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2015.06.30

ラフカディオ・ハーン/小泉八雲『日本の面影』NHK100分de名著2015年7月

NHK『100分de名著』7月は、「小泉八雲『日本の面影』」です。

名著45 小泉八雲「日本の面影」
第1回 7月1日放送 原点を訪ねる旅
小泉八雲の人となりや執筆の背景を掘り下げながら、八雲が異文化日本を見つめた熱いまなざしに迫っていく。
第2回 7月8日放送 古きよき日本を求めて
目に見えない「霊的なもの」を感受する八雲独自の直観で探り当てた、古きよき日本の深層に迫っていく。
第3回 7月15日放送 異文化の声に耳をすます
五感を駆使し、異なる声に耳をすませ続けた八雲の「異文化理解の方法」を明らかにしていく。
第4回 7月22日放送 心の扉を開く
「日本の面影」が傑作「怪談」に結実するまでの軌跡を追い、八雲が目指した「魂の理想」を描き出す。

【ゲスト講師】池田雅之(早稲田大学教授)…比較文学者。小泉八雲に関する著書多数。
【朗読】佐野史郎(俳優)…小泉八雲の大ファン。世界各地で小泉八雲の朗読を行っている。

プロデューサーAのおもわく。

7月の「100分de名著」では、優れた紀行文学であり、卓越した日本文化論としても読み解ける「日本の面影」を通して、「日本とは何か?」そして「異文化を理解するとはどういうことか?」をあらためて見つめなおしたいと思います。

○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
小泉八雲『日本の面影』 2015年7月
池田 雅之

日本人の優しさを愛する/心を開き、耳をすませて、異文化に向き合う。
消えゆく日本を愛する/アイルランドの父とギリシャ人の母の間に生まれたラフカディオ・ハーン。アメリカで通信記者として活躍していた彼はなぜ、日本に帰化して小泉八雲となったのか。『怪談』と並び称される八雲の代表作『日本の面影』に描かれた明治の日本のありかたから、近代日本の歩みの意味を考える。


●最初の日本についての書

明治期日本に滞在し、日本についての書物を書き残した西洋人は何人もいます。
今回取り上げられるラフカディオ・ハーン(帰化後の日本名・小泉八雲)もその一人でした。
他には彼の良きアドバイザーともなり、高等教育を受けていない彼を教師に推薦したお雇い外国人の一人、東京帝国大学の教授B・H・チェンバレン(『日本事物誌 1・2』高梨健吉訳 平凡社 東洋文庫 他)などです。

ただそれらの人たちとハーンの違いは、ハーンは日本人の女性と結婚し、日本に帰化し、日本人として亡くなり、仏式の葬式で送られたという事実です。
それだけ日本を愛していたのでしょう。

そんな彼がものした日本についての最初の書物が『日本の面影』(上下二巻)です。

彼は日本に来る前から、日本について調べていたようです。
日本についての本を書くことも、当初から予定に入っていました。

そういう彼が、実際に接したのが鎌倉や最初の赴任地・松江の、近代化とは無縁の世界であった昔ながらの日本と、そこに住む純朴な日本人でした。
そこに魅力を感じ、日本人とは異なる視点から、より純粋な日本を見出したのでしょう。


●代表作『怪談』

ハーンの代表作と言えば、やはり『怪談』でしょう。
これは元々あった古いお話を再話したものです。
最初は誰かから聞き、その後本を探し、妻・節の語りを通して、自分のものにして上で、書き著したもの。

私と『怪談』との出会いで明らかなものは、中学校時代の英語の教科書でしょう。
「むじな」の話はよく覚えています。
もちろん、それ以前に「耳無し芳一」「雪女」等のお話は何かで知っていました。

そんな知ってはいるけれど実際に読んだことのなかった作品を、高校一年の時に、角川文庫版『怪談・奇談』という本で読みました。

そのなかで、私の印象に残った一番の作品は、「鳥取の布団の話」でした。

「あにさん、寒かろう」「おまえ、寒かろう」と声を掛け合う、健気な兄弟愛のお話――。
ただ怖いだけではなく、庶民の哀歓を描いたお話が語られています。
私の子供のころは、高度成長に入ろうという時代で、まだまだ貧しさの残る風景があちこちにありました。
ここに描かれる世界に共感できるものがあったように思います。


その後いつしかこの本をなくし、読む機会もないままに50代になりました。
読書メルマガでハーンの『怪談』を取り上げるにあたり、『怪談』他いくつかの本を読みました。

それら参考にした書物のなかに、今回の番組講師・池田雅之さんの訳本もありました。

*メルマガ『レフティやすおの楽しい読書』
2009(平成21)年6月30日号(No.20)-090630-『怪談』ラフカディオ・ハーン/小泉八雲


●『日本の面影』

このとき初めて、ハーンの生涯と作品について色々と知りました。

その際、最もよく読んだのが、講師・池田雅之さんの訳本だったのです。
角川ソフィア文庫の二冊(2009年当時)とちくま文庫の小泉八雲コレクション三巻でした。

今回は、ソフィア文庫から『日本の面影』二冊目も登場し、参考資料が整った感じです。

番組ではどのようにこの書物を読み説かれるのか、楽しみです。

 ・・・

今回改めて読んだ、池田雅之さんのハーン論『ラフカディオ・ハーンの日本』(角川選書)で、一番心に残っているのが、ハーンが東京帝大の英文学講師だった時の「最終講義」の一節です。
私の個人的な思い入れがあってのことですが。
意訳しますと、
「どんなに忙しくても毎日十分ぐらいは文学作品の創作に時間をさけ、一日五行ずつでも書け、一年たてば、かなりの仕事量になる。」
というものです。

