2025.06.21

週刊ヒッキイ第688号-『左組通信』復活計画[38]『LL』復刻(11)LL11 1996年秋号(後)

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

 

第688号(Vol.21 no.11/No.688) 2025/6/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [38]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(11)
LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第688号(Vol.21 no.11/No.688) 2025/6/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [38]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(11)
LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号」
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 今回も、季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の復刻の新規入力分で
「ネット初公開!」――で、これが『LL』最終号となります。

 この号は前号(LL10 1996(平成8)年 秋号)の発行から
 半年以上(3シーズン)あいており、
 「終刊号」と銘打っていますように、これが最後の一号となりました。
 
 ペラペラ一枚、見開き2ページで、いかにもな、
 「最後の一号」という出来になっていました。

 

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ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]

  『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻 (11)
 
   (内容紹介)LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

*(参照)――

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
(参照)※『レフティやすおの左組通信』のページ
○レフティやすおの左利き自分史年表
○レフティーズ・ライフ(LL)再録(1)全号目次 

 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代1
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03

 

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 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』LL11 概要

 

 LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号 A4 2ページ

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<新聞から――>What the newspaper says,...
 朝日新聞 1969(平成8)年9月12日 朝刊「生活」面
右ページ(見出し)危険・不便…あきらめず 「画一社会」を変える力に
左ページ(見出し)左利きにもっと愛を 世の便利は「しゃくの種」
 「個性…」増える専用品
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左利きの本だなぁ(9)夏目漱石『坊ちゃん』
――<坊ちゃん>は左利き!
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 LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

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<新聞から――>What the newspaper says,...

 朝日新聞 1969(平成8)年9月12日 朝刊「生活」面
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 今回ご紹介するのは、すでに「旧聞」に属する記事ですが、
「朝日新聞」1969(平成8)年9月12日朝刊「生活」面に
掲載されたものです。
 “大新聞”が「左利き」について記事にするというので、大いに期待
したのですが、内容的にいうと、「左利き問題」が存在するという、
まずは無難な紹介に終わっており、もう一段突っ込んで、真剣に
「左利き問題」をうんぬんする、というレベルまでは達していない点が
残念でした。

 特に、昨今話題に上がることが多い、「バリアフリー」(障壁なき
社会)の観点からのアプローチが見られなかったのが、ものたりなく
感じられた。/「次回」に期待したい。

 実は、筆者もこの記事を書かれた大村美香記者から、電話で取材を
受けたのだが、もう少し派手に宣伝しておけばよかったかな、
と反省している。(やすお)

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 ――以下、見開き2ページにわたる新聞の記事をコピーしたものを、
 特にコメントも付けないで、そのまま掲載していました。

 今回は、一部原文を交えて内容の要約を紹介しておきましょう。

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 ●左側ページ【見出し】改札機 ビデオ 世の便利は「しゃくの種」

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[朝日新聞 1969(平成8)年9月12日 朝刊「生活」面]
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 まずは左側ページ、こちらがメインの記事に当たり、

【大見出し】<左利きにもっと愛を>

 の下に記事が展開されます。
 まず冒頭に、記者氏による前説が入ります。
 全文を紹介しましょう。

 

 《首都圏や京阪神で急速に普及してきた駅の自動改札機。
  すばやく多人数の人が通れる効率的な機械だが、
  左利きの人たちにはどうも使い勝手が悪い。
  「便利」や「楽しみ」をうたい文句に、新たに生活に入ってきた
  自販機やビデオカメラなども、左利きに冷たい。
  長年使われてきた道具類には専用のものが作られ始めたものの、
  人口の一割を占めるといわれる「少数派」の不便は
  簡単には解消しそうにない。(大村 美香)》

 

【見出し】改札機・ビデオ 世の便利は「しゃくの種」

 横に「自動改札機を通りぬける人々」の写真
 (ぐきっ!!=体をひねるときの擬音)が入っています。
 真ん中の一人が、左腕を身体の前にクロスするように出して、
 自分の向かって右側にある改札機の切符投入口に伸ばしています。

 記事は、自動改札機の不便についての証言と共に始まっています。

 ・・・

日本民間鉄道協会によりますと、
自動改札機は1990年代に急速に普及し始め、
1995年には千駅以上、53%に達している。
しかもそのすべてが、投入口が右側にあるものだといいます。

左利きの人の証言(1)
 《「大きな荷物がある時は、さらにバランスを崩しやすい。
  こんな不便を毎日味わっているんです」》

左利きの人の証言(2)
 《「左右両方に投入口をつけるとか、たくさん自動改札機があるなら、
  一台の投入口を左側にしてもらえれば、楽なのですが」》

という要望に関して――

 《「両方作ってしまうと利用者が混乱する」(名古屋鉄道)
  「設置台数は限られているので……」(小田急鉄道)。
  鉄道会社は消極的。
  「現在の機械が右利き専用というわけではないが、お客様は右利きが
   多数。左利きの方には慣れていただくしかない」(営団地下鉄)
  と左利きの努力を求める。》
 
次に家庭用ビデオカメラについて――
片手で持つタイプはほとんど右手用で、ソニーは国内で発売している
17種類はすべて右手で支えて操作する形。

 《「左利きの方に使いづらいのは承知しているが、慣れの問題。
  ボタンを押すだけだし、さほど支障はないのでは」と同社広報室。》
  
左手用の開発予定はない。

一方、日本ビクターが開発した新方式デジタルビデオカメラは、
テープが小さくなった利点を生かして、
縦長で両手で持つことができ、利き目も選ばない。
左利きばかりではなく、右手を失った人からも注文が来ている、という。

自動改札機も、多少の工夫が出てきた。
阪急電鉄は、左手でも入れやすいように、
投入口を左に5度傾けた機種をすべての駅に置いている。
(写真=ぼちぼち 阪急電鉄梅田駅)

東急電鉄でもこの形式を。
JR東日本も1995年3月から設置を始め、
今後は新規導入や機械の取り換え時に改善してゆく予定。

 

 

 ●左側ページ【見出し】はさみ・調理具「個性…」増える専用品

(写真=逆も真ナリ 岐阜県関市川嶋工業、左利き用調理用具シリーズ)

 《はさみや包丁など、左利きが不便を耐えて長く使ってきた道具に、
  専用品が多くなってきた。》

として、らせんが逆のコルク抜き、刃の向きが逆の缶切り、
といった調理用具を販売している、川嶋工業(岐阜県関市)を紹介。

バブル崩壊後、特徴のある製品が求められるようになったこと。
左用に向きを変えるだけなので、設計は難しくなかった。
市場が狭い分、採算は取りにくいが、価格は右と同じにしている。

遠藤民雄課長さん――「正直言って、売れ行きはよくない」
しかし、百貨店などには、個性がある商品として人気が高いという。

 《「最近は左利きを苦にしないし、右に直される人も少ないですから、
  これから育つ子供たちに使ってもらえるのでは……。
  将来への布石です」》

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東京中央区の刃物専門店「木屋」は、左利き用の刃物約50点を
取り扱っており、その数は徐々に増えつつあるという。

企画課・石田克由課長さん――
 《「左利きを隠さなくなって需要が増えたことと、
  不便だというお客様の声が大手小売店を通じて伝えられて、
  対応せざるを得なくなっている。最近は発売しなくてはならない
  という意識がメーカーに広がっているようです」》

 

 

 ●右側ページ【見出し】危険・不便…あきらめず

(写真=ナイスショップ 東京都内のゴルフショップの左利きコーナー)

 《左利きは古くて新しい問題だ。二年前、左利きの人にとっては、
  衝撃的な本が出た。》

スタンレー・コリン著『左利きは危険がいっぱい』を紹介している。

世の中のテクノロジーやデザインが右手に便利にできているので、
左利きの人は日常生活で、不快な思いをするだけでなく、
事故を起こしやすく、寿命を縮める原因になっている――
左利きには危険がいっぱいだ。

 

【見出し】「画一社会」を変える力に

工業デザイナー・秋岡芳夫さん――
 《「左利きのような少数派が冷遇されるのは今の工業製品の宿命」》

金型を起こす作る現在の製法は、
生産性は高いが画一的な製品しかできない。
それゆえ、少数派の人には対応しづらい、という。

 《「技術的に未熟なんです。多種類を生産できるような技術を
  開発する時代に来ているのですが」》

現状は、「あきらめ使いのあきらめ暮らし」と秋岡さん。

 《「出来の悪いものに自分を合わせて暮らすと生活が貧しくなる、
  ということです。不便なら、使う側も、文句を伝えた方がいい」》

 

東京都中野区立区立中野昭和小学校・草場純教諭さん――
麺類の給食配膳用に、左利き児童に特製のおたまを用意している。

右手ですくいやすいように、片側がフォーク状になっているおたまは、
左利きの児童には使いづらい。
そこで逆向きのおたまを注文して作ってもらった。

草場純教諭さん――
 《「文字の学習や習字など、児童が苦労し、親もどうしたらよいか
  迷っているケースが多い。教師が少しでも手助けする方法を知って
  いる方がいいのでは」》

おたまを作ったのも、使いやすい道具を児童に渡すべきだと考えたから。

 《「ただ、いずれ子供は社会へ出ていく。教育現場だけの努力でなく、
  社会全体が変わらないと」》

 

誰もが使いやすい商品やサービスについて、研究調査、普及活動をして
いる、メーカーの企画開発担当者やデザイナーが参加する
「E&Cプロジェクト」会長、工業デザイナー・鴨志田厚子さん――
 《「公共で使うもの、日用品だからこそ、左右を選ばない形がいい」》

自動改札機の場合、左右に投入口があれば、荷物を持っているときや、
杖をついているときなど、右利きの人でも使いやすくなる。

 《「左利きの人への配慮は、左利きの人のためばかりでなく、
  誰もが便利になることだと思います」》

 

 

 ●右ページ【見出し】人口の1割 なぞだらけ

 右ページの端一列は「左利き」についての専門家の科学的説明。

 ・・・

京都大学名誉教授(神経生理学)久保田競さん――
 《「利き手についてはまだ分からないことが多い」》

手を動かすとき、手と反対の側の脳が働く。
右手を動かすのは左脳、左手は右脳というように。
脳のどの領域が関連して手が動くのか、大まかな仕組みは分かっている。
しかし、脳の仕組みと利き手の関係については、まだ手つかずの状態。

左利きの人の割合は人口全体の一割程度。
 
 《日本人は直す習慣があるためか結果として少ないが、
  発現率は時代や民族で変わることはないと考えられている。》

両親が左利きの場合、その子供が左利きになる割合が高く、
片方の親が左利きの場合も平均よりは高いので、
左利きの原因は遺伝による、という説もある。

 《しかし、「左利きを決める遺伝子が発見されているわけではなく、
  類推の域を出ない」と久保田教授。左利きにはまだなぞが多い。》

 

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左利きの本だなぁ(9)夏目漱石『坊ちゃん』

――<坊ちゃん>は左利き!
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 千円札の肖像にもなっている明治時代の文豪・国民作家、夏目漱石の
代表作であり、また日本を代表する青春文学のひとつでもある
『坊っちゃん』。その主人公“坊っちゃん”が実は左利きだった、
ということはあまり知られていない。

 “坊っちゃん”の性格を紹介する冒頭のエピソードのなかに、
親戚からもらった西洋製のナイフで、「右手」の親指を切ってみせる
というのがある。
 右手にナイフを持って、右手を切ることはできないので、
ナイフは左手に持っていたと考えられる。
ゆえに彼は左利きだったのだ!

 何度も映画やテレビドラマになった作品だが、「左利き」の
“坊っちゃん”を演じた人はいなかったのではないでしょうか。

 だれでも一度は読んだことのある小説でありながら、
案外知られていない事実です。(やすお)

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*参照:
『坊っちゃん』夏目 漱石/著 新潮文庫 改版 2003/4/1
(Amazonで見る)

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(冒頭の“坊っちゃん”の無鉄砲ぶりを示す第二エピソード)

 親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳かざして、
友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。
切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。
そんなら君の指を切ってみろと注文したから、
何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。
幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、
今だに親指は手に付いている。然し創痕は死ぬまで消えぬ。

 

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [38]『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(11)LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号」と題して、今回は全紹介です。

今回、改めてこの新聞記事を読み、色々と思うところがありました。
当時は、前号からかなり日を置いた最終号ということで、私自身、ちょっと疲れていたのか、旧聞ということで遠慮もあったのか、記事内容に関してのコメントを残していません。

今回のこの機会に少しだけ書いておこうかとも思いましたが、書けばどうも単なる愚痴になるような気もします。
遅れてきた意見はない方がいいのでしょう。

この終刊号発行まで約半年のブランクがありました。
当時私は、仕事が忙しくなり、ちょっと病気をしたこともあり、疲れてしまったのでしょう。

やりたいことと望みが大きかった反面、当時の自分には荷の重い仕事だったのかも知れません。
まあ、今でも荷の重い仕事をしているのかも知れませんけれど。

この左利きメルマガも長くやっている割りには、購読者も増えず、特に世間的にも話題にならず、何かしらオファーがなかったとは言いませんが。

まあ、自分が有名にはなりたくない、目立ちたくはない、という気持ちがあるので、どうしても突っ込んでいけないのですね。
まあ、それでもいいかと思っています。

ただ、後に続く人が出てきて欲しいということだけは、言っておきます。

第一土曜日発行分で左利き用の楽器のことを書いていますように、現実の問題としてやはり左利きは冷遇されています。
左利きゆえに楽器の演奏をあきらめた人も多いと思うのです。

左利きの問題は、まだまだ未解決の部分が大半です。
突き詰めて頑張ってくださる後継者がどんどん現われることを期待して止みません。

では。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.06.15

私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『富嶽三十六景』-楽しい読書390号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2025(令和6)年6月15日号(vol.18 no.10/No.390)
「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』
 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和6)年6月15日号(vol.18 no.10/No.390)
「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』
 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」
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 今月は、恒例となりました岩波文庫のフェアから、
 一点を選んで紹介します。

 直近3年のものでは↓

2024(令和6)年6月30日号(vol.17 no.12/No.369)
「私の読書論187-2024年岩波文庫フェアから『タタール人の砂漠』」
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.6.30
私の読書論187-2024年岩波文庫フェアから『タタール人の砂漠』
-楽しい読書369号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/06/post-833bdb.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/1a2dfc9f51edb19c7b68c715e2fefd78

2023(令和5)年6月30日号(No.345)
「私の読書論172- 2023年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!
 小さな一冊をたのしもう」から 上田秋成『雨月物語』「蛇性の婬」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.6.30
私の読書論172-2023年岩波文庫フェアから上田秋成『雨月物語』
「蛇性の婬」-楽しい読書345号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/06/post-ec8330.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/417d68371321fb4e635a0fa83166e4d2

2022(令和4)年6月15日号(No.320)
「私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―『語録』『要録』
―<2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!から」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2022.6.15
私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―
<2022年岩波文庫フェア>から-楽しい読書320号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/06/post-98be91.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/6a52aba9e4f9468c46611a84cd31f14f

2022(令和4)年 海外(エピクテトス『人生談義』)
2023(令和5)年 国内(上田秋成『雨月物語』)
2024(令和6)年 海外(ブッツァーティ『タタール人の砂漠』)
 と来ましたので、今年は国内作品を――。

 

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 - ジャポニスムへの影響 -
  ~ 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃 ~

  私の読書論-2025年岩波文庫フェア
 「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」から

  『北斎 富嶽三十六景』日野原健司/編 
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 ●<2024年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」>から

今年も<2025年岩波文庫フェア>が始まっていますので、
私の「これは」という一冊を紹介しましょう。

 

2025年岩波文庫フェア
「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」(5/28発売)

 毎年ご好評をいただいている岩波文庫のフェア「名著・名作再発見!
 小さな一冊を楽しもう!」を今年もご案内いたします。
 岩波文庫は古今東西の典籍を手軽に読むことができる、
古典を中心としたシリーズです。できるだけ多くの皆さまに
名著・名作に親しんでいただけるよう、本文の組み方を見直し、
より読みやすい文庫をと心がけてまいりました。
 いつか読もうと思っていた一冊、誰もが知っている名著、
意外と知られていない名作──岩波文庫のエッセンスが詰まった
当フェアで、読書という人生の大きな楽しみの一つを存分に
ご堪能いただけましたらと存じます。

