ハサミで困った思い出
ハサミの思い出といえば、こんな事がありました。
学校の工作の時間でしょうか。
級友たちは線に沿ってきれいに紙を切っていく――試し切りもしないで、切りそこないもしないで。
しかし、自分はなかなか一回ではきれいに切れない。まず、切ろうとしてもクチャッと紙を挟んでしまうだけで切れない、やっと切れたとしても線の通りには行かない。試し切りをして初めて、線と刃の距離の勘が身について、線に沿って切ることができるようになる。どうしても人より遅くなるし、勘に頼っている分正確さに欠ける。線をはみ出したり、切りすぎたりして曲がってしまう。
私は自分が不器用だと思っていました。
ところが、生れて初めて左利き用のハサミを使った時、この秘密が明らかになったのです。
なんと、自分が特別不器用なのではなく、自分にあった道具を使っていなかっただけだったのです!
左手用のハサミは、右手用とは違い刃が逆の合わせになっているので、ふつうに左手で持っても刃の当たる角度が紙と平行にならず直角になり切れる。また刃の切る部分が見えるので線にあわせて切ってゆけるのです。
右手用のハサミを左手で持って使うためには、ハサミを逆に傾けるか(こうすれば反対方向から切る部分が見えます)、力の加える方向を加減しなければなりません。
四十年以上の歳月が流れた今、私は自分のことを決して器用だとは思いませんが、かといって特別不器用だとも思っていません。
こんなささいなことの積み重ねが大きな問題に発展していくのではないでしょうか。
「もしあの時、左利き用の道具を持っていたら?」「もしあの時、学校の先生が左利きの子供に対して適切な指導をしていたら?」
自分のなかの何かが変わっていたかもしれない、……。
●左手(左利き)用ハサミについて―
左手(左利き)用ハサミには、ごく日常に用いる一般事務用の他にも用途別にいろんな製品が作られています。
例えば、今私の手元にある、イギリスの通信販売会社ANYTHING LEFT-HANDEDのカタログには、家庭用・一般事務用・子供用などのふつうのハサミから、洋裁用の裁ち鋏、ピンキング鋏、レースを切るものなど、料理用、ヘア・カット用、爪切り用、園芸用、などなど各種掲載されています。
これら外国産のみならず国産でも各社から様々なものが発売されているのですが、実際に手に入れるとなると意外に大変なのです。
ごくふつうの事務用ハサミですら、通りがかりのコンビニでさっと買えるわけではありません。ましてや他の商品となると…。
また、価格も全体に二、三割高で、これも普及への大きな壁になっています。
よい品がいつでも 手軽に 購入できるようにしよう!
―追記―(2004.9.30)
実際にはかなり改善されています。ちょっとしたスーパー、コンビニでは無理としても、そこそこの売り場を持つスーパー、ホームセンター、文具店などでは常時子供用と一般用の2種類ぐらいは置いています。価格的にも、子供用では右手用と同価格で提供しているメーカーが多くなっています。
最近では、保育所や幼稚園、小学校で斡旋される場合でも、右手用と左手用のどちらかを選択できるようです。
* 参照―『レフティやすおの左組通信』「左利きphoto gallery〈HPG3〉左手用(左利き/左きき用) はさみ・ハサミ・鋏(SCISSORS FOR LEFTHADERS) コレクション」
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