将来日本の文学界を背負って立つであろうエリート学生たちに対するハーンからの助言です。
これはそのまま彼が、若いころから実践し続けていたやり方でした。
その成果が、彼の著作なのでした。

毎日少しずつでも勉強を続けなさい。

教育者としても実にすばらしい人物で、私も肝に銘じたい忠告です。


★講師・池田雅之さんのハーン論
『ラフカディオ・ハーンの日本』池田雅之/著 角川選書 2009/12/10
 ハーンの幼少時のトラウマからギリシア的な多神教やアイルランド気質といったものがからみ、彼の幽霊好き怪談好きが生まれたようで、しかし、それら怪談奇談の再話を通して新たな文学作品に昇華した背景を究める。
第1章 ハーンの日本発見―漂泊・幽霊・Old Japan
第2章 教育者としてのハーン―想像力・共感・霊性
第3章 ハーンが現代に語りかけるもの―共生・循環・アニミズム


★講師・池田雅之さんの訳本【角川ソフィア文庫】
『新編 日本の面影(2)』池田雅之/訳 2015/6/20
 妻・小泉節子の聞き書き「思い出の記」を併録。

『新編 日本の面影』池田雅之/訳 2000
 『知られぬ日本の面影』から、代表的な文章「東洋の第一日目」「盆踊り」「英語教師の日記から」(抄)「日本海に沿って」「日本人の微笑」「さようなら」などを再編集して収録。懐かしき古きよき日本の姿が保存されている。


『新編 日本の怪談』池田雅之/訳 2005
 『怪談』の諸作始め、他の著作から集めた再話もの怪奇談42編。内匠尽語楼/編纂『狂歌百物語』をハーン自らが解説したエッセイ「妖怪のうた」とハーンの描いた絵も収録。他に縮緬本「日本おとぎ話集」など、めずらしい作品も多く収録されている。


★講師・池田雅之さんの訳本【ちくま文庫・小泉八雲コレクション】
『妖怪・妖精譚』池田雅之/編訳(2004)
 「泉の乙女」他、アメリカ時代のものから日本時代の『怪談』まで代表的な八雲の再話ものの怪奇談を集めた選集。巻末に八雲入門書ともいうべき、小泉節子「思い出の記」を収録。


『さまよえる魂のうた』池田雅之/編訳(2004)  
 自伝的エッセイ8編と、東京帝国大学での英文学講師時代の講義録から、読書論としても非常に優れた「読書について」や「生活と文学の関係」「文章作法の心得」、最終講義「日本文学の未来のために」など16編、萩原朔太郎「小泉八雲の家庭生活」を収録。


『虫の音楽家』池田雅之/編訳(2005)
 初期の「鳥取の布団の話」「子を捨てた父」の再話を含む「日本海に沿って」や「加賀の潜戸」、後期の「焼津にて」など八雲が愛した虫や海といった自然に関するエッセイなど21編、長男・小泉一雄の手になる「父「八雲」を憶う」(一部抜粋)を収録。


『日本の面影 ラフカディオ・ハーンの世界』山田太一/著 岩波現代文庫(2002)
 ハーン(小泉八雲)を主人公にしたNHKテレビ・ドラマのシナリオ。初めて日本人と出会ったニューオーリンズ時代から日本での日々まで、その生涯をうまく取り込み、一本のドラマに仕上げている。セツの『思い出の記』と読み合わせると一段と興味深い。


『怪談・奇談』平川祐弘/編 講談社学術文庫(1990)
 『怪談』他、日本に関する著述に収録された怪談話を収録。巻末付録に八雲の所蔵本から原話と推定される日本語文献を収録。

