【最新号】<夏の文庫>フェア2026から(3)新潮文庫『人生論ノート』三木清-楽しい読書417号
古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【最新号】
2026(令和8)年8月31日号(vol.19 no.15/No.417)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2026から(3)新潮文庫
『人生論ノート』三木清~人生にまつわる短文エッセイ集~」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2026(令和8)年8月31日号(vol.19 no.15/No.417)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2026から(3)新潮文庫
『人生論ノート』三木清~人生にまつわる短文エッセイ集~」
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今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
<夏の文庫>フェア2026から――。
今年も、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。
今年のテーマは、“やわらかい古典”ということで、
古典だけれど、読みやすい感じのソフトな、エンタメ系の古典を
取り上げてみましょう。
三本目は、新潮文庫『人生論ノート』三木清 です。
三木清は戦前から活躍していた哲学者です。
でもこの本は、「哲学書」というよりは、
人生に関する項目別の「短文エッセイ集」です。
(画像:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2026の小冊子)
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◆ 2026年テーマ:“やわらかい古典” ◆
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2026から(3)
新潮文庫『人生論ノート』三木清~人生にまつわる短文エッセイ集~
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●新潮文庫の100冊 2026
今年の「新潮文庫の100冊」は、50周年だそうです。
その辺はまた、次号にでも紹介しようと思います。
で、今年の新潮文庫の100冊です。
・・・
新潮文庫の100冊って?
《「新潮文庫の100冊」は、1976年にはじまった書店フェアです。
「時間がたっぷりある夏休み、中高生、大学生にたくさん本を読んで
ほしい」という願いから生まれました。
『こころ』『人間失格』といった長年読み継がれる名作から、
『成瀬は天下を取りにいく』のような最近のベストセラー作品まで、
特に若い読者に向けた作品をラインナップしています。
日本全国の書店で毎年7月~8月に展開され、
いまではすっかり夏の風物詩となった「新潮文庫の100冊」フェア。
この夏も、本を読む喜びをお届けします。》
今年の100冊――
(シビレル本)
1.3.街とその不確かな壁〔上〕〔下〕 村上春樹 2.出版禁止 長江俊和
4.新しい花が咲く─ぼんぼん彩句─ 宮部みゆき
5.百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス/著 鼓直/訳
6.灯台へ ヴァージニア・ウルフ/著 鴻巣友季子/訳
▼7.金閣寺 三島由紀夫 8.人斬り以蔵 司馬遼太郎
9.八本目の槍 今村翔吾 ▼10.人間失格 太宰治
11.ルビンの壺が割れた 宿野かほる 12.村上海賊の娘(一) 和田竜
13.精霊の守り人 上橋菜穂子 14.残穢 小野不由美
15.さがしもの 角田光代
16.プレゼント 伊坂幸太郎 、江國香織 、恩田陸 、梨木香歩 、
町田そのこ 、宮部みゆき 、米澤穂信
▼17.ガラスの街 ポール・オースター/著 柴田元幸/訳
18.春のこわいもの 川上未映子 19.楽園のカンヴァス 原田マハ
20.アンソーシャル ディスタンス 金原ひとみ
(ヤバイ本)
▼1.変身 フランツ・カフカ/著 高橋義孝/訳 ・2.檸檬 梶井基次郎
▼3.月と六ペンス サマセット・モーム/著 金原瑞人/訳
▼4.江戸川乱歩傑作選 江戸川乱歩
5.狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選― H・P・ラヴクラフト/著
南條竹則/訳 6.世界でいちばん透きとおった物語 杉井光
7.羆嵐 吉村昭 ▼8.老人と海 ヘミングウェイ/著 高見浩/訳
9.地球星人 村田沙耶香 10.向日葵の咲かない夏 道尾秀介
11.#真相をお話しします 結城真一郎 ◆12.羅生門・鼻 芥川龍之介
13.悪女について 有吉佐和子 14.オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎
▼15.ナイン・ストーリーズ J・D・サリンジャー/著 野崎孝/訳
16.成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈 17.満願 米澤穂信
18.成瀬は信じた道をいく 宮島未奈 ▼19.海と毒薬 遠藤周作
(考える本)
1.君が手にするはずだった黄金について 小川哲
▼2.人生論ノート 三木清 3.プリンシプルのない日本 白洲次郎
▼4.野火 大岡昇平 ▼5.こころ 夏目漱石
▼6.シャーロック・ホームズの冒険 コナン・ドイル/著 延原謙/訳
■7.ボッコちゃん 星新一 8.深夜特急1―香港・マカオ― 沢木耕太郎
9.それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子
10.ひとり暮らし 谷川俊太郎 11.暇と退屈の倫理学 國分功一郎
■12.吾輩も猫である 赤川次郎、新井素子、石田衣良、荻原浩、恩田陸、
原田マハ、村山由佳、山内マリコ 13.木 幸田文
