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2012.01.29

新渡戸稲造『武士道』日本的思考の根源を見る-「100分 de 名著」NHK

ゲスト講師のプレゼンを受けて、古今東西の“名著”を25分の番組4回100分で読み解く番組、
「NHKテレビ100分de名著」2012年2月の放送は、新渡戸稲造『武士道』です。

ゲスト講師は、『現代語訳 武士道』(ちくま新書 2010.8.6)の訳書を手掛けた山本博文氏。

『武士道』は、岡倉覚三(天心)『茶の本』と並ぶ、,明治を代表する知的エリートで国際的に活躍した日本人の手になる、英語で書かれ、1899年にアメリカで出版された日本人論、日本文化論の名著です。
新興国日本への関心と共に、ヨーロッパ各国語に翻訳され、反響を呼んだと言われています。

・岡倉天心『新訳・茶の本―ビギナーズ日本の思想』大久保喬樹/訳 角川ソフィア文庫 2005.1


アメリカで病気療養中の新渡戸稲造が、十年ほど前にベルギー人の法学者ド・ラヴレー氏やアメリカ人の妻からの質問に答えるべく、自らの心のよりどころ、道徳の基本が何であったかを、英文でまとめたものです。

武士の子として生まれ、刀を差していた子供時代の経験を持つ著者が、刀を取り上げられ武士がいなくなった時代に生きる元武士の子である一人の日本人として、刀と武士の関係、武士の子として何を教えられてきたのか、武士の精神的なバックボーンについて、西洋の例と比較して、欧米人に分かるように説明したものです。
ヨーロッパに騎士道あれば、日本には武士道がある、と。

私の発行しているメルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』でも取り上げています。
2009(平成21)年8月31日号(No.24)-090831-『武士道』新渡戸稲造・太平洋の橋

そちらに引用した文章を紹介しておきます。

有数の国際通で、のちに国際連盟事務次長をつとめることになる新渡戸稲造は、封建道徳の権化、「サムライ、ハラキリ」で知られる「武士」をテーマにして、ズバリ『武士道』を英文で著し出版した。多数の国で翻訳されたが、表題を読むだけで眉をひそめ、批判の筆を執った人も多数出た。日本においても同様であった。/しかし、新渡戸は「武士道」こそ西欧の騎士道と重なる日本の歴史精華であり、日本人の良き知性と品性がそこから生まれた母体である、と諄々と説く。つまり武士こそ「ノーブル・オブリジェ」(高い身分に伴う義務)を担った身分であり、日本人が見習い従うべきモラルとマナーを示すスタンダードである、としたのである。
谷沢永一/著『人間通になる読書術・実践編』PHP新書(1999)
「第I部 読書の快楽/第二章 この一冊の読みどころ・箴言集/武士道は日本国民に道徳的標準を供給した『武士道』新渡戸稲造/矢内原忠雄訳」p.179

・『人間通になる読書術・実践編』谷沢永一/著 PHP新書(1999)
―新渡戸「武士道」を含む古典名作案内+谷沢読書論。


邦訳でいいので、日本人ならぜひ一度は読んでいただきたい名著だと思います。
さらに、英語版にもチャレンジできるといいですね。

【放送予定】
第1回 2月1日放送 正義・日本人の美徳
第2回 2月8日放送 名誉・日本人の責任の取り方
第3回 2月15日放送 忍耐・謎のほほ笑み
第4回 2月22日放送 武士道・その光と影

○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
新渡戸稲造『武士道』2012年2月
2012年1月25日発売
定価550円(本体524円)

※主な新渡戸稲造『武士道』訳書:
『武士道』矢内原忠雄/訳 岩波文庫 1984.10改版
―格調高い文語文の翻訳。最近の人にはちょっと読みづらい、わかりにくいと感じる人も。
『武士道 いま、拠って立つべき“日本の精神”』岬 龍一郎/訳 PHP文庫 2005.8.2
―完全現代語訳。古典からの引用も分かりやすい現代語で。巻末解説では、新渡戸の本文では比較的簡単な説明に終わっている「義」について補足解説しています。
『武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える』奈良本辰也/訳 知的生きかた文庫 1993.1
―古典からの引用部分が原典からで現代語になっていない分、人によりわかりづらいと感じるかも。
  


『英語と日本語で読む「武士道」』新渡戸稲造博士と武士道に学ぶ会/編 奈良本辰也/訳 知的生きかた文庫 2009.2
―《『武士道』の英語原文と奈良本辰也の名訳を掲載(抄訳)》
『武士道』須知徳平/訳 講談社バイリンガル・ブックス 1998.6.10
―英語原文と邦訳のセット版。
 