*他のNHKテレビ「100分 de 名著」の記事:
1 2011年11月放送:2011.10.31
アラン『幸福論』喜びは、行動とともにある!
2 2011年12月放送:2011.12.6
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』悲しみを、乗り越えよ-「100分 de 名著」NHK
3 2012年1月放送:2012.1.5
吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK
4 2012年2月放送:2012.1.29
新渡戸稲造『武士道』日本的思考の根源を見る-「100分 de 名著」NHK
5 2012年3月放送:2012.3.6
仏教は「心の病院」である!NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』2012年3月
6 同:2012.4.2
NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで
7 2012年4月放送:2012.4.3
紫式部『源氏物語』NHKテレビ100分de名著
8 2012年5月放送:2012.5.2
確かな場所など、どこにもない―100分 de 名著 カフカ『変身』2012年5月
9 2012年6月放送:2012.6.6
<考える葦>パスカル『パンセ』NHK100分 de 名著2012年6月
10 2012年10月放送:2012.10.2
鴨長明『方丈記』NHK100分 de 名著2012年10月
11 2012年12月放送:2012.12.5
<心で見る努力>サン=テグジュペリ『星の王子さま』NHK100分de名著2012年12月
12 2013年1月放送:2013.1.11
呪文に頼るのもよし?~100分de名著『般若心経』2013年1月
13 2013年2月放送:2013.2.5
待て、そして希望せよ~NHK100分de名著『モンテクリスト伯』2013年2月
14 2013年3月放送:2013.3.28
どんな時も、人生には、意味がある。フランクル『夜と霧』~NHK100分de名著2013年3月(再放送)
15 2013年4月放送:2013.4.11
真面目な私とあなた―夏目漱石『こころ』~NHK100分de名著2013年4月
16 2013年5月放送:2013.5.20
水のように生きる『老子』NHK100分de名著2013年5月
17 2013年6月放送:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月
18 2013年7月放送:2013.7.9
哲学とは、愛である『饗宴』プラトン~NHK100分de名著2013年7月
19 2013年11月放送:2013.11.10
「物語」に終わりはない『アラビアンナイト』~NHK100分de名著2013年11月
20 2013年12月放送:2013.12.11
切り離された者たちへ~ドストエフスキー『罪と罰』~NHK100分de名著2013年12月
21 2014年1月放送:2014.1.21
花とは何か~『風姿花伝』世阿弥~NHK100分de名著2014年1月
22 2014年3月放送:2014.3.4
戦わずして勝つ『孫子』~NHK100分de名著2014年3月
23 2014年12月放送:2014.12.3
生きるべきか、死ぬべきか-シェイクスピア『ハムレット』~NHK100分de名著2014年12月
24 2015年4月放送:2015.3.29
自分を救えるのは自分自身である-NHK100分de名著『ブッダ 最期のことば』2015年4月
25 2015年5月放送:2015.5.5
何もないことを遊ぶ『荘子』-NHK100分de名著2015年5月
26 2015年6月放送:2015.6.2
運命と人間―ギリシア悲劇/ソポクレス「オイディプス王」NHK100分de名著2015年6月

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恋物語の古典~『シャクンタラー』カーリダーサ

 ―第154号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2015(平成27)年6月30日号(No.154)-150630-
「インド文学の最大傑作『シャクンタラー』カーリダーサ/作」

本誌では、カーリダーサの傑作戯曲「シャクンタラー」を取り上げています。

インドの王様と仙人の養女の恋物語です。

サンスクリット劇の決まりに則ったというハッピー・エンドのお話です。

以前古代ギリシアの「ダフニスとクロエー」を紹介しましたが、お話の内容そのものは、まったく異なりますが、紆余曲折はあっても最後はハッピー・エンドという筋立ては、現代人から見ますとちょっと物足りなさを感じさせます。


それだけ現代人は、人間として純でなくなっているのかもしれませんね。
そんな現代こそ、原点的な恋物語を楽しんでみるのも一興でしょう。

 ・・・

詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
--

*本誌で取り上げた本:『シャクンタラー姫』カーリダーサ/作 辻直四郎/訳 岩波文庫 1981

『筑摩世界文学大系9 インド・アラビア・ペルシア集』筑摩書房 1974
「シャクンタラー」カーリダーサ/作 田中於莵弥/訳、「サンスクリット抒情詩」(田中於莵弥/訳)に、カーリダーサ/作「雲の使い」「季節のめぐり」より、いくつかの詩編収録。

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2015.06.17

真ん中という選択(2)~左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii第445号

六月第一土曜日発行の無料左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第445号のお知らせです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆ 
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第445号(No.445) 2015/6/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その22―
左利きで心地よく生きるための方法(10) 」
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▲左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ▲ ..第一土曜日掲載
―その22― 左利きで心地よく生きるための方法
 (10) 世界がもし100人の人が立つ橋だったら
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―その22― 左利きで心地よく生きるための方法
 (10)世界がもし100人の人が立つ橋だったら
 (3)左岸右岸どちらに逃げるか?
   [その4]真ん中という選択(2) ~ 今までのおさらい
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 ●「真ん中の子供」
 ●右利き・左利きと右「手」利き・左「手」利き
 ●「世界がもし100人の人が立つ橋だったら」
 ●利き手・利き足・利き目・利き耳の割合
 ●利き手の比率とその他の器官での比率の差

利き手:10~12%程度が左利き
利き足:12~17%程度が左利き
利き目:29~30%程度が左利き
利き耳:33~40%程度が左利き

利き手:左■□□□□□□□□□右
利き足:左■■□□□□□□□□右
利き目:左■■■□□□□□□□右
利き耳:左■■■■□□□□□□右
--------------------------------
利き側:左→━━━←右
        ↑↑↑「真ん中の子供」(左右の両要素を持つ)

(数値データは、「利きの発達と左右差」石津 希代子
 日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 No.12, 157-161(2011) による)

 ・・・

詳細は本誌で。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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2015.06.15

自己愛~私の読書論68-文学を考える[5]小説考

 ―第153号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2015(平成27)年6月15日号(No.153)-150615-
「私の読書論-68- -文学を考える 5 小説考- 」

本誌は、「小説を考える」というテーマでした。
今回は、最近読んだ1848年刊の小デュマ、デュマ・ペール『椿姫』を取り上げました。
比較として百年以上前の名作1731年刊アベ・プレヴォー『マノン・レスコー』にも触れてみました。

もう少し違った内容になるはずでしたが、書き終えるとこういうものになりました。
自分で一生懸命考えて書いた末の文章がこれでした。
まあ、よしとしましょうか。

 ・・・

詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
http://www.mag2.com/m/0000257388.html

