2017.06.23

ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』7月31日発売予定

当初5月末発売という予定より刊行が遅れている【ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション】のIV巻『蒸気で動く家』でしたが、やっと発売予定日が決まったようです。

INSCRIPT『蒸気で動く家』のサイト

ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション 第IV巻(第2回配本)
蒸気で動く家 ─北インド横断の旅─

荒原邦博・三枝大修訳[完訳]

2017年7月31日書店発売予定 
定価:5,200円+税
A5判丸背上製 かがり綴カバー装
本文9ポ二段組 508頁
挿画:107葉
ISBN978-4-900997-71-4
装幀:間村俊一
カバー装画:堀江栞
挿画:レオン・ベネット

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(画像:出版社サイトより)

本邦初の完訳紹介というこの作品は、いくつもの評論等で名のみ有名でした。
今回のコレクションの中でも目玉の一つと期待していた作品だけに、発売日が待たれます。

ヴェルヌ作品では、楽しみの一つである原書の挿絵も107枚収録ということで、大いに楽しめる一冊になりそうです。

サイト紹介文より――

ヴェルヌのテクストは、「蒸気で動く家」(スチーム・ハウス)という機械を物語の明示的な動因としながらも、その乗り物が「ヒマラヤ」で停車し、蒸気機関の推進力が一時的に断たれて単なる「ハウス」と化すと、今度は「ヒマラヤ」そのものを文学機械として顕在化させる。そして、『蒸気で動く家』という作品は、一見すると『八十日間世界一周』におけるインド横断の発展であるように見えながら、実際に生じているのはその逆の事態なのだ。『蒸気で動く家』という「機械」が、それまでの〈驚異の旅〉連作を引き受け直し、「ヒマラヤ」との「組み合わせ」によって全体の意味づけを変質させ、またそのことによって〈驚異の旅〉というプログラムがプログラムであったことをも事後的に証明する──すなわちシリーズの延命を可能にするのである。この操作の中にこそ小説家としてのヴェルヌの天才があり、『蒸気で動く家』はよく知られたヴェルヌ作品とは似ても似つかないものでありながら、紛れもない傑作としてつねに新たな読者の前に開かれているのである。(「訳者あとがき」より)

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2017.04.07

『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』を読む

2017.1.23
『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

で紹介しました、この本を読みました。

第1回配本『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』石橋正孝訳・1月20日刊行


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(画像:本書他、既訳本3点)


完訳ガンクラブ三部作世界初の合本。/石橋正孝訳・解説 月面に向けて打ち上げられた砲弾列車。巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガンクラブ三部作、世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻として刊行!


地球から月へ ──九七時間二〇分の直行路──
 初出:〈ジュルナル・デ・デバ〉紙、1865年9月14日から10月14日まで連載、同年エッツェル社より単行本刊行
 挿絵:アンリ・ド・モントー、ジョルジュ・ルー(多色刷、1897年版に追加)
月を回って
 初出:〈ジュルナル・デ・デバ〉紙、1869年11月4日から12月8日まで連載、翌年1月エッツェル社より単行本刊行
 挿絵:エミール・バイヤール、アルフォンス・ド・ヌヴィル
上も下もなく 
 1889年11月書き下ろし、エッツェル社より単行本刊行
 挿絵:ジョルジュ・ルー
 補遺「ごく少数の人だけが知ればよいこと」A・パドゥロー(椎名建仁訳)
訳注/解説「〈驚異の旅〉の成立とガン・クラブ三部作」石橋正孝

新完訳の世界初の三部作合本の特大巻です。

巻末解説も〈驚異の旅〉コレクションの第一回配本らしく、このシリーズについての解説を兼ねています。
今後の配本を楽しむためにも、初めに読んでおいたほうがいいでしょう。


 ●月世界旅行二部作『地球から月へ』『月を回って』

作品については、もうかなり以前に読んで以来ということで、初めてではないにしても、実質初めてに近く楽しめました。

ただ以前読んだ当時は、特に『月を回って』に関しては、最初に読んだのが高校生ぐらいで、既にアポロ計画もまっ最中で、宇宙に対する知識もこの小説の時代とは比較にならないわけで、ちょっとバカにしてしまった記憶があります。
たとえば、発射時、大気圏をあっという間に通り過ぎるので摩擦熱などは問題にならないとか、宇宙空間で窓を開けて不要になったものを外に捨てる時も素早くすればいいとか、太陽に照らされたときの熱や逆に影に入ったときの冷却の具合など、ホントに大丈夫? という感じ。


でも今回読みますと、当時の最新の情報を詰め込んで、その上でイマジネーションの限りを尽くしていて、好感を持てます。

砲弾飛翔体は、当時の科学技術の最先端であるアルミニウムを使っているとか。
様々な情報を網羅するところは、いつものヴェルヌの十八番(オハコ)とするところですけれど。

飛翔体の大きさは、地上から望遠鏡で確認できる大きさという設定だったのですね。
そこで、あの大きさの砲になるわけです。


第一部『地球から月へ』の部分は、ミラー『詳注版 月世界旅行』を片手に読んだので、その辺の事情もわかり楽しめました。

第二部『月を回って』は、昔読んだ時も感じたのですけれど、「講釈師見てきたような嘘をつき」じゃないですけれど、よくこれほどに鮮やかに描けるものだ、と感心しました。
先にも書きましたように、当時の情報を巧みに織り込みながら、見事に想像力の翼を広げています。