Bunfair2025_pop

<対象書目> 58

■:以前弊誌、もしくはブログで取り上げた作品
◆:同、他社の本による
▼:既読、本文庫・他社本等による
・:部分読み、本文庫・他社本等による

 

◆ 学問のすゝめ【青102-3】  福沢諭吉
◆ 遠野物語・山の人生【青138-1】  柳田国男
新版 きけ わだつみのこえ──日本戦没学生の手記【青157-1】
  日本戦没学生記念会 編
君たちはどう生きるか【青158-1】  吉野源三郎
・忘れられた日本人【青164-1】  宮本常一
手仕事の日本【青169-2】  柳 宗悦
イスラーム文化──その根柢にあるもの【青185-1】  井筒俊彦
◆ 論語【青202-1】  金谷 治 訳注
■ 歎異抄【青318-2】  金子大栄 校注
中世荘園の様相【青N402-1】  網野善彦
北斎 富嶽三十六景【青581-1】  日野原健司 編
◆ アリストテレス ニコマコス倫理学(上)【青604-1】
◆ アリストテレス ニコマコス倫理学(下)【青604-2】 高田三郎 訳
■ 生の短さについて 他二篇【青607-1】  セネカ/大西英文 訳
■ マルクス・アウレーリウス 自省録【青610-1】  神谷美恵子 訳
◆ アラン 幸福論【青656-2】  神谷幹夫 訳
・論理哲学論考【青689-1】  ウィトゲンシュタイン/野矢茂樹 訳
精神の生態学へ(上)【青N604-2】
精神の生態学へ(中)【青N604-3】
精神の生態学へ(下)【青N604-4】
   グレゴリー・ベイトソン/ 佐藤良明 訳
■ ロウソクの科学【青909-1】  ファラデー/竹内敬人 訳
生物から見た世界【青943-1】
   ユクスキュル、クリサート/日高敏隆、羽田節子 訳

伊勢物語【黄8-1】  大津有一 校注
◆枕草子【黄16-1】   池田亀鑑 校訂
■ 雨月物語【黄220-3】  上田秋成/長島弘明 校注
説経節 俊徳丸・小栗判官 他三篇【黄286-1】  兵藤裕己 編注

断腸亭日乗(一) 大正六―十四年【緑42-14】
  永井荷風/中島国彦、多田蔵人 校注
銀の匙【緑51-1】 中 勘助
◆晩年【緑90-8】  太宰 治
・江戸川乱歩短篇集【緑181-1】  千葉俊二 編
自選 谷川俊太郎詩集【緑192-1】  谷川俊太郎
石垣りん詩集【緑200-1】  伊藤比呂美 編
原爆詩集【緑206-1】  峠 三吉
俺の自叙伝【緑229-1】  大泉黒石
中上健次短篇集【緑230-1】  道籏泰三 編
左川ちか詩集【緑232-1】  川崎賢子 編

◆ 君主論【白3-1】  マキアヴェッリ/河島英昭 訳
アメリカの黒人演説集──キング・マルコムX・モリスン 他【白26-1】
  荒 このみ 編訳
職業としての政治【白209-7】  マックス・ヴェーバー/脇 圭平 訳
支配について Ⅰ 官僚制・家産制・封建制【白210-1】
支配について Ⅱ カリスマ・教権制【白210-2】
  マックス・ウェーバー/野口雅弘 訳
贈与論 他二篇【白228-1】  マルセル・モース/森山 工 訳
シャドウ・ワーク【白232-1】  イリイチ/玉野井芳郎、栗原 彬 訳

■ バガヴァッド・ギーター【赤68-1】  上村勝彦 訳
尹東柱詩集 空と風と星と詩【赤75-1】  金 時鐘 編訳
知里幸惠 アイヌ神謡集【赤80-1】  知里幸恵/中川 裕 補訂
■ ホメロス イリアス(上)【赤102-1】  松平千秋 訳
■ ホメロス イリアス(下)【赤102-2】  松平千秋 訳
◆動物農場──おとぎばなし【赤262-4】
  ジョージ・オーウェル/川端康雄 訳
暗闇に戯れて──白さと文学的想像力【赤346-1】
  トニ・モリスン/都甲幸治 訳
◆ 森の生活 (ウォールデン)(上)【赤307-1】
◆ 森の生活 (ウォールデン)(下)【赤307-2】
  H.D.ソロー/飯田 実 訳
・人間とは何か【赤311-3】  マーク・トウェイン/中野好夫 訳
・新編 悪魔の辞典【赤312-2】  ビアス/西川正身 訳
・カフカ短篇集【赤438-3】  池内 紀 編訳
ベートーヴェンの生涯【赤556-2】  ロマン・ロラン/片山敏彦 訳
■ 星の王子さま【赤N516-1】  サン=テグジュペリ/内藤 濯 訳
伝奇集【赤792-1】  J.L.ボルヘス/鼓 直 訳

声でたのしむ 美しい日本の詩【別冊25】  大岡 信、谷川俊太郎 編

 ・・・

■:9点 ◆:12点 ▼:0点 ・:6点
残念ながら読んでいるのは25、6点ほどでした。

 

 ●『北斎 富嶽三十六景』日野原健司 編【青581-1】

今年は、冒頭でも書きましたように、
日本の古典、名作を取り上げてみましょう。

『北斎 富嶽三十六景』日野原健司 編 岩波文庫【青581-1】2019/01/16

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https://www.iwanami.co.jp/book/b431810.html

 

まずは出版社の内容紹介文を!

 《葛飾北斎の富士を描いた浮世絵版画の代表作.
  カラーで全画を掲載,各画毎に,解説を付した.》

(この本の内容
 《富士を描いた葛飾北斎(1760─1849)の浮世絵版画の代表作.
  輪郭線が藍摺りの36図に続いて,輪郭線が墨摺りの10図
  (通称,裏富士)が加えられ,計46図からなる.
  遠近法や陰影法の西洋の画法を取入れた奇抜な構図が
  一大人気を呼んだばかりか,
  ヨーロッパの芸術家達にも多大な影響を与えた.
  各画に,鑑賞の手引となる解説を付した.〔カラー版〕》
(目次
・富嶽三十六景図版一覧 ・富嶽三十六景
・関連地図 ・解説(日野原健司) ・主要参考文献
(編者略歴
日野原健司(1974― )
 千葉県生まれ.太田記念美術館主席学芸員.慶應義塾大学非常勤講師.
 慶應義塾大学大学院文学研究科前期博士課程修了.
 江戸時代から明治時代にかけての浮世絵史を研究.
 『北斎 富嶽三十六景』(岩波書店),『ヘンな浮世絵 歌川広景の
お笑い江戸名所』(平凡社),『かわいい浮世絵』『歌川国貞 これぞ
江戸の粋』(東京美術),『戦争と浮世絵』(洋泉社)など著書多数.

*参考:
 岩波書店ウェブマガジン「web岩波 たねをまく」著者エッセイ
“北斎という山に登る” (日野原健司)2019.10.17
https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/2659?_gl=1*1f7iwuh*_ga*MTI5MDgzNTI1Mi4xNzQ0NzAyNzg0*_ga_L95Q1BL1G0*czE3NDg1MjUyNDMkbzQkZzEkdDE3NDg1MjY1MDQkajU5JGwwJGgw

・関連書誌
『カラー版 北斎』大久保 純一/著 岩波新書 新赤版 1369 2012/5/23

250615-hokusai

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 《「画狂人」と称した葛飾北斎(1760-1849)は、生涯自らの到達点に
  満足することなく、画業に専心し、多彩な作品を遺した。
  初期の役者絵から、美人画、摺物、読本挿絵、絵手本(北斎漫画)、
  風景画、花鳥画、そして晩年の肉筆画まで、傑作・代表作を収録し、
  その画業を江戸絵画史の中に位置づけながら、読みとく。》

 

 ●『富嶽三十六景』

本書冒頭に、全46景の図版一覧があります。

巻末の日野原健司さんの「解説」によりますと、
それぞれの署名の形態により、出版/制作の時期を推定できるようです。

 Aグループ 「北斎改為一筆」印なし 10点
1「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」
2「凱風快晴(がいふうかいせい)」
3「山下白雨(さんかはくう)」
4「深川万年橋下(ふかがわまんねんばしした)」
5「尾州不二見原(びしゅうふじみばら)」
6「甲州犬目峠(こうしゅういぬめとうげ)」
7「武州千住(ぶしゅうせんじゅ)」
8「青山円座松(あおやまえんざまつ)」
9「東都駿台(とうとすんだい)」
10「武州玉川」(ぶしゅうたまがわ)

 Bグループ 「前北斎為一笔」印=極・永寿堂 10点
11「相州七里浜(そうしゅうしちりがはま)」
12「武陽佃嶌(ぶようつくだじま)」
13「常州牛堀(じょうしゅううしぼり)」
14「甲州石班沢(こうしゅうかじかざわ)」
15「信州諏訪湖(しんしゅうすわこ)」
16「遠江山中(とおとうみさんちゅう)」印なし 
17「甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)」
18「駿州江尻(すんしゅうえじり)」
19「東都浅艸本願寺(とうとあさくさほんがんじ)」
20「相州梅沢左(そうしゅううえめざわのひだり)」印なし

 Cグループ「前北斎為一筆」(「為」が屈曲)印=極・永寿堂 5点
21「下目黒(しもめぐろ)」
22「上総ノ海路(かずさのかいろ)」印なし 
23「登戸浦(のぼとうら)」印なし 
24「東海道吉田(とうかいどうよしだ)」印なし 
25「礫川雪ノ且(こいしかわゆきのあした)」

 Dグループ「前北斎為一筆」(「為」が草書体で主版が藍摺)
  印=極・永寿堂 11点
26「御厩河岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしせき
ようをみる)」
27「東海道江尻田子の浦略図(とうかいどうえじりたごのうらりゃくず)」
印なし 
28「相州江の嶌(そうしゅうえのしま)」
29「江戸日本橋(えどにほんばし)」印なし 
30「江都駿河町三井見世略図(えどするがちょうみついみせりゃくず)」
印なし 
31「相州箱根湖水(そうしゅうはこねのこすい)」印なし 
32「甲州三坂水面(こうしゅうみさかのすいめん)」印なし 
33「隠田の水車(おんでんのすいしゃ)」
34「東海道程ヶ谷(とうかいどうほどがや)」印なし 
35「隅田川関屋の里(すみだがわせきやのさと)」印なし 
36「五百らかん寺さゞゐどう(ごひゃくらかんじさざいどう)」

 Eグループ「前北斎為一筆」(「為」が正方形に近い、主版が墨摺)
  印=極・永寿堂 10点
37「身延川裏不二(みのぶがわうあらふじ)」印なし 
38「従千住花街眺望ノ不二(せんじゅうはなまちよりちょうぼうのふじ)
」印なし 
39「駿州片倉茶園ノ不二(すんしゅうかたくらちゃえんのふじ)」印なし 
40「東海道品川御殿山ノ不二(とうかいどうしながわごてんやまのふじ)」
41「甲州伊沢暁(こうしゅういさわのあかつき)」
42「本所立川(ほんじょたてかわ)」
43「東海道金谷ノ不二(とうかいどうかなやのふじ)」
44「相州仲原(そうしゅうなかはら)」
45「駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん)」
46「諸人登山(しょじんとざん)」

 

以上の順に、見開き2ページで絵を、次の見開き2ページが解説文です。

実際に刊行された順はわかっていないようで、これは一つの説です。

 

 ●私のお気に入り――幾何学的な奇抜な構図と鮮やかな色彩の青

全46図のうち、1番の大波の躍動感で有名な「神奈川沖浪裏」や、
通称「赤富士」で知られる2番「凱風快晴」、
弓なりの橋の下に小さな富士が見える、4番「深川万年橋下」、
職人さんが大きな樽を作っている、その樽の中に富士山が見える、
通称「桶屋の富士」の5番「尾州不二見原」、
水面に突出した岩の上で投網の綱を引いている漁師の上に
遠く富士山が見える14番「甲州石班沢」、
斜めに大きな角材を配し、その上に乗り切る職人と下から切る職人、
その木材を支える二本の木の下に富士を配した16番「遠江山中」。
その辺が私も知っていた、けっこうお気に入りのいい感じの作品です。

今回、解説を読んで気に入ったのが、3番の「山下白雨」――山頂は
晴れた空で、その下は暗雲に閉ざされた山腹に稲光が走っている。
これがいい、ですね、私のベスト3かも知れません。

ちなみに、1位は1番の「神奈川沖浪裏」――波の躍動感と
それに負けまいとする舟と、巨大な波と富士のバランス。
作画的にすごいですし、色彩感覚的にも波と海の白と青のバランス。
2位は、2番「凱風快晴」――風に吹き飛ばされ、
山肌があらわになった姿が美しい。
4番目になってしまいましたが、岩と網の綱の線が富士の裾野の稜線と
重なる構図の14番「甲州石班沢」。
5番目が奇抜な構図が目を惹く5番「尾州不二見原」。

企画のスタートとなった若い番号が振られている作品群は、
さすがに力が入っているように感じます。

250615-fugaku-15

 

 ●プルシアン・ブルーの衝撃

『富岳三十六景』の特徴となっているのが、藍色の絵の具です。
海や川、水のこれまでの浮世絵版画にはない、色鮮やかな藍色です。

『富岳三十六景』の出版広告に、「藍摺一枚 一枚ニ一景ズツ追々出版」
と強調宣伝されていたというように、藍摺であることが大きな目玉だった
といいます。

この藍摺に使われた絵の具がプルシアン・ブルーと呼ばれるものでした。

ヨーロッパ(プロイセン王国のベルリン)で発見された合成顔料で、
日本へは延享四年(1747)にオランダ経由で長崎から入り、
「ベロ」と呼ばれていました(現在はベロ藍と表記することが多い)。
十九世紀に入り中国製ができて価格が安くなり、庶民向けの低価格の
浮世絵版画にも使われるようになります。

浮世絵版画での青は、昔は露草や本藍が用いられていたのですが、
露草は色が滲みやすく光に弱い、本藍は水に溶けにくく、ぼかし、
グラデーションをつけて摺ることが難しいかった。
風景を描くのに欠かすことのできない、空や海、川を沈んだ青でしか
表現できなかったのです。

その悩みを解決してくれたのが、プルシアン・ブルーでした。
特徴は、鮮やかな透明感のある青色で、顔料でありながら
水に溶けやすいため、美しいグラデーションでぼかしを表現できる。

この藍摺による団扇絵の流行をきっかけにして、
『富岳三十六景』が刊行され大評判を取ることになります。

 《まさしくプルシアン・ブルーの効果によって、北斎による富士山の
  景色は、それまでにはない鮮やかさに包まれた。もしこの藍色の
  鮮やかさがなければ、「富岳三十六景」の魅力も半減することで
  あろう。》p.216(日野原健司「解説」)

まさに、この色合いは衝撃的です。
『富岳三十六景』最大の魅力といってもいいかもしれません。

 

 ●死の直前まで富士山を描く

三十六景が終わってからも好評で十景が追加され、
最終的に四十六景となりました。
これは当初から予定されていたことでした。
ただ版元の経営が悪くなり、その後の刊行は見送られたようです。
北斎は、その後も『富岳百景』という絵本を刊行します。

北斎は、「画狂老人卍」として、その死の直前まで画業を続け、
版画から肉筆画へと筆を進め、嘉永二年(1849)1月「富士越龍図」を描き、
4月18日、数え年90歳で亡くなります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」と題して、今回も全文転載紹介です。

6月は、岩波文庫フェアを紹介するのが近年の恒例になりました。
で、7・8月は、新潮・角川・集英社の夏の文庫三社を取り上げていますので、夏の3カ月は、もっぱら文庫本の紹介になっています。
私自身が文庫派なのと、本屋の兄ちゃん時代の風習といいますか、癖が残っているというのでしょうか、そういうものが影響しているのでしょう。

古典や名作を廉価に提供してくれるのが元々の文庫の在り方だったわけで、そういう意味では我がメルマガ向きといってもいいかもしれません。

ただ、“元本屋の兄ちゃん”といいながら、そういうフェアの紹介の本のほとんどを図書館本で行うのというのはどうなのだ? という意見はあるかと思います。
しかしこれも、出版社から協賛を頂いているわけでもなく自分勝手にやっていることで、当然すべて自前でまかなっているわけで、年金生活者としましては致し方のないことといってもいいか、と思います。

余裕のある人はみなさん自前で、できれば身近な書店で購入して読んでいただければよろしいかと思います。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