*他のNHKテレビ「100分 de 名著」の記事:
2011年11月放送:2011.10.31 アラン『幸福論』喜びは、行動とともにある!
2011年12月放送:2011.12.6 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』悲しみを、乗り越えよ-「100分 de 名著」NHK
2012年1月放送:2012.1.5 吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK

2012年3月放送:2012.3.6
仏教は「心の病院」である!NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』2012年3月
同:2012.4.2
NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで
2012年4月放送:2012.4.3
紫式部『源氏物語』NHKテレビ100分de名著
2012年5月放送:2012.5.2
確かな場所など、どこにもない―100分 de 名著 カフカ『変身』2012年5月
2012年6月放送:2012.6.6
<考える葦>パスカル『パンセ』NHK100分 de 名著2012年6月
2012年10月放送:2012.10.2
鴨長明『方丈記』NHK100分 de 名著2012年10月
2012年12月放送:2012.12.5
<心で見る努力>サン=テグジュペリ『星の王子さま』NHK100分de名著2012年12月
2013年1月放送:2013.1.11
呪文に頼るのもよし?~100分de名著『般若心経』2013年1月
2013年2月放送:2013.2.5
待て、そして希望せよ~NHK100分de名著『モンテクリスト伯』2013年2月
2013年3月放送:2013.3.28
どんな時も、人生には、意味がある。フランクル『夜と霧』~NHK100分de名著2013年3月(再放送)
2013年4月放送:2013.4.11
真面目な私とあなた―夏目漱石『こころ』~NHK100分de名著2013年4月
2013年5月放送:2013.5.20
水のように生きる『老子』NHK100分de名著2013年5月
2013年6月放送:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月
2013年7月放送:2013.7.9
哲学とは、愛である『饗宴』プラトン~NHK100分de名著2013年7月
2013年11月放送:2013.11.10
「物語」に終わりはない『アラビアンナイト』~NHK100分de名著2013年11月
2013年12月放送:2013.12.11
切り離された者たちへ~ドストエフスキー『罪と罰』~NHK100分de名著2013年12月

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2012.01.25

『三月は深き紅の淵を』恩田陸:メルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」296号告知

無料左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』の先週号の告知です。

 ・・・

第296号(No.296) 2012/1/21
「名作の中の左利き~推理小説編4『三月は深き紅の淵を』恩田陸」は、
「■名作の中の左利き■~推理小説編」の第4弾。

恩田陸氏の異色のミステリ『三月は深き紅の淵を』のうちの第二章「出雲夜想曲」を取り上げています。

《決してできのいい小説ではないけれど、誰もがはまるという稀覯本『三月は深き紅の淵を』の作者は誰かという謎を、現役の小説編集者が推理するという趣向。》
その作者こそ左利きで、その左利きの人らしい動作を描いた文章が多々見られると言うのですが…。

さらに作中、右利きの編集者が、この左利きらしい描写の部分に対して抱いた「違和感」がそもそも「左利きの作者像」に思い及んだ発端だったというのです。

人が左利きの仕草に抱く、この「違和感」とは何なのでしょうか?

詳細は本誌で―。

*今回取り上げた本:
『三月は深き紅の淵を』恩田陸/著 講談社文庫(2001.7.13)
―誰が書いたか不明の謎の稀覯本を巡る、読書好きの面々による読
 書談義・創作談義が面白い。作中作と対応した内容を持つ独立し
 た4話からなる異色のオムニバス長編ミステリ。解説:皆川博子。

【過去の ■名作の中の左利き■~推理小説編 の記事】
2011.12.29阿刀田高「兄弟」とLYGP2012:メルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」291、292号告知
2011.11.24<アブナー伯父>「藁人形」:週刊ヒッキイhikkii287名作の中の左利き~推理小説編2
2011.9.24推理小説と左利き:週刊ヒッキイhikkii278名作の中の左利き~推理小説編1

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2012.01.24

東野圭吾『容疑者Xの献身』が米エドガー賞候補に

1月20日に飛び込んだニュースです。
エドガー賞候補に 東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」- MSN産経ニュース

アメリカMWAの選定する「エドガー賞」の今年の最優秀小説賞候補として、東野圭吾『容疑者Xの献身』を選んだと発表したそうです。
選考結果の発表は4月26日の予定。

『容疑者Xの献身』は2005年に出版され、翌年、直木賞を受賞しました。
「文春ベスト10」2005年1位、「このミス」2005年1位にも選ばれています。
テレビドラマ『ガリレオ』シリーズのキャスト・スタッフにより、映画化もされています。