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

*本誌で取り上げた本:
『椿姫』デュマ・フィス/作 西永良成/訳 光文社古典新訳文庫 2008.8.20
―最近読んだ本。


『椿姫』デュマ・フィス/作 西永良成/訳 角川文庫 2015/6/20
―上記の訳者のものが、版元を変えて再刊されるもよう。


『マノン・レスコー』アベ・プレヴォー/作 青柳瑞穂/訳 新潮文庫
―若い頃に読んだ本。


『マノン』アベ・プレヴォ/作 石井洋二郎・石井啓子/訳 新書館(新訳・世界の古典シリーズ) 1998/1/26
―最近読んだ本。新訳版。


*ジュール ヴェルヌ版<モンテ・クリスト伯>
・アドリア海の復讐〈上〉 (集英社文庫―ジュール・ヴェルヌ・コレクション)
・アドリア海の復讐〈下〉 (集英社文庫―ジュール・ヴェルヌ・コレクション)
―上巻冒頭に、ヴェルヌと大デュマと小デュマの文学的関係を表す言葉が書かれた書簡の文章が掲載されている。

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2015.06.14

『嵐にしやがれ』「左利きの大変さのニノ」のことpart2

6月13日、先の記事でも書きましたように、

・2015.06.11
『嵐にしやがれ』次回予告「左利きの大変さのニノ」のこと

6月6日放送日テレ(NTV)系の『嵐にしやがれ』で、先週の予告にあった「二宮和也の小っちゃな野望 左利きの大変さを世の中の人に知ってもらいたい!」が放送されました。

時間を間違えていて、気がつくともう11時過ぎでした。
内容をサイト放送内容で調べると、↓ のようでした。

150613arasi_hidarikiki


(画像:『嵐にしやがれ』のサイトから)

ニノの「左利きはつらいよmovie」だそうで、ゲストとして左利きの芸能人(小島よしお、あばれる君、大林素子、菊地亜美)ら街の左利きの人に聞いて多かった意見をコント風に紹介したそうです。

前回の記事でも書きましたが、やはり予想通りと言いましょうか、
<左利きツラいよランキング第1位>は、<駅編>で、“駅の自動改札”でした!
まあ、街の一般の人の意見による<ツラいよ>編というと、そういうところに落ち着くのかなあ、という感じですね。

ネットで調べて見ますと、トランプ、ボールペン等にも触れていたそうです。


 ●左利きツラいよランキング

以下、私のサイトで触れている、5位までのそれぞれの例を挙げておきます。

5位<オフィス編>“テーブル付のイス”

*『お茶でっせ』記事:
・2011.05.07
左手書字者用台付きパイプ椅子のある風景
・2007.3.16
左利き用メモ台付折り畳み式パイプ椅子

3位<BBQ編>“カメラのシャッター”

左手/左利きでも使いやすいカメラについては、今までいくつも書いています。

『お茶でっせ』記事:
・2014.10.20
左利きの憂鬱における左手・左利き用カメラの情報
・2014.10.27
左手・左利き用カメラの情報Twitterに書いたこと

●左右共用 オープンプラットフォームカメラ【オリンパス OLYMPUS AIR A01】
2015.04.11
左手でも使えるシンメトリックデザイン一眼カメラOLYMPUS AIR A01

●左右共用カメラ【キヤノン PowerShot N/N2】
*『お茶でっせ』「PowerShot N」の記事:
・2013.1.28
左(利き)右(利き)の手を選ばないカメラCANON PowerShot N
・2013.1.30
左利きも楽しめる新カメラ、キヤノンPowerShot N4月下旬発売
・2013.4.26
注文しました!左手でもシャッターを切れる!キヤノンPowerShot N
・2013.5.15
届きました!左右共用カメラ・キヤノンPowerShot N
・2013.9.11
左利きが使いやすいカメラ1-PowerShot N~左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii380号
・2013.11.7
LGPJ18左利きが使いやすいカメラ3変化~左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii388号

・2015.3.18
左利きにも優しいシンメトリーデザイン・カメラCanon PowerShot N改良機PSN2

*左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』:
・第380号(No.380) 2013/9/7 「レフティ・グッズ・プロジェクト
<左手・左利き用品を考える>第17回 カメラ<1>キヤノンPowerShot N」
・第388号(No.388) 2013/11/2「レフティ・グッズ・プロジェクト
 <左手・左利き用品を考える>第19回 カメラ<3>変化~」

●左手専用カメラ【京セラ・サムライ SAMURAI Z2-L】
*『レフティやすおの左組通信』
左利きphoto gallery〈HPG4〉世界初 左手用カメラ/京セラKYOCERA サムライSAMURAI Z2-L
*『レフティやすおのお茶でっせ』
2004.8.5 今は昔 世界初左手用カメラ、京セラ サムライSAMURAI Z2-L


2位<ファミレス編>“スープバーなどにあるレードルというお玉”

*『お茶でっせ』記事:
・2012.10.01
ガストのスープ用オタマが左右両注ぎ用に!
2013.03.28
第7回<LYグランプリ>2013発表~左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii356号

*左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』:
第356号(No.356) 2013/3/23「<左利きプチ・アンケート>第7回<LYグランプリ>2013 読者大賞発表」
▼第7回<LYグランプリ>2013▼
【審査員大賞】「左利きの事」部門: 左利きの悩み解消
・ガスト スープ用お玉(レードル)の形状改善