フロリダから打ち上げ、太平洋上に帰還するというルートや、メンバーが三人だったり、共通する部分が幾つもあり、似せたのかそれともそれが当然の帰結だったのか、予言していたことになります。


ヴェルヌの小説といえば、科学情報を生かして、ひたすら冒険や探検に終始する男たちを描いた物語というイメージです。

しかし今回は、政治的社会的な風刺家としての面も具えているのだと改めて感じました。
南北戦争後のアメリカで、火砲の平和利用としてこの月世界旅行というプロジェクトを立案し、さらにアメリカの再統一を計ったり、世界的にも注目させたり、というところですね。

ミラー氏も書いているように、そういう面が読み取れました。


フランス人のアルダンが登場して、(地上から望遠鏡による)無人探査から有人探査になるのですが、その辺の事情がストーリーを盛り上げます。
ヴェルヌならではの想像力の世界になります。


 ●『上も下もなく』

第三部『上も下もなく』は、ガン・クラブのメンバーは共通ですが、事件としてはまったく別個の物語です。

『地球から月へ』の第19章「ミーティング」のラスト(p.146)で、J=T・マストン「われわれの努力を結集しよう、機械を発明し、地軸を立て直そう!」というシーンが出てきます。
この提案を小説化したものがこの作品です。

ミラー『詳注版 月世界旅行』p.396の注(21)によりますと、

この最後の三パラグラフをもとに、ヴェルヌは四半世紀後一冊の小説を書いている。1888年に鉱山技師アルシッド・バドゥローなる人物が、実に四カ月がかりで、「地球地軸を修正」しようとするマストンの計画の技術的青写真を練り上げた。
とあります。


前半は、北極探検の歴史の講義といった内容で、いつも通りのヴェルヌ調といったところで人名や地名が羅列されます。

で、この当時北緯84度を超えることができなかったこの北方の地(そう、陸地があるという推定しているのです――その根拠は、グリーンランドは北へ行くほどその標高が高くなり、その状態が北極点に近いところまで続いていそうだったから)には様々な地下資源が眠っている――特に当時の最重要資源であった石炭が――と考えられていました。

この地をアメリカの「北極実用化協会」がセリで購入するというのです。
この北極を開発しよう、という計画です。

行けもしない土地をどう活用するというのか?

ここで、例のガン・クラブの面々が登場します。
行けないのなら、来てもらおうというのですけれど……。


今回も、月世界旅行同様、奇想小説という感じです。
ワン・アイデアで勝負する空想小説です。

それを一本の長編小説に仕立てるところが、ヴェルヌの持つ科学情報と想像力です。


既訳本から11年ぶりぐらいの“再読”でした。
楽しめました。

挿絵が豊富で楽しめます。

挿絵は本書全体で128葉だそうで、今まで知らなかった絵が多く、楽しめました。

なかでも『上も下もなく』のヒロイン、エヴァンジェリーナ・スコービット夫人など。


本書には、先に紹介しましたアルシッド・バドゥローの手になる「補遺」が掲載されていて、数学的な根拠が示されています。
(私には理解不能と思われ、読もうという気にもなりませんでしたが。)


 ●石橋正孝さんの解説「〈驚異の旅〉の成立とガン・クラブ三部作」

〈驚異の旅〉の成立については、以前、石橋さんの『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』を読み、大体のところは知っていました。
今回改めて『二十世紀のパリ』の意味を再認識しました。

この作品が出たとき、非常に意外に感じました。
従来言われていたことは、当初は科学技術の進歩に対して前向きに肯定的に評価していたものが、後年、様々な不幸に接し、ペシミズムに傾いて行き、それが作品にも反映されるようになった、というものでした。

ところが『二十世紀のパリ』では、それまでとはまったく違う、遠未来の悲惨な状況が描かれているのでした。

しかし、今回の解説で、この〈驚異の旅〉に変換される過程を示され、そういうことかという気になりました。
私には詳しくは説明できないので、「解説」をお読みいただくしかないのですけれど。

こうなりますと、集英社さんには、ぜひ『二十世紀のパリ』を復刊していただきたいものです。
これを読まないと、ヴェルヌ及びその作品を理解できませんからね。


 ●ハードカヴァーのきれいな本

私のなかでヴェルヌの本といいますと、集英社コンパクト・ブックス版〈ヴェルヌ全集〉といい、角川・創元の文庫本といい、ペーパーバックのイメージがありました。
文遊社の復刻本にしても、きれいな本ではありましたが、ソフトカヴァーでした。

一部の児童書を除いて、ハードカヴァー本は少ないイメージでした。

でも、先の『名を捨てた家族』や新潮社の新しい『十五少年漂流記』(この本の挿絵が新たに描かれた日本オリジナル版だったのは、ちょっと残念な気します。原書版が既にいくつか紹介されているにしても。表紙は日本オリジナルで、本文挿絵が原書版というやり方がベストだと思っています。)といい、ハードカヴァー本になっています。