容疑者Xの献身 (文春文庫)
容疑者Xの献身 スタンダード・エディション [DVD]
容疑者Xの献身 ブルーレイディスク [Blu-ray]

  


英語版も出版されていたそうです。

2009年「CREA」(文藝春秋)版東野圭吾作品人気ランキングでは、『白夜行』に次いで第2位を獲得。
ともに、テレビドラマ化や映画化の影響もあるようですが。

著者いわく、

《『ガリレオ』『予知夢』では謎解き装置にすぎなかった湯川ですが、一応、探偵役のキャラクターとして出す以上は、どんな人間かそろそろ肉付けしようと言うことで、彼を主人公に一回、長編を書いてみようということになったんですよね。》
という作品。
(「全著作 自作解説クロニクル」p.130より―『東野圭吾公式ガイド』東野圭吾作家生活25周年祭り実行委員会/編 集英社 2011.9.9・非売品)

【予約受付中】2012.2.16発売予定
『東野圭吾公式ガイド 読者1万人が選んだ 東野作品人気ランキング発表』東野圭吾作家生活25周年実行委員会/編 (講談社文庫)


期待にたがわず、探偵役・湯川学の人間性が浮かぶ作品となったようです。

 ・・・

世界的に見ましても、日本の小説は技術的にも優れているそうで、内容的にもかなりの水準にあるものが少なくないようです。
ただ、惜しむらくは、言語の壁があり、広く知られ、読まれる状況にはない、というのが残念です。
今後さらに、広く世界中で読まれるとよいのに、と思います。

因みに、過去に日本の作家がノミネートされたのは、2004年桐野夏生『OUT』以来のこと。
このときは候補に終わりました。

2004.3.5 『OUT』桐野夏生
2004.5.2 OUTはアウト/桐野夏生「OUT」エドガー賞逃す

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3) 桐野 夏生


『浪花少年探偵団』のタイトルにもあるように、また、『白夜行』の冒頭に近鉄・布施駅云々という記述が出てきますように、東野圭吾氏は、地元大阪出身の作家ということで、親近感を持って見ていました。
ぜひ、大賞を手にして欲しいものです。

一海外ミステリ・ファンとしても、期待するところ大です。

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2012.01.19

幅允孝『幅書店の88冊 あとは血となれ、肉となれ。』を読む

『幅書店の88冊 あとは血となれ、肉となれ。』幅允孝/著 マガジンハウス 2011.6.23


あの有名なブック・ディレクター幅允孝(はば・よしたか)氏の初出版という、お気に入りの本88冊を彼の言葉とセンスで紹介する本のガイド・ブックです。

《人が本屋に来ないならば、人がいる場所へ本を持っていこうと、あちらこちらに本を届けてきた》
(本書p.187)というあの人です。

「はじめに 遅効の抽き出しを」の中で、本について語っている部分が興味深いものがあります。
非常に読ませます。

彼は本は手段だと言う、毎日の生活を潤わせるためのものとして。
もちろんこういう言葉では表現していないけれど…。

《本は、誰かの経験や感情をテキストという言霊(ことだま)に情報化したものだ。僕が大切だと思うのは、その情報化された誰かの経験を、ちゃんと自らの内側に注入し、自分なりの経験にもういちど還元できるかどうかだ。誰かの経験を、自分の経験として血肉化すること。自分の言葉で話せるようになること。》
(p.3)

「救われよう」「なにかを得よう」と本を手に取る人が多い中で、彼はこう言います。

《厳密に言えば、本は誰も救ってくれないのかもしれない。》
(p.3)

ただ「本の遅効性」を訴えています。

読書によって、自分の中の抽き出しが増える、  
その抽き出しの中の小さな経験が、困難な現実に耐える力を与えてくれる、と。

《本を読むと「救われはしないけれど、耐えられるかもしれない」とは言える。》
(p.4)
《僕にできるのは、... 自分の好きな本を共有したいと願うことだけだ。》
誰でもおもしろいことや感動を他人と共有したいと思うだろう、そういう思いだと。

本には「良い本」も「悪い本」もなく、今の自分に「あう本」と「あわない本」があるだけ、

《1000人が本を手に取れば、1000通りの読み方があるはずだし、その余白の大きさが本の魅力でもある。》
(p.5)
と続けます。

最後に、物理的にすべての本を読み尽せないことについて、ふたたび

《僕は、読んだ本の数よりも、読書にあてた時間よりも、読んだものがどう自身の中へ血肉化するかのほうが大切だと思える。》
(p.6)
と繰り返します。

(これは本書のラスト「感謝の言葉」に続くページに示されている引用、

《本を読む人の美点は、情報収集力にあるのではない。また、秩序だて、分類する能力にあるわけでもない。読書を通じて知ったことを、解釈し、関連づけ、変貌させる才能(ギフト)にこそある。》アルベルト・マングェル『図書館 愛書家の楽園』
(p.191)にも、さらに本書副題にもつながります。)

