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2012.06.27

私とクリスティ:『七つの時計』-ファンクラブ機関誌から

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私が若いころから参加している
アガサ・クリスティ・ファンクラブの機関誌
『ウィンタブルック・ハウス通信』83号

(この機関誌は半年に一度ですから、もう40年以上になります!)

(私の参加は少しあとなので、40年前後でしょうか。)

(アガサ・クリスティとは、イギリスの推理小説家で、ミステリの女王と呼ばれた人。
映画『オリエント急行殺人事件』や『ナイル殺人事件』他、NHKBSのテレビドラマでおなじみの名探偵ポアロやミス・マープルの生みの親。

(数藤会長のアガサ・クリスティ・ファンクラブサイト

に、私の書いた文章が掲載されました。

この機関誌には、<私をクリスティ・ファンにした決定的な一冊>というコーナーがあります。
これは、機関誌もいよいよ最終号間近ということもあり、会員の皆様がクリスティのどのような作品を読んだことがきっかけでクリスティにハマったかを尋ねるコーナーです。
その一文として掲載されたものです。

ファンでない人にはよく分からない部分もあるかもしれませんが、転載しておきます。

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私とクリスティ:『七つの時計』(麗風亭(レフティやすお)康男)

 まずは私にとって、記念碑的なクリスティ作品を順に列挙させていただきます。
(1)最初の一冊:お子様版の『雲をつかむ死』―航空機内の殺人を描くポアロものの長編
中学校の図書室で見つけた推理小説のシリーズ(クイーンの『エジプト十字架―』などがあった?)の中の一冊。確か、『ABC―』とのカップリングだったか?と思います。
(2)一般向けの最初:『ポワロの事件簿1』―創元推理文庫版のポアロものの短編集
高校時代、兄が持っていた創元推理文庫の中から、比較的薄くて読みやすそうなものとして、これを選びました。
(3)最初のポケミス:『親指のうずき』―二十数年ぶりに復活した元“青年冒険家”トミーとタペンスもの
当時(1970(昭和45年)刊、ハヤカワミステリ文庫発刊前の時代)―いや、今もあこがれの翻訳家・深町眞理子さんの本。高校生には少しお高いのですが、深町先生の訳でクリスティが読めるというのと、何と若い頃に創作した若き主人公たちを探偵に起用した“老後編”というクリスティのサービス精神に惹かれたことが大きかったのです。そして、実はもう一つの今回の本題にもつながる事実があるのですが…。

 さて、いよいよ、私をクリスティ・ファンにした決定的な一冊です。
 それは、『七つの時計』(クリスティ文庫版、深町眞理子訳)―私が読んだのは中村能三先生(氏は、クリスティの実質的に最後の作品とも言うべき、トミーとタペンスものの第五弾『運命の裏木戸』(1973年刊)の訳者でもあられます)訳・創元推理文庫版『七つのダイヤル』。

 ポケミス版『親指のうずき』の巻末解説「四十六年後のトミーとタペンス」で小林信彦氏は、

クリスティーは、乱歩のいわゆる“トリックの大家”であるが、同時に、伝記小説のモダン化といった意味での、ストーリー・テラーとして抜群の才能があることは、いうまでもない。だが、「七つの時計」の“語り口のトリック”と、最近の作品傾向とは【関係がある】(【】内原文傍点―引用者注)のではないか。その【関係】(原文傍点)は、「第三の女」の一部が「シタフォードの秘密」に似、「終りなき世に生れつく」が別な或る作品と似ていることより、重要なのではないか。
と書かれています。
 氏は、クリスティーはその初期においては“本格物”と冒険小説を交互に書いていたが、回復期の病人が徐々に杖を手離してゆくように冒険小説を書かなくなっていった、と指摘されています。
 この冒険小説を作る物語の才能は、別の形で“本格物”に流れ込んで行き、他の“本格物”の作家たちがたどった衰弱の道から逃れて、クリスティーが現代に生き残っている秘密ではないか、というのです。

 前置きが長くなりました。私がこの作品をしてクリスティ・ファンにした決定的な一冊とするのは、この冒険小説ぶりにあります。
 若き主人公“冒険娘”バンドル他、若者たちとバトル警視の物語―。
 当時高校生の私は、ちょっとマンガチックな印象のあった(ぴったりなでつけた髪、卵型の頭、ピンとした口ひげに始まり左右対称にこだわり、灰色の脳細胞を自慢する)初老の名探偵ポアロより、論理を武器にしながらもいざとなれば颯爽と愛車を駆って犯人を追いつめてゆく青年探偵クイーンのほうに魅力を感じていました!
 そんな私にとって、この作品は、がらりと印象の異なるクリスティ作品でした。(今なら、やれるじゃないかとでも言いたくなるところでしょうか?)
 高校生の私にちょうど合う冒険に満ちた探偵物語―。まさに“青春冒険ミステリ”の世界です!
 以後、私は最初にあげた初ポケミス『親指のうずき』を読み(先の小林先生の解説にうなずきながら)、当時『ミステリマガジン』に掲載されていたジョン・ディクスン・カーのコラム「陪審席」にあった、『アクロイド―』の前にこのトリックを試していたという冒険もの『茶色の服の男』(先日、深町先生の新訳本で読み返しました!)を読み、トミーとタペンスの最初の冒険『秘密機関』(これも新訳本を読みました。“ヤングアドヴェンチャラーズ”に訳語が変わっていました!)を読み、『エヴァンズ―』を読み―というふうに、一連のクリスティの冒険ものを読み継いでいきました。
 もちろん、その間にもいくつかのポアロものも読んでいたのですが…。
 今時なら赤川次郎さんの小説を読みふける中高生にも似ているでしょうか。

 名前を見ていただければわかりますように、私は数藤会長と同名(字は違いますが)。
同名のよしみでお便りを出し、この会にも参加するようになりました。早々、表紙のない残りものでわるいのですが、と『WH通信』を送ってくださいました! 感激の一言でした。
 そう、いつしか、私はクリスティ・ファンに変身していたのです。
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もちろんクリスティのミステリにあって、上記の冒険ものは傍流に当たります。

名作としましては、やはりポアロやミス・マープルが活躍する作品―『スタイルズ荘の怪事件』に始まる名探偵ポアロものや、『火曜クラブ』に始まるマープルものが、主流です。
しかし、この文章では私がクリスティのファンになったいきさつとして、クリスティのあまり振り返られることの少ない冒険もののおもしろさを紹介してみました。


私のおススメ<クリスティ>作品:
【冒険もの】
『七つの時計』(クリスティー文庫版、深町眞理子訳)
『親指のうずき』(クリスティー文庫版、深町眞理子訳)
『茶色の服の男』(クリスティー文庫版、深町眞理子訳)
  

『秘密機関』(クリスティー文庫版、嵯峨静江訳)
『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』(クリスティー文庫版、田村隆一訳)
 


(文中「クリスティ(英語表記 Christie)」の表記が、「クリスティ」「クリスティー」が混在しています。
これは、出版社により表記がまちまちであることによるものです。筆者はファンクラブ機関誌の表記に従い、「クリスティ」と表記しています。)

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