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2015.01.05

小なるものの偉大~岡倉天心『茶の本』NHKテレビ「100分de名著」2015年1月

「NHKテレビ100分de名著」2015年1月は、岡倉天心著『茶の本』です。

【ゲスト講師】は大久保喬樹(東京女子大学教授)さん。


私のこのブログは『お茶でっせ』と言うタイトルです。
『茶の本』を取り上げる番組を見過ごすことはできませんよネ。


岡倉天心(岡倉覚三、『茶の本』は"OKAKURA-KAKUZO"名義)の『茶の本』The Book of Tea [1906(明治39).5]は、明治期に日本人が英文で書き、西洋に紹介した日本人及び日本文化論の三大名著の一つと言われています。

ちなみに他の二書は―
内村鑑三『代表的日本人』Representative Men of Japan(1910,明治43) (『日本および日本人』Japann and the Japanese(1894,明治27)再版時改題)
新渡戸稲造『武士道』Bushido -The Soul of Japan(1899,明治32)


名著40 岡倉天心「茶の本」
第1回 1月7日放送 茶碗に満ちる人の心
第2回 1月14日放送 源泉としての老荘と禅
第3回 1月21日放送 琴には琴の歌を歌わせよ
第4回 1月28日放送 花、そして茶人の死


○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」「茶の本」2015年1月
2014年12月25日発売

小さきものこそ偉大である
一杯の茶を飲む――そこに真理が宿る。


【ゲスト講師】大久保喬樹(東京女子大学教授)の本
★『新訳 茶の本』大久保喬樹/訳 角川ソフィア文庫315<ビギナーズ 日本の思想>(2005.1.25)
―各章末に解説ノートを付け、天心の思想を知るための手掛かりとして『東洋の理想』の「序章」「終章」を参考に掲げ、天心について知るための「エピソードと証言でたどる天心の生涯」を付し、理解を助ける手立てを施している。良き入門書。

本書については、私の発行している(まぐまぐ!の)メルマガ『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』で取り上げていますので、そちらの記事を転載しておきます。

2011(平成23)年1月31日号(No.51)-110131-東洋から西洋へ『茶の本』岡倉天心

(内村鑑三『代表的日本人』と、新渡戸稲造『武士道』についても書いています。)

2009(平成21)年12月31号(No.29)-091231-『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan
2009(平成21)年8月31日号(No.24)-090831-『武士道』新渡戸稲造・太平洋の橋

 ☆ ☆ ☆ 

『茶の本』で紹介している「茶道」は、新渡戸稲造が『武士道』で紹介した「侍の掟」と表裏をなすもの、と天心は、第一章で述べています。

... 武士道は武士や兵士をして喜び勇んで自己犠牲に走らせる「死の術」です。一方、茶道は毎日を生きる「生の術」について多くを教えてくれるものなのです。》p.55
『岡倉天心「茶の本」を読む 日本人の心と知恵』山﨑武也/著 PHP文庫(2000.11.15)「第一章 お茶は人類共通」 より


これにより、日本の心の両面が紹介されることになり、「武」だけではない、日本の文化の真髄が紹介された、ということになる(?)のです。

 ・・・

... 『茶の本』は、天心が行き着いた究極の思想―老荘的形而上学を根底とする暮らしの哲学をあますところなく多彩かつ自在に語った聖典ともいうべきものであり、現在にいたるまで日本文化論、東洋文化論の代表的古典として世界各国で読み継がれてきているものです。...》p.13
大久保喬樹「まえがき―『茶の本』の新訳に当たって」『新訳 茶の本』大久保喬樹/訳 角川ソフィア文庫315<ビギナーズ 日本の思想>(2005.1.25) より
... たぶんはかつて読んだり耳にした事のおぼろな記憶をたどって、点茶、生花、およびそれらが教えるくさぐさの文学芸術の精髄のことどもを、それからそれへと書きもて行った結果が『ザ・ブック・オブ・ティー』の一巻で、これが本の形で生前に兄が公にした最後のものであった。そしてそれが兄の筆から出た英文著作の中では、未単行の『白狐』を除いては、いちばん永久性に富んだ心にくい作品である。... この『茶の本』は人心の機微に立脚した文字で長くその馨(かおり)を世に残すにたる檀香(だんこう)とも言うべきもの。それがドイツ語にもフランス語にも訳されて広く欧米人に、出版後半世紀ならんとする今も、かなり広く読まれるのもけだしこのためにほかならぬ。
p.8-9「はしがき」岡倉由三郎 より
『茶の本』[岡倉覚三/著] 村岡博/訳 岩波文庫(1929,1961改版,2005)

