2017.02.08

ロバート・F・ヤング新短篇集『時をとめた少女』2月23日発売

映画『君の名は』等の人気に乗ろうと言うのか、手持ちの時間SFの類の作品集を次々企画に乗せているようです。

昨年末には、梶尾真治新版短篇集『美亜へ贈る真珠〔新版〕』が《12月緊急刊行決定!》されました。

『美亜へ贈る真珠〔新版〕』梶尾真治/著 (ハヤカワ文庫JA)2016/12/20


今度は、ヤングの新短篇集『時をとめた少女』が登場します。

『時をとめた少女』ロバート・F・ヤング/著 (ハヤカワ文庫SF)2017/2/23
小尾 芙佐、深町 眞理子、山田 順子、岡部 宏之/訳

たぶん、以前『SFマガジン』に掲載されたもの――たとえば、ヤング特集号(S-Fマガジン 1972年06月号 (通巻160号)
)とか――を編集したものでしょう。
(多くの訳者名が出ているからです。)

ヤングは、〈ボーイ・ミーツ・ガール時間SF!〉とどこかの本の惹句にありましたが、まさにそう呼ぶのがふさわしい一連の小説群が日本では受けています。

三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』(メディアワークス文庫 2012/6/21)でとりあげられ、人気が再燃したようです。


その後、ながらく出版予定のみ掲げられていた傑作選とも言うべき短篇集『たんぽぽ娘』が出版されました。

さらに、短篇を長編に書き改めたものが2作出版されました。


『ビブリア―』で気になった人たちというのは、あの一作だけで、残念ながら他の作品には興味を抱かなかったようで、私のようなオールド・ファンが期待したほど評判にはなりませんでした。

それでも、今回こういう形で新たな短篇集が出版されるというのは、やれやれ(一安心)、という思いです。

楽しみです。


【ロバート・F・ヤング短篇集】
『たんぽぽ娘』伊藤典夫/編訳 (河出文庫)2015/1/7


『ジョナサンと宇宙クジラ』伊藤典夫/編訳 (ハヤカワ文庫SF)2006/10


『ピーナツバター作戦』桐山 芳男/訳 (青心社Seishinsha SF Series)2006/12  


【ロバート・F・ヤング長篇化作品】
『時が新しかったころ』中村 融/訳 (創元SF文庫)2014/3/22


『宰相の二番目の娘』山田 順子/訳 (創元SF文庫)2014/10/31


(他にも、ヤングの短篇が収録されているアンソロジーがいくつかあります。)

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2017.01.23

『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

先の記事↓で少し触れました、「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」及び、第1回配本、第II巻『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』について書いてみます。

2017.01.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む

「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」全5巻の刊行が始まりました。

インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション

第1回配本『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』石橋正孝訳・1月20日刊行


完訳ガンクラブ三部作世界初の合本。/石橋正孝訳・解説 月面に向けて打ち上げられた砲弾列車。巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガンクラブ三部作、世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻として刊行!

このシリーズは、《21世紀ヴェルヌ研究の世界的権威、石橋正孝によるヴェルヌ原文の校訂、最終ヴァージョンを確定した上での底本・定本化と全巻解説》という、A5版二段組み平均500ページ超の大部な“ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉”の傑作選です。

〈全巻構成〉
第I巻(第4回配本)ハテラス船長の航海と冒険 荒原邦博・荒原由紀子訳(18年春刊) 予価:5,500円 [新訳]
第II巻(第1回配本)地球から月へ 月を回って 上も下もなく 石橋正孝訳(17年1月刊) 特大巻:5,800円 [完訳 世界初の合本]
第III巻(第5回配本)エクトール・セルヴァダック 石橋正孝訳(18年秋刊) 予価:5,000円 [本邦初の完訳]
第IV巻(第2回配本)蒸気で動く家 荒原邦博・三枝大修訳(17年5月刊) 予価:5,500円 [本邦初の完訳]
第V巻(第3回配本)カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 新島進訳(17年11月刊) 予価4200円 [新訳、本邦初訳]

新訳(Iハテラス船長の航海と冒険、II地球から月へ、月を回って、上も下もなく、Vカルパチアの城)、初完訳(IIIエクトール・セルヴァダック(『彗星飛行』ジュニア版)、IV蒸気で動く家)、本邦初訳(Vヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密)という内容。
ほぼ初訳が後ろの三作。