この選集は全巻で挿絵を全点収録するのかどうかまだわかりませんが、ハードカヴァーのきれいな本になるようで、この点を評価したいものです。

価格も高いけれど、それなりにプラスアルファが感じられるものになっています。
次回の配本も期待したいものです。

なにしろ、噂に高い『蒸気で動く家』の本邦初紹介ですから。


【既訳】
地球から月へ──九七時間二〇分の直行路──
 鈴木力衛訳『月世界旅行』集英社コンパクトブックス〈ヴェルヌ全集〉9 1968
 高山宏訳 W.J.ミラー・注 『詳注版 月世界旅行 1・2』東京図書 1981
同『詳注版 月世界旅行』ちくま文庫 1999


月を回って
 高木進訳『月世界探検』集英社コンパクトブックス〈ヴェルヌ全集〉15 1968
 江口清訳『月世界へ行く』創元SF文庫 (新装版) 2005


上も下もなく
 榊原晃三訳『地軸変更計画』ジャストシステム 1996
 同 創元SF文庫 2005

*「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」全5巻

インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション

このシリーズは、《21世紀ヴェルヌ研究の世界的権威、石橋正孝によるヴェルヌ原文の校訂、最終ヴァージョンを確定した上での底本・定本化と全巻解説》という、A5版二段組み平均500ページ超の大部な“ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉”の傑作選です。

〈全巻構成〉
第I巻(第4回配本)ハテラス船長の航海と冒険 荒原邦博・荒原由紀子訳(18年春刊) 予価:5,500円 [新訳]
第II巻(第1回配本)地球から月へ 月を回って 上も下もなく 石橋正孝訳(17年1月刊) 特大巻:5,800円 [完訳 世界初の合本]
第III巻(第5回配本)エクトール・セルヴァダック 石橋正孝訳(18年秋刊) 予価:5,000円 [本邦初の完訳]
第IV巻(第2回配本)蒸気で動く家 荒原邦博・三枝大修訳(17年5月刊) 予価:5,500円 [本邦初の完訳]
第V巻(第3回配本)カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 新島進訳(17年11月刊) 予価4200円 [新訳、本邦初訳]


*参考:
ジュール・ヴェルヌ『二十世紀のパリ』榊原晃三/訳 集英社 1995/3
―執筆時から100年後の1963年のパリを描いたディストピア小説。ヴェルヌの死後金庫から発見されたと言われる。死後およそ90年ほどを経て公刊された。


石橋正孝『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル(流動する人文学)』左右社 2013/3/25
―この本については読後の文章を書いていませんが、一度読んでいます。学術論文を基に本にしたもので、そういう意味で難しいところがあります。
 原語がわからない、例に挙げられている作品を知らない、といったハンディキャップがあって、一般の人には理解が難しいのです。
 それでも読んでみると、当時の出版状況や〈驚異の旅〉叢書の出版事情、作家ヴェルヌについて新たに知ることができる部分が多々あります。一読の価値ありです。


『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝/訳 水声社 2014/5
―本邦初のヴェルヌの本格的な伝記・評伝。従来知られていたヴェルヌ像とはかなり違ったものとなっているようです。
 実は途中までしか読んでいません。背景となるフランスやヨーロッパの歴史、ならびにヴェルヌ作品についてある程度知っていないと理解しがたい部分があるように感じました。

上記二冊でもそうですが、ミッシェル・セール『青春 ジュール・ヴェルヌ論』(豊田彰訳 法政大学出版局 1993/3)を読んだ時もそうでした、(本邦未紹介や訳本が入手困難等で)知らないヴェルヌ作品について云々されても、「ああ、そうですか」としか言えなくて、さびしいものがあります。

このたびの〈驚異の旅〉コレクションがきっかけとなり、さらなるヴェルヌ作品の紹介が進むことを願ってやみません。


*『お茶でっせ』記事:
【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む
・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売
・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