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2025.06.07

週刊ヒッキイ第687号-楽器における左利きの世界(32)松野迅さんから

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【最新号】

 

第687号(Vol.21 no.10/No.687) 2025/6/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(32)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第687号(Vol.21 no.10/No.687) 2025/6/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(32)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回までは、左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
 左利きに関するサイト、エッセイ集の左利きに関する文章を紹介して
 きました。
 今回は、それらの文章をヒントにして、
 私なりに左利きにおける楽器の演奏について考えようと思います。

 

■1回目――まつのじんさんのサイトから

 「まつのじん」さんについて知る意味で、
 <まつのじんWebsite> 平和ねがいて 弦なりやまず
 http://mjin.m1001.coreserver.jp/
 「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日

241102-matunojin-1s

第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.11.02
週刊ヒッキイ第674号-告知-楽器における左利きの世界(26)まつのじん(1)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/11/post-9afc9f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c61c87eab970c035e076d6c9e5e0876d

 ●左利きのヴァイオリニスト「まつのじん」さんについて
 ●「左(手)利き」=「強度の左利き」
 ●「不便益」という考え方
 ●日本は漢字文化の影響で書き方が二通りある
 ●左利きの「矯正」(=右使いへの転換)行為について
 ●「ヴァイオリン弾きのゴーシュ」として

 

■2回目――まつのじん(松野迅)さんのエッセイ集から

『すみれの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅 未來社 1992/1/1
241207sumire-no-hankago

(Amazonで見る)

 「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>

第676号(Vol.20 no.21/No.676) 2024/12/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(27)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(2)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.12.07
週刊ヒッキイ第676号-告知-楽器における左利きの世界(27)まつのじん(2)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/12/post-55f0a7.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3b193894c6d7a3499fa16569f8282e7a

 ●<左利き者の証言>――ヴァイオリニスト松野迅さんの場合
 ●子供時代から、僕は左利きだ
 ●『左利きの歴史』の記述
 ●左利きのままで育つ
 ●右利き社会と左利き用品について
 ●鏡文字の話、食事の話など
 ●左利きとヴァイオリン演奏について――音を出すのが右手
 ●左手の動きと右手の動き
 ●左利き特有の演奏上の苦労について
 ●余談――左利きの人への共感、等
 ●左利きのヴァイオリン演奏についての結論に満足、満足

 

■3回目――まつのじんのサイトの左利きページから

 「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
(2019年8月13日)
http://mjin.m1001.coreserver.jp/ [ヒダリスト/]
%e3%83%92%e3%83%80%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88/

2019813-matunojin-lefty

第679号(Vol.21 no.2/No.679) 2025/2/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(28)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(3)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.1
週刊ヒッキイ第679号-告知-楽器における左利きの世界(28)まつのじん(3)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-5db9f0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/9d54a490b52746a60f5212b9afc3b88a

 ●「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
 ●「ひだりきき 異世界の民たち」
 ●「鏡の世界へ ようこそ」
 ●「左利き演奏者の おもい」=右利き社会に生きる左利き者の悩み
 ●「左利き演奏者の おもい」続き
 ●左利きは

 

■4回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第681号(Vol.21 no.4/No.681) 2025/3/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(29)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(4)」
【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.3.1
週刊ヒッキイ第681号-告知-楽器における左利きの世界(29)まつのじん(4)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-4c221d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ec35e4d1f81a0ac9153e695fbaaef719

 ●「左利き用の楽器 あるの?」
 ●ヴァイオリンの構造
 ●Amazonの「左利き用ヴァイオリンセット」
 ●「左利きの個性 おしえます^^」【松脂編】
 ●「左利きの個性 おしえます^^」【演奏編】右手と左手の動き
 ●「左利きの個性 おしえます^^」【演奏編】脳の違い?

 

■5回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第683号(Vol.21 no.6/No.683) 2025/4/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(30)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(5)」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.4.5
週刊ヒッキイ第683号-告知-楽器における左利きの世界(30)まつのじん(5)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/04/post-99dd44.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/9c05f485df40b156b80fc269468ffb6e

 ●「演奏家の登場です」(1)左弾きヴァイオリニスト
 ●「演奏家の登場です」(2)左弾きピアニスト
 ●通常の「右用」鍵盤楽器について
 ●「左(手)利き用」の鍵盤楽器
 ●「右(手)利き用」鍵盤楽器との違い
 ●クリストファー・シードの左利き演奏の感想
 ●左利きの人は左利き用の道具を!

 

■6回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第685号(Vol.21 no.8/No.685) 2025/5/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(31)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(6)」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.5.3
週刊ヒッキイ第685号-楽器における左利きの世界(31)まつのじん(6)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/05/post-144cd2.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/eeb3d80c9a6227df747486f64257adf9

 ●「LEFTY-INFO-BOX」
 ●「HOW TO PLAY for LEFTY VIOLINIST」冒頭解説
 ●突撃する弓
 ●ウォーミングアップ<左(手)利き編>
 ●自分の指なのに…
 ●右手は今どこにいるのだろう…
 ●いつも曲線を意識してみませんか。
 ●「【ひだり図書館】です」

 

 今回は、過去6回に渡ってご紹介しました、
 左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの
 ご意見から、色々と考えてみようという試みです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きと楽器演奏について考える

  左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの
   ご意見から考える(1)うれしかった情報

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●まちがいじゃなかった私の「鍵盤楽器は右利き用」という意見

一番うれしかった?情報は、やはり現行のピアノが右利き用だ、
というご指摘でした。

*参照:
■5回目――まつのじんのサイトの左利きページから
・第683号(Vol.21 no.6/No.683) 2025/4/5

 ●「演奏家の登場です」(2)左弾きピアニスト
 ●通常の「右用」鍵盤楽器について
 ●「左(手)利き用」の鍵盤楽器
 ●「右(手)利き用」鍵盤楽器との違い
 ●クリストファー・シードの左利き演奏の感想

↑このへんのお話です。

 

<●「演奏家の登場です」(2)左弾きピアニスト> のくだりで、
この連載でもたびたび取り上げてきた、
左利き用ピアノを使って演奏される
クリストファー・シードChristopher Seedさんのお話が出てきます。

Lefthandpiano

まつのさんは、

 《私はこの動画に接した時、生まれて初めて、鍵盤楽器の演奏を
  緊張しないで観る&聴くことができました。楽しめました。それまで、
  なんらかのストレスを伴っていたことに気づかされました。》

と、書いておられます。

 《登場する楽器は、フォルテピアノです。
  現代のピアノ(ピアノフォルテ)の前身です。
  そして調律は現代社会でよく用いられている「平均律」ではなく、
  古典調律のようです。
  ロベルト・シューマン(1810-1856)作曲の「蝶々」作品2(1829-1831)
  が演奏されています。》

だそうです。

そして、<●通常の「右用」鍵盤楽器について> のなかで、

 《一般的にチェンバロ(ハープシコード)、オルガン、ピアノなどの
  鍵盤楽器は、左側の鍵盤から右側の鍵盤へと音程が順に高くなって
  ゆきます。》

 《右(手)利きの人にとっては、音楽・音程の高揚が
  右側へと拡がるので、そのように創られたと推察されます。》

 《人それぞれによって異なりますが、
  左(手)利き人間は、
  音楽・音程の高揚が利き手側=左側に向かう方が、
  自然に感じられます。》

と、まつのさんの言葉を紹介しています。

<●「左(手)利き用」の鍵盤楽器> では、

 《↓この動画で使用されている鍵盤楽器のキーボードは、
  音程の並び方向が真逆にできています。「左(手)利き用」です。》

 《下図の上は、私たちが日ごろ目にしているキーボードの並び順です。
  白鍵(前鍵)は、左側から右側へ〔ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・
  ド〕と並び、音程が上昇します。
  この動画で使用されているキーボードの白鍵(前鍵)は、
  下図の下のように、右側から左側へ
  〔ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド〕と配置されています。
  それに添って黒鍵(後鍵)の並び方も逆仕様となっています。
  左側に向かって音程が上昇します。》

と、この左弾き用のピアノの鍵盤の並び方が説明されています。

250405-2019813-matunojin-hidarikiki-14

この鍵盤の並び方は、私も以前に書いています。

左から右(⇒)の動きが右利き用であれば、
左利き用は右から左(←)への動きなのです。

音楽素人の私の考えであった、
(1)現行のピアノや鍵盤楽器が右利き用であること、
(2)左利きの人用の左弾きピアノの鍵盤の並び方の例
とが、
まつのさんの言うところのものと同じだったのが、うれしかったのです。

 

*参照:

【右用ピアノの鍵盤】

(音階が上がる)⇒⇒⇒
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(左)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド(右)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(音階が下がる)←←←
   
(左腕を押す)⇒┃    ┃⇒(右腕を引く)
(左腕を引く)←┗(身体)┛←(右腕を押す)

 

第616号(No.616) 2022/4/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」
『レフティやすおのお茶でっせ』2022.4.2
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(2)-週刊ヒッキイ第616号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/04/post-7b0072.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/90951982e3ad1c1498e325ea8915cd0f

 

 ●右利き用であることに無自覚な右利きの人たち

次の<●「右(手)利き用」鍵盤楽器との違い> で紹介しているのは、

 《演奏する手も入れ替わります。
  私たちが日ごろ目にしていますがる「右(手)利き用」鍵盤楽器では、
  (原則として)楽譜(大譜表)の上段〔高音域〕を右手、
  下段〔低音域〕を左手が演奏します。
  ところが「左(手)利き用」鍵盤楽器では、
  その逆手で演奏することになります。》

 《下図の中央ように、(原則として)上段〔高音域〕の音符を左手が
  担当し、下段〔低音域〕の音符を右手が演奏することになります。
  こうなりますと、
  【音程の方向性と楽譜の地図(ながれ)が一致しない】
  と感じられませんか? 
  楽器のつくりと同様、楽譜のしつらえも「右(手)利き脳」に即して
  発想され、そして発達・発展してきたことがわかります。》

このお言葉の通り、鍵盤の並べ方という楽器の製作の発想も、
演奏にまつわる楽譜の表記の発想もすべて、
「右利きの人のための、右利きの人用」になっているのです。

こういう発想が根底にあるにもかかわらず、
実際に演奏している人たち(要するに右利きの人)は、
その事実をどの程度意識しているのか、
という疑問が強く!強く!湧いてくるのです。

たぶんほとんどの人は、意識していないのでしょう。

そういう「右利き優先、右利き偏重」の利き手に関する実態に
無自覚な態度が、また腹が立つのです。

 

 ●私も強調したい部分

<●クリストファー・シードの左利き演奏の感想> では、
彼の演奏の動画に関して、

 《この動画をごらんになって、「右(手)利き」の方の中には
  ⚡️違和感を感じる方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
  違和感を通り越して、気持ちが?不安定になる方がいらっしゃる
  かもしれません。あるいは、しばらく時を経てから
  不快感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。

  私は、その心の衝動を充分に理解できます。
  なぜならその不安定な心の動きは、私たち「左(手)利き族」が
  日常的に内心と精神で味わっている 〈試練〉に他ならないからです。
  それは、生涯にわたり切り離せないものでしょう。》

と書いておられます。

後半の 《不安定な心の動きは、私たち「左(手)利き族」が
  日常的に内心と精神で味わっている 〈試練〉に他ならない》
の部分こそ、私も強調したい部分です。

 

 

 ●現実を知らしめる努力を!

結局、右利きの人たちは、
この現実の社会において多数派だというだけの理由で、
多大な恩恵を受けているのだという事実を、
しっかり受け止めて欲しいのです。

その事実に気付けば、少数派への配慮もおのずから生まれてくる、
はずです。

こういう現実社会における実態をもっと声高に発言して知ってもらう
という努力を、われわれは続けていかなければいけないのです。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(32)左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんのご意見から考える」と題して、今回は全紹介です。

ピアノのような鍵盤楽器はみな右利き用だ、という事実をもっと多くの人に知っていただきたいものです。
「左利きは左利き用の道具を!」という時代に逆行しているという現実を、考え直していただきたいのです。

音楽は器楽演奏も含めて、幼児から親しむことが多いので、特に幼児向けの音楽教室では、当然のごとく右利き演奏を教えています。
しかし、先ほども言いましたように、「左利きは左利きのままで!」という時代にこれはやはり逆行している、というのが私の考えです。

幼児はまだ利き手が十分発達していないので、どちらでもいいじゃないか、と考える人もいるかもしれません。
しかしよく観察していれば、「強度の左利きの子」はすぐに分かります。
「中間的な子」の場合は、右使いでもいいじゃないか、となり得ますが、それ以外は絶対に左利き対応がふさわしいと考えます。

余談が長くなりました。
今日はこのへんで。

 

*注:
利き手には、“「右利き」と「左利き」の2種類がある”のではありません。
各人の利き手を調べる「利き手テスト」というものがあります。
最もよく知られたスタンダードな「エディンバラ(EDINBURGH)利き手テスト」、日本人向けに考えられた「H.N.きき手テスト」、比較的新しい「チャップマン(CHAPMAN)利き手テスト」、もっとも新しい「フランダース(FLANDERS)利き手テスト」などがあります。
それぞれの調査結果を右端に「強い右利き」、左端にその逆のほとんど動作で左手を使う「強い左利き」を置いたグラフに描きますと、それぞれに該当する人たちが「J」字型に分布するといいます。

右端に、ほとんどの動作で右手を使う「強い右利き」の人が最も多く(「J」字の長い部分に相当する)、左端に「強い左利き」の人がちいさな山(「J」字の左端のはねた部分に相当する)を作ります。
この間の「J」字の鍋底の部分に当たるのが、主に右手を使うが時に左手を使える「弱い右利き」からその逆の主に左利きだけれど右手も使える「弱い左利き」の人たちです。

この、「弱い右利き」や「弱い左利き」の人たちを「強い右利き」と「強い左利き」のあいだに存在するという意味で「中間の人(子)」と私は呼んでいます。
人は、それぞれに利き手の偏りの度合いが異なり、一言で「○○利き」と決め付けられるものではないということです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.05.31

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)陶淵明(11)「帰去来の辞」1-楽しい読書389号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【最新号・告知】

2025(令和7)年5月31日号(vol.18 no.9/No.389)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)陶淵明(11)
さあ、帰ろう「帰去来の辞」1」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年5月31日号(vol.18 no.9/No.389)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)陶淵明(11)
さあ、帰ろう「帰去来の辞」1」
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 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」陶淵明の11回目です。

 陶淵明編もいよいよ最後の一篇となります。
 
 今回は、『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より、
 <さあ、帰ろう>「帰去来の辞」の詩を読んでみます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◆ 決意の詩 ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)

  ~ 陶淵明(11)さあ、帰ろう ~ 
 
  「帰去来の辞」第一段から第三段まで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より
(Amazonで見る)『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』

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 ●「帰去来の辞」について

「帰去来兮辞(帰去来の辞)」は、本文は四段からなる本文の前に
「序」文が付いています。
そこには、いかなる理由で官職を辞め帰郷するのか、が綴られています。

貧しい生活の中で子供たちを食わせるために仕官した。
しかし少日にして帰りたいという気持ちになった。
役人の生活は自分には向いていない。
自分の理想とする生き方ではない。
妹が死んだのを機に、葬儀に行くのを理由に職を辞めることにした。
云々。
その末尾に日付があり、四十一歳の時のことと分かります。

いよいよ自分の理想とする生活に入ってゆくぞ、という決意の詩であり、
田園作家とも言われる陶淵明さんの代表作といわれています。

 

 ●「帰去来の辞」(第一段)

「帰去来の辞」は、四十一歳で官職を辞めて、その翌年の春、
隠居生活が始まった直後に作った詩。

 《“これからやるぞ”と意気盛んな、言ってみれば人生で一番
  高揚していた頃の作品で、彼の一般的なイメージを形づくった
  代表作です。》p.400

どういう場で詠まれたのかはわからないようですが、
 《親戚が集まった宴会、退職のご苦労様会で発表された雰囲気があ》る
と、宇野さんの解説。

内容は、
 《第一・第二段がひとまとまりで、官職を退いて帰郷し、落ち着いた
  ところまでの描写。第三・第四段は、“さあこれからだ”の決意表明
  で、思想的な要素が入って来ます。》同上

 

帰去来兮辞    帰去来の辞(ききよらい)の(じ)   陶淵明

(第一段)