私が今一番読みたいのは、「蒸気で動く家」です。
次に、宇宙ものらしい「エクトール・セルヴァダック」。

挿絵も豊富ということなので、その点も楽しみなコレクションです。

ただ、もう少し低価格になれば、ということと、もういくつか追加を期待したい、というところです。

今までに紹介された作品数は、〈驚異の旅〉全体の三分の二ぐらいではないでしょうか。
まだまだおもしろい作品があるのではないか、という気がするのですけれど。

ヴェルヌの作品ならなんでもいい、というつもりはありませんけれど、知らない作家の○○程度のできの作品よりは、という気持ちです。

 ・・・

第一回配本の『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』の三作は、砲弾による月探検二部作とその後のプロジェクト。
旧訳題名『月世界旅行』集英社コンパクトブックス ヴェルヌ全集、『月世界探検』ヴェルヌ全集(『月世界へ行く』創元SF文庫)、『地軸変更計画』創元SF文庫 の新完訳の世界初の合本の特大巻だそうです。

正直迷ってしまいますね。

第一回なので、既訳のものよりは、という感じでいます。
本邦初訳から始まるほうが嬉しさは倍増する、と思えるのですが。

まあ、文句ばっかりではいけません。
素直に喜びましょう。

手に取るのが楽しみです。

そして、これからも企画が継続することを祈りましょう!


*『お茶でっせ』記事:
【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む
・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売
・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

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2016.07.25

角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売

以前から情報は入手していましたが、発売されましたので書いておきます。

私の大好きな作家のひとりヴェルヌの『海底二万里』の新訳が角川文庫から出ました。


『海底二万里 (上・下)』ジュール・ヴェルヌ/著 redjuice/イラスト 渋谷 豊/訳 角川文庫 2016/7/23


従来角川文庫からは花輪莞爾氏の訳本が出ていました。
(当初は一巻本、のちに上下二巻本に)
原書挿絵が何枚入ったもの―昔の印刷なので、解像度が悪かった―で、私が若い頃に読んだものでした。

少なくとも40年はたっているはずで、新訳版の登場もやむを得ないところです。

巻末の渋谷豊氏の訳者あとがきにも、古典の名作の叢書シリーズに入ったことが書かれていましたように、本国フランスでも評価されている作品であり、老舗文庫の一冊として収録されていて当然というものです。

原書挿絵は今回は入っていません。
この辺はちょっとさびしい印象があります。


しかし、映画化なり何なりの理由があるのでしょうけれど、ヴェルヌと言えば、『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』というのはいかがでしょうか。
日本ではこれら三大名作にプラス『十五少年漂流記(二年間の休暇)』がありますが。

私自身、この作品は、先に上げた角川文庫版、集英社文庫〈ジュール・ヴェルヌ・コレクション〉版、岩波文庫版二巻本、新潮文庫版二巻本の4種持っています。

Jvkaiteinimanri

Kaiteinimanri

(今まで出た中では、原著挿絵をすべて収録している点では、岩波文庫・新潮文庫版がいい。
集英社と角川の新訳版は、挿絵ゼロ。訳注の充実ぶりでは、新潮文庫版。)

いかに名作でも、そんなに数はいりません。
(誰も買うてなんてゆうてへんて? ホンマや!)

上記の三大名作+ワンの他にもこれらほどの名作ではないけれど、現代でも十分読むに堪える作品があります。

角川文庫さんで言えば、昔出していた『悪魔の発明』(他社からも出ていますが、併載の「氷海越冬譚」は〈驚異の旅〉以前の冒険ものの傑作中編でした。)や、『地の果ての燈台』(これは優れた冒険小説です。再刊して欲しい一番手かも。)といった作品を再刊して欲しいですね。
Tinohatenotoudai


ヴェルヌの大ファンとしましては、いい加減ヴェルヌのこれら名作以外の作品を発掘出版していただきたいものです。

文遊社さんの復刊シリーズも楽しかったので、復刊でもいいんです。

出版社各社さま、よろしくお願い致します。


*『お茶でっせ』【ジュール・ヴェルヌ】の記事:

【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版

【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

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2015.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに―「まれびとこぞりて」コニー・ウィリス

 ―第164号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2015(平成27)年11月30日号(No.164)-151130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『まれびとこぞりて』コニー・ウィリス」

本誌では、例年通りこの季節恒例の【クリスマスストーリーをあなたに】と題して、クリスマスにまつわる素敵なお話を紹介しています。
今年も昨年に引き続き、アメリカの女流SF作家コニー・ウィリスのお得意のクリスマス・ストーリーを紹介しています。