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2017.03.06

ロバート・F・ヤング『時をとめた少女』を買う

以前、発売予定を紹介しました記事↓に書いた
2月23日に発売されたロバート・F・ヤングの短篇集『時をとめた少女』を、25日買ってきました。

2017.2.8
ロバート・F・ヤング新短篇集『時をとめた少女』2月23日発売

Rfyoung


4冊すべて、日本オリジナル短篇集です。

【ロバート・F・ヤング 日本オリジナル短編集】
『ジョナサンと宇宙クジラ』伊藤典夫編訳(ハヤカワ文庫SF/1977→新装版2006/10)
全10編


『ピーナツバター作戦』桐山芳男編(青心社/1983→新装版2006/12)
全5編


『たんぽぽ娘』伊藤典夫編(河出書房新社《奇想コレクション》/2013→河出文庫2015/1/7)
全13編


*参考:2013.05.27
たんぽぽ娘 (奇想コレクション)ロバート・F・ヤングを買う


先の『たんぽぽ娘』が長年待たれた傑作選だとすれば、今回の短篇集は落ち穂拾いといった感じでしょうか。


『時をとめた少女』シライシユウコ/イラスト 小尾芙佐・深町眞理子・岡部宏之・山田順子/訳 ハヤカワ文庫SF 2017/2/23
全7編


〔収録作品〕
わが愛はひとつ One Love Have I 深町真理子訳 [SFマガジン 1971年10月号
妖精の棲む樹 To Fell a Tree 深町真理子訳 [SFマガジン 1972年7月号
時をとめた少女 The Girl Who Made Time Stop 小尾芙佐訳 [SFマガジン 1972年6月号
 『見えない友だち34人+1』集英社/コバルト・シリーズ(1980/09/15)
花崗岩の女神 Goddess in Granite 岡部宏之訳 [SFマガジン 1969年9月号
真鍮の都 The City of Brass 山田順子訳 [SFマガジン 1986年6月号》
[長編化作品『宰相の二番目の娘』(山田順子訳 創元SF文庫)の原短編
赤い小さな学校 Little Red Schoolhouse 小尾芙佐訳 ★本邦初訳
約束の惑星 Promised Planet 山田順子訳 ★本邦初訳
解説/牧眞司


内容については、未読ですので、何も言えません。
またいずれ書いてみます。


*参考:
【ロバート・F・ヤング 長編化作品】
『時が新しかったころ』中村 融/訳 (創元SF文庫)2014/3/22
―原題"Eridhan"(1983) 「時が新しかったころ」"When Time Was Young"を書きのばしたもの


『宰相の二番目の娘』山田 順子/訳 (創元SF文庫)2014/10/31
―原題"Vizier's Second Daughter"(1985) 中編「真鍮の都」"The City of Brass"を書きのばしたもの

二冊ともいかにもヤングらしい作品になっています。
新たなアイデアを加えて、ストーリーにも変化を持たせ、でも、ヤングらしさは変わらず、より楽しめる作品になっていました。
松尾たいこさんのカバー絵もかわいらしくて、ヤング作品らしさを出しています。


【主なヤング作品収録アンソロジー】
『たんぽぽ娘―海外ロマンチックSF傑作選2』風見潤/編(集英社文庫―コバルトシリーズ 1980/2/15)

―「たんぽぽ娘」(伊藤典夫訳)収録


『見えない友だち34人+1―海外ロマンチックSF傑作選3』風見潤/編(集英社文庫―コバルトシリーズ 1980/9/15)

―「時を止めた少女」収録


『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』中村融/編(創元SF文庫/2009)
―「時が新しかったころ」収録


『時を生きる種族 ファンタスティック時間SF傑作選』 (創元SF文庫)2013/7/20
―「真鍮の都」収録

他。

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2017.02.08

ロバート・F・ヤング新短篇集『時をとめた少女』2月23日発売

映画『君の名は』等の人気に乗ろうと言うのか、手持ちの時間SFの類の作品集を次々企画に乗せているようです。

昨年末には、梶尾真治新版短篇集『美亜へ贈る真珠〔新版〕』が《12月緊急刊行決定!》されました。

『美亜へ贈る真珠〔新版〕』梶尾真治/著 (ハヤカワ文庫JA)2016/12/20


今度は、ヤングの新短篇集『時をとめた少女』が登場します。

『時をとめた少女』ロバート・F・ヤング/著 (ハヤカワ文庫SF)2017/2/23
小尾 芙佐、深町 眞理子、山田 順子、岡部 宏之/訳

たぶん、以前『SFマガジン』に掲載されたもの――たとえば、ヤング特集号(S-Fマガジン 1972年06月号 (通巻160号)
)とか――を編集したものでしょう。
(多くの訳者名が出ているからです。)

ヤングは、〈ボーイ・ミーツ・ガール時間SF!〉とどこかの本の惹句にありましたが、まさにそう呼ぶのがふさわしい一連の小説群が日本では受けています。

三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』(メディアワークス文庫 2012/6/21)でとりあげられ、人気が再燃したようです。


その後、ながらく出版予定のみ掲げられていた傑作選とも言うべき短篇集『たんぽぽ娘』が出版されました。

さらに、短篇を長編に書き改めたものが2作出版されました。


『ビブリア―』で気になった人たちというのは、あの一作だけで、残念ながら他の作品には興味を抱かなかったようで、私のようなオールド・ファンが期待したほど評判にはなりませんでした。

それでも、今回こういう形で新たな短篇集が出版されるというのは、やれやれ(一安心)、という思いです。

楽しみです。


【ロバート・F・ヤング短篇集】
『たんぽぽ娘』伊藤典夫/編訳 (河出文庫)2015/1/7


『ジョナサンと宇宙クジラ』伊藤典夫/編訳 (ハヤカワ文庫SF)2006/10


『ピーナツバター作戦』桐山 芳男/訳 (青心社Seishinsha SF Series)2006/12  


【ロバート・F・ヤング長篇化作品】
『時が新しかったころ』中村 融/訳 (創元SF文庫)2014/3/22


『宰相の二番目の娘』山田 順子/訳 (創元SF文庫)2014/10/31


(他にも、ヤングの短篇が収録されているアンソロジーがいくつかあります。)

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2017.01.23

『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

先の記事↓で少し触れました、「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」及び、第1回配本、第II巻『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』について書いてみます。

2017.01.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む

「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」全5巻の刊行が始まりました。

インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション

第1回配本『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』石橋正孝訳・1月20日刊行


完訳ガンクラブ三部作世界初の合本。/石橋正孝訳・解説 月面に向けて打ち上げられた砲弾列車。巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガンクラブ三部作、世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻として刊行!