14.黒い雨 井伏鱒二 15.死者の奢り・飼育 大江健三郎
16.マリコ、うまくいくよ 益田ミリ
▼17.22.罪と罰〔上〕〔下〕 ドストエフスキー/著 工藤精一郎/訳
18.センス・オブ・ワンダー レイチェル・カーソン/著 上遠恵子/訳
19.何者 朝井リョウ ▼20.異邦人 カミュ/著 窪田啓作/訳
21.この世にたやすい仕事はない 津村記久子
(泣ける本)
1.西の魔女が死んだ 梨木香歩
2.夜空に泳ぐチョコレートグラミー 町田そのこ
3.無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記― 山本文緒
4.夜のピクニック 恩田陸 5.ビタミンF 重松清
6.月まで三キロ 伊与原新
▼7.幸福について―人生論― アルトゥール・ショーペンハウアー/著
橋本文夫/訳
▼8.新編 銀河鉄道の夜 宮沢賢治
9.あなたはここにいなくとも 町田そのこ ▼10.李陵・山月記 中島敦
11.号泣する準備はできていた 江國香織 12.こころの処方箋 河合隼雄
13.ザ・ロイヤルファミリー 早見和真
■14.博士の愛した数式 小川洋子 15.塩狩峠 三浦綾子
■16.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディみかこ
17.ごんぎつね でんでんむしのかなしみ―新美南吉傑作選― 新美南吉
18.日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ― 森下典子
19.夏の庭―The Friends― 湯本香樹実
(愛する本)
▼1.車輪の下 ヘッセ/著 高橋健二/訳 2.白いしるし 西加奈子
3.一汁一菜でよいという提案 土井善晴
▼4.夏の夜の夢・あらし ウィリアム・シェイクスピア/著
福田恆存/訳
5.ナルニア国物語1 ライオンと魔女 C・S・ルイス/著 小澤身和子/訳
■6.雪国 川端康成 7.豆の上で眠る 湊かなえ 8.とわの庭 小川糸
9.痴人の愛 谷崎潤一郎
▼10.悲しみよ こんにちは フランソワーズ・サガン/著
河野万里子/訳
11.卵の緒 瀬尾まいこ 12.か「」く「」し「」ご「」と「 住野よる
▼13.キッチン 吉本ばなな 14.すべて忘れてしまうから 燃え殻
15.さくらえび さくらももこ 16.盲目的な恋と友情 辻村深月
17.きみはポラリス 三浦しをん 18.ぼくは勉強ができない 山田詠美
19.智恵子抄 高村光太郎
◆20.星の王子さま サン=テグジュペリ/著 河野万里子/訳
21.錦繍 宮本輝
・・・
岩波文庫フェアや前々回集英社文庫フェア、前回角川文庫フェアの際に
やりました印付けをしておきましょう。
■:以前弊誌、もしくはブログで取り上げた作品
◆:同、他社の本による
▼:既読、本文庫・他社本等による
・:部分読み、本文庫・他社本等による
新潮文庫は、結構読んでいるようです。
今回の100冊でも過去に取り上げたものが入っていました。
*参照:
2011(平成23)年7月31日号(No.62)-110731-
最初の一冊:各社「夏の文庫」フェアから―
『シャーロック・ホームズの冒険』コナン・ドイル/著 [原著 1892]
延原謙/訳(新潮文庫)2011.4
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『星の王子さま』サン=テグジュペリ/著 [原著 1943]
河野万里子/訳(新潮文庫)2006.4
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『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ/著 [原著 1906]
高橋健二/訳(新潮文庫)1985.1
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『老人と海』アーネスト・ヘミングウェイ/著 [原著 1952]
福田恒存/訳(新潮文庫)2003.5
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2016(平成28)年7月31日号(No.180)-160731-
「新潮社・角川書店・集英社―3社<夏の文庫>フェア2016から
人間の不思議、人生の深さ」
新潮文庫・『月と六ペンス』サマセット・モーム 訳・金原瑞人
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2018(平成30)年7月31日号(No.228)
「新潮社・角川書店・集英社―3社<夏の文庫>フェア2018から
川端康成『雪国』(新潮文庫)『山の音』(角川文庫)」
『雪国』(新潮文庫 改版 2006/05)
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2019(令和元)年7月31日号(No.252)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2019から」
新潮文庫『吾輩も猫である』 2016/11/28
赤川 次郎/新井 素子/石田 衣良/荻原 浩/恩田 陸/
原田 マハ/村山 由佳/山内 マリコ
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2022(令和3)年7月15日号(No.322)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)
新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)」
2022.7.15
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)新潮文庫『老人と海』-「楽しい読書」第322号 「はてなブログ版」
2023(令和5)年7月15日号(No.346)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
2023.7.15
[新潮・角川・集英社]