いわゆるラブコメです。

タイトルの“まれびと(稀人)”とは、異星人=エイリアンのこと。

(異星人とのファースト・コンタクト)+(クリスマス・キャロル)=(?)
が、この作品のテーマとなっています。

はたして、いかなる展開が待っているのでしょうか。

 ・・・

詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』


*本誌で紹介した「まれびとこぞりて」収録短編集:
『混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)』コニー・ウィリス 大森望訳 ハヤカワ文庫SF1938 2014.1.25


*コニー・ウィリス短編傑作選第二弾:
『空襲警報 (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス) 』コニー・ウィリス ハヤカワ文庫SF


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2015.08.10

ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売

新潮社から8月31日に発売予定に上がっています。

『十五少年漂流記』ジュール・ヴェルヌ 椎名誠、渡辺葉・訳
新潮モダン・クラシックス 8月31日発売/1944円


 ●完訳版?

現在、新潮文庫から出ている『十五少年漂流記』は300ページ足らずで、ダイジェスト版の翻訳です。

今回の訳書は、480ページということで、どうやら完訳版のようです。
ちなみに、椎名誠、渡辺葉・父娘共訳というのも、話題の一つでしょう。

ダイジェスト版でも、お話そのものは十分楽しめます。
そうは言っても、やはり著者の書いたそのままのものというのでしょうか、オリジナルのままの小説を読むのが本道ではないか、という気がします。

冗長な部分をカットして、現代風に読みやすくすることが、間違いとは言い切れません。
ただそのためには、それにふさわしい人物の手によってダイジェストされなければ、本質を外したものになってしまいかねません。
その辺の判断も難しいものです。

それなら始めから完訳にしておけば無難でしょう。
さほど長すぎないのなら、そのままでいいと思います。

たとえば、文庫本で全8巻『モンテクリスト伯』を一巻にダイジェストするということは、人を得れば、間違いではないと思います。
それでも完訳を読むほうが正道だろうという気はしますが。

それに比べれば、本書などはダイジェストするほどの意味もないでしょう。
これを小学校低学年用に、というのなら別ですが。

ということで、新訳本に少し期待です。


 ●三大名作+ワン以外のものを!

それにしても、ヴェルヌの本を出してくれるのは、嬉しいことですし、先ほども書いたように、完訳で出すというのならそれもいいことです。
しかし、ヴェルヌ・ファンとしては、三大名作+ワン>(『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』+『十五少年漂流記』)の新訳はもういいこれぐらいで十分です。
この十何年間に岩波文庫、光文社古典新訳文庫、新潮文庫等で原著挿絵入りの新訳本が出版されました。

創元SF文庫で歿後100年記念で、『月世界へ行く』の新版、『地軸変更計画』を復刊しました。

文遊社『永遠のアダム』『ジャンガダ』『黒いダイヤモンド』『緑の光線』といった作品を復刊してくれました。
新訳短編を併載したり一部改訳が施されたり等もあり、嬉しい企画でした。

復刊もいいのですけれど、できれば新訳で出していただきたいものです。
特に〈ヴェルヌ全集〉はかなり昔の翻訳ですので。


しかししかしです。
ヴェルヌには未訳の、本邦未紹介の作品がまだまだたくさんあります。

もちろん、三大名作ほどの内容のものではないかもしれません。
とはいえ、それらもヴェルヌの作品であり、実際に三大名作以外の作品を読んだ経験から言っても、それなりに楽しめる作品があるはずです。

全部とは言いません。
いくつかおもしろそうな作品を見繕って紹介していただけないものでしょうか。

小説には、時代を写す鏡の役割もあります。
その当時の人々の生活や風俗や思想、見方・考え方等が反映されているものです。
それらを知る意味でも役に立つものです。

ぜひ、ヴェルヌの〈新作〉紹介を!


*参照:メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2009(平成21)年7月31日号(No.22)-090731-『十五少年漂流記』夏の文庫100冊から


*【ヴェルヌの小説以外の最近出版された本】:
『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝訳 水声社 (2014/05)
―本邦初のヴェルヌの評伝。力作です。ヴェルヌの伝記のなかで最も信頼に足ると言われるものです。
 当時の社会状況を知っていれば、また彼の作品をより多く読んでいれば、楽しさも増します。

『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル』石橋正孝 左右社 (2013/3/25)
―これも力作。元は学術論文ということで、ちょっと読みづらく感じたり、ヴェルヌの原稿をまな板に載せているため、それらを(邦訳がない、もしくは手に入りにくいため)未読の人には分かりにくかったりします。
 小説家ヴェルヌと編集者エッツェル、二人のジュールのあいだを巡る出版の秘密をめぐる“冒険”です。