このシリーズは、《21世紀ヴェルヌ研究の世界的権威、石橋正孝によるヴェルヌ原文の校訂、最終ヴァージョンを確定した上での底本・定本化と全巻解説》という、A5版二段組み平均500ページ超の大部な“ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉”の傑作選です。

〈全巻構成〉
第I巻(第4回配本)ハテラス船長の航海と冒険 荒原邦博・荒原由紀子訳(18年春刊) 予価:5,500円 [新訳]
第II巻(第1回配本)地球から月へ 月を回って 上も下もなく 石橋正孝訳(17年1月刊) 特大巻:5,800円 [完訳 世界初の合本]
第III巻(第5回配本)エクトール・セルヴァダック 石橋正孝訳(18年秋刊) 予価:5,000円 [本邦初の完訳]
第IV巻(第2回配本)蒸気で動く家 荒原邦博・三枝大修訳(17年5月刊) 予価:5,500円 [本邦初の完訳]
第V巻(第3回配本)カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 新島進訳(17年11月刊) 予価4200円 [新訳、本邦初訳]

新訳(Iハテラス船長の航海と冒険、II地球から月へ、月を回って、上も下もなく、Vカルパチアの城)、初完訳(IIIエクトール・セルヴァダック(『彗星飛行』ジュニア版)、IV蒸気で動く家)、本邦初訳(Vヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密)という内容。
ほぼ初訳が後ろの三作。

私が今一番読みたいのは、「蒸気で動く家」です。
次に、宇宙ものらしい「エクトール・セルヴァダック」。

挿絵も豊富ということなので、その点も楽しみなコレクションです。

ただ、もう少し低価格になれば、ということと、もういくつか追加を期待したい、というところです。

今までに紹介された作品数は、〈驚異の旅〉全体の三分の二ぐらいではないでしょうか。
まだまだおもしろい作品があるのではないか、という気がするのですけれど。

ヴェルヌの作品ならなんでもいい、というつもりはありませんけれど、知らない作家の○○程度のできの作品よりは、という気持ちです。

 ・・・

第一回配本の『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』の三作は、砲弾による月探検二部作とその後のプロジェクト。
旧訳題名『月世界旅行』集英社コンパクトブックス ヴェルヌ全集、『月世界探検』ヴェルヌ全集(『月世界へ行く』創元SF文庫)、『地軸変更計画』創元SF文庫 の新完訳の世界初の合本の特大巻だそうです。

正直迷ってしまいますね。

第一回なので、既訳のものよりは、という感じでいます。
本邦初訳から始まるほうが嬉しさは倍増する、と思えるのですが。

まあ、文句ばっかりではいけません。
素直に喜びましょう。

手に取るのが楽しみです。

そして、これからも企画が継続することを祈りましょう!


*『お茶でっせ』記事:
【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む
・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売
・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

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2016.07.25

角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売

以前から情報は入手していましたが、発売されましたので書いておきます。

私の大好きな作家のひとりヴェルヌの『海底二万里』の新訳が角川文庫から出ました。


『海底二万里 (上・下)』ジュール・ヴェルヌ/著 redjuice/イラスト 渋谷 豊/訳 角川文庫 2016/7/23


従来角川文庫からは花輪莞爾氏の訳本が出ていました。
(当初は一巻本、のちに上下二巻本に)
原書挿絵が何枚入ったもの―昔の印刷なので、解像度が悪かった―で、私が若い頃に読んだものでした。

少なくとも40年はたっているはずで、新訳版の登場もやむを得ないところです。

巻末の渋谷豊氏の訳者あとがきにも、古典の名作の叢書シリーズに入ったことが書かれていましたように、本国フランスでも評価されている作品であり、老舗文庫の一冊として収録されていて当然というものです。

原書挿絵は今回は入っていません。
この辺はちょっとさびしい印象があります。


しかし、映画化なり何なりの理由があるのでしょうけれど、ヴェルヌと言えば、『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』というのはいかがでしょうか。
日本ではこれら三大名作にプラス『十五少年漂流記(二年間の休暇)』がありますが。

私自身、この作品は、先に上げた角川文庫版、集英社文庫〈ジュール・ヴェルヌ・コレクション〉版、岩波文庫版二巻本、新潮文庫版二巻本の4種持っています。

Jvkaiteinimanri

Kaiteinimanri

(今まで出た中では、原著挿絵をすべて収録している点では、岩波文庫・新潮文庫版がいい。
集英社と角川の新訳版は、挿絵ゼロ。訳注の充実ぶりでは、新潮文庫版。)

いかに名作でも、そんなに数はいりません。
(誰も買うてなんてゆうてへんて? ホンマや!)