<夏の文庫>フェア2022から(1)新潮文庫『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』-楽しい読書346号 「はてなブログ版」 ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』2021/6/24
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2024(令和6)年8月31日号(vol.17 no.15/No.372)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・
小川洋子『博士の愛した数式』」
2024.8.31
[新潮・角川・集英社]
<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』-楽しい読書372号 「はてなブログ版」
小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫 2005/11/26
『博士の愛した数式』(Amazonで見る)
2025(令和7)年8月31日号(vol.18 no.14/No.394)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(3)新潮文庫・
『ボッコちゃん』星新一~いのち輝く未来社会は?~」
2025.8.31
[新潮・角川・集英社]
<夏の文庫>フェア2025から(3)新潮文庫・ボッコちゃん』星新一-楽しい読書394号 「はてなブログ版」
『ボッコちゃん』星新一 新潮文庫 1971/5/25
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●三木清『人生論ノート』
◆三木清『人生論ノート』新潮文庫 改版 1978/9
(Amazonで見る)
(画像:昔買った「新潮文庫の100冊」の一冊と2026年版の小冊子、およびその該当ページ)
この本に関しては、NHKのEテレの番組「NHK100分de名著」で、
一度取り上げたことがあります。
↓
2017.4.4
人生は実に旅である―三木清「人生論ノート」NHK100分de名著2017年4月 「はてなブログ版」
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」人生論ノート 2017年4月 2017/3/25
《理想こそが現実を変える 人生は実に旅である。未知への漂白である。》
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NHK「100分de名著」ブックス 三木清 人生論ノート: 孤独は知性である
岸見 一郎 (著) 2021/4/23
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この『人生論ノート』は、1938年から『文学界』に連載した短文を
まとめたもので「哲学書」というよりは、もっと一般的なエッセイに近い
性質の文章を集めたもので、「死について」「幸福について」など23題。
三木清の著作の中でも比較的読みやすいもので
まさに“やわらかい古典”と呼んでいいものでしょう。
暑いさなかですので、今回は手抜きで、上記の記事のなかから、
筆者の心に残った、わかりやすい言葉を厳選して引用しておきましょう。
・・・
「死について」
《... 死は観念である。それだから観念の力に頼って人生を生きようと
するものは死の思想を掴むことから出発するのがつねである。すべての
宗教がそうである。》p.12-13
「幸福について」
《幸福は徳に反するものでなく、むしろ幸福そのものが徳である。
もちろん、他人の幸福について考えねばならぬというのは正しい。
しかし我々は我々の愛する者に対して、自分が幸福であることより
なお以上の善いことを為し得るであろうか。... 》p.18-19
――アラン『幸福論』にも自分が幸福になることが、とありましたよね。
《機嫌がよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと、等々、幸福は
つねに外に現われる。... 鳥の歌うが如くおのづから外に現われて他の
人を幸福にするものが真の幸福である。》p.22
《幸福は人格である。ひとが外套を脱ぎすてるようにいつでも気楽に
ほかの幸福は脱ぎすてることのできる者が最も幸福な人である。しかし
真の幸福は、彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない。
彼の幸福は彼の生命と同じように彼自身と一つのものである。
この幸福をもって彼はあらゆる困難と闘うのである。
幸福を武器として闘う者のみが斃れてもなお幸福である。》p.22
「懐疑について」
《人間的な知性の自由はさしあたり懐疑のうちにある。自由人といわれる
者で懐疑的でなかったような人を私は知らない。... 懐疑が知性の徳で
あるためには節度がなければならぬ。... モンテーニュの最大の智慧は
懐疑において節度があるということであった。また実に、節度を知らな
いような懐疑は真の懐疑ではないであろう。度を越えた懐疑は純粹に
懐疑に止まっているのでなく、... 一つの独断である。》p.24
「習慣について」
《... 生命は形成作用であり、模倣は形成作用にとって一つの根本的な
方法である。生命が形成作用(ビルドゥング)であるということは、そ
れが教育(ビルドゥング)であることを意味している。... 》p.32-33
「虚栄について」
《虚栄によって生きる人間の生活は実体のないものである。言い換えると、
人間の生活はフィクショナルなものである。それは芸術的意味において
もそうである。というのは、つまり人生はフィクション(小説)である。
だからどのような人でも一つだけは小説を書くことができる。普通の人
間と芸術家との差異は、ただ一つしか小説を書くことができないか、そ
れとも種々の小説を書くことができるかという点にある... 》p.39
――誰でも小説を書けるが、複数書けるのが芸術家の才能!