4位の<ボウリング編>“ボウリング場にある球は基本右利き用”については、私はやらないので触れたものがありません。

また、<駅編>“駅の自動改札”についても、ふれたものがありません。
これは、特に単独記事として書いていないだけで、機会がある範囲で触れていたかと思います。


 ●「嵐」の中の左利きの人

サイトに「嵐の中で唯一の左利きの二宮」とありましたが、確かに「利き手」に関してはそうかもしれませんが、櫻井翔さんは↓の動画でもありますように、「足は左利き」です。

【嵐】櫻井翔は元々左利き!?『もしかしたら矯正されたかもしれない、、、』 【カフェ嵐ちゃん】

また、大野智さんは、以前テレビ番組で拳銃の射的をやっていたとき、右目をつぶって照準を合わせていたと記憶しています。もしそうなら、「左目利き」と思われます。

ネットの情報によれば、「元々左利きだったのをお母さんが右にかえた」とあります。
[大野智]大野くんが左利きだったのをお母さんが右利きに直したのは ...
2011年4月15日のARASHIDISCOVERY ラジオレポ にて言ってました)

放送でも、「昔、左利きだった、すごいちっちゃいとき。親が治したんだ」と告白したとか。
相葉雅紀くんラジオ『レコメン』にのみーん家って畳なのかな&嵐さん『オリスタ』6/22号


一般には「利き手」といった言い方がされますが、実際には「利き手」だけでなく、足や目や耳といった身体の左右対称の各器官に「利き側」といったものがあり、多くの人ではそれらは相関性が高いのです。
ところが、一部にはそうでない人もいて、利き側に“ねじれ”のある人もいるのです。
(クロスドミナンスcross-dominanceといった言い方をします。)

左利き・右利きだけでなく、私は「中間的な人」と呼んで区分けしています。


 ●「矯正」「直す/治す」という表現について

最後にどうしても書いておきたいこと。
「左利きを右利きに変える」ことを指して、「矯正」とか「直す/治す」という表現を使うことはやめて欲しい、とお願いしています。

右使いが「正しい」とは言い切れません。
右利きの人にとっては右使いが当たり前のことであっても、右利きが多数派であっても、だからといって右利きが正義でもないし正解でもありません。

また、左利きは欠点でも間違ったことでもありません。
もちろん「病気」ではありません。
「矯正」や「直す/治す」といった表現は明らかに不適切です。

これらの表現は、左利きの人を蔑む表現になります。
よく考えて欲しいと思います。

▼参照記事:
2012.6.11
【左利きライフ研究家レフティやすおのできるまで】第1回
(【「左利き(利き手)の矯正」について】)

・『レフティやすおの左組通信』
<レフティやすおの左利き私論2>右手使いへの変更(矯正)について
・『レフティやすおのお茶でっせ』
「利き手(左利き)の矯正」という言葉の使用について
 他、etc... 

▼アンケート:
「矯正」という言葉の不使用のお願いアピールについて
(『左組通信』表紙、『お茶でっせ』サイドバーにて)
『左組通信』<左利きプチ・アンケート>第11回
「利き手(左利き)の矯正」という言葉をどう思いますか

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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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2015.06.11

『嵐にしやがれ』次回予告「左利きの大変さのニノ」のこと

6月6日放送日テレ(NTV)系の『嵐にしやがれ』で、来週の予告として「二宮和也の小っちゃな野望 左利きの大変さを世の中の人に知ってもらいたい!」という企画を他の二本とともに放送するそうです。

150606


(画像:番組サイトより、次回予告)

どういう内容になるのか、楽しみです。

大体の予想(従来から言われている、ネットでもよく挙げられているような例――例えば、自動改札機とかハサミとかが使いにくい)はつきますが、あえて、なるほどそういうのもありか、というものを見せていただけるといいのになあ、という気持ちがあります。

今の時代ならではの…、アイドルさんゆえの…、といったものであれば、意外性もあっていいのではないでしょうか。
例えば、IT機器類が使いにくいとか、マイク等のパフォーマンスが限定されるとか、CM等で右使いを強要されるとか。

まあ、一般的な最低限度これぐらいの配慮は欲しいよね、といったものでも、もちろんいいのですけれど。
テレビ的には、前者の方が面白く見てもらえるんでしょうね。


 ●テレビの左利き特集

過去にも、テレビ番組で左利きに関連した特集やコーナー企画が放送されたことが何度もあります。
直近では、ZIPの左利き男子萌えの話題がありました。
(2015.3.3 日テレZIP!ハテナビ左利き特集~「左利き男子」萌え~に思う

そういったものは、左利きを取り上げてもらえたという点では非常に嬉しいものです。
がしかし、どうしても時間的な制約があったり、バラエティ番組として面白さを必要とするのか、最終的には笑いに持って行こうとしたり、茶化して論点をぼかそうとしたり、利き手・利き側の問題に無知な出演者が無定見なコメントを発したりで、利き手・利き側における左右平等を目指す私の立場から納得できにくいケースが出て来ます。

社会の改善に役立つ機会でもあるのに、うやむやにされてしまうことも少なくありません。
もう一息頑張ってほしいものです。

例えば、障碍者の問題だったら、少なくともお笑いで閉めようとはしないでしょう。
うわべだけでも真面目を装うのでは?
(ホントは、障碍者の問題であっても、その存在を当たり前のこととして受け入れて特別扱いしないという視点から言えば、笑って済ませてもいいのですけれどね。)