上記の三大名作+ワンの他にもこれらほどの名作ではないけれど、現代でも十分読むに堪える作品があります。

角川文庫さんで言えば、昔出していた『悪魔の発明』(他社からも出ていますが、併載の「氷海越冬譚」は〈驚異の旅〉以前の冒険ものの傑作中編でした。)や、『地の果ての燈台』(これは優れた冒険小説です。再刊して欲しい一番手かも。)といった作品を再刊して欲しいですね。
Tinohatenotoudai


ヴェルヌの大ファンとしましては、いい加減ヴェルヌのこれら名作以外の作品を発掘出版していただきたいものです。

文遊社さんの復刊シリーズも楽しかったので、復刊でもいいんです。

出版社各社さま、よろしくお願い致します。


*『お茶でっせ』【ジュール・ヴェルヌ】の記事:

【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版

【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

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2015.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに―「まれびとこぞりて」コニー・ウィリス

 ―第164号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2015(平成27)年11月30日号(No.164)-151130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『まれびとこぞりて』コニー・ウィリス」

本誌では、例年通りこの季節恒例の【クリスマスストーリーをあなたに】と題して、クリスマスにまつわる素敵なお話を紹介しています。
今年も昨年に引き続き、アメリカの女流SF作家コニー・ウィリスのお得意のクリスマス・ストーリーを紹介しています。

いわゆるラブコメです。

タイトルの“まれびと(稀人)”とは、異星人=エイリアンのこと。

(異星人とのファースト・コンタクト)+(クリスマス・キャロル)=(?)
が、この作品のテーマとなっています。

はたして、いかなる展開が待っているのでしょうか。

 ・・・

詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』


*本誌で紹介した「まれびとこぞりて」収録短編集:
『混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)』コニー・ウィリス 大森望訳 ハヤカワ文庫SF1938 2014.1.25


*コニー・ウィリス短編傑作選第二弾:
『空襲警報 (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス) 』コニー・ウィリス ハヤカワ文庫SF


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2015.08.10

ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売

新潮社から8月31日に発売予定に上がっています。

『十五少年漂流記』ジュール・ヴェルヌ 椎名誠、渡辺葉・訳
新潮モダン・クラシックス 8月31日発売/1944円


 ●完訳版?

現在、新潮文庫から出ている『十五少年漂流記』は300ページ足らずで、ダイジェスト版の翻訳です。

今回の訳書は、480ページということで、どうやら完訳版のようです。
ちなみに、椎名誠、渡辺葉・父娘共訳というのも、話題の一つでしょう。

ダイジェスト版でも、お話そのものは十分楽しめます。
そうは言っても、やはり著者の書いたそのままのものというのでしょうか、オリジナルのままの小説を読むのが本道ではないか、という気がします。

冗長な部分をカットして、現代風に読みやすくすることが、間違いとは言い切れません。
ただそのためには、それにふさわしい人物の手によってダイジェストされなければ、本質を外したものになってしまいかねません。
その辺の判断も難しいものです。

それなら始めから完訳にしておけば無難でしょう。
さほど長すぎないのなら、そのままでいいと思います。

たとえば、文庫本で全8巻『モンテクリスト伯』を一巻にダイジェストするということは、人を得れば、間違いではないと思います。
それでも完訳を読むほうが正道だろうという気はしますが。

それに比べれば、本書などはダイジェストするほどの意味もないでしょう。
これを小学校低学年用に、というのなら別ですが。

ということで、新訳本に少し期待です。


 ●三大名作+ワン以外のものを!

それにしても、ヴェルヌの本を出してくれるのは、嬉しいことですし、先ほども書いたように、完訳で出すというのならそれもいいことです。
しかし、ヴェルヌ・ファンとしては、三大名作+ワン>(『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』+『十五少年漂流記』)の新訳はもういいこれぐらいで十分です。
この十何年間に岩波文庫、光文社古典新訳文庫、新潮文庫等で原著挿絵入りの新訳本が出版されました。

創元SF文庫で歿後100年記念で、『月世界へ行く』の新版、『地軸変更計画』を復刊しました。

文遊社『永遠のアダム』『ジャンガダ』『黒いダイヤモンド』『緑の光線』といった作品を復刊してくれました。
新訳短編を併載したり一部改訳が施されたり等もあり、嬉しい企画でした。

復刊もいいのですけれど、できれば新訳で出していただきたいものです。
特に〈ヴェルヌ全集〉はかなり昔の翻訳ですので。


しかししかしです。
ヴェルヌには未訳の、本邦未紹介の作品がまだまだたくさんあります。

もちろん、三大名作ほどの内容のものではないかもしれません。
とはいえ、それらもヴェルヌの作品であり、実際に三大名作以外の作品を読んだ経験から言っても、それなりに楽しめる作品があるはずです。

全部とは言いません。
いくつかおもしろそうな作品を見繕って紹介していただけないものでしょうか。

小説には、時代を写す鏡の役割もあります。
その当時の人々の生活や風俗や思想、見方・考え方等が反映されているものです。
それらを知る意味でも役に立つものです。

ぜひ、ヴェルヌの〈新作〉紹介を!