《しかし人間が虚栄的であるということはすでに人間のより高い性質を
示している。虚栄心というのは自分があるよりも以上のものであること
を示そうする人間的なパッションである。それは仮裝に過ぎないかも
知れない。けれども一生仮裝し通した者において、その人の本性と仮性
とを区別することは不可能に近いであろう。道徳もまたフィクションで
はないか。それは不換紙幣に対する金貨ほどの意味をもっている。》p.42
「名誉心について」
《人生に対してどんなに厳格な人間も名誉心を抛棄しないであろう。
ストイックというのはむしろ名誉心と虚栄心とを区別して、後者に
誘惑されない者のことである。その区別ができない場合、ストイックと
いっても一つの虚栄に過ぎぬ。》p.45
「怒について」
《怒ほど正確な判断を乱すものはないといわれるのは正しいであろう。
しかし怒る人間は怒を表わさないで憎んでいる人間よりもつねに
恕(じょ)せらるべきである。》p.53
――感情を素直に出せる人は許せるが、出さない人は怖い、ということ?
「孤独について」
《孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の
「間」にあるのである。孤独は「間」にあるものとして空間の如きもの
である。「真空の恐怖」――それは物質のものでなくて人間のもので
ある。》p.65
――都会の孤独、大勢の人のなかにあっての孤独。これが一番怖い?
《孤独には美的な誘惑がある。孤独には味いがある。もし誰もが孤独を
好むとしたら、この味いのためである。孤独の美的な誘惑は女の子も
知っている。孤独のより高い倫理的意義に達することが問題であるの
だ。/その一生が孤独の倫理的意義の探求であったといい得るキェル
ケゴールでさえ、その美的な誘惑にしばしば負けているのである。》p.66
《物が真に表現的なものとして我々に迫るのは孤独においてである。
そして我々が孤独を超えることができるのはその呼び掛けに応える自己
の表現活動においてのほかない。... 表現することは物を救うことであ
り、物を救うことによって自己を救うことである。かようにして、孤独
は最も深い愛に根差している。そこに孤独の実在性がある。》p.67
「成功について」
《成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、人間
は真の幸福が何であるかを理解し得なくなった。自分の不幸を不成功と
して考えている人間こそ、まことに憐れむべきである。》p.74
《他人の幸福を嫉妬する者は、幸福を成功と同じに見ている場合が多い。
幸福は各人のもの、人格的な、性質的なものであるが、成功は一般的な
もの、量的に考えられ得るものである。だから成功は、その本性上、
他人の嫉妬を伴い易い。》p.74
《純粹な幸福は各人においてオリジナルなものである。しかし成功はそう
ではない。エピゴーネントゥム(追随者風)は多くの場合成功主義と
結び附いている。》p.75-76
「瞑想について」
《ひとは書きながら、もしくは書くことによって思索することができる。
しかし瞑想はそうではない。瞑想はいわば精神の休日である。そして
精神には仕事と同樣、閑暇が必要である。余りに多く書くことも全く
書かぬことも共に精神にとって有害である。》p.81
「利己主義について」
《我々の生活は期待の上になり立っている。》p.90
《利己主義者は期待しない人間である、従ってまた信用しない人間である。
それ故に彼はつねに猜疑心に苦しめられる。
ギヴ・アンド・テイクの原則を期待の原則としてでなく打算の原則とし
て考えるものが利己主義者である。》p.91
――筆者は小学生の時、通知簿に利己主義と書かれたものでした。利己的
になるのはいじめから自分を守るためだった、のですけれどね。
《利己主義という言葉は殆どつねに他人を攻撃するために使われる。
主義というものは自分で称するよりも反対者から押し附けられるもの
であるということの最も日常的な例がここにある。》p.92
――「○○主義」というのは、完全に「レッテル」ですから。
「健康について」
《誰も他人の身代りに健康になることができぬ、また誰も自分の身代りに
健康になることができぬ。健康は全く銘々のものである。そしてまさに
その点において平等のものである。... 》p.93