帰去来兮      帰(かへ)りなん いざ
田園将蕪胡不帰   田園(でんえん) 将(まさ)に蕪(あ)れんとす
           胡(なん)ぞ帰(かへ)らざる

既自以心為形役   既(すで)に自(みづか)ら心(こころ)を以(もつ)て
          形(かたち)の役(えき)と為(な)す
奚惆悵而独悲    奚(なん)ぞ惆悵(ちゆうちよう)として
          独(ひと)り悲(かな)しまん
悟已往之不諫    已往(いおう)の諫(いさ)められざるを悟(さと)り
知来者之可追    来者(らいしや)の追(お)ふ可(べ)きを知(し)る
実迷途其未遠    実(まこと)に途(みち)に迷(まよ)ふこと
           其(そ)れ未(いま)だ遠(とほ)からず
覚今是而昨非    今(いま)の是(ぜ)にして
           昨(さく)の非(ひ)なるを覚(さと)る

舟遙遙以輕颺    舟(ふね)は遙遙(ようよう)として
          以(もつ)て軽(かろ)く颺(あが)り
風飄飄而吹衣    風(かぜ)は飄飄(ひようひよう)として
          衣(ころも)を吹(ふ)く
問征夫以前路    征夫(せいふ)に問(と)ふに
          前路(ぜんろ)を以(もつ)てし
恨晨光之熹微    晨光(しんこう)の熹微(きび)なるを恨(うら)む

 

 さあ、帰ろう
 我が家の畑も庭も、今ごろは荒れ果てているだろう
  さあ、帰ろうではないか

 私はこれまで自ら、心を肉体の奴隷にして来た
 しかしどうして今さら打ちしおれ、一人で悲しんでいることがあろうか
 過ぎた事はもはや改められないと悟り
 今後の事はまだ追いかけて間に合うとわかったのだ
 まことに私は人生の道に迷ったとは言うものの、
  決して深入りはしていない
 今の気持ちは正しくて、昨日までの気持ちは間違っていたんだ

 故郷に向かう舟はゆったりと風を受けて、軽やかに進む
 風はひらひらと我が衣の袖をふいている
 舟を操る船頭さんに先の道のりを尋ねたが
 日の光が弱くてよく見えないのが残念である

 

「帰去来兮」は、「帰りなん いざ」と読む。
動詞の「帰る」に方向性を示す「去」がついて「帰去」=「帰って行く」。
「来」は言葉の終わりにつける助詞で、ここでは促す意味で、
「いざ」という大和言葉が一番合うだろう、と。
「兮」は『楚辞』風の歌には必ず入っている。
「~の辞」という題が『楚辞』系列の作品であることを示す。
陶淵明は、南国の人で、『楚辞』に親近感があるのでは、と宇野さん。
「胡ぞ~ざる」は“ぜひ~しよう、ぜひ~しなさい”など勧誘の気持ち。

次の六句、今までの生活の反省
本心を曲げて官職を続けてしまった。
官職に就いたのも自分の責任、悲しんでいる暇はない。
「過ぎた事」とは役人になったこと。

「軽く颺り」は「軽やかに進む」。
「征夫」は船頭で、「晨光」は日の光、「熹微」は微かなようす。

 

 ●「帰去来の辞」(第二段)

第二段は、いよいよ実家についた心境やようす、家族たちの出迎え、
庭の描写など。

 

(第二段)

乃瞻衡宇     乃(すなは)ち 衡宇(こうう)を瞻(み)
載欣載奔     載(すなは)ち欣(よろこ)び 載(すなは)ち奔(はし)る
僮僕歓迎     僮僕(どうぼく) 歓(よろこ)び迎(むか)へ
稚子候門     稚子(ちし) 門(もん)に候(ま)つ

三逕就荒     三逕(さんけい) 荒(こう)に就(つ)けども
松菊猶存     松菊(しようきく) 猶(なほ) 存(そん)す
携幼入室     幼(よう)を携(たずさ)へ 室(しつ)に入(い)れば
有酒盈樽     酒(さけ)有(あ)りて 樽(たる)に盈(み)てり
引壺觴以自酌   壺觴(こしよう)を引(ひ)いて
          以(もつ)て自(みづか)ら酌(く)み
眄庭柯以怡顏   庭柯(ていか)を眄(かへり)みて
          以(もつ)て顏(かんばせ)を怡(よろこ)ばしむ
倚南窓以寄傲   南窓(なんそう)に倚(よ)りて
          以(もつ)て傲(ごう)を寄(よ)せ
審容膝之易安   膝(ひざ)を容(い)るるの安(やす)んじ
          易(やす)きを審(つまび)らかにす

園日渉以成趣   園(その)は日(ひ)に渉(わた)つて
          以(もつ)て趣(おもむき)を成(な)し
門雖設而常関   門(もん)は設(まう)くと雖(いえど)も
          常(つね)に関(とざ)せり
策扶老以流憩   策(つゑ)もて老(お)いを扶(たす)けて 
          以(もつ)て流憩(りゆうけい)し
時矯首而遐観   時(とき)に首(かうべ)を矯(あ)げて遐観(かかん)す
雲無心以出岫   雲(くも)は無心(むしん)にして
          以(もつ)て岫(しゆう)を出(い)で
鳥倦飛而知還   鳥(とり)は飛(と)ぶに倦(う)みて
          還(かへ)るを知(し)る
景翳翳以将入   景(ひ)は翳翳(えいえい)として
          以(もつ)て将(まさ)に入(い)らんとし 
撫孤松而盤桓   孤松(こしよう)を撫(ぶ)して 盤桓(ばんかん)す

 

 ようやく我が家の門や屋根が目に入り
 私は喜びのあまり、走りつつ帰って行った
 召使いや使用人たちは喜んで迎えに出てきてくれ
 幼い子供たちは門のところで待っていてくれた

 門を入ると、庭の三つの道は荒れ始めていた
 松や菊はまだしっかり残っていた
 幼い子の手を引いて部屋に入ると、
 お祝いの酒がたるいっぱいに満たされていた
 徳利と杯を引き寄せて手酌で飲みながら
 庭の木の枝を眺めて表情をやわらげる
 南の窓に寄りかかって、ゆったりとくつろぎ
 この狭い家もそれなりに落ち着きやすいことがよくわかった

 庭は日毎によい趣になってゆく
 我が家の門はあることはあるが、つねに閉ざされている
 杖をついて、老いに近づいた私の歩みを助け、
 あちこちで気ままに休憩しながら散歩し
 時々首を上げて辺りを見回す
 雲は無心に山のほら穴から出て来る
 鳥たちは飛ぶのに疲れて巣に帰ることを知っている
 やがて日の光は薄暗くかげり、いよいよ沈もうとするが
 庭に一本だけ立つ松の木をなで、去るにしのびずたたずんでいる

 

「衡宇」は家の門と屋根。
「載ち欣び 載ち奔る」で「喜びながら走った」が直訳。
「稚子」は、「子を責む」の五人の子供たち、逆算すると、
長男十四歳ぐらい、末っ子が七歳なので。
「三逕」は、三つの道――門から通じていく道・裏門の道・井戸への道
――この作品以後は隠者の住みかの代名詞となる。
「傲」は“たのしみ、気まま”の意。
「膝を容るる」は、左右の膝がやっと入るぐらいの空間、部屋が狭いこと。
「園」は庭。季節は春で、木や草の緑が濃くなり、花も咲く。
訪ねてくるうるさいお客さんがいない。
「流憩」は、あちこちで休憩すること、気ままな生活。

「時矯首而遐観」からの四句は有名で、独立して引用される。
なぜこれが名句なのかわかりにくいが――
 《“動物たちや万物はみんな自らの分に安んじている”
  という意味でしょうか。“功名心を捨てて辞職し、
  故郷に帰った自分も彼らと同じになったんだなあ”
  というたとえかな。》p.405

「岫」は、山にある洞穴――
古代中国では雲は山の洞穴から湧いて出て来るという言い伝えがある。
“雲が山から出る”は、よく隠者の暮らしのたとえとして使われれる。

松も陶淵明の詩によく出て来る。
 《常緑樹の松は、節操を変えない信念の人を表わすので、
  そこに共感を覚えて
  「やっと自分も松の木のように節操をまっとうできるぞ」
  といった心境なんでしょうか。》p.405

 

 ●「帰去来の辞」(第三段)

帰去来兮      帰(かへ)りなん いざ
請息交以絶游   請(こ)ふ 交(まじ)はりを息(や)めて
          以(もつ)て游(ゆう)を絶(た)たん
世与我而相違   世(よ)と我(われ)と 相違(あいたが)ふ
復駕言兮焉求   復(ま)た駕(が)して
          言(ここ)に焉(なに)をか求(もと)めん

悅親戚之情話   親戚(しんせき)の情話(じようわ)を悅(よろこ)び
楽琴書以消憂   琴書(きんしよ)を楽(たの)しんで
          以(もつ)て憂(うれ)ひを消(け)さん
農人告余以春及  農人(のうじん) 余(よ)に告(つ)ぐるに
          春(はる)の及(およ)べるを以(もつ)てし
将有事於西疇   将(まさ)に西疇(せいちゆう)に於(お)いて
          事(こと)有(あ)らんとす

或命巾車     或(ある)いは巾車(きんしや)を命(めい)じ
或棹孤舟     或(ある)いは孤舟(こしゆう)に棹(さお)さす
既窈窕以尋壑   既(すで)に窈窕(ようちよう)として
          以(もつ)て壑(たに)を尋(たづ)ね
亦崎嶇而経丘   亦(また)崎嶇(きく)として丘(をか)を経(ふ)

木欣欣以向栄   木(き)は欣欣(きんきん)として
          以(もつ)て栄(えい)に向(むか)ひ
泉涓涓而始流   泉(いづみ)は涓涓(けんけん)として
          始(はじ)めて流(なが)る
善万物之得時   万物(ばんぶつ)の
          時(とき)を得(え)たるを善(よみ)し
感吾生之行休   吾(わ)が生(せい)の行ゝ(ゆくゆく)
         休(きゆう)するに感(かん)ず

 さあ、帰ってきたぞ
 どうかこれからは社交を断ち切って、
  世の人々との交友もきっぱり辞めよう
 世の中と私とは、お互いに忘れてしまおう
 ふたたび車に乗って宮仕えをして、何を求めるというのか
 
 これからはそれよりも親戚の真心のある話、
  社交辞令ではない心からの会話、
 また琴や書物を楽しんで心配ごとを消そう
 我が荘園の農夫たちは、私に春がやって来たことを告げる
 これから西の畑でたいへんな事が始まりそうだ

 或る時は蔽いをかけたくるまに命じて陸地を行き、
 或る時は一艘の小舟に棹さして川を行こう
 深い山道をどこまでも辿り、谷川の奥を訪ね、
 険しい山道を通って丘を越えたりしよう

 木々は生き生きとして青葉が茂り、花を咲かせて
 山中の泉は、なみなみと水量も増えて盛んに流れ始めるであろう
 そんなふうに、私は万物が春の時節を得て栄えるのを楽しく眺める
 一方で、自分の人生がだんだん終わりに近づくことに
 ふと感傷を覚えたりするであろう

 

「来」は、“達成された”という意味もあり、前からの続きで言えば、
もう帰っているので、「さあ、帰ってきたぞ」ぐらいの感じ。

 《最初の四句は世の中への絶縁状というか、“もう役人社会はいい”
  というきっぱりした宣言です。》p.407

 

「請ふ~せん」は“どうか~したい”という請願の形。
「駕す」は、動詞で“馬車に馬をつける、馬に乗る”の意味だが、
“官職に就く、仕官する”ことを示す。

 《位が高くなると自分では歩かず馬車に乗りますから。だからここは
  “もう宮仕えはしない”という宣言です》

次の八句は、具体的な時間の過ごし方。
「~するに……を以てす」は漢文によく出て来る形で、下から訳すと
わかりやすい。
(八句の後半の)四句は暇な時間の過ごし方。
「或る時は~、また或る時は~」の形で、あちこち散歩をする。
ゆとりのある生活の始まる雰囲気。
「窈窕」は、深く遠い様子を表わす形容詞。
そんなときに目に映る景色の描写、感慨。
「栄に向ふ」は、花や葉が盛んになっていくようす。
「善す」は、“いいと思う、感心する”。

 ・・・

四段中の三段目が終わったところで、ちょっと中途半端になりますが、
分量的に今回はこのへんで。

次回は最後の段になります。

あと少し、まとめ的な文章を書いておく予定です。

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(34)陶淵明(11)さあ、帰ろう「帰去来の辞」1」と題して、今回も全文転載紹介です。

本文にも書いていますように、分量的に一回ではむずかしく、中途半端ではありますが、第三段で区切りました。
次号をお読みの際、前段まではどうだったかしら、という読者のためもあり、今回も全文紹介です。

 ・・・

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2025.05.17

週刊ヒッキイ第686号-『左組通信』復活計画[37]『LL』復刻(10)LL10 1996年秋号(後)

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【最新号】

第686号(Vol.21 no.9/No.686) 2025/5/17
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(10)
LL10 1996(平成8)年 秋号(後半)」

 

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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第686号(Vol.21 no.9/No.686) 2025/5/17
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(10)
LL10 1996(平成8)年 秋号(後半)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 久しぶりに今回は、
 季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の復刻です。

 今回も新規入力分で、
 すなわち「ネット初公開!」――ということになります。

 今回は、前回に引き続き、LL第10号の後半をお送りします。

 

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]

  『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻 (10)
 
   (内容紹介)LL10 1996(平成8)年 秋号(後半)

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 

*(参照)――

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
(参照)※『レフティやすおの左組通信』のページ
○レフティやすおの左利き自分史年表
○レフティーズ・ライフ(LL)再録(1)全号目次 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代1
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03

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 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』LL10 概要

 

LL10 1996(平成8)年 秋号 A5版 8ページ

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前説 The Compliments of the FALL Issue
―特集“左利きを科学する”(1)
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左利きの生活 To Live In The Right-Handed World
―あなたの<左利き度>をしらべてみよう!
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■その1■…………………………………………………………………………
 スタンレー・コリン著 石山鈴子訳『左利きは危険がいっぱい』
    ((c)1992) 文藝春秋 刊より

 

(1) 利き手調査――あなたの利き手を調べてみましょう。
(2) 利き足調査――あなたの利き足はどちらでしょうか。
(3) 利き目調査――あなたの利き目はどちらでしょうか。
(4) 利き耳調査――あなたの利き耳はどちらでしょうか。
------------------------------------------------------------------
■その2■…………………………………………………………………………
 前原勝矢著 『右利き・左利きの科学』((c)1989)
  講談社ブルーバックス 刊 より
側性係数(LQ)を用いて利き手の程度を数値で確認してみよう
------------------------------------------------------------------
左利きの本だなぁ その8 お勉強編
 前原勝矢著『右利き・左利きの科学 利き手・利き足・利き目・
  利き耳…』講談社ブルーバックス (c)1989
―<あなたの左利き度をしらべてみよう>その2で引用した本。
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左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その9 Left-handed tools & goods
いつもポケットにウェンガー WENGER
―ウェンガー・スイス・アーミーナイフ レフトハンダー・シリーズ
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右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
Letters from the right/left side seats
―右側の席から/左利き用品メーカーより/左側の席から
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左利きのテキスト本紹介
―全巻左利きに関するもの/左利きに関する章を含むもの
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250419-ll10

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 LL10 1996(平成8)年 秋号
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(後半)5ページから8ページまで

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左利きの本だなぁ その8 お勉強編

 前原勝矢著『右利き・左利きの科学 利き手・利き足・利き目・
  利き耳…』講談社ブルーバックス (c)1989

―<あなたの左利き度をしらべてみよう>その2で引用した本。
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 <あなたの左利き度をしらべてみよう>その2で引用したのが、
この本。
 日本人の著者による、「左利き」について書かれた科学的な本の中で
いちばん手に入れやすく、わかりやすい本。

 私がおもしろいと思ったのは、人間の身体は一見左右対称形ではある
が、実は微妙に左右で異なっており、それぞれの役割分担が決められて
いて、その結果、人間が人間として他の動物たちと分かたれることになる
能力を得た、という考え。
 左右の役割分担が人間に言語と道具を作ることを可能にした、という。
そして、この左右の違いを生んだのは、ふたつに分かれた脳―左脳と右脳
―の存在であろう。