*参照:メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2009(平成21)年7月31日号(No.22)-090731-『十五少年漂流記』夏の文庫100冊から


*【ヴェルヌの小説以外の最近出版された本】:
『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝訳 水声社 (2014/05)
―本邦初のヴェルヌの評伝。力作です。ヴェルヌの伝記のなかで最も信頼に足ると言われるものです。
 当時の社会状況を知っていれば、また彼の作品をより多く読んでいれば、楽しさも増します。

『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル』石橋正孝 左右社 (2013/3/25)
―これも力作。元は学術論文ということで、ちょっと読みづらく感じたり、ヴェルヌの原稿をまな板に載せているため、それらを(邦訳がない、もしくは手に入りにくいため)未読の人には分かりにくかったりします。
 小説家ヴェルヌと編集者エッツェル、二人のジュールのあいだを巡る出版の秘密をめぐる“冒険”です。

『ジュール・ヴェルヌの世紀―科学・冒険・“驚異の旅”』東洋書林 (2009/03)
―これは見て楽しい本です。図版で見るヴェルヌの世界といってもいいかもしれません。

『文明の帝国 ジュール・ヴェルヌとフランス帝国主義文化』杉本淑彦 山川出版社(1995)
―ヴェルヌの小説の表現を通して当時のフランス帝国主義を考えるという論文。
 巻末100ページを費やし、ヴェルヌの〈驚異の旅〉シリーズ全作品及び初期作品のあらすじを紹介。

*『お茶でっせ』記事:
文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

*参照:・『レフティやすおの左組通信』
「ジュール・ヴェルヌ Jules Verne コレクション」

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2014.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに~『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス

 ―第140号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2014(平成26)年11月30日号(No.140)-141130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス」

本誌では、古典的なクリスマス風景を扱った古典的なストーリーを紹介しました。
ぜひ、読んでほしいものです。

日本では、クリスマス・ストーリーといってもまだまだ受け入れてもらえていないように感じます。
しかし、ディケンズ『クリスマス・キャロル』以来、欧米の作家は必ずといっていいほど、このクリスマス・ストーリーを書くと言われています。
実際に、多くの作家たちが優れたクリスマス・ストーリーを発表してきました。

実は日本でも過去に幾つものクリスマス・ストーリーが翻訳紹介されてきました。
ほぼ毎年のように、といってもいいかもしれませんね。


私の記憶に残るものとしては(以前も紹介していますが)―

まずは、三冊の【クリスマス・ストーリー・アンソロジー】

『贈り物 クリスマス・ストーリー集 1』レイ・ブラッドベリ〔ほか〕/著 長島良三/編 角川文庫(1978)
―O・ヘンリーの名作「三人の賢者の贈り物」、アンデルセン「マッチ売りの少女」他、ブラッドベリのSFやモーパッサン、ラニアンなどのクリスマスにまつわる小説を集めた短編集第一弾。
『クリスマスの悲劇 クリスマス・ストーリー集 2』アガサ・クリスティー〔ほか〕/著 長島良三/編 角川文庫(1978)
 アンデルセン「モミの木」他、ストウ(夫人)、ドストエフスキー、ゴーリキーら文豪、クリスティーのミス・マープルものなどのクリスマスにまつわる小説を集めた短編集第二弾。

『クリスマス・ファンタジー』風間賢二/編 ちくま文庫(1992)
―スクルージの原型を描く「墓掘り男を盗み去った鬼どもの話」ディケンズ、スクルージの後日談「新クリスマス・キャロル」マッケン始め、上記二冊にも収められている、フィニイのファンタジー短編風の次元を越えた出会いを描く名編「クリスマスの出会い」ティンパリー、サンタクロース誕生秘話「道」クインなど。


【個人短編集】としては、

『ベツレヘムの星』アガサ・クリスティー/著 中村能三/訳 ハヤカワ文庫(2003)
―人気ミステリ作家の手になるクリスマスをテーマにした小説と詩からなる宝石箱のような小さな本。
『みじかい3つのクリスマス物語』L・M・オルコット/作 清水奈緒子/訳 小さな出版社/発行 星雲社/発売(2000)
―『若草物語』の作者による貧しくとも毅然と生きる少女たちのクリスマスを描くクリスマス物語三編(もの静かな小さな娘、ティリーのクリスマス、ローザの物語)。

『クリスマスの思い出』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 山本容子/銅版画 文藝春秋(1990)
『あるクリスマス』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 山本容子/銅版画 文藝春秋(1989)
『誕生日の子供たち』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 文藝春秋(2002)
―クリスマスの思い出を語る上記二短編を含む子供のイノセントをテーマにした短編集。二作は互いに正反対の状況を描いた自伝的作品で、「―思い出」は少年に与えられた贈り物、「ある―」は逆に少年が与えた贈り物の思い出話といえる抒情的名編。

『サンタクロースにインタビュー 大人のための子どもの話』エーリヒ・ケストナー/著 フランツ・ヨーゼフ・ゲールツ、ハンス・サルコヴィッツ/編 泉千穂子/訳 ランダムハウス講談社(2007)
―『飛ぶ教室』『エミールと探偵たち』の著者の初期の辛辣な短編等をまとめたもの。表題作他、数編のクリスマスものを含む。冒頭の「また過ぎていくこと」はケストナー版「賢者の贈り物」。


【長編小説】としては、

『クリスマスの木』ジュリー・サラモン/著 ジル・ウェーバー/画 新潮社(1996)、『クリスマスツリー』新潮文庫(改題)
―ニューヨーク、ロックフェラー・センターを飾るクリスマスツリーとなった、元孤児の修道院シスターの幼友達の木「トゥリー」にまつわる、悲しくも美しいシスターと人々との愛の交流物語。
『クリスマス・ボックス』リチャード・P・エヴァンズ/著 笹野洋子/訳 講談社(1995) 講談社文庫版(2005)
―老婦人の住む館に引っ越してきた「わたし」たち若夫婦は、屋根裏で小箱を見つけるが…。二度と巡り来ることのない子供時代を親子で共にすごすことこそが、一番大切な贈り物なのだ!