『ジュール・ヴェルヌの世紀―科学・冒険・“驚異の旅”』東洋書林 (2009/03)
―これは見て楽しい本です。図版で見るヴェルヌの世界といってもいいかもしれません。

『文明の帝国 ジュール・ヴェルヌとフランス帝国主義文化』杉本淑彦 山川出版社(1995)
―ヴェルヌの小説の表現を通して当時のフランス帝国主義を考えるという論文。
 巻末100ページを費やし、ヴェルヌの〈驚異の旅〉シリーズ全作品及び初期作品のあらすじを紹介。

*『お茶でっせ』記事:
文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

*参照:・『レフティやすおの左組通信』
「ジュール・ヴェルヌ Jules Verne コレクション」

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2014.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに~『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス

 ―第140号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2014(平成26)年11月30日号(No.140)-141130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス」

本誌では、古典的なクリスマス風景を扱った古典的なストーリーを紹介しました。
ぜひ、読んでほしいものです。

日本では、クリスマス・ストーリーといってもまだまだ受け入れてもらえていないように感じます。
しかし、ディケンズ『クリスマス・キャロル』以来、欧米の作家は必ずといっていいほど、このクリスマス・ストーリーを書くと言われています。
実際に、多くの作家たちが優れたクリスマス・ストーリーを発表してきました。

実は日本でも過去に幾つものクリスマス・ストーリーが翻訳紹介されてきました。
ほぼ毎年のように、といってもいいかもしれませんね。


私の記憶に残るものとしては(以前も紹介していますが)―

まずは、三冊の【クリスマス・ストーリー・アンソロジー】

『贈り物 クリスマス・ストーリー集 1』レイ・ブラッドベリ〔ほか〕/著 長島良三/編 角川文庫(1978)
―O・ヘンリーの名作「三人の賢者の贈り物」、アンデルセン「マッチ売りの少女」他、ブラッドベリのSFやモーパッサン、ラニアンなどのクリスマスにまつわる小説を集めた短編集第一弾。
『クリスマスの悲劇 クリスマス・ストーリー集 2』アガサ・クリスティー〔ほか〕/著 長島良三/編 角川文庫(1978)
 アンデルセン「モミの木」他、ストウ(夫人)、ドストエフスキー、ゴーリキーら文豪、クリスティーのミス・マープルものなどのクリスマスにまつわる小説を集めた短編集第二弾。

『クリスマス・ファンタジー』風間賢二/編 ちくま文庫(1992)
―スクルージの原型を描く「墓掘り男を盗み去った鬼どもの話」ディケンズ、スクルージの後日談「新クリスマス・キャロル」マッケン始め、上記二冊にも収められている、フィニイのファンタジー短編風の次元を越えた出会いを描く名編「クリスマスの出会い」ティンパリー、サンタクロース誕生秘話「道」クインなど。


【個人短編集】としては、

『ベツレヘムの星』アガサ・クリスティー/著 中村能三/訳 ハヤカワ文庫(2003)
―人気ミステリ作家の手になるクリスマスをテーマにした小説と詩からなる宝石箱のような小さな本。
『みじかい3つのクリスマス物語』L・M・オルコット/作 清水奈緒子/訳 小さな出版社/発行 星雲社/発売(2000)
―『若草物語』の作者による貧しくとも毅然と生きる少女たちのクリスマスを描くクリスマス物語三編(もの静かな小さな娘、ティリーのクリスマス、ローザの物語)。

『クリスマスの思い出』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 山本容子/銅版画 文藝春秋(1990)
『あるクリスマス』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 山本容子/銅版画 文藝春秋(1989)
『誕生日の子供たち』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 文藝春秋(2002)
―クリスマスの思い出を語る上記二短編を含む子供のイノセントをテーマにした短編集。二作は互いに正反対の状況を描いた自伝的作品で、「―思い出」は少年に与えられた贈り物、「ある―」は逆に少年が与えた贈り物の思い出話といえる抒情的名編。

『サンタクロースにインタビュー 大人のための子どもの話』エーリヒ・ケストナー/著 フランツ・ヨーゼフ・ゲールツ、ハンス・サルコヴィッツ/編 泉千穂子/訳 ランダムハウス講談社(2007)
―『飛ぶ教室』『エミールと探偵たち』の著者の初期の辛辣な短編等をまとめたもの。表題作他、数編のクリスマスものを含む。冒頭の「また過ぎていくこと」はケストナー版「賢者の贈り物」。