 気になるのは、矯正について、「右手利きは多数であり、社会は右手
利きを前提としているのが現状」だから、「さほどの努力を必要としない
程度のことであれば」、郷に入れば郷に従えの「柔軟な姿勢」で「使い手
を変えることは、悪いことでも、恐ろしいことでも」ない、と述べている
点。
 一見まっとうな意見だが、実は「長いものには巻かれろ」の強者の
論理。7年前の著作という時代背景の違いはあるものの、こういう考えの
持ち主が学者と呼ばれる人たちのあいだにも当時まだ存在していたという
状況は、まさに社会がさまざまな差別や偏見を容認していたという事実を
示している。
 前提がまちがっているのだ! 正しくは、右利き左利きにかかわらず
「だれでも…」、「どちらの手でも…」の考え方である。

*『右利き・左利きの科学 利き手・利き足・利き目・利き耳…』
前原勝矢/著 講談社ブルーバック782 1989/6/1
250419-migikiki-hidarikiki-no-kagaku

(Amazonで見る)

 

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左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その9 Left-handed tools & goods

いつもポケットにウェンガー WENGER

―ウェンガー・スイス・アーミーナイフ レフトハンダー・シリーズ
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 私は数年前からこのシリーズのポケットナイフのひとつ<キャンパー・
レフト>を愛用している。特に便利なのがハサミ。小さいけれど切れ味
バツグンで、ちょっとしたときに非常に重宝している。

 ハイカー・レフト、キャンパー・レフト、トラベラー・レフト、
サイクリスト・レフトの4種類。左利き用となると割高になるのが普通
だが、右利き用と同一価格で提供されているのがうれしい。

(*注:以下に、ウェンガーのレフトハンダー・シリーズのカタログから
 写真と説明を転載している。)

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19965-hidarigumituusin-no10-wen_20250516171601

(画像:ウェンガーの日本での発売元だった日本シイベルヘグナーのSさんからいただいた資料を基に作成した、当時並行して出していた新聞『左組通信』第10号(平成8(1996)年5月)「ウェンガー/レフトハンダー・ポケット・ナイフ 紹介号」)

 

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右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
Letters from the right/left side seats

―右側の席から/左利き用品メーカーより/左側の席から
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<左側の席から>⇒⇒⇒

【わたしたちはひとりではない】(やすお)

 この夏私の元に一枚の往復はがきが舞い込んだ。
「私は左利きで左利き用に作られた商品を探して各社色々と問い合わせて
いたところミズノKK(お客様商品相談センター)より、やすお様が
新聞を発行されておられるので一度連絡をされたらどうかと住所を教えて
いただきました。」
 と、同じ市内に在住のTさん。
 さっそくお会いして大いに盛り上がり、語り合いました。久々の快感!
溜飲が下がる思いでした。同志とめぐり合えた気分。幕末の志士たちも
きっとこんな気持ちでいたのでしょう!
 Tさんは、非常に熱心に左利き用品を探し、あるいは左利きの人に
とって不便に思われることに関して企業にアピールしてこられた方で、
いろいろと新しい情報を教えていただきました。大いに触発され、新たな
力が湧いてきました。やったるでェー!

 

<左利き用品メーカーより>⇒

▼川嶋工業株式会社・商品企画開発部・Oさん

 先のTさんから教えていただいた左利き調理用品 <サンクラフト>
“愛妻専科”シリーズ・左きき用11品目の製造販売元――

「当社は、家庭用の刃物を中心に、調理用品、卓上用品、製菓用品などを
企画からデザイン、開発、製造販売をさせていただいているメーカーで
ございます。」
「左利きの方々にとって、生活の中で、自分の片腕としてご使用頂ける
ものを提供させて頂けるよう、研究をしております。
 1、幼児専用のはさみは17年前に香川県の幼稚園の先生と一緒に研究
しできあがりましたものです。このとき幼稚園児の中には25%ぐらいの
左利きの子があったかとおもいます。そこで、左利きも同時に製品化し
使用して頂けるようになりました。この時点で価格も右も左も同じで
提供させてもらいました。現在も販売をさせて頂いております。
 2、その後、調理用品につきましても検討をしておりましてようやく
94年、製品化をいたしました。」
「まだまだ、研究を重ねなければ本当に満足していただける物には
なりません。左利きの皆さんにご使用頂きまして、これからもさらに良い
ものに、また新しい物をご提供させていただければと考えております。
左利きの方々が本当に必要とされているものはなにか、共に考え、具体的
に企画し商品開発できればと思います。」

● ていねいな手紙と“愛妻専科”のカタログ、この左利きシリーズを
 紹介した産経新聞の記事と百貨店の広告、そして幼児専用はさみ
 <ちょっきんな>のパンフレット、並びにその開発に当たった大学の
 研究報告の資料を送っていただきました。とても熱心に左利き用品に
 取り組んでおられる、会社の姿勢がうかがえて、たいへんうれしく
 思いました。ぜひとも、この熱意に水をささぬよう、広く左利きの人達
 に使っていただけるように、わが“LL”でも積極的に応援します。
 (やすお)

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(画像1:川嶋工業株式会社・商品企画開発部・Oさんから頂いた資料を基に作成した、当時並行して出していた新聞『左組通信』第11号(平成8(1996)年8月)「サンクラフト愛妻専科 左きき調理用品 紹介号」)

19968-aisaisenka-siryou

(画像2:川嶋工業株式会社・商品企画開発部・Oさんから頂いた資料――産経新聞の記事と百貨店の広告)

 

←←←<右側の席から>

▼両手利きの――――<静岡県のNさん>

「『おっ、来たぞ』内心そんな呟きで、読んでいます。多忙な日々を
送っていると、“LL”のことも忘れがちになってしまうのですが、郵便
受けの中に見つけたりすると何やら心待ちにしていたような気がするので
不思議です。…現在私が一番関心のあるのは、左利きと右脳との関係です
が、もしこれに関する情報等お持ちでしたら、次次次…回でけっこうです
ので特集を組んでください。」

● 今回から、「左利き」について科学する、という特集を始めました。
 とこまで実態に迫れるかわかりませんが、いろんな本をテキストに
 「左利き」の謎にチャレンジしてみます。(やすお)

 

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左利きのテキスト本紹介
―全巻左利きに関するもの/左利きに関する章を含むもの
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 ここで、私が読んだ範囲で、これはという「左利き」のテキスト本を
紹介しましょう。

 

 ・・・「左利き」について知るための本・・・

◆全巻左利きに関するもの

・『左利きは危険がいっぱい』スタンレー・コレン著 文藝春秋
(原著1992 日本語版1994)刊――“LL”3号/左利きの本だなぁ 参照
・『右利き・左利きの科学』前原勝矢著 講談社ブルーバックス(1989)刊
――“LL”10号/左利きの本だなぁ 参照
・『左ききの人の本』斎藤茂太著 MG出版(1987)刊
 (文庫版)『左利きの人はなぜ才能があるのか』KKベストセラーズ/
 ワニ文庫――“LL”5号/左利きの本だなぁ 参照
・『かくれた左利きと右脳』坂野登著 青木書店(1982)刊

 

◆左利きに関する章を含むもの

・『新版 自然界における左と右』マーティン・ガードナー著
 紀伊國屋書店 刊
・『手と脳―脳の働きを高める手』久保田競著 紀伊國屋書店 刊
・『右脳革命』大前研一編訳/T・R・ブレークスリー 新潮文庫 刊
・『左の脳と右の脳』医学書院 刊

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(10)LL10 1996(平成8)年 秋号(後半)」と題して、今回は全紹介です。

『LL(レフティーズ・ライフ)』第10号 1996(平成8)年 秋号 の(後半)部分です。

第10号にして、
「特集“左利きを科学する”(1)―あなたの<左利き度>をしらべてみよう!」
と意気込んで始めたのですが、その後あれこれあって、日を置いた次号で紙の時代は終わってしまいます。

今思いますと、気負い込みすぎだったのかも知れません。
仕事がだんだん忙しくなり、一方で、こちらの仕事量も自分の能力を超えるような、難しいチャレンジを始めてしまい、過負荷になってしまったようです。

今みたいな、だましだましやるのが私の実力にあったやり方だったのかも知れません。

それでも、結果的にここまでこれたのだから、それはそれで良かったのでしょう。

済んだことを今になってにあれこれいってみても詮無いこと。
とにもかくにも、3年11号(LL1-1994(平成6)年 夏号 ~ LL11 1997(平成9)年 夏号終刊号)がんばったのですから。
その前のはがき大の“新聞”からですと、1991年からですので、6年以上。

まったくの素人が情熱だけでやり遂げたのですから、それなりに、褒めてあげたい気持ちです。
よう、やらはりましたなあ!

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2025.05.15

私の読書論196-<後世への最大遺物>としての紙の本を!-楽しい読書388号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【最新号】

 

2025(令和7)年5月15日号(vol.18 no.8/No.388)
「私の読書論196-<後世への最大遺物>としての紙の本を!」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年5月15日号(vol.18 no.8/No.388)
「私の読書論196-<後世への最大遺物>としての紙の本を!」
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 ここんところ、この「私の読書論」では、もっぱら<町の本屋論>を
 新聞や書籍の情報を紹介しながら、私なりの本屋論を語ってきました。

 今回は、そちらはいったんお休みして、私個人について書いておこう、
 と思います。

 実はこの4月はけっこう色々なことがありました。

 70歳を超えたぐらいの年齢になりますと、何かがあったと言えば、
 思い浮かぶのは、四苦八苦のうちの「病死」ということになりますが、
 まあ、それに似たもので、「別れ」ですね。
 いくつかの別れの時が来てしまったのです。

 で、その時に思ったことがありました。

 今回はそれについて書いて見よう、と思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 - 私の読書論196 -

  ~ <後世への最大遺物>としての紙の本を! ~

  内村鑑三『後世への最大遺物』を紹介しながら……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●「四苦八苦」

仏教では、人は生まれながらに八つの「苦」を背負っている、
と教えます。
人生において避けては通れない、人間の根源的な苦しみですね。

何かがうまく行かずに苦労するときに、「四苦八苦」する、
といった言い方をします。

この「四苦八苦」とは、仏教の言葉です。

「四苦」とは、生老病死。

生苦(しょうく):人は「生まれ」を選ぶことができません。
老苦(ろうく):日々年老いてゆくことを止められません。
病苦(びょうく):いつどんな病気にかかるかわかりません。
死苦(しく):人は必ず訪れる死をまぬがれることはできません。

さらに次の四つの句を合わせて、「八苦」といいます。

愛別離苦(あいべつりく):愛する人との別れの苦しみ
求不得苦(ぐふとくく):欲しいもの、求めるものを得られない苦しみ
怨憎会苦(おんぞうえく):嫌なことや嫌いな人と出会う苦しみ
五陰盛苦(ごおんじょうく):
 自分の体や心が思いのままにならない苦しみ

今回私はいくつかの別れ、失うことがありました。

人はそういう喪失感に陥るとき、色々と考えるものではないでしょうか。

 

 ●生きてきた証として遺すもの

人として生きてきた証をほしい、と強く思うようになりました。

以前からそういう思いはありました。
誰でもそうでしょう。
何かしら自分がこの世に生きてきた証を遺しておきたい、と思うことが。

 ・・・

内村鑑三さんの名著(だと思っている!)に
『後世への最大遺物』という講演録があります。

ご存知のように、内村鑑三さんは、クラーク博士の
「ボーイズ・ビー・アンビシャス」“Boys, be ambitious!”
で有名な札幌農学校の第二期生で、
『武士道』や昔の五千円札で有名な新渡戸稲造さんらと同級生です。

新渡戸さんがどちらかといいますと、表舞台で活躍したのに比べますと、
内村さんのほうは、少し裏道といいますか、
ちょっと日陰の存在のような印象があります。

不敬事件が影響しているせいもあるか、と思います。

内村さんの著作では、『代表的日本人』が有名です。
この本を、弊誌

*参照:
2009(平成21)年12月31号(No.29)-091231-
『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan

で紹介する際に、評伝とともに、
『余は如何にして基督信徒となりし乎』と本書を読みました。
50代半ばぐらいでしたか。
それ以来、私の人生の一つの目標のようになっているのです。

『後世への最大遺物』は、青空文庫でも読めます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000034/files/519_43561.html

これは、明治二十七年七月の夏季学校での講演録ということで、
非常に読みやすく、難しいところのない、短い作品です。

私の持っているのは、岩波文庫版の二本立ての
『後世への最大遺物 デンマルク国の話』という本です。

・『後世への最大遺物 デンマルク国の話』内村鑑三 岩波文庫 改版
(解説=鈴木範久) 2011/9/17

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(Amazonで見る)

 

 ●『後世への最大遺物』

前半が『後世への最大遺物』です。
その本の巻末の鈴木範久さんの「解説」に、
大まかな内容紹介の文章がありますので、それを引用しておきましょう。

《内村鑑三の話はくだけた調子で語られ、随所に笑い声も生じている。
 この美しい地球に生まれたからには
 何か記念となる物を遺して逝かなくてはならない。
 では、その仕事は何か。内村鑑三は、自分の過去の経験も織り交ぜて、
 金銭、事業、思想、文学、教育をあげる。
 しかし、いずれも一定の才能がなくてはできるものではない。
 では何の才能もないものにできるものとは何か。
 それは「勇ましい高尚なる生涯」であると結んでいる。》

内村鑑三さんはキリスト教徒ですので、
そういう宗教的な背景からのお話となっています。

しかし、そういう部分を抜きにしても、人と生まれて来た私たちが、
己の人生の記録として、後世のために何かしら遺しておきたい、
とすれば、何がふさわしいのか?
――という疑問は、どなたにもあるのではないか、と思います。

才能はなくても、運よくパートナーに恵まれ、
子を遺すことの出来た人は、それはそれで結構な人生だった、
と言えるのはないか、と私には思えます。

しかし、私のように、自分の力のなさから、
そのようなチャンスを得られなかった者にも、
何かしら遺せるものがあるとすれば――
それは、まさにこの内村鑑三さんの言葉にあるものぐらいではないか、
と思うのです。

 

 ●内村鑑三さんの結論――「真面目なる生涯を送った人」

「青空文庫」本文より――「勇ましい高尚なる生涯」

《それならば最大遺物とはなんであるか。
 私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる、
 ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、
 利益ばかりあって害のない遺物がある。
 それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。
 これが本当の遺物ではないかと思う。
 他の遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないと思います。
 しかして高尚なる勇ましい生涯とは何であるかというと、
 私がここで申すまでもなく、
 諸君もわれわれも前から承知している生涯であります。
 すなわちこの世の中は
 これはけっして悪魔が支配する世の中にあらずして、
 神が支配する世の中であるということを信ずることである。
 失望の世の中にあらずして、
 希望の世の中であることを信ずることである。
 この世の中は悲嘆の世の中でなくして、
 歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、
 その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。
 その遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないかと思う。(略)》

Dsc08289-koushounarushougai

同――「己の信ずることを実行するものが真面目なる信者」

《(略)来年またふたたびどこかでお目にかかるときまでには少くとも
 幾何いくばくの遺物を貯えておきたい。この一年の後にわれわれが
 ふたたび会しますときには、われわれが何か遺しておって、
 今年は後世のためにこれだけの金を溜めたというのも結構、
 今年は後世のためにこれだけの事業をなしたというのも結構、
 また私の思想を雑誌の一論文に書いて遺したというのも結構、
 しかしそれよりもいっそう良いのは
 後世のために私は弱いものを助けてやった、
 後世のために私はこれだけの艱難に打ち勝ってみた、
 後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、
 後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、
 後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた、
 という話を持ってふたたびここに集まりたいと考えます。
 この心掛けをもってわれわれが毎年毎日進みましたならば、
 われわれの生涯は決して五十年や六十年の生涯にはあらずして、
 実に水の辺ほとりに植えたる樹のようなもので、
 だんだんと芽を萌ふき枝を生じてゆくものであると思います。
 けっして竹に木を接つぎ、木に竹を接ぐような少しも成長しない
 価値のない生涯ではないと思います。
 こういう生涯を送らんことは実に私の最大希望でございまして、
 私の心を毎日慰め、かついろいろのことをなすに当って
 私を励ますことであります。(略)》

 

同――講演の最後の締めの言葉――「真面目なる生涯を送った人」

《われわれに後世に遺すものは何もなくとも、われわれに後世の人に
 これぞというて覚えられるべきものはなにもなくとも、
 アノ人はこの世の中に活きているあいだは
 真面目なる生涯を送った人であるといわれるだけのことを
 後世の人に遺したいと思います。》