その辺に、無意識の内に偏見があるのではないでしょうか。


そういう中で、今回は、左利きの当事者からの情報発信ということで、期待は大です。

 ・・・

ちなみに、私のサイトの「左利きで困ったこと」と、そのデータを引用した、2007年12月の『R25』誌の記事を紹介しておきましょう。

<左利きプチ・アンケート>第2回 左利きで困ったこと(物理的バリア編)
右利きが左利きより多いのはなぜ?
↑の記事の私のコメントを紹介しておきます。

「右利きの人は、利き手に関して恵まれた環境で暮らしています。私は、左利きの人も同様に自分らしい生き方ができるように、メルマガなどを通じてご理解を求めるべく努力しています。よろしくご協力を!」

=参考になるかもしれない本=
*右利き社会での左利き生活の不便さ解説本:
『左利きの人々』渡瀬 けん/著 中経の文庫 2009.1
―左利きの著者による、右利き偏重社会における左利きの人の不便「あるある!」エッセイ集。


*左利きの子供のための生活支援のガイド本:
『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍 2009.4
―左利きの子を持つ親で自身左利きの著者によるイギリスの有名左利き用品専門店オーナーによる、今までの日本になかった、左利きの子供を持つ親・先生へ向けた、左利きの子の生活支援のための手引書。


*左利き「矯正」に反対する本:
『ぼくは左きき 本当の自分であるために』度会金孝(わたらいかねたか)著 日本機関紙出版センター 2014/12/18
―左利きの元教師の本。自身の書字「矯正」体験と左に戻した体験を通して語る「矯正」を否定し反対する本。


※2015.06.14
『嵐にしやがれ』「左利きの大変さのニノ」のことpart2

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2015.06.03

左手書字考(9)左手書字は特別?~左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii第444号

五月第三土曜日発行の無料左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第444号のお知らせです。

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【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン
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右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第444号(No.444) 2015/5/16「≪教科書プロジェクト≫
【小学書写教科書に左手書字例を!】PJ19
左手書字例を考える(9) 」
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ついに444号達成です。
あの長嶋茂雄さんの生涯ホームラン数に並びました!
これもひとえに応援して下さる皆様のおかげです。
ありがとうございました。

これはあくまでも通過点です。
これからもよろしくお願いたします。

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≪教科書プロジェクト≫ ..第三土曜日発行分掲載
【小学書写教科書に左手書字例を!】PJ19
 左手書字例を考える(9)
“左手書字とは特別なことなのか”<その2>
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┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
 【小学書写教科書に左手書字例を!】プロジェクト・19
  左手書字例を考える(9)
  “左手書字とは特別なことなのか”<その2>
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛

 ●書字もハサミを例に
 ●右手用のハサミを右手で使う場合
 ●左手用のハサミを左手で使う場合
 ●右手用のハサミを左手で使う場合
 ●使い方を変える
 ●字形の左右差
 ●左手で書かれた文字を認める

 ・・・

詳細は本誌で。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

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2015.06.02

運命と人間―ギリシア悲劇/ソポクレス「オイディプス王」NHK100分de名著2015年6月

6月のNHK・Eテレ『100分de名著』は、ソポクレス『オイディプス王』を取り上げます。

名著44 ソポクレス「オイディプス王」

第1回 6月3日放送 運命とどう向き合うか?
第2回 6月10日放送 起承転結のルーツ
第3回 6月17日放送 人間の本質をあぶりだす
第4回 6月24日放送 滅びゆく時代を生き抜く

【ゲスト講師】島田雅彦(作家・法政大学教授)
【朗読】小出恵介(俳優)


○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
「オイディプス王」2015年6月 島田 雅彦

「物語」の原型はこれだ!/運命に向き合って生きる――それが人の営みである。
運命にあらがい、向き合うことは可能か
ギリシア神話の名君オイディプス王が「自分探し」の果てに破滅する姿を描いた、詩人ソポクレスによる悲劇『オイディプス王』。スリリングな論理展開、起承転結形式、「父殺し」のコンセプト─2500年ほど前に執筆され、今なお古今東西の物語のルーツとされる本作を、「運命」をテーマに読み解く。

 ●ギリシア悲劇の最高傑作「オイディプス王」

現存するギリシア悲劇、四詩人33篇のなかで最高傑作と呼ばれるのが「オイディプス王」です。

作者である悲劇詩人ソポクレスは、ギリシア悲劇に登場する合唱隊員の数を増やし、第三の俳優を用い、劇の構成を複雑にし、工夫を凝らしたと言います。
従来からの三部作をやめ、一作の独立した劇に仕立てます。
その代表作が「オイディプス王」でした。

緻密な構成で劇的に展開する物語。

あらすじは、

原因不明の疫病が蔓延し破滅の危機に瀕した古代ギリシア都市国家テバイ。名君として知られるオイディプス王はその原因を究明すべく神への神託を請います。神託の結果は「先王ライオスを殺害したものを罰せよ」。犯人探しに乗り出すオイディプスですが、真相が明らかになるにつれ、自分自身の出生の秘密が少しずつ明らかになっていきます。やがて、先王ライオスこそオイディプスの実の父親であり、オイディプスがその父を殺害し、実の母親を娶ったという事実が白日の下にさらされます。衝撃的な事実に直面し、母親は自殺。オイディプスは自分自身を罰すべく自ら目をつぶし、放浪の旅に出ます。》(「プロデューサーAのおもわく」より)