【長編小説】としては、

『クリスマスの木』ジュリー・サラモン/著 ジル・ウェーバー/画 新潮社(1996)、『クリスマスツリー』新潮文庫(改題)
―ニューヨーク、ロックフェラー・センターを飾るクリスマスツリーとなった、元孤児の修道院シスターの幼友達の木「トゥリー」にまつわる、悲しくも美しいシスターと人々との愛の交流物語。
『クリスマス・ボックス』リチャード・P・エヴァンズ/著 笹野洋子/訳 講談社(1995) 講談社文庫版(2005)
―老婦人の住む館に引っ越してきた「わたし」たち若夫婦は、屋根裏で小箱を見つけるが…。二度と巡り来ることのない子供時代を親子で共にすごすことこそが、一番大切な贈り物なのだ!

ミステリの【アンソロジー】は、

『クリスマス12のミステリー』アイザック・アシモフ/編、 池 央耿/訳 (新潮文庫 1985/10)
『サンタクロースにご用心―クリスマス13の物語』シャーロット・マクラウド/編 片岡しのぶ/訳 (扶桑社ミステリー 1991/11)

クリスマス・ミステリの【長編小説】としては、

『小さな星の奇蹟』メアリ・H・クラーク/著 宇佐川晶子/訳 新潮文庫(1999)
―成功目前の新進ヴァイオリニストが7年前のクリスマスに教会の前に捨てた赤ちゃんは偶然泥棒が連れて去り…。サスペンスの女王といわれたミステリ作家のクリスマスものの感動ミステリ。
『追跡のクリスマスイヴ』メアリ・H・クラーク/著 深町眞理子/訳 新潮文庫(1996 原著1995)
―クリスマスイヴ、7歳の少年は、病気の父に渡すお祖父ちゃんの命を救った聖クリストファーのメダルを取り戻そうとママの財布を猫ババした女を追うが、そこには脱獄した殺人犯の弟が…。クリスマス前夜、緊張の追跡劇の結末は、感動のフィナーレへ!
  <「子供はね、おかあさんと離れてちゃいけないんだよ」>91p
  <信じることは―たとえ聖クリストファーのメダルのようなばかばかしいものでも―信じることは、美しいことだ。>106p
『ポアロのクリスマス』アガサ・クリスティー/著 村上啓夫/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003)
―ご存知名探偵ポアロもの。クリスマス・イヴの殺人事件。



もちろん、この他にも色々あると思います。

また、長編小説の中の一章に、印象的なクリスマスの思い出が語られている、というケースもありますね。

たとえば、トルストイ『戦争と平和』のなかにも、人生の楽しい場面の一つとして、クリスマスの一夜を描いて“平和”のシーンを表現しています。

第二巻第四部(岩波文庫版・第二部第四篇)12月のロストフ一家のクリスマスの場面です。
ナターシャというヒロインの魅力もいっぱいあふれていますし、トロイカで疾走するシーンにしろ、クリスマスで訪問した先の老人も非常にいい感じの人物であり、この交流は非常に心を打ちます。

*参照:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月


これからも毎年一作ですが、愛と善意と寛容と赦しの季節を描いた優れた小説を紹介してゆく予定です。
お楽しみに!

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詳細は本誌で!

*本誌で紹介した作品を収録した本:
『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス/著 大森望/編訳 早川書房・プラチナ・ファンタジイ(2008.9.25)


*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
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2014.07.19

文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売

いやあ、またまたヴェルヌの復刊です。

『緑の光線』ジュール・ヴェルヌ 文遊社(2014.7.30)


今回は、“異色の恋物語”『緑の光線』(文遊社のページ)

水平線に沈む夕陽が最後に放つ、翡翠のような光を探して、島から島へ

パシフィカ版<海と空の大ロマン>の一冊『北海の越冬/緑の光線』(1979)から、中村三郎訳。
いつも通り原著の挿絵―レオン・ベネット (Leon Benett)入り。


『緑の光線』は、1883年刊。
スコットランドの伝説で、<緑の光線>を見ると人の虚実と見抜く力と、幸福を得るという。
ヴェルヌには珍しいと言われる女性を主人公にした<緑の光線>を目撃しようと旅行する恋物語。
先に復刊された『黒いダイヤモンド』でも紹介された地スコットランドがまた登場するようです。