Dsc08113-majimenarushougai

私自身、「真面目なる生涯を送った人」とまでは言われないまでも、
「真面目な、いい人だった」ぐらいの評判は遺したいなあ、
という気持ちです。
今までも、「真面目な人」とか「いい人」とかいわれてきましたけれど、
「ただ真面目なだけ(で、これといって才能も能力もない)」だったり、
「いい人(だけど、これといって魅力のない)」だったり……。

 

 ●ネット情報では……

このような、それなりの評判は遺せるかも知れないけれど、
できるならば、もう少し何かを遺したい、という気持ちがあります。

今、一部ではありますが、「左利き」に関してはそれなりの評価
(といいますか、それに近いもの)をいただいています。

自分でも「<左利きライフ研究家>30年超」と自称しています。

ネットでは左利きメルマガを680号超、21年続けています。
ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』での左利き関連記事の発信も、
2003.12.24から21年半近くになります。

『日本左利き協会』のサイトでもご紹介頂いています。

*参照:『日本左利き協会』サイト―左利き便利帳
レフティやすおさんのメルマガとブログ
https://lefthandedlife.net/leftyyasuo.html

2023lhaj-hidarikiki-benrichou

今はなきホームページ『レフティやすおの左組通信』もありました。

「左利き」に関しては、現時点では少しは知られた存在となっている、
ようです。

しかし、これらのネットの成果は、
現状ではいずれ消えてしまうものです。

現に、先ほども上げた、ホームページ『レフティやすおの左組通信』は、
消えてしまいました。
場を提供していた会社のサービス変更に伴い、
移行すれば残せたのですが、すでに更新を止めていたので、
消滅させることにしました。

別の形で復活させたいと思い、現在メルマガで一部紹介しています。

 

 ●私の「後世への最大遺物」

内村鑑三さんは、《この美しい地球に生まれたからには
 何か記念となる物を遺して逝かなくてはならない》(上記「解説」)
として、思想や文学、教育を上げています。

確かにこういうものも誰にでもできることではありません。

しかし、今のところ、「左利きの情報」に関しては、
さらに「左利きへの思い」に関しては、
私は私なりに、色々と集め、書いて来ました。
その情報は、十分遺すに足るものではないか、という自負もあります。

で、今私が考えているのは、やはりネットの情報は消えてしまうので、
なんとか紙の本、それも商業出版で遺したい、ということです。

商業出版の紙の本なら、少なくとも国立国会図書館には保存されます。

個人的に保存する人もいらっしゃるでしょう。
また、ある程度の部数が出れば、古本として残る率が高くなります。

自分の仕事が、そういう目に見える形で残せれば、それは結果的に
私の「後世への最大遺物」といえるでしょう。

 

 ●「左利きの本」を遺したい

今、過去に書き散らした文章をテーマ毎にまとめ始めています。
月に4本のメルマガ(左利きメルマガ2本と読書メルマガ2本)で
手一杯になってはいますが、閑をみて、原稿作りに励んでいます。

紙の本について、まったく努力していなかったわけではありませんが、
基本人任せでした。

実際に「左利きの本」といいますと、
なかなか出版社の人から相手にしてもらえない傾向にあります。

「左利き」関係の本でベストセラーになった本
というのも限られていますし、それらの多くは名のある人であったり、
社会的地位のある人だったり、です。

私のように、何の権威でもなく、過去に本を出した実績もなく、
有名でもない人の場合、非常にハードルが高い、と考えられます。

それでも熱意があれば、なんとかなるのではないか、
という気持ちでいます。

 ・・・

「左利きの問題」があるのだ、という事実をもっと広く世に知らせ、
後に続くであろう、左利きの子供たちのために、今の社会を
もう少し左利きの人にとって生きてゆきやすいものに変えていきたい、
という気持ちでいます。

そのために、「左利き」について語り、本に遺したいものです。

 ・・・

左利きの本について書きましたが、
弊誌に書き散らしてきた、私の読書論やオススメの本
(例えば、<クリスマス・ストーリーをあなたに>など)
についても書いてみたいものです。

実はこちらも一部ですが、一つのテーマで文章をまとめ始めています。

いつになるかわかりませんが、死を考える機会が多くなっている昨今、
早急になんとかしなければ、という気持ちにはなっています。
頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論196-<後世への最大遺物>としての紙の本を!」と題して、今回も全文転載紹介です。

春という季節は、出会いと別れの季節とも言われます。
もう5月になってしまいましたが、この春は私にとってけっこう色々なことがありました。
別れもありました。
別に嫌いになったとか何かではなく、年齢的なもの、加齢に伴うものといってもいいでしょう。
仕方のないことです。
出会いがあれば、いつか別れが来るのは、人生の必然でもあります。

死すべき人間である限り、これはどうしようもないものなのですから。

まあ、そんなこんな色々ありまして考えてしまったのが、今回のテーマになっています。

生きてきた証として何か遺したい、これは人間として誰もが考えることだと思うのです。
特にもう終わりが近づいてきた人にとっては、重大なことといえましょう。

ま、そういうわけで、今回はこうなりました。

願いはかなえられるのでしょうか?
努力しだいですよね。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.05.03

週刊ヒッキイ第685号-楽器における左利きの世界(31)まつのじん(6)

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【最新号】

第685号(Vol.21 no.8/No.685) 2025/5/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(31)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(6)」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第685号(Vol.21 no.8/No.685) 2025/5/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(31)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(6)」
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 左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
 左利きに関するサイト、エッセイ集の左利きに関する文章を紹介し、
 左利きにおける楽器の演奏について考えよう、という試みの6回目。

 

■1回目――まつのじんさんのサイトから

241102-matunojin-1s

 

 「まつのじん」さんについて知る意味で、
 <まつのじんWebsite> 平和ねがいて 弦なりやまず
 http://mjin.m1001.coreserver.jp/
 「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日

第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.11.02
週刊ヒッキイ第674号-告知-楽器における左利きの世界(26)まつのじん(1)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/11/post-9afc9f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c61c87eab970c035e076d6c9e5e0876d

 

■2回目――まつのじん(松野迅)さんのエッセイ集から

『すみれの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅 未來社 1992/1/1
241207sumire-no-hankago

(Amazonで見る)

 「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>

第676号(Vol.20 no.21/No.676) 2024/12/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(27)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(2)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.12.07
週刊ヒッキイ第676号-告知-楽器における左利きの世界(27)まつのじん(2)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/12/post-55f0a7.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3b193894c6d7a3499fa16569f8282e7a

 

■3回目――まつのじんのサイトの左利きページから

 「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
(2019年8月13日)
http://mjin.m1001.coreserver.jp/ [ヒダリスト/]
%e3%83%92%e3%83%80%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88/

第679号(Vol.21 no.2/No.679) 2025/2/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(28)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(3)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.1
週刊ヒッキイ第679号-告知-楽器における左利きの世界(28)まつのじん(3)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-5db9f0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/9d54a490b52746a60f5212b9afc3b88a

 

■4回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第681号(Vol.21 no.4/No.681) 2025/3/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(29)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(4)」
【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.3.1
週刊ヒッキイ第681号-告知-楽器における左利きの世界(29)まつのじん(4)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-4c221d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ec35e4d1f81a0ac9153e695fbaaef719

 

■5回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第683号(Vol.21 no.6/No.683) 2025/4/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(30)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(5)」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.4.5
週刊ヒッキイ第683号-告知-楽器における左利きの世界(30)まつのじん(5)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/04/post-99dd44.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/9c05f485df40b156b80fc269468ffb6e

 

 さて第6回目は、前回同様、まつのさんの左利きサイト
 「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
 (2019年8月13日)
 から、その後半に当たる部分を分けたその3回目を紹介します。

 以前も書いていると思いますが、私は音楽のまったくの素人ですので、
 色々とトンチンカンなことを書いている場合もあるかと思いますが、
 その辺は、想像力を働かせて、お読みください。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きと楽器演奏について考える

   左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さん(6)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●「LEFTY-INFO-BOX」

「LEFTY-INFO-BOX」の段落では、アメリカのカレッジにおける
「左利き学生向けの奨学金」について紹介されています。

 《学校や医療機関に自己負担を伴わない、
  欧米の発想が生きています。》

アメリカの大学では、左利きの人向けのテーブル付折りたたみ椅子が、
人数の10%分置くのが決められている、と聞いたことがあります。

トランプ大統領になって、逆平等になっているといった理由からか、
様々な多様性への対応が取り消されているようですが、
左利きへの配慮はどうなっているのでしょうか。
ちょっと気になるところです。

 

 

 ●「HOW TO PLAY for LEFTY VIOLINIST」冒頭解説

250503matunojinhow-to-play-for-lefty-vio

 

次のメインの段落「HOW TO PLAY for LEFTY VIOLINIST」では、
まつのさん自身の演奏に関する解説で、読み方として【じっくりコース】
【斜め読みコース】【飛ばし読みコース】の三通り提案されています。

「左(手)利き演奏家 アルアル」の専門家向け解説、
というところでしょうか。

 《〈左(手)利き 弓弦楽器奏者の アルアル〉コーナーで、
  さまざまな「個性」を紹介しました。左(手)利きの方でも、
  当てはまる項目とそうでない項目があるでしょう。また
  右(手)利きの方で、当てはまる項目に遭遇することもあるでしょう。
  〈アルアル〉で取り上げた現象はわかりやすい例のみで、
  各々のケースが複合的に結合した時には、思いもよらない現象と
  対峙することもあります。
  そのような場合は、絡み合った毛糸をほぐすように、
  エクササイズを用いて「原因探求」をしてゆきます。
  自身に対してもそうです。根気と直感力のいる作業です。》

といいます。

 

左利きの人が、右利き・右手用のハサミを左手で使う場合を
想定してみるとわかりやすいかも知れません。

ふつうのハサミは、「右手用ハサミ」と呼ぶように、
「右手で使うことを想定した作り」になっています。

「右手用ハサミ」は、右手に持ったときの力の入れ方が、
二枚の刃をかみ合わせる方向に働きます。

それを左手で持つと、逆に刃を離す方向に働くことになり、
切ろうとする対象をはさむだけになります。

また、ふつうに構えますと、上の刃が左側にあるので、
切るところを直接見ることが出来ません。

ちょっと横から首を傾げてのぞき見るようにしなければなりません。
あるいは、最初の個所だけ切るところにあてがい、
あとは勘で切っていくことになります。

このように、左手で右手用を使うには、
それなりの工夫が必要になります。

ヴァイオリンの演奏もそれと同じことなのだろうと思います。
独特のやり方をマスターする必要がある、ということです。

*注:
昨今のハサミは二枚の刃のかみ合わせがしっかりしているので、
昔のガタガタのハサミとは違い、
逆の手で持って使ってもある程度は切れるようになっています。
ただし、切る位置を自然な角度で見ることができません。

 

 ●突撃する弓

 《右(手)利きの方にとっては、どうして雑音が発生したり、
  演奏途中に右手の持つ位置が変わったりするのだろう…
  と思われるでしょう。
  私たちは、
  「着地点がわからないままジャンプしてしまったような感覚」
  で弦の上に弓が当たります。(略)想定外の「接触音」に、
  コントロールできない自身が驚いているのです。》

また、弓は「右(手)利きの(西洋)人」にちょうどよい長さになっている、
といいます。

 《左(手)利きにとっては、現実の弓の長さの倍くらいの長さを
  操っているような感覚に近いように思います。
  演奏中に弓の先を認識しようとして、弓の持つ手が真ん中方向に
  移動するのは、この長さの認識が先まで至っていないことが
  影響していると思われます。》

日本人向きになっていないだけでなく、左利きを想定していないので、
微妙な違いが出るのかも知れません。

以前、左利きの人の利き手と軸足の関係に基づいて
「ヴァイオリンの演奏と軸足の関係」について書きました。

第669号(Vol.20 no.14/No.669) 2024/8/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(23)左利きは左弾きヴァイオリンで(2)」

『レフティやすおのお茶でっせ』2024.8.3
楽器における左利きの世界(23)左利きは左弾きヴァイオリンで(2)-週刊ヒッキイ第669号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/08/post-531140.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/46057327d09383dd6cd5a1447ab5da30

--
左利きの人では通常、多くの人が右足が軸足となり、体重を支えます。

このとき、右手に弓を持ち大きく動かそうとしますと、
重心の位置がぶれ、その身体を支えるのは非常に不安定になります。

弓を右に大きく弾こうと腕を大きく引くと、身体も同じように振れます。
逆に弓を左に押していけば、右足の重心も左に傾き、
左手に持つヴァイオリン本体も不安定になります。

身体が不安定ですと、安定した演奏も難しいでしょう。
--
 <●ヴァイオリンの演奏と軸足の関係>より引用

 

左手利きの人は、たいてい左足利きで、
体重を支える支持足(軸足)は右足になる傾向があります。

身体の右側に重心を置いているのです。
そのため、右手・右腕を大きく動かすと重心がぶれ、不安定になります。
逆に左手側は、自由に動かすことが可能になります。

右手利きの人は、左手利きの人とは逆で、
左足が体重を支える支持足(軸足)で、重心は左側になります。
そのため右手・右腕を大きく動かしても、重心はぶれにくいのです。

左手利きの右弾き演奏家の場合、支持足(軸足)の関係で、
右手に持つ弓を大きく動かすのに不向きになっている、と考えられます。

無意識につい右足に重心を置いてしまい、いざ演奏というときに、
右手に持つ弓の動きが不自然になってしまう……。

弓の動きに関しては、
こういうことも影響しているのではないでしょうか。

 

 ●ウォーミングアップ<左(手)利き編>

 《「左(手)利きの人が右手に弓を持つ場合、右(手)利きの人には
  必要ない(と思われる)ウォーミングアップが必須✌️でしょう。
  しかも、段階的に慣らしてゆくウォーミングアップです。
  日常的に意思疎通のできていない「非利き手」に、
  意思伝達を促してゆきます。ここに時間と知恵を用いましょう。》

《日常的に意思疎通のできていない「非利き手」》
という表現がありますが、
これは、
「利き手は心につながっている」という私の持論に同じでしょう。

以下の部分は、専門的になりますので、割愛します。

「ウォーミングアップ」の4番目に、<左(手)利き編>があります。

 《最終的に弓と弦が接触する瞬間が「勝負どころ」です。
  その接触する直前に、左手に構えた楽器を弓の方向へ接近させます。
  弓がバウンドする前に、左の動きで弓を「とらえる」のです。》

と、左手側から動け、という左手側は単に「受ける」のではなく、
積極的に動け、ということのようです。

先ほどの、支持足と重心の関係で、左手利きは左手側が動かしやすい、
と書いたのと同じ発想でしょう。

 《うまくゆくと、音の出発点から〈左(手)利きコントロール〉の
  「見せ場」&「聴かせどころ」となるでしょう。》

と。

 

 ●自分の指なのに…

 《そうですね。右手の指を動かして弓を操るのは、
  なかなか思い通りにはゆきません。右(手)利きの人たちにとっても、
  指の動作になるとすべての人ができるとは限りません。》

 《あきらめてはなりません。利き手は違っても、
  同じ形状の指があるのですから、半歩ずつでも乗り越えましょう。》

この辺は、利き手の違いによる困難さ、というところでしょう。

「指の自主独立…」「中指と薬指の分離」
この辺のところは流し読む感じです。

 

 ●右手は今どこにいるのだろう…

目を閉じて、両手の指先をそれぞれ近づけてみると――

 《どちらかというと利き手の指先の意識が高く、非利き手の指先を
  そこに近づけてゆくスタイルが多いのではないでしょうか。
  非利き手が空間をさまようことがよくあります。》

それぞれの指の感覚を研ぎ澄まそうというところでしょう。
眼で見て確認するようでは演奏してられませんから。

パソコンのキーボードのタイピングなどと同じですね。

 

 ●いつも曲線を意識してみませんか。

 《利き手に限らず、多くの演奏者の弓の角度が直線的です。》

というのですが、音楽の演奏はもっと自由で、

 《弓の角度は、(略)常に曲線を描くことが可能です。
  その曲線の動きが次に移動する弦へのアプローチとなり、
  音色づくりに結びつきます。音楽的な表現は、弓が放物線のように
  動く姿と切り結んでゆきます。》