... "The Book of Tea"は、... 岡倉の人間として、そして批評家としての一成熟点を示している。この本に説かれている<美の体験>は、普遍性を獲得している。かつて夢のように口にした「普遍美術」「世界美術」は、"The Book of Tea"のなかに実を結んだとい っていいかもしれない。
p.307-8 「第四章 異邦人の旅」より 『岡倉天心 物ニ観ズレバ竟ニ吾無シ』木下長宏/著 ミネルヴァ書房 <ミネルヴァ日本評伝選>(2005.3)


本書は、茶道(茶の湯)の文化を紹介する書であり、道教や禅の解説書であり、「美しい芸術」としての「人生」を生きるための思想・哲学の書でもあります。


それは、以下の言葉に表れています。

第7章「茶の宗匠」ラスト、利休の死を描く直前にある言葉、

美しいものとともに生きたものだけが、美しく死ぬことができる。》(『茶の本』浅野晃/訳 講談社インターナショナル p.194)

さらに、その言葉に対応すると思われる言葉が、この章の冒頭近くにあります。

自分自身を美しいものになし得ないうちは、人は美に近づく権利をもたない》(同書 p.190)

と。

 ・・・

岡倉は、本書の中で「茶道」について、さまざまな言葉で説明に努めています。

そのなかで私が心に留めたものをいくつか紹介しましょう。

... 茶道の要義は「不完全なもの」を崇拝するにある。いわゆる人生というこの不可解なもののうちに、何か可能なものを成就しようとするやさしい企てであるから。》p.21
『茶の本』[岡倉覚三/著] 村岡博/訳 岩波文庫(1929,1961改版,2005)「第一章 人情の碗」より
おのれに存する偉大なるものの小を感ずることのできない人は、他人に存する小なるものの偉大を見のがしがちである。...》p.23
 同書「第一章 人情の碗」より
... 茶道いっさいの理想は、人生の些事の中にでも偉大を考えるというこの禅の考えから出たものである...》p.50
 同書「第三章 道教と禅道」より


私は、左利き認知・啓蒙の活動といったものを行っています。

「利き手の違い」などというものは、一見些細なことに思われがちなのですが、実はそこには、「人間としてのアイデンティティー」といったものまで含まれているような気がしているのです。

「利き手は心につながっている」と感じています。

だから、「利き手を使う」ということは、まさに「その人らしさにつながる行為である」と思えるのです。

ですから、そういう「一見些細なこと、些事の中に偉大さを見出す」、という考え方が身近に思えるのです。


そして、「些事の中に偉大さを見出す」―そういう繊細な神経こそが日本人のいい所のような気がします。

一碗の茶、一杯の茶を飲むという行為に人生を見る、という考え方にも、いかにも繊細な日本人の気性が現れているような気がします。


まあ、そういうものは、本当は、人種や国籍を問わず、人間なら誰でもが持っている、人の心には普遍的に存在するものであるのかもしれません。

けれど、特に、島国に生きてきた日本人―盆栽などの箱庭的なものを愛でる、いかにも日本人らしい習慣のような気がするのです。


岡倉は、茶の湯(茶道)の目的として、
すべての行動を単純に自然に行なう》(『茶の本』村岡博/訳 岩波文庫「第二章 茶の諸流」p.39)
こと、余計な装飾を排除すること、その他を挙げています。

まさにシンプル・ライフやエコ・ライフの先取りのように思います。

... 『茶の本』は芸術論として読める。/私は実のところ、今までこれを芸術論として読んできた。それ以外に私には読みようがなかったといった方がいいかもしれないが、しかしこの本の思想を芸術論として読むとき、それがじつに興味ぶかいひろがりと暗合をもって、西欧の象徴主義あるいはその系に属する文学・芸術思想に重なり合ってゆくのがわかる。》大岡信「岡倉天心」より
『岡倉天心 日本文化と世界戦略』責任編著/ワタリウム美術館 平凡社(2005.6.10) 「第四章 茶の本/『茶の本』の読み方」p.239