*『お茶でっせ』2014.5.4
文遊社版ジュール・ヴェルヌ『黒いダイヤモンド』を読む

他に、小高美保訳の“幻の初期短編”『メキシコの悲劇』を併録。(こちらもJules-Descartes Feratによるオリジナル挿画入り)
これが、今回の復刊のもう一つの目玉でしょう。

『メキシコの悲劇』は、1851年の作品。
元の題名は『メキシコ海軍最初の艦船』、1876年単行本『ミハイル・ストロゴフ』に改題加筆して収録された。
スペイン海軍の二隻の軍艦で反乱が起き、艦長が殺される。アメリカとテキサス、カリフォルニアの領有で争うメキシコ政府に売ろうというのだ…。

のちの、独立運動を支援する『海底二万里』のネモ船長にも通じるような面が見られるようです。

(あらすじや書誌情報は、杉本淑彦『文明の帝国 ジュール・ヴェルヌとフランス帝国主義文化』山川出版社 による)

 ・・・

もう一つ、ヴェルヌの出版物について。

『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝訳


5月に出ています。

日本初、やっと出たヴェルヌ伝として期待は大きいのですが、お値段も格別で一万円!と破格。

こちらについてはまたの機会に―。

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2014.06.15

人生の教科書『HMM』+『SFマガジン』も―私の読書論57おススメ古典4

 ―第129号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2014(平成26)年6月15日号(No.129)-140615-
「私の読書論-57-「私のおススメの古典から」(4)
-人生の教科書-『ミステリ・マガジン』(2)コラム編」

【人生のあれこれはHMMが教えてくれた『ミステリ・マガジン』(2)】

本誌では、私が高校2年の夏休みから愛読している『ミステリ・マガジン』の思い出から、今回はコラム編を綴っています。

思えば『HMM』ほどではないけれど、同時期に『SFマガジン』も時折読んでいました。定期購読はしていなかったのですけれど、姉妹誌という感じで同日に発売される『SFM』ものぞいていました。

この『SFM』も今回『HMM』同様創刊700号に到達しました。
おめでとうございます。
創刊は遅かったのですが、増刊号を多数出し、追いついてしまったようです。

この『SFM』では、二人の作家に出会いました。
私の人生に大きな足跡を残す作家でもあります。

一人目は、ロバート・F・ヤング
最近では、日本人作家の三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズで、ヤングの代表作とも目される短編「たんぽぽ娘」に興味を持たれた方が増え、注目されているようです。

私が初めて『SFM』で出会ったのは、「魔法の窓」(『SFマガジン』1973年6月号、のちに『ジョナサンと宇宙クジラ』収録)。
もちろんヤング得意のロマンティックSF短編です。

この作品でヤングを好きになり、以来、掲載される作品を探しました。
のちに日本独自の作品集『ジョナサンと宇宙クジラ』ハヤカワ文庫SF(1977/6)と『ピーナツバター作戦』桐山芳男/訳 青心社
(1983)を手に入れました。
集英社文庫コバルトシリーズのアンソロジー<海外ロマンチックSF傑作選>三巻も。


もう一人の作家が、ゼナ・ヘンダースン(ヘンダーソン)です。
「されば荒野に水わきいで…」(SFマガジン 1973年10月号)が最初だったと記憶しています。
これを読んだ直後だったと思うのですが、NHKでアメリカ製だろうと思われるドラマか映画が放送されました。

これは、<ピープル>シリーズと呼ばれる地球に不時着して隠れて生きる異星人たちの物語の連作です。
のちに『果てしなき旅路』『血は異ならず』の二冊にまとめられました。

繊細な精神の持ち主が読むのにふさわしい作品だと思っています。

赤木かん子編『こころの傷を読み解くための800冊の本 総解説』自由国民社 2001.6
《「アダルト・チルドレン(AC)――子ども時代に必要な愛情と安らぎを得られずに育ち、傷ついた心を抱え、癒されぬまま大人になっている人たち」をテーマにしたブックガイド。》


にも登場する一冊で、この説明文を読んだ時、初めて自分がどういう意味合いでこの本を好んでいたのかが理解できました。

この人の短編に「なんでも箱」という有名な作品があり、色々なアンソロジーに収録されています(上記コバルトシリーズのアンソロジーにも収録)。
他の短編もなかなかのもので作品集『悪魔はぼくのペット』『ページをめくれば』の二冊出ています。


この二人の作家は、長編小説が優位の時代にあって、短編を得意とする報いられない作家たちです。
でも、『HMM』で知ったフィニイと並んで、私の<超お気に入り>の作家たちです。

*『レフティやすおのお茶でっせ』記事:2013.05.27
たんぽぽ娘 (奇想コレクション)ロバート・F・ヤングを買う
2013.03.25
ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』5月28日発売(予定)!