「オイディプス王」は、ことの真相を探るオイディプスが結局自分で自分の首を絞める結果となります。
ここにこの芝居の悲劇性があるのです。

デルポイのアポロンの神託は、ことの真偽を明らかにすることなく突き放します。
探偵役となったオイディプスは、激しい気性のままに追及の結果、自分の身を以って償わざるを得ない結末を迎えます。

オイディプス [略] 男のもっとも尊い仕事は、もっているすべてを、力のすべてをつくして、人を助けるにあるのだ。/テイレシアス おお、知恵が何の役にも立たぬ時に、知恵をもっているということは、なんと恐ろしいものであることか! [略] おれの言うとおりにすれば、あなたはあなたの、おれはおれの重荷をいちばん楽に耐えとおすことができるだろう。 [略] あなた方は、みんな、何も知らないからだ。おれは、あなたの禍いを言うまいために、おれのもけっして明かしはせぬ。/オイディプス なんたる言葉だ!知っていながら言おうとせず、われらを裏切り、国を滅ぼすつもりなのか?/テイレシアス おれは自分をもあなたをも苦しめとうない。なにとて無益な詮議をするのだ。 [略] あなたはおれの激しい気性を責めたが、あなたにもそれが宿っているのに気がつかず、おれを非難しているのだ。》『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』(ちくま文庫)「オイディプス王」高津春繁訳 より
オイディプス なんなりと巻き起これ! 自分の素性を、おれは、それがいかに賤しくも、見届けたいのだ。 [略] このおれは、今後もけっして変わることなく、おれの素性を底の底まで探ってみせるぞ!》同上

 ●賢い人間の悲劇

この悲劇が悲劇なのは、死すべき運命の人間が、デルポイのアポロンの神託により知らされた運命から逃れようとし、あるいは神託にそって努力する行為――人間の恣意的行為が、結果的に神託を満たすこととなる、という皮肉な結末にあります。

ギリシア神話とは、死すべき運命の人間と人間の運命を弄ぶ不死なる神との闘争劇であり、神に捧げるギリシア悲劇は悲劇に終わった人と神(運命)の闘争の物語と解釈できます。
しかし、所詮は神には勝てないのが人間。
最後は神(運命)にすべてをゆだねる生き方が良しとされるのでしょう。

「オイディプス王」で、若いころは果敢に運命に挑んだオイディプスも、ソポクレス晩年の作品「コロノスのオイディプス」では、運命を天命として受け入れ従います。
これはまた、オイディプスの成長であり、ソポクレスの成長でもあったということでしょうか。

運命と戦うのが人間の生き方の一つであり、あるいは運命を受け入れたうえで恂恂と死を迎えるという道を選択するのが、もう一つの人間の生き方なのです。

「生まれざるこそこよなくよけれ。されどひとたび生まれし上には、生まれ来りしそが方へ、ためらふことなく速やかに立ち帰るこそ次善の策なれ。」(『コローノスのオイディプース』一二二四-七)》齋藤忍随『ギリシア文学散歩』(岩波現代文庫)「ソポクレース」より
この世に生を享(う)けないのが、/すべてにまして、いちばんよいこと/生まれたからには、来たところ、/そこへ速やかに赴くのが、次にいちばんよいことだ。》『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』(ちくま文庫)「コロノスのオイディプス」高津春繁訳 より

オイディプスの言葉《「われは神々のいとも憎み給ふ敵となるに至れり」(一五一九)》齋藤忍随『ギリシア文学散歩』(岩波現代文庫)「ソポクレース」より

クレオン あなたの望みは神がかなえられるべきことだ。/オイディプス だが、わたしは神々の仇(かたき)となった。[略] クレオン すべてのことに勝利を得ようとしてはいけない。あなたのかち得たものは、一生はあなたについては来なかった。/コロス おお、わがテーバイが国の住人よ、見よ、これこそオイディプス、/名高きかの謎を知り、勢い並ぶ者とてなく、/その運勢は町人(まちびと)の皆うらやみ見しところ、/されど、見よ、今や、いかなる悲運の浪に襲われしかを。/されば、かの最後の日の訪れを待つうちは、/悩みをうけずこの世の涯を越すまでは、/いかなる死すべき人の子をも幸ある者と呼ぶなかれ。》『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』(ちくま文庫)「オイディプス王」高津春繁訳 より


 ●ソポクレスのギリシア悲劇を『易経』で読み解けば 

氷見野良三『易経入門 孔子がギリシア悲劇を読んだら』(文春新書)が面白い試みです。
ソポクレスのギリシア悲劇7篇を易経で解釈する過程を通して、易経にふれてもらおうという試みの本です。