で、このとき有効なのが、〈左(手)利きコントロール〉だといいます。

 《楽器の角度に変化を持たせて、弓の角度をサポートすることです。
  弓の右手の角度と、左手で持つ楽器の角度の両方を(反対方向に
  曲面で)動かしてあげると、最小限の角度で収まります。
  その左手側の動作の自由を保障するためには、ヴァイオリンや
  ヴィオラの「肩当て」は動きが制限することがあります。》

左(手)利きだからこそできる、左手でリードする演奏、
とでもいうのでしょうか。
先ほども言いましたように、支持足(軸足)の関係で左利きの場合、
右手の動きは制限されかねませんが、
逆に、左手側の自由度は高くなります。

そこに、
左利き右弾き演奏家特有の円満な演奏の鍵があるかも知れません。

 《自然界に、直線は存在しません。曲線や曲面から成り立っています。
  「曲」を意識することは、自然と融合することです。
  そして日本語の「曲」は音楽を示します。》

なるほど、左利き右弾き演奏家の活路がそこにある、
という、自信の発露のような締めの言葉でしょう。

 

 ●「【ひだり図書館】です」

末尾に「【ひだり図書館】です」というコーナーがあります。
「脳科学」や「左利き」や「左右」に関連する図書のリストです。

《「おすすめ」や「おきにいり」ではございません。》とあるように、
特にこれを読んで欲しい、というまつのさんのオススメ本のリストでも、
左利き演奏に関連する書目でもありません。
あくまでも、「左利き」を理解する上で役に立ちそうな本のリストで、
1964年から2019年までの65点が紹介されています。

私のお気に入りやオススメの本は、
今までにもいろんな機会に書いていますので、そちらをご参考に!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(31)左利きのヴァイオリニストまつのじん(6)」と題して、今回は全紹介です。

この「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」のサイトは、左手利き右弾きヴァイオリン演奏家のまつのじんさんの左利きへの思いの強さ・熱さが伝わってくるような内容でした。

音楽のこと、ヴァイオリンのことはまったくわかりませんが、左利きの動作としては、何かしら理解できるような気がしました。
後に続くであろう左利きの演奏家にとって、右弾きであろうと左弾きに挑戦する人であろうと、おおいに役に立つものだろうと思います。

さらなる続編が生まれることを楽しみにしています。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.04.30

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)陶淵明(10)「乞食」-楽しい読書387号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【最新号】

2025(令和7)年4月30日号(vol.18 no.7/No.387)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)陶淵明(10)
詩風の変化を見る(2)「乞食」」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年4月30日号(vol.18 no.7/No.387)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)陶淵明(10)
詩風の変化を見る(2)「乞食」」
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 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」陶淵明の10回目です。

 いよいよ陶淵明編もゴール間近というところでしょうか。
 
 今回は、『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より
 詩風の変化について、晩年の三首目「乞食」の詩を読んでみます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◆ 折にふれて ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)

  ~ 陶淵明(10) ~ 詩風の変化を見る(2)
 
  「乞食」=「食を乞ふ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より
Kansi-wo-yomu-1

(Amazonで見る)『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』

 

 ●「食を乞ふ」

亡くなる前年、六十二歳の作といわれる詩で、
最晩年に到達した境地がみえる……。

《文字通りに読むととんでもない詩》で、貧乏で空腹に耐えられず、
見知らぬ家の門を叩き、そこの主人から恵んでもらい、
その主人と意気投合して酒まで飲み、作った詩だと。

現実には、陶淵明さんは、最後まで家族や使用人と荘園で暮らし、
これはフィクションだろう、といわれているそうです。

一方で、「食を乞う」とは、官職を求めたことへの例え、
という説もあるようです。
これも、官職に復帰していないので、いかがなものか、
と宇野さんの解説です。

 ・・・

乞食  食(しよく)を乞(こ)ふ  陶淵明 

 

飢来駆我去  飢(う)ゑ来(きた)つて我を駆(か)り去(さ)り
不知竟何之  知(し)らず 竟(つい)に何(いづ)くにか之(ゆ)く
行行至斯里  行(ゆ)き行(ゆ)きて斯(こ)の里(さと)に至(いた)り
叩門拙言辞  門(もん)を叩(たた)いて言辞(げんじ)拙(せつ)なり

 空腹が募って私を追い立てる
 いったいどこへ行くというのか
 ずいぶん遠くまで歩いてこの村里に到着し
 或るお宅の門をたたいたが、言葉がうまく出て来ない

 

「知らず」は、《疑問符の上について「いったいぜんたい」と
疑問を協調する副詞》。
「行き行きて」は《“どこまでもどこまでも歩いた”という雰囲気》。
「食べ物をください」とは言い出せなかった。

 

主人解余意  主人(しゆじん) 余(よ)が意(い)を解(かい)し
遺贈豈虚来  遺贈(いぞう)あり
        豈(あに) 虚(むな)しく来(きた)らんや
談諧終日夕  談(だん)諧(かな)うて日夕(につせき)を終(お)へ
觴至輒傾杯  觴(しょう)至(いた)れば
        輒(すなは)ち杯(さかづき)を傾(かたむ)く

 この家の主人は私の気持ちをわかって下さり
 贈り物を下さったので、私は無駄に来たことにはならなかった
 私たちは話が合い、夕方の時間帯を過ごしてしまい、
 さらに酒が出て来たので、さっそく杯を傾けることとなった

 

「遺」「贈」も“物を授ける、贈る”の意味。
「豈」は否定詞の「不」に置き換えるとわかりやすく、
「虚しく来たのではない、ちゃんと収穫はあった」という意味に。
「輒ち」は、“さっそく”の意味。

 

情欣新知歓  情(こころ)に新知(しんち)の歓(かん)を欣(よろこ)び
言詠遂賦詩  言詠(げんえい)して遂(つひ)に詩(し)を賦(ふ)す
感子漂母恵  子(し)が漂母(ひようぼ)の恵(めぐ)みに感(かん)じ
愧我非韓才  我(わ)が韓才(かんさい)に非(あら)ざるを愧(は)づ

 私は心中、新しい親友が出来た喜びをうれしく思い
 語り合い、歌を歌い、そして詩を作った
 ご主人様、いにしえの洗濯婆さんのようなあなたのお恵みに、
 私は心を打たれました
 しかしこの私は、韓信のような才能ある人物ではない、
 それが恥ずかしい

 

次の四句は、お酒が入って興に乗り、詩を作って感謝する展開。
「言詠」の二字で“歌をくちずさむ”。
「子」は二人称で“あなた”。「漂母」は《秦末に劉邦に仕え、
漢王朝を建てるのに功績のあった韓信の故事》だそうです。
彼が若い頃、食うのにも困っていたとき、ご馳走してくれた婆さんに、
出世した後に恩返しをした、という。

 

銜戢知何謝  銜戢(かんしゆう)して
        知(し)る 何(なに)をか謝(しや)せん
冥報以相貽  冥報(めいほう) 以(もつ)て相(あひ)貽(おく)らん

 今はこのまま黙ってご恩を胸におさめておいて、
  さていったい、どのようにお礼をしましょうか
 後の世のご恩返しによってあなたに報いることにしましょう

 

最後の二句は、“しょうがないからお礼は来世にします”と、
居直った感じだ、といいます。
「銜収」は、「銜」は“黙って胸におさめる”、
「戢」は“おさめておく”。
「知る」も疑問視の上に置いて、疑問を強調。

 

 ●『漢詩を読む 1』宇野直人さんの解説

 《実体験ではなく、“こうあったらいいなあ”という願望や理想を、
  イメージ優先で書いたのではないでしょうか。》p.398
といい、
 《彼の詩はだいたい全生涯を通して、そのときどきの願望やイメージに
  のっとって作られたフシがあります。》同

すなわち、陶淵明さん=「私小説作家」という捉え方が生きてくる、
といいます。
陶淵明さんは、私小説の主人公になって、酒を飲みながらフィクションを
書いて楽しんでいたのかも、というのが、宇野さんの解説です。

最晩年に至るまで、陶淵明さんは、《何か愛に飢えていたのかな》p.399。
広い意味で不満があった。

この詩のはじめの四句――ふらふら歩いて行くうちに、理想的な村里に
出くわした――は「桃花源記」と同じだといいます。

 《陶淵明は異郷譚の形を詩に取りこんで、願望を述べたことになるで
  しょう。》p.399

前回からここまでに読んだ三つの詩について、
最後の二句が似たニュアンスを持っている――

 《陶淵明の詩は、ちょっと投げやりな、どうでもいいような表現が案外
  多いんです。こだわりがなくさっぱりしているとも言えますが、
  実は彼は農村生活の中で、やはり何か、求めて得られない虚しさが
  ずっと胸の中にあったんじゃないでしょうか。ちょっと痛々しい
  ような気もします。》p.399

 

*参照:「桃花源記」

2024(令和6)年9月30日号(vol.17 no.17/No.374)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(30)陶淵明(7)空想の世界で
「読山海経十三首」「桃花源記」」

『レフティやすおのお茶でっせ』2024.9.30
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(30)陶淵明(7)空想の世界で
-楽しい読書374号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/09/post-0b7f46.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/078ba7fdddff1f49484822cdd3073d33

 

 ●林田慎之介訳注『陶淵明全詩文集』の解説

次に林田慎之介さんの解説を引用しましょう。

 《 陶淵明詩集で気になる一篇の詩がある。「乞食」と題する五言古詩
  である。(略)古今東西、どんな詩人でも乞食を主題とする詩は
  残していない。(略)》p.572

 《「乞食」は時に飢えと寒さにさらされることがあったと歌っている
  陶淵明自身の投影であったにちがいない。自分の乞食している
  想像上の姿でなければ、一篇の詩に書きのこす必要はなかったで
  あろう。「乞食」の詩を自分の日常詩としてどうしてものこして
  おきたいというのが、淵明の考えだったとみることの方が自然で
  ある。/「桃花源記」には人里と隔絶された桃源郷が描かれている。
  そこには平和で豊かな農村と農民の暮らしがある。時代を超え、
  時間の存在さえ忘れて暮らしを楽しんでいる農民たちの農村生活
  そのものが、陶淵明にとって桃源郷であったのだ。「乞食」の詩と
  併せ読むと、陶淵明が「桃花源記」を描かねばならぬ必然性が
  見えてくるであろう。》p.573

  『陶淵明 全詩文集』林田慎之助/訳注 ちくま学芸文庫 2022/1/8
241031-touenmei-zensibunshuu

(Amazonで見る)『陶淵明 全詩文集』

 

 ●陶淵明さんの詩

陶淵明さんは、このように私小説家のごとく、日常の生活の中から、
自分の思いを詩に書き残したのでしょう。
何かしら満たされない日々の思い、愁いなどを、時に空想に遊びながら、
詩に書き、酒を飲んで紛らわそうとしたのかも知れません。

そういうところが、現代人にも受けるところなのでしょうか。

いよいよ本書『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』の
陶淵明の章もおしまいに近づいてきました。

次回は、隠居生活を始めた直後の意気盛んな頃の「帰去来の辞」を
紹介します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(33)陶淵明(10)詩風の変化を見る(2)「乞食」」と題して、今回も全文転載紹介です。

本文中にも書いていますが、陶淵明編もいよいよ終わりに近づいてきました。

今回は少し短い一本になっていますが、陶淵明最終ラウンドは、長めの詩を扱うので、一回では納まりきらないようです。
今しばらく続くかも……。

 ・・・

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2025.04.19

週刊ヒッキイ第684号-告知-『左組通信』復活計画[36]『LL』復刻(9)LL10 1996年秋号(前)

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 
【最新号の告知】

第684号(Vol.21 no.7/No.684) 2025/4/19
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [36]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(9)
LL10 1996(平成8)年 秋号(前半)」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第684号(Vol.21 no.7/No.684) 2025/4/19
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [36]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(9)
LL10 1996(平成8)年 秋号(前半)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 久しぶりに今回は、
 季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の復刻です。

 今回も新規入力分で、
 すなわち「ネット初公開!」――ということになります。

 ここまで8ページ一挙公開してきましたが、
 今回はスペース的にむずかしく、前・後半二回に分けてお送りします。

 

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [36]

  『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻 (9)
 
   (内容紹介)LL10 1996(平成8)年 秋号(前半)

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

*(参照)――

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
(参照)※『レフティやすおの左組通信』のページ
○レフティやすおの左利き自分史年表
○レフティーズ・ライフ(LL)再録(1)全号目次 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代1
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03

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 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』LL10 概要

LL10 1996(平成8)年 秋号 A5版 8ページ

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前説 The Compliments of the FALL Issue
―特集“左利きを科学する”(1)
------------------------------------------------------------------
左利きの生活 To Live In The Right-Handed World
―あなたの<左利き度>をしらべてみよう!
------------------------------------------------------------------
■その1■…………………………………………………………………………
 スタンレー・コリン著 石山鈴子訳『左利きは危険がいっぱい』
    ((c)1992) 文藝春秋 刊より

(1) 利き手調査――あなたの利き手を調べてみましょう。
(2) 利き足調査――あなたの利き足はどちらでしょうか。
(3) 利き目調査――あなたの利き目はどちらでしょうか。
(4) 利き耳調査――あなたの利き耳はどちらでしょうか。
------------------------------------------------------------------
■その2■…………………………………………………………………………
 前原勝矢著 『右利き・左利きの科学』((c)1989)
  講談社ブルーバックス 刊 より
側性係数(LQ)を用いて利き手の程度を数値で確認してみよう
------------------------------------------------------------------
左利きの本だなぁ その8 お勉強編
 前原勝矢著『右利き・左利きの科学 利き手・利き足・利き目・
  利き耳…』講談社ブルーバックス (c)1989
―<あなたの左利き度をしらべてみよう>その2で引用した本。
------------------------------------------------------------------
左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その9 Left-handed tools & goods
いつもポケットにウェンガー WENGER
―ウェンガー・スイス・アーミーナイフ レフトハンダー・シリーズ
------------------------------------------------------------------
右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
Letters from the right/left side seats
―右側の席から/左利き用品メーカーより/左側の席から
------------------------------------------------------------------
左利きのテキスト本紹介
―全巻左利きに関するもの/左利きに関する章を含むもの
------------------------------------------------------------------

250419-ll10

 

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 LL10 1996(平成8)年 秋号
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

------------------------------------------------------------------
前説 The Compliments of the FALL Issue

―特集“左利きを科学する”(1)
------------------------------------------------------------------
 左利きに関するいちばんの疑問は、
「なぜ人間には右利きと左利きがあるのか?」ということでしょう。
それは「利き手はいかにしてつくられるのか?」と言い換えることも
できるかもしれません。
 人が左利きになる理由・原因とはなにか?
 今回からしばらくこの問題に挑戦してみましょう!

 第一回は、アンケート編です。
「左利き」についてより深く知るために、まずあなたの利き手を調べて
みましょう。
科学啓蒙書から、利き手調査のための質問をひろってみました。

 本題に入る前に、ちょっとした質問をします。

(『左利きは危険がいっぱい』スタンレー・コリン著 石山鈴子訳
 文藝春秋 より)

250419-kiken-ga-ippai-h

 

 次の○○○に「左利き」という言葉を当てはめたときに、Bさんの
いわんとする意味をどう解釈しますか?

 Aさん「どんな具合でしたか?」
 Bさん「彼の振るまいは、まるで○○○のようでしたよ」

 これは、あなたの「左利き」に対するイメージに関する調査――
ハンディズム(利き手差別)について――でした。
 例えば、「天才」とか「英雄」という言葉を当てはめると、万事うまく
行ったことになる。逆に、「大バカ者」とか「まぬけ」といった言葉を
入れると、ことがはかばかしくなかったことになる。
 調査によると、「不器用だ」「まぬけだ」とか「場違いだ」「無礼だ」
など、91%の人がマイナスのイメージに解釈したという。
 意識する、しないに関わらず、「左利き」に対して否定的な固定的観念
を持っている人が大部分なのだそうです。そして、残りの人はたぶん
左利きの人なのでしょう。
 さて、あなたの場合はどうでしたか?