【河出書房新社 <奇想コレクション>】
『たんぽぽ娘』ロバート・F・ヤング/著 伊藤典夫/訳
『ページをめくれば』ゼナ・ヘンダースン/著 安野玲、山田順子/訳
 

【ハヤカワ文庫SF】
『ジョナサンと宇宙クジラ』ロバート・F・ヤング 伊藤典夫/訳 
『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン/著 深町真理子/訳
 


【創刊700号記念特大号】
『S-Fマガジン』2014年 7月号

【ハヤカワ文庫SF 創刊700号記念アンソロジー】
『SFマガジン700【海外篇】』山岸真/編 アーサー・C・クラーク他/著 2014/5/23
『SFマガジン700【国内篇】』大森望/編 手塚治虫他/著 2014/5/23
 


 ・・・

詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

*『レフティやすおのお茶でっせ』記事:
2014.5.7
『ミステリマガジン』2014年6月号創刊700号と思い出のコラム
2014.5.26
私の投書が『ミステリ・マガジン』読者欄に掲載されました

◆創刊700号記念特大号
『ミステリマガジン』2014年6月号(700号)
◆投書掲載号
『ミステリマガジン』2014年7月号(701号)


◆青木雨彦・片岡義男のコラム関連本
『夜間飛行―ミステリについての独断と偏見』青木雨彦/著 講談社文庫 1981/5
『課外授業 日本推理作家協会賞受賞作全集 (35) 』青木雨彦/著 双葉社 1996/11
―ミステリにおける男と女についての独断と偏見による研究
 


『マッド傑作選』小野耕世、マッド・アマノ、片岡義男/監修 TBSブリタニカ
・I 1979/12/5 ・II 1980/4/25
―アメリカのパロディ漫画雑誌「MAD」の本
 

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2014.05.04

文遊社版ジュール・ヴェルヌ『黒いダイヤモンド』を読む

昨年末に発売された文遊社からのヴェルヌ復刊シリーズ第三弾。
短編集『永遠のアダム』(表題作他「空中の悲劇」「マルティン・パス」「老時計師ザカリウス」の全4編)、アマゾンを舞台にした暗号解読もの長編『ジャンガダ』に続くもの。

『黒いダイヤモンド』ジュール・ヴェルヌ/著 文遊社 (2013/12/30)

『永遠のアダム』 ジュール・ヴェルヌ/著 江口清/訳 文遊社(2013/6/3)
『ジャンガダ』ジュール・ヴェルヌ/著 レオン・ベネット/イラスト 安東 次男/訳 文遊社(2013/7/27)


今回の特徴は、次の二点です。

(1)ジュール・フェラーによるオリジナル挿画40点以上を収録
(2)特別寄稿エッセイ 小野耕世「地底世界の怪人たち」

先の二冊同様、原著の挿絵を多数収録した美麗な本。
エッセイは、若いファンには耳新しい面も多々ある昔語りが中心で、時代を共に生きてきた人たちには懐かしい話かも。ただ新規な話題性に欠けるところがあり、本書への言及も薄く、もう一押しというところか。

元本は、集英社コンパクトブックス版<ヴェルヌ全集>第19巻『黒いダイヤモンド』新庄嘉章/訳(当時の訳者あとがきを転載)。

ストーリーは―
10年前に廃鉱になったスコットランドの炭鉱の坑道内に居残った老坑夫一家の父サイモン・フォードから手紙を受け取った技師ジェームズ・スターは、きっと新炭鉱を発見したものと期待し招待を受ける。
しかし、直後に訪問をやめるようにというと無署名の手紙が舞い込んだり、坑道を移動中に石が飛んできたり、不審な事件が起きる。
あげくの果てに、スターとハリーおよび妻マッジ、息子ハリーのフォード一家総出で新炭鉱を発見するも入口をふさがれ、死の危機に陥る。
そのとき、ハリーの友人で同じく元炭鉱夫のジャック・ライアンが彼らの様子を窺いにやって来て、謎の人物の誘導により、彼らを発見する。
三年がたち、新鉱山の大洞窟内にスター始めフォード一家やジャックといった炭鉱夫たちが住みつき、炭鉱は成功を収めている。
しかし、成功とは裏腹に不審な事故が続く。
彼らの胸に去来する不安は、彼らの繁栄を阻もうとする悪意を持つ謎の人物の存在であった…。