ソポクレスの悲劇は主に六人の人物の絡みで展開する。
易経は六爻(こう)の組み合わせからなるので、それぞれを当てはめて考察する。
――というわけです。

例えば、「オイディプス王」では、一番上の「上爻」は位のない尊い人、王に仕えない隠君子で「予言者テイレシアス」を「陽」、下から五番目の「五爻」は、君主の位で「オイディプス王」で「陽」、「四爻」は「王后イオカステ」で「陽」、「三爻」は「王后の弟クレオン」で「陽」、下から二番目「二爻」は「長老団」で「陽」、一番下の「初爻」は庶民の位で「嘆願者」で「陰」と設定し、陽陽陽で「天」と陽陽陰で「風」の組み合わせで「姤」の卦で「天風姤」だという。
詳しくは、この本を読んで頂くとして、現れる様相がなかなか興味深いものとなっています。

こういう試みも面白いなと思いました。

 ・・・

さて、島田雅彦氏は、どのように、この悲劇を読み説かれるのでしょうか。楽しみです。


*参照:
メルマガ『レフティやすおの楽しい読書』
2012(平成24)年3月31日号(No.78)-120331-ギリシア悲劇:"ギリシャ悲劇の代表作"ソポクレス「オイディプス王」


*ソポクレス「オイディプス王」収録本と引用本:
『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』松平千秋ほか/訳 ちくま文庫 1986.1
―現存の7編収録。アイアス トラキスの女たち アンティゴネ エレクトラ オイディプス王 ピロクテテス コロノスのオイディプス


ソポクレス『オイディプス王』藤沢令夫/訳 岩波文庫 1967


『ギリシア悲劇全集 3』岩波書店 1990.6
―ソポクレス編の1冊目、3編収録。オイディプス王 コロノスのオイディプス アンティゴネー(各編末に古伝梗概)脚注・解説付。

齋藤忍随『ギリシア文学散歩』岩波現代文庫 2007.8
―ギリシアの神アポローンを描いた、ホメーロスはじめ10人のギリシア古典文学者による、古典作品を中心にギリシア古典文学を網羅する、ギリシア哲学の碩学によるギリシア古典文学案内。『図書新聞』連載「ギリシア文学散歩」をまとめた1987年岩波書店刊『アポローン』文庫復刊版。岩田靖夫・解題、左近司祥子・解説。

氷見野良三『易経入門 孔子がギリシア悲劇を読んだら』文春新書 2011.8.20
―東西の思想の対話。ソポクレスのギリシア悲劇を易経で解釈する過程を通して、易経にふれてもらおうという試み。ソポクレスの悲劇は主に六人の人物の絡みで展開する。易経は六爻(こう)の組み合わせからなるので、それぞれを当てはめて考察する…。


*他のNHKテレビ「100分 de 名著」の記事:
1 2011年11月放送:2011.10.31
アラン『幸福論』喜びは、行動とともにある!
2 2011年12月放送:2011.12.6
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』悲しみを、乗り越えよ-「100分 de 名著」NHK
3 2012年1月放送:2012.1.5
吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK
4 2012年2月放送:2012.1.29
新渡戸稲造『武士道』日本的思考の根源を見る-「100分 de 名著」NHK
5 2012年3月放送:2012.3.6
仏教は「心の病院」である!NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』2012年3月
6 同:2012.4.2
NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで
7 2012年4月放送:2012.4.3
紫式部『源氏物語』NHKテレビ100分de名著
8 2012年5月放送:2012.5.2
確かな場所など、どこにもない―100分 de 名著 カフカ『変身』2012年5月
9 2012年6月放送:2012.6.6
<考える葦>パスカル『パンセ』NHK100分 de 名著2012年6月
10 2012年10月放送:2012.10.2
鴨長明『方丈記』NHK100分 de 名著2012年10月
11 2012年12月放送:2012.12.5
<心で見る努力>サン=テグジュペリ『星の王子さま』NHK100分de名著2012年12月
12 2013年1月放送:2013.1.11
呪文に頼るのもよし?~100分de名著『般若心経』2013年1月
13 2013年2月放送:2013.2.5
待て、そして希望せよ~NHK100分de名著『モンテクリスト伯』2013年2月
14 2013年3月放送:2013.3.28
どんな時も、人生には、意味がある。フランクル『夜と霧』~NHK100分de名著2013年3月(再放送)
15 2013年4月放送:2013.4.11
真面目な私とあなた―夏目漱石『こころ』~NHK100分de名著2013年4月
16 2013年5月放送:2013.5.20
水のように生きる『老子』NHK100分de名著2013年5月
17 2013年6月放送:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月
18 2013年7月放送:2013.7.9
哲学とは、愛である『饗宴』プラトン~NHK100分de名著2013年7月
19 2013年11月放送:2013.11.10
「物語」に終わりはない『アラビアンナイト』~NHK100分de名著2013年11月
20 2013年12月放送:2013.12.11
切り離された者たちへ~ドストエフスキー『罪と罰』~NHK100分de名著2013年12月
21 2014年1月放送:2014.1.21
花とは何か~『風姿花伝』世阿弥~NHK100分de名著2014年1月
22 2014年3月放送:2014.3.4
戦わずして勝つ『孫子』~NHK100分de名著2014年3月
23 2014年12月放送:2014.12.3
生きるべきか、死ぬべきか-シェイクスピア『ハムレット』~NHK100分de名著2014年12月
24 2015年4月放送:2015.3.29
自分を救えるのは自分自身である-NHK100分de名著『ブッダ 最期のことば』2015年4月
25 2015年5月放送:2015.5.5
何もないことを遊ぶ『荘子』-NHK100分de名著2015年5月
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