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2013.12.10

<左利きの苦悩>「少数派の不便」中学生人権作文コンテスト産經新聞社賞

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12月8日の産経新聞・朝刊に、「第61回中学生人権作文コンテスト(大阪大会)」<産經新聞社賞>の中一生の作文が掲載されていました。
「少数派の不便」という題名で、始めの4分の3は、自身の足の骨折による車椅子生活の体験、ラスト4分の1は、母親の<左利きの苦悩>の体験を紹介して、少数派のことを考えていない社会の問題を訴えていました。

身障者向けのスロープの存在にしても、いざ実際に車椅子生活を体験すると、そのスロープがいかに不適切な作りであるかと実感し、「だれがこれを考えて、作ったんだろう」と腹を立てます。
これでは身障者が自立した生活を送ろうとしても、あきらめる人が出てくる。
そんな毎日が続けば、生きる目標も楽しみも持てなくなる。
母親にそう話すと、<左利きの苦悩>について話してくれたと言います。
(そのくだりを全文引用しましょう。)

お母さんは左利きで、小さいころ右にきょう正させられたそうです。でも、結局字を書くのが両利きになっただけで、他は左利きです。そのお母さんが言うには、左利きのアイテムは最近充実してきたけれど、世の中は昔とちっとも変っていない。右利きの人が住みやすいように作った社会だと言っていました。かぎの回す方向、車いすでも切符がいれにくかった改札。左手の場合は、自分の進路をふさぐように斜め右に手をのばすそうです。意識をすれば嫌になるくらい、数えきれない不便があるそうです。その上、右利きの年配の人からは、珍しがられ「ぎっちょなのに器用ねぇ」と、よく言われていたと聞きました。

簡単に解説しておきますと、<左利きの苦悩>には、(1)生活の不便さという物理的な障壁の問題と、(2)左使いを否定する親の指導や他人の発言という心理的な障壁がある、ということです。

この二つの点を改善されなければ、左利きの生活から決して<左利きの苦悩>はなくならないということです。

どちらの問題も個人の力だけで解決できるものではありません。
パーソナルな道具や、自分の心の持ち方で対処できる部分もありますが、それだけでは限度があります。
やはり社会全体で考えてもらわなければ、解決できない問題なのです。


さて、この中学生さんは、こう結んでいます。

... もし、ずっと不自由だったら、お母さんみたいに左利きだったら、少しでも不便だと感じずに生活できたりいなと思っていました。/少数派の人を切り捨てないで、話をよく聞いて、その人たちの立場になって考えたいと思いました。そして、考えるだけではなく、優しい心をもって、行動できる人になりたいと思いました。

ぜひこの不自由であった時期の経験とこの時に感じた考えたことを忘れることなく、これからの日々を生きていって欲しい、と思います。
そして、少しでも改善の手助けをしていただければ、と願っています。

 ・・・

少数派と言いますか、社会的弱者への配慮というものも、人権擁護の一要素です。
ユニバーサルデザインにも、障害者や高齢者等の観点の他、左利きの問題も取り上げられています。

私はその昔、左利きの問題に関して「右手があるのだから右手を使えば済む問題」と一蹴された経験があります。
左利きに対する無理解を露わに示す例と言えるでしょう。
まったくもって納得のいかない発言です。

人間が人間らしく、その人がその人らしく生きることができて初めて、人権が守られていると言えるのではないでしょうか。
右利きの人は右利きとして生きることに何の差し障りもないのに対して、左利きは左利きとして生きることが許されないのだとしたら、それは真に平等な社会と言えるでしょうか。

私は何も左利きだけが幸せになれるように、と願っているのではありません。
左利きの人も右利きの人と同じ程度に幸せになれる方法を考えて欲しいと願っているのです。

この中学生の思いも、きっとそういうことでしょう。


*「第61回中学生人権作文コンテスト」

《大阪法務局・大阪府人権擁護委員連合会では,次代を担う中学生の皆さんに,人権尊重の重要性,必要性についての理解を深めるとともに,豊かな人権感覚を身につけていただくことを目的として,中学生人権作文コンテストを実施しております。》

●産經新聞社賞
 同志社香里中学校 1年 村上 英「少数派の不便」

その他結果は、↓
第61回中学生人権作文コンテスト結果 - 法務局

*利き手と左利きの研究に関する本:
(日本)
『左ききの神経心理学』八田武志/著 医歯薬出版 1996.11
―左利き研究の専門書。20年余の左利き・利き手研究を研究をまとめたもの。
『左対右 きき手大研究』八田武志/著 化学同人(DOJIN選書 18) 2008.7.20
―『左ききの神経心理学』以降、世界で研究された成果を一般向けに読み物とした本。

(イギリス)
『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス/著 大貫昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006.10
―20年にわたる利き手・左利き研究の成果をまとめた本。原著"Righthand Lefthand"
(世界)
『「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎』デイヴィッド ウォルマン/著 梶山 あゆみ/訳 日本経済新聞社 2006.7
―自身左利きの科学ジャーナリストが、左利きの謎に挑み世界を駆けるサイエンス・ノンフィクション。
 

*左利きの子供のための本:
『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍 2009.4
―今までの日本になかった、イギリスの有名左利き用品専門店オーナーによる、左利きの子供を持つ親・先生へ向けた、左利きの子の生活支援のための手引書。
*左利き生活の本:
『左利きの人々』渡瀬 けん/著 中経の文庫 2009.1
―右利き偏重社会における左利きの人の不便「あるある!」エッセイ集。
 

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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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