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2014.05.04

文遊社版ジュール・ヴェルヌ『黒いダイヤモンド』を読む

昨年末に発売された文遊社からのヴェルヌ復刊シリーズ第三弾。
短編集『永遠のアダム』(表題作他「空中の悲劇」「マルティン・パス」「老時計師ザカリウス」の全4編)、アマゾンを舞台にした暗号解読もの長編『ジャンガダ』に続くもの。

『黒いダイヤモンド』ジュール・ヴェルヌ/著 文遊社 (2013/12/30)

『永遠のアダム』 ジュール・ヴェルヌ/著 江口清/訳 文遊社(2013/6/3)
『ジャンガダ』ジュール・ヴェルヌ/著 レオン・ベネット/イラスト 安東 次男/訳 文遊社(2013/7/27)


今回の特徴は、次の二点です。

(1)ジュール・フェラーによるオリジナル挿画40点以上を収録
(2)特別寄稿エッセイ 小野耕世「地底世界の怪人たち」

先の二冊同様、原著の挿絵を多数収録した美麗な本。
エッセイは、若いファンには耳新しい面も多々ある昔語りが中心で、時代を共に生きてきた人たちには懐かしい話かも。ただ新規な話題性に欠けるところがあり、本書への言及も薄く、もう一押しというところか。

元本は、集英社コンパクトブックス版<ヴェルヌ全集>第19巻『黒いダイヤモンド』新庄嘉章/訳(当時の訳者あとがきを転載)。

ストーリーは―
10年前に廃鉱になったスコットランドの炭鉱の坑道内に居残った老坑夫一家の父サイモン・フォードから手紙を受け取った技師ジェームズ・スターは、きっと新炭鉱を発見したものと期待し招待を受ける。
しかし、直後に訪問をやめるようにというと無署名の手紙が舞い込んだり、坑道を移動中に石が飛んできたり、不審な事件が起きる。
あげくの果てに、スターとハリーおよび妻マッジ、息子ハリーのフォード一家総出で新炭鉱を発見するも入口をふさがれ、死の危機に陥る。
そのとき、ハリーの友人で同じく元炭鉱夫のジャック・ライアンが彼らの様子を窺いにやって来て、謎の人物の誘導により、彼らを発見する。
三年がたち、新鉱山の大洞窟内にスター始めフォード一家やジャックといった炭鉱夫たちが住みつき、炭鉱は成功を収めている。
しかし、成功とは裏腹に不審な事故が続く。
彼らの胸に去来する不安は、彼らの繁栄を阻もうとする悪意を持つ謎の人物の存在であった…。

 ・・・

あらすじだけ聞けば、さほど目新しいものは感じられないかもしれません。

正直『ジャンガダ』に比べても見劣りする感じはあります。
あちらは、暗号解読の面白さとともに、ハラハラドキドキ度が上でした。

今回は、謎の提出はあってもハラハラ度が上がってきません。
ラストで少し盛り上がるものの、平凡と言えば平凡です。
しかし、石炭のできるまでの科学啓蒙的解説と言い、スコットランド旅行での土地柄の案内描写といったヴェルヌらしい描写と、活劇の壺を押さえた展開などいかにも手慣れた作法で読ませます。

私が三大名作と呼んでいる『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』のような派手さや意外性、まさに<驚異の旅>と呼ぶにふさわしい舞台とストーリー展開に比べれば、こじんまりとしたB級エンターテインメントに思えるかもしれません。
それでも、良くも悪くも十分に“ジュール・ヴェルヌ、ジュール・ヴェルヌした”小説で、三大名作を除くと旧作が手に入りにくく、未訳作品の新刊が出ない現状では、ファンにはこたえられない一編でしょう。

せめてこの復刊ブーム?が続いてくれることを期待しています。そして、あわよくば未訳の新刊が、新潮文庫版『海底二万里』レベル(文庫で十分です!)の内容と手に入れやすい価格帯で出版されることを期待してやみません。


【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

*参照:
・『レフティやすおの左組通信』
「ジュール・ヴェルヌ Jules Verne コレクション」

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