茶道の文化こそ日本の文化の底流であり、そこから広がる茶の精神は、世界中に広がっている茶の文化(緑茶、紅茶など)とともに、世界に通じる普遍性を持っている、と思われます。

激動の時代、多様性のぶつかり合う時代だからこそ、そういう繊細な精神を養うことが重要なのではないでしょうか。

これからの時代には、茶の精神を持って生きてゆくことが望まれるような気がします。

もう一度『茶の本』を読むことから始めてみませんか。


*その他の『茶の本』訳書
★『茶の本』[岡倉覚三/著] 村岡博/訳 岩波文庫(1929,1961改
版)―弟由三郎「はしがき」を収録。


★『茶の本』浅野晃/訳 千宗室/序と跋 講談社インターナショナル Bilingual books 28(1998.3)
―左ページに日本語、右ページに英語の対訳。十五世 千宗室による序文と跋文による解説を収録。


★『岡倉天心「茶の本」を読む 日本人の心と知恵』山﨑武也/
著 PHP文庫(2000.11.15)
―1997.9、PHP研究所刊『茶と人生 岡倉天心『茶の本』に学ぶ』文庫化。本文を尊重した「編訳」。著者による「序章『茶の本』に学ぶ」に続けて本文に。


*他のNHKテレビ「100分 de 名著」の記事:
2011年11月放送:2011.10.31
アラン『幸福論』喜びは、行動とともにある!
2011年12月放送:2011.12.6
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』悲しみを、乗り越えよ-「100分 de 名著」NHK
2012年1月放送:2012.1.5
吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK
2012年2月放送:2012.1.29
新渡戸稲造『武士道』日本的思考の根源を見る-「100分 de 名著」NHK
2012年3月放送:2012.3.6
仏教は「心の病院」である!NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』2012年3月
同:2012.4.2
NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで
2012年4月放送:2012.4.3
紫式部『源氏物語』NHKテレビ100分de名著
2012年5月放送:2012.5.2
確かな場所など、どこにもない―100分 de 名著 カフカ『変身』2012年5月
2012年6月放送:2012.6.6
<考える葦>パスカル『パンセ』NHK100分 de 名著2012年6月
2012年10月放送:2012.10.2
鴨長明『方丈記』NHK100分 de 名著2012年10月
2012年12月放送:2012.12.5
<心で見る努力>サン=テグジュペリ『星の王子さま』NHK100分de名著2012年12月
2013年1月放送:2013.1.11
呪文に頼るのもよし?~100分de名著『般若心経』2013年1月
2013年2月放送:2013.2.5
待て、そして希望せよ~NHK100分de名著『モンテクリスト伯』2013年2月
2013年3月放送:2013.3.28
どんな時も、人生には、意味がある。フランクル『夜と霧』~NHK100分de名著2013年3月(再放送)
2013年4月放送:2013.4.11
真面目な私とあなた―夏目漱石『こころ』~NHK100分de名著2013年4月
2013年5月放送:2013.5.20
水のように生きる『老子』NHK100分de名著2013年5月
2013年6月放送:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月
2013年7月放送:2013.7.9
哲学とは、愛である『饗宴』プラトン~NHK100分de名著2013年7月
2013年11月放送:2013.11.10
「物語」に終わりはない『アラビアンナイト』~NHK100分de名著2013年11月
2013年12月放送:2013.12.11
切り離された者たちへ~ドストエフスキー『罪と罰』~NHK100分de名著2013年12月
2014年1月放送:2014.1.21
花とは何か~『風姿花伝』世阿弥~NHK100分de名著2014年1月
2014年3月放送:2014.3.4
戦わずして勝つ『孫子』~NHK100分de名著2014年3月
2014年12月放送:2014.12.3
生きるべきか、死ぬべきか-シェイクスピア『ハムレット』~NHK100分de名著2014年12月
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