――From the Publisher やすお

 

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左利きの生活 To Live In The Right-Handed World

―あなたの<左利き度>をしらべてみよう!
------------------------------------------------------------------

■その1■…………………………………………………………………………
 スタンレー・コリン著 石山鈴子訳『左利きは危険がいっぱい』
 ((c)1992) 文藝春秋 1994 刊より

250419-kiken 

(Amazonで見る)

………………………………………………………………………………………

 

 あなたの左利き度を、利き手・利き足・利き目・利き耳について
それぞれ調べてみましょう。

(1) 利き手調査――あなたの利き手を調べてみましょう。

 下記の質問に答えてください。それぞれの動作にどちらの手を使うか、
 もっとも良く当てはまるもの――「右」「左」「両方」――に○を
 付けてください。
 自信がないときは実際にやってみて、どちらの手を使っているか
 確かめてください。

1 普段、字を書くとき―――――――――――― 右 左 両方
2 絵を描くとき――――――――――――――― 右 左 両方
3 ボールを投げたり、的に当てたりするとき―― 右 左 両方
4 テニスなどでラケットを握るとき―――――― 右 左 両方
5 歯ブラシを持つとき―――――――――――― 右 左 両方
6 ナイフでものを切るとき―――――――――― 右 左 両方
7 釘を打つとき、ハンマーを持つのは――――― 右 左 両方
8 マッチをするとき、マッチを持つのは―――― 右 左 両方
9 消しゴムで消すとき―――――――――――― 右 左 両方
10 トランプなど、カードを配るとき――――― 右 左 両方
11 針に糸を通すとき、糸を持つのは――――― 右 左 両方
12 ハエたたきを持つのは―――――――――― 右 左 両方

 それぞれの答えのうち、「右」の答えに3、「両方」の答えには2を
掛け、その数に「左」の数を足したものが、あなたの得点です。

「右」 ×3=〔 〕
「両方」×2=〔 〕
「左」   =〔 〕
――――――――――
あなたの得点 〔 〕

得点33~36: 強度の右手利き
  29~32:中程度の右手利き
  25~28: 軽度の右手利き
     24:    両手利き
  20~23: 軽度の左手利き
  16~19:中程度の左手利き
  12~15: 強度の左手利き

 

(2) 利き足調査――あなたの利き足はどちらでしょうか。
 利き手の場合と同じ要領で行ってください。

1 ボールを蹴ったり、的に当てたりするとき――― 右 左 両方
2 足の爪先で小石を拾い上げたいと思ったとき―― 右 左 両方
3 虫を踏みつぶすとき―――――――――――― 右 左 両方
4 椅子の上に足をのせなければならないとき、
  どちらから先にのせますか―――――――――― 右 左 両方

 

(3) 利き目調査――あなたの利き目はどちらでしょうか。
 利き手の場合と同じ要領で行ってください。

1 望遠鏡をのぞくとき―――――――― 右 左 両方
2 瓶の中をのぞくとき―――――――― 右 左 両方
3 鍵穴からのぞくとき―――――――― 右 左 両方
4 ライフルの照準を合わせるとき――― 右 左 両方

 

(4) 利き耳調査――あなたの利き耳はどちらでしょうか。
 利き手の場合と同じ要領で行ってください。

1 締め切ったドアの向こうに会話を聞くとき、
  どちらの耳をドアにあてますか――――― 右 左 両方
2 ラジオのイアホンは―――――――――― 右 左 両方
3 人の心臓の鼓動を聞くとき――――――― 右 左 両方
4 時計のコチコチという音を聞くとき――― 右 左 両方

 

(2)(3)(4)それぞれの利き側の得点

11~12: 強度の右側利き
 9~10:混合型の右側利き
    8:    両側利き
  6~7:混合型の左側利き
  4~5: 強度の左側利き

調査によると、

 強度の右手利きは、72%
 強度の左手利きは、 5%
 両手もしくは混合型は、22%
 
それにひきかえ、利き足では、

 強度の右足利きは、46%
 強度の左足利きは、 4%
 混合型は、    50%

利き目でも、

 強度の右目利きは、54%
 強度の左目利きは、 5%
 混合型は、    41%

にものぼるという。

利き耳は、もっと希薄で、

 強度の右耳利きは、35%
 強度の左目利きは、 5%
 混合型は、    60%

と、右耳利きはわずか35%で、大半は混合型を示すという。

さて、あなたの場合は? 

 

■その2■…………………………………………………………………………
 前原勝矢著 『右利き・左利きの科学』((c)1989)
  講談社ブルーバックス 刊 より

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………………………………………………………………………………………

 利き手は、右または左と二分されるものではなく、右に近い両手利きや
左に近い両手利きなど、様々な程度の両手利きが存在する。
 側性係数(LQ)を用いて、利き手の程度を数値で確認してみよう。

1 文字を書く―――――― 右手 左手 両手
2 ハシをつかう――――― 右手 左手 両手
3 絵をかく――――――― 右手 左手 両手
4 ハサミをつかう―――― 右手 左手 両手
5 ボールを投げる―――― 右手 左手 両手
6 歯ブラシをつかう――― 右手 左手 両手
7 スプーンをつかう――― 右手 左手 両手
8 短いホーキを持つ――― 右手 左手 両手
9 マッチをする――――― 右手 左手 両手
10 ビンのフタをひねる― 右手 左手 両手

〔計算式〕LQ=100×(右-左)÷(右+左+両手)

すべての動作を右手で行う人は、LQ=プラス100。
逆にすべての動作を左手で使う人は、マイナス100。
右手利きから左手利きまで20段階に評価することができる。
結果は以下のとおり。あなたはどうでしたか?

(*注:以下に『右利き・左利きの科学』から写した、
    手書きのグラフを図示。今回は数値で表現してみました。)

250419-1415kikite

【14~15歳の男性の利き手分布】

100~91 :50%弱 ―――――↑右手利き傾向
 90~81 :20%弱 
 80~71 :15%ぐらい
 70~61 :7~8%ぐらい
 60~51 :5%ぐらい
 50~41 :3%ぐらい
 40~31 :2~3%
 20~11 :2%ぐらい
  0~-9 :2%ぐらい
-20~-29:1~2%
-40~-49:2~3%
-60~-69:2~3%
-80~-89:3%ぐらい
-90~-100:5%ぐらい ―――↓左手利き傾向

LQの値が高い(プラス)ほど、右手利き傾向が強く、
低い(マイナス)ほど、左手利き傾向が強い。

 

250419-migihidari-dousa

【動作の難易度による右手利き頻度の違い】

 びんのふた:80%弱
ほうきをもつ:87~88%
  歯ブラシ:90%弱
 さじをもつ:92%ぐらい
 ボール投げ:93%ぐらい
   マッチ:94%ぐらい
    ハシ:95%ぐらい
   ハサミ:96%ぐらい
    絵画:97%ぐらい
    書字:98%ぐらい

難しい動作ほど利き手がハッキリする。

 ・・・

以上、ここまでで前半4ページ分が終了です。

紙版の誌面では、余白を利用して、うまく詰めて紹介していました。
こちらでは、その辺がむずかしく、長くなってしまいました。

次回、後半の5~8ページ分を紹介します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [36]『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(9)LL10 1996(平成8)年 秋号(前半)」と題して、今回は全紹介です。

紙版の復刻版の10号まで来ましたが、いよいよゴール間近となりました。

このあと、本格的に活動が進むのかと思っていたのですが、仕事が忙しくなったり、ちょっとした病気になったり、で頓挫してしまいます。
やはり無理は良くないということだったのですね。
背伸びしていたようです。
何事もほどほどにしておくべきでした。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.04.15

私の読書論195-<町の本屋>論(9)『町の本屋は~』(飯田一史)より-レフティやすおの楽しい読書386号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【最新号・告知】

2025(令和7)年4月15日号(vol.18 no.6/No.386)
「私の読書論195-<町の本屋>論(9)
『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき(飯田一史)より」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年4月15日号(vol.18 no.6/No.386)
「私の読書論195-<町の本屋>論(9)
『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき(飯田一史)より」
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 昨年9月から散発的に綴ってきました、本屋さん減少を嘆く
 <元本屋の兄ちゃん>による<町の本屋>論の9回目となります。

【過去8回の<私の「町の本屋」論>】

(1)2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.15
私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-f7ab5e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a65f07da56cc868147fbd49d01c3c4bf

(2)2023(令和5)年10月15日号(No.352)
「私の読書論175-出版業界―または本と本屋のこと」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.10.15
私の読書論175-出版業界―または本と本屋のこと-楽しい読書352号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-d8d8ec.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7b9a38985fcfd574650e4c54eba355c1

(3)2023(令和5)年11月15日号(No.354)
「私の読書論176-読書週間に関する新聞記事から思ったこと」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.11.15
私の読書論176-読書週間に関する新聞記事から思ったこと
-楽しい読書354号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/11/post-7462e0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d498bde194e54d8e97a5d018d683f607

(4)2023(令和5)年12月15日号(No.356)
「私の読書論177-個性的な本屋の作り方を学ぶ
―『美しい本屋さんの間取り』から」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.12.15
私の読書論177-個性的な本屋の作り方を学ぶ―
『美しい本屋さんの間取り』-楽しい読書356号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/12/post-bf19e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/79bec3e02805048065d5ea41387e2c55

(参考書)
『美しい本屋さんの間取り』エクスナレッジ X-Knowledge 2022/12/29
(Amazonで見る)

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(5)2024(令和6)年5月15日号(vol.17 no.5/No.366)
「私の読書論184-がんばれ!町の本屋さん」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.5.15
私の読書論184-がんばれ!町の本屋さん-楽しい読書366号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/05/post-5a5bc2.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/8a1d7f9a2989edbd174487963269b52b

(6)2024(令和6)年9月15日号(vol.17 no.16/No.373)
「私の読書論188-<町の本屋>論(6)産経新聞8/12朝刊記事より」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.9.15
私の読書論188-<町の本屋>論(6)産経新聞8/12朝刊記事より-楽しい読書373号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/09/post-4d9a04.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7555773c70cfe4846b3dc367dbf5493c

(7)2024(令和6)年11月15日号(vol.17 no.20/No.377)
「私の読書論190-<町の本屋>論(7)産経新聞記事10/27朝刊記事
「書店が消えない処方箋」より」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.11.15
レフティやすおの楽しい読書377号-告知-
私の読書論190-<町の本屋>論(7)産経新聞10/27朝刊記事より
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/11/post-6b5805.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/22c8bc62482c03566e741b6b67100f12

(参考書)
『2028年 街から書店が消える日 ~本屋再生!識者30人からの
メッセージ~』小島俊一/著 プレジデント社 2024/5/22
(Amazonで見る)

241109matikara-shoten

(8)2024(令和6)年12月15日号(vol.17 no.22/No.379)
「私の読書論191-<町の本屋>論(8)産経新聞記事11/9産経WEST
「消えてゆく本屋さん~」より」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.12.15
レフティやすおの楽しい読書379号-告知-私の読書論191-
<町の本屋>論(8)産経新聞記事11/9産経WESTより
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/12/post-16f0d8.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/0bbde416e34436d0ef75c6e041731d82

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 - 私の読書論195 -

  ~ がんばれ!町の本屋さん <私の「町の本屋」論>9 ~

  『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき(飯田一史)より

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

4月17日発売予定の本
『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか 知られざる戦後書店抗争史』
 飯田 一史/著 平凡社新書
(Amazonで見る)

 

の「まえがき」の「web版」が公開されています。

今回はこれをネタに書いて見ましょう。

 ・・・

『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき(飯田一史)
https://note.com/ichiiida/n/n7dd7ed834dd1?sub_rt=share_pb

 

2025年3月28日 06:10
飯田一史

 

 ●『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』の概要

まずは、この本の概要を紹介しましょう。

《概要》
かつて本屋は「帰り道にふらっと寄る」場所だった。
だが、いつのまにか町から本屋の姿はなくなり、
「わざわざ行く」場所になってしまっている。
いったいいつから、どのようにして、本屋は消えていったのか?
本書では、出版社・取次・書店をめぐる取引関係、定価販売といった
出版流通の基本構造を整理した上で、戦後の書店が歩んだ闘争の歴史を
テーマごとにたどる。
公正取引委員会との攻防、郊外型複合書店からモール内大型書店への
移り変わり、鉄道会社系書店の登場、図書館での新刊書籍の貸出、
ネット書店の台頭――。
膨大なデータの分析からは、書店が直面してきた苦境と、
それに抗い続けた闘争の歴史が見えてくる。
「書店がつぶれていく」という問題の根幹を明らかにする一冊。

《目次》
まえがき
第一章 日本の新刊書店のビジネスモデル
 コラム1 本屋の動向と読書の動向は必ずしも一致しない
第二章 日本の出版流通の特徴
 コラム2 書店の注文・取引方法あれこれ
第三章 闘争する「町の本屋」――運賃負担・正味・新規参入者との戦い
 コラム3 見計らいの重視、予約と客注の軽視
第四章 本の定価販売をめぐる公正取引委員会との攻防
 コラム4 返品条件付販売への切り替えはいつ起こり、
  いつ委託ではないと認識されたのか
第五章 外商(外売)
 コラム5 取次からの請求への書店の入金率の変化と返品入帳問題
第六章 兼業書店
 コラム6 信認金制度
第七章 スタンドと鉄道会社系書店
 コラム7 出版物のPOSの精度を高めるのはなぜむずかしいのか
第八章 コンビニエンス・ストア
 コラム8 書籍の客注と新刊予約注文の歴史
第九章 書店の多店舗化・大型化
 コラム9 共同倉庫構想の挫折史
第十章 図書館、TRC(図書館流通センター)
 コラム10「送料無料」と景表法規制
第十一章 ネット書店
 コラム11 2020年代の「指定配本」の増加
終章
あとがき

 

新書版ながら、350ページ超というかなりゴツい本で、
出版業界における新刊書店の立場や、環境の変化や、
その衰退の歴史を追った本のようです。

元(町の)本屋の兄ちゃんとしては、気になる本です。

 

 ●私が「本屋の兄ちゃん」時代にやったこと

私が町の本屋さんで働いていたのは、1980年代の前半ぐらいでした。
もう40年近くになります。

しかし、その頃からすでに町の本屋の売り上げは、
いいお店でも前年並み。
たいていのお店は5%程度のダウンだったかと思います。

コンビニでの雑誌やコミック・文庫の販売が始まり、
また郊外型の大型書店やビデオ店と併存の書店が開業するようになり、
そういう従来とは異なるタイプの販売店が出てきたのです。

そのため既存の新刊書店、従来型のパパママストア的な町の本屋は、
非常に苦しい状況が始まったのでした。

その中で私がやっていたことは、
複数の高校の最寄り駅の駅前書店という文教地区の立地でしたので、
高校生のお客様も多く、学校の休みの時期を考慮して、
若向けの雑誌の入荷数の定期改正を行ったり、
オリジナルのフェアを3カ月程度の期間であの手この手と企画したり、
3年間とはいえ、高校生客を「育てる」ような姿勢でやっていました。

また、ライバル店がスーパー内にあり、うちは昼間の販売が弱い店で、
お子様向けや婦人客向けも限られた条件の中で、
特色を出すように工夫したものでした。

 

 ●『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき

まえがきの概要を――。

冒頭、今では本屋さんは「本好きが、わざわざ行く」場所になっている、
といいます。
昔は多くの人が毎日のように訪れていた場所だったのに。

なぜこうなったのか。

《戦後の新刊書店のうつりかわりをまとめた》本がないので、
日本の本屋さんのたどってきた道が分からない。
そこで、
 《本書で掘り下げたいのは「普通の書店」の商売はどのように
  成立し、変わり、また、どんな背景から競争に敗れ消えてきたのか》
について見ていこうといいます。

 《本書では「町の本屋」と書くときには中小規模の、
  多くは大規模チェーン展開をしていない、地元資本の書店を指す。》

一般的な「町の本屋」さんについての本だということですね。

そこで「書店経営」視点から、書店ビジネスの構造や時代の変化を描く。

 《理解しやすくするために、時系列順 (編年体) での記述ではなく、
  テーマ別に「町の本屋」とそれ以外のさまざまな勢力との攻防を軸に
  各章を分けた。》

 

 ●書店の実状と利益率の低さ

 ●なぜ欧米諸外国とは違い、日本では本の売り上げが減ったのか

 ●書店を取り巻く競争環境

 ●本書のタイトルについて

 ●書店業界の二つの面

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論195-<町の本屋>論(9)
『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき(飯田一史)より」
と題して、今回は冒頭と見出しのみの紹介です。

内容がweb版の「まえがき」の概要説明ですので、そちらを見ていただければ、ということですね。
今回は、特に私自身の考えや経験などを書いているというほどではありませんので。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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