――ひねってますけど、お金持ちでも病気にかかります、お金を積んでも
名医でも治せるとは限りません。貧しくても健康な人もいますし、ね。
《健康の問題は人間的自然の問題である。というのは、それは単なる身体
の問題ではないということである。健康には身体の体操と共に精神の
体操が必要である。》p.95
「仮説について」
《常識を思想から区別する最も重要な特徴は、常識には仮説的なところが
ないということである。》p.113-4
《思想は仮説でなくて信念でなければならぬといわれるかも知れない。
しかるに思想が信念でなければならぬということこそ、思想が仮説で
あることを示すものである。常識の場合にはことさら信仰は要らない、
常識には仮説的なところがないからである。常識は既に或る信仰である、
これに反して思想は信念にならねばならぬ。》p.114
《仮説という思想は近代科学のもたらした恐らく最大の思想である。... 》
p.115
「娯楽について」
《生活を楽しむことを知らねばならぬ。「生活術」というのはそれ以外の
ものでない。それは技術であり、徳である。... どこまでも生活の中に
いてしかも生活を超えることによって生活を楽しむということは可能に
なる。》p.121
「希望について」
《人生においては何事も偶然である。しかしまた人生においては何事も
必然である。このような人生を我々は運命と称している。... 》p.127
《人生は運命であるように、人生は希望である。運命的な存在である人間
にとって生きていることは希望を持っていることである。》p.127
《希望を持つことはやがて失望することである、だから失望の苦しみを
味いたくない者は初めから希望を持たないのが宜い、といわれる。しか
しながら、失われる希望というものは希望でなく、却って期待という如
きものである。個々の内容の希望は失われることが多いであろう。しか
も決して失われることのないものが本来の希望なのである。》p.128
《希望というものは生命の形成力以外の何物であるか。我々は生きている
限り希望を持っているというのは、生きることが形成することである
ためである。希望は生命の形成力であり、我々の存在は希望によって
完成に達する。... /希望に生きる者はつねに若い。いな生命そのもの
が本質的に若さを意味している。》p.129
《... 断念することをほんとに知っている者のみがほんとに希望すること
ができる。何物も断念することを欲しない者は真の希望を持つこともで
きぬ。/形成は断念であるということがゲーテの達した深い形而上学的
智慧であった。... それは人生の智慧である。》p.131
――諦めることも大事? でも、希望があれば、がんばれるのでは?
「旅について」
《何処から何処へ、ということは、人生の根本問題である。我々は何処か
ら来たのであるか、そして何処へ行くのであるか。これがつねに人生の
根本的な謎である。... いったい人生において、我々は何処へ行くので
あるか。我々はそれを知らない。人生は未知のものへの漂泊である。
... 》p.136
《... 旅において真に自由な人は人生において真に自由な人である。
人生そのものが実に旅なのである。》p.138
「個性について」
《個性を理解しようと欲する者は無限のこころを知らねばならぬ。無限の
こころを知ろうと思う者は愛のこころを知らねばならない。愛とは創造
であり、創造とは対象に於て自己を見出すことである。愛する者は自己
において自己を否定して対象において自己を生かすのである。... 》p.146
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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2026から(3)新潮文庫『人生論ノート』三木清~人生にまつわる短文エッセイ集~」と題して、今回も全文転載紹介です。
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2026.8.15
[新潮・角川・集英社]
【編集後記】<夏の文庫>フェア2026から(3)新潮文庫『人生論ノート』三木清-楽しい読書417号
・・・
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