ミステリの【アンソロジー】は、

『クリスマス12のミステリー』アイザック・アシモフ/編、 池 央耿/訳 (新潮文庫 1985/10)
『サンタクロースにご用心―クリスマス13の物語』シャーロット・マクラウド/編 片岡しのぶ/訳 (扶桑社ミステリー 1991/11)

クリスマス・ミステリの【長編小説】としては、

『小さな星の奇蹟』メアリ・H・クラーク/著 宇佐川晶子/訳 新潮文庫(1999)
―成功目前の新進ヴァイオリニストが7年前のクリスマスに教会の前に捨てた赤ちゃんは偶然泥棒が連れて去り…。サスペンスの女王といわれたミステリ作家のクリスマスものの感動ミステリ。
『追跡のクリスマスイヴ』メアリ・H・クラーク/著 深町眞理子/訳 新潮文庫(1996 原著1995)
―クリスマスイヴ、7歳の少年は、病気の父に渡すお祖父ちゃんの命を救った聖クリストファーのメダルを取り戻そうとママの財布を猫ババした女を追うが、そこには脱獄した殺人犯の弟が…。クリスマス前夜、緊張の追跡劇の結末は、感動のフィナーレへ!
  <「子供はね、おかあさんと離れてちゃいけないんだよ」>91p
  <信じることは―たとえ聖クリストファーのメダルのようなばかばかしいものでも―信じることは、美しいことだ。>106p
『ポアロのクリスマス』アガサ・クリスティー/著 村上啓夫/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003)
―ご存知名探偵ポアロもの。クリスマス・イヴの殺人事件。



もちろん、この他にも色々あると思います。

また、長編小説の中の一章に、印象的なクリスマスの思い出が語られている、というケースもありますね。

たとえば、トルストイ『戦争と平和』のなかにも、人生の楽しい場面の一つとして、クリスマスの一夜を描いて“平和”のシーンを表現しています。

第二巻第四部(岩波文庫版・第二部第四篇)12月のロストフ一家のクリスマスの場面です。
ナターシャというヒロインの魅力もいっぱいあふれていますし、トロイカで疾走するシーンにしろ、クリスマスで訪問した先の老人も非常にいい感じの人物であり、この交流は非常に心を打ちます。

*参照:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月


これからも毎年一作ですが、愛と善意と寛容と赦しの季節を描いた優れた小説を紹介してゆく予定です。
お楽しみに!

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詳細は本誌で!

*本誌で紹介した作品を収録した本:
『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス/著 大森望/編訳 早川書房・プラチナ・ファンタジイ(2008.9.25)


*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
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2014.07.19

文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売

いやあ、またまたヴェルヌの復刊です。

『緑の光線』ジュール・ヴェルヌ 文遊社(2014.7.30)


今回は、“異色の恋物語”『緑の光線』(文遊社のページ)

水平線に沈む夕陽が最後に放つ、翡翠のような光を探して、島から島へ

パシフィカ版<海と空の大ロマン>の一冊『北海の越冬/緑の光線』(1979)から、中村三郎訳。
いつも通り原著の挿絵―レオン・ベネット (Leon Benett)入り。


『緑の光線』は、1883年刊。
スコットランドの伝説で、<緑の光線>を見ると人の虚実と見抜く力と、幸福を得るという。
ヴェルヌには珍しいと言われる女性を主人公にした<緑の光線>を目撃しようと旅行する恋物語。
先に復刊された『黒いダイヤモンド』でも紹介された地スコットランドがまた登場するようです。

*『お茶でっせ』2014.5.4
文遊社版ジュール・ヴェルヌ『黒いダイヤモンド』を読む

他に、小高美保訳の“幻の初期短編”『メキシコの悲劇』を併録。(こちらもJules-Descartes Feratによるオリジナル挿画入り)
これが、今回の復刊のもう一つの目玉でしょう。

『メキシコの悲劇』は、1851年の作品。
元の題名は『メキシコ海軍最初の艦船』、1876年単行本『ミハイル・ストロゴフ』に改題加筆して収録された。
スペイン海軍の二隻の軍艦で反乱が起き、艦長が殺される。アメリカとテキサス、カリフォルニアの領有で争うメキシコ政府に売ろうというのだ…。

のちの、独立運動を支援する『海底二万里』のネモ船長にも通じるような面が見られるようです。

(あらすじや書誌情報は、杉本淑彦『文明の帝国 ジュール・ヴェルヌとフランス帝国主義文化』山川出版社 による)

 ・・・

もう一つ、ヴェルヌの出版物について。

『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝訳


5月に出ています。

日本初、やっと出たヴェルヌ伝として期待は大きいのですが、お値段も格別で一万円!と破格。

こちらについてはまたの機会に―。

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