない目に遭うかもしれませんよ!

Posted by: レフティやすお | 2004.03.17 11:32 PM

まったくです、本当に。たいがいの作業は左右両手の共同作業ですが、箸を持つのと字を書くのだけは、利き手と非利き手の違いが、ものすごく大きいものです。それにしても「利き側」があるのは「手」だけですね。おかしなもんです。ほかの動物にはありえないことのように思えます。ほかの動物は口で直接ものを食らうからでしょう。

Posted by: ミスター投稿 | 2004.03.19 12:20 AM

投稿さんコメントありがとう。
で、「利き側」ですがこれは足にもあります、目にもあります。
対象形の体のどちらを優先的に使うかというもののようです。

カメラのファインダーをのぞく時、人はだいたいどちらかの目でのぞきます。障子の穴からでもそうですね。(笑)
またサッカーのボールを蹴るとき(一流の選手はどちらでも遜色なく使えるようですが)、怒ってそこらのものを蹴るときもそうです。(笑)

ではまたc(^0^)y

Posted by: レフティやすお | 2004.03.19 12:17 PM

いや、そういわれれば、たしかにそうですね。盲点を突かれましたなあ★ さすが、レフティーさんは考えが深いです。私、ファインダーをのぞいたりボールを蹴ったりすることまで思い浮かびませんでした。

Posted by: ミスター投稿 | 2004.03.19 10:04 PM

やっちゃんです。ようこそお越し!
聞き耳を立てる、なんていうのはどうでしょう?
電話を聞くのにもこっちの方が聞き取りやすいということはありませんか?
「利き耳」というようです。
c(^0^)y

Posted by: レフティやすお | 2004.03.19 11:10 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「右利き」または「利き手」の問題を考える:

« なんで「左利きイメージ調査」なん? | Main | 左利きのバリアフリー »