 ・・・

あらすじだけ聞けば、さほど目新しいものは感じられないかもしれません。

正直『ジャンガダ』に比べても見劣りする感じはあります。
あちらは、暗号解読の面白さとともに、ハラハラドキドキ度が上でした。

今回は、謎の提出はあってもハラハラ度が上がってきません。
ラストで少し盛り上がるものの、平凡と言えば平凡です。
しかし、石炭のできるまでの科学啓蒙的解説と言い、スコットランド旅行での土地柄の案内描写といったヴェルヌらしい描写と、活劇の壺を押さえた展開などいかにも手慣れた作法で読ませます。

私が三大名作と呼んでいる『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』のような派手さや意外性、まさに<驚異の旅>と呼ぶにふさわしい舞台とストーリー展開に比べれば、こじんまりとしたB級エンターテインメントに思えるかもしれません。
それでも、良くも悪くも十分に“ジュール・ヴェルヌ、ジュール・ヴェルヌした”小説で、三大名作を除くと旧作が手に入りにくく、未訳作品の新刊が出ない現状では、ファンにはこたえられない一編でしょう。

せめてこの復刊ブーム?が続いてくれることを期待しています。そして、あわよくば未訳の新刊が、新潮文庫版『海底二万里』レベル(文庫で十分です!)の内容と手に入れやすい価格帯で出版されることを期待してやみません。


【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

*参照:
・『レフティやすおの左組通信』
「ジュール・ヴェルヌ Jules Verne コレクション」

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2014.01.31

2013年読んだ本・買った本から(2)娯楽編『時の地図』

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(画像:『時の地図 上下』フェリクス・J・パルマ)

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(画像:『宙の地図 上下』フェリクス・J・パルマ)

―第121号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2014(平成26)年1月31日号(No.121)-140131-  
“今年(2013年)読んだ本・買った本”から (2)娯楽編『時の地図』 


古典の勉強が進まず、場つなぎの第二弾。

「“今年(2013年)読んだ本・買った本”から (2)娯楽編」として『時の地図』を紹介しています。

・『時の地図 上下』フェリクス・J・パルマ/著 宮崎真紀/訳 ハヤカワ文庫 NV 2010/10/8
 

詳しくは本誌をお読みいただくとして、この続編である『宙の地図』は昨年初めに買っているのですが、実はまだ未読で、これをいつか読んでみたいと思っています。
なかなか読む機会がなくて、困っています。

『時の地図』も、きっと出たときに見ているはずなんのですが、なぜ買わなかったか、読まなかったか?

それは私が、ウェルズ派ではなく、ヴェルヌ派だからでしょう。

ヴェルヌは私の一番好きな作家です。
昔もそして今も。
最近、復刊がいろいろ出ていますが、ボチボチ読んでいます。

一方、ウェルズも一応主だった長編タイムトラベルもの『タイムマシン』、動物を人間に“進化”させる怪物もの『モロー博士の島』、火星人によるロンドン襲来を描く『宇宙戦争』、人体が透明になる『透明人間』、その他「くぐり戸」「魔法の店」等の短編をいくつか読んでいます。

ヴェルヌは、その当時の科学技術の延長線上に想像力を働かせた作品を書いています。
それに対してウェルズは、思弁的、観念的な想像力による作品を書いています。

とはいえ、短編では、「くぐり戸」「魔法の店」を先ほど挙げましたが、これらの作品のように、ファンタジー系のものも書いています。
この二つは特に私の好きなもので、そういう意味では決して嫌いな作家ではないのです。

でも、どうしてもヴェルヌのほうが好きだし、ウェルズは…という感じで、そのせいで、この本も手に取らなかったのでしょう。

やっぱり損しましたね。
好き嫌いは辞めた方がいいですね。
それと食わず嫌い。

この『時の地図』という作品も、いつも言うように、古典や先立つ作品を継いでその延長線上に立つものになっています。

文学のみならず、芸術というものは先人の作ってきた歴史、伝統につながるものなのです。

だから、古典を食わず嫌いしたり、毛嫌いせず、今自分の読める範囲で読み継いで欲しいと思います。
決して損はない、と保証します。

新しいものを読むのもいいけれど、本当の意味でそれらを味わうためにも、古典を知っておくということは重要なのです。


・『宙の地図 上下』フェリクス・J・パルマ/著 宮崎真紀/訳 ハヤカワ文庫NV 2012/11/22
 

詳細は本誌で!


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(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

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