そして、

《すべての本を網羅した無限の図書館があるとしたら、それは僕らが生きている世界そのものなのだ。》
(p.6)
と結びます。


また、「はじめに」の中でもふれているように現実のタフさについてや、冒頭の「オブラートに包めない痛みについて」の末尾、ヴォネガットの「人生とはなんだろう?」に、息子マークが応えた言葉の引用の

《父さん、われわれが生きているのは、おたがいを助けあって、目の前の問題を乗りきるためさ。それがなんであろうとね」。ヴォネガットは「それがなんであろうと」の部分が特に気に入っていたらしい。/そう、その痛みがなんであろうと、僕たちの人生も前に進んでゆくのだ。》
(p.13)
という部分を見ても、この本が東日本大震災のあとに出版された本であることを如実に示している、震災以後の生き方を見据えたものとなっていると言えるでしょう。

 ・・・

内容について簡単に見ておきましょう。
主に、絵本、写真集、マンガ、雑誌といったビジュアル系の本、日記、自伝・伝記など現実との接点を持つ本が多いように感じます。
創作、詩・小説なども含まれていますが、全体に気軽に手に取り、何かしら感じ取れる本を主体に選ばれていると思いました。

それが“幅”流なのかな、という印象です。

構成も様々です。

一日24時間の中で一時間毎にその時間帯にふさわしいと思われる一冊の本を紹介する「彼女たちの時間」。
文章ごとに、文字の大きさを変えたり、段組を変えたり。
紹介する本を素材にした写真と文を見開きで示したり。
一冊の本を二通りの想定読者に合わせて紹介したり。
人に寄り添うように、押しつけにならないように。
なおかつ自分の感性を見せ、共感を得られるものなら得たいというように。

―と、様々な工夫と共に紹介しています。

それは、「はじめに」の中で

《あなたが自然に本を手に取りたくなるような環境にその一冊を配置してきたつもりだ。》
(p.5)
と述べている心遣いを思わせるような方法だと言えましょう。


私の読みたい、というか普段読んでいる本とはまったく傾向の違うものが多く、新鮮さがありました。

ただハッキリ言って、手に取りたいと思った本はあまりないというのが正直なところです。
それはここに紹介されている本に魅力がないとか、紹介の仕方に問題があるとか言うのではなく、あくまでも私の感性と合わない、私の求めるものとは違う、ということにすぎません。


私の印象に残った言葉を拾っておきます。

 

《どんなネガティブな状況でも、「存在をあるがままに、前向きに肯定し、受け入れること」つまり「これでいいのだ」である。こんな真理に行き着いた人間も、数えるほどの仏教者くらいなのではないだろうか?》
(p.75)―「愛される、求道的な壊れ方 『おそ松くん』『天才バカボン』『レッツラゴン』赤塚不二夫」

すべてをあるがままに肯定的に明るく受け入れる度量の大きさというものは、なかなか難しいものですが、「これでいいのだ」と思うことで楽になることって結構あると思います。
また、私のように気弱、内気、内向型の人間の場合、他人の意見を受け入れる一方だったり、振り回されたり、自分を見失うことが多く、逆に開き直って、「これでいいのだ」と他人の意見を突き放すことも大事かもしれません。

1996年ノーベル文学賞を受賞したシンボルスカ(1923年、ポーランド生まれの女性詩人)の受賞スピーチの印象的な部分を紹介する文章から―

《シンボルスカは「私は知らない」という言葉を自分に問いかける重要性を説く。... 自分に向けてそのささやかな質問を続けよと説く。自分という個人にとっての「私は知らない」をたくさん発見すること。/街を歩いていて見かける些細な... 視点が世の中を具体的にかえる最初の歩みになるのだろう。... それは随分ちいさい一歩のように思えるけれど、大股に見える幻影の一歩よりも、確実に力強い歩みだ。そして、そんな「起きるに値する朝」を毎日繰り返して生きることが、世の中を実際にかえる最小単位となるに違いない。》
(p.23)―「実際的な言葉の効用 『終りと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ」

「私は知らない」という自覚は、ソクラテスの「無知の知」といわれるものに通じる考え方でしょう。

また「朝」と言えば、ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、

《国の運命は、選挙で誰に投票するかで決まるのではない。... どんな紙を投票箱に投じるかではなく、毎朝どんな人間を自分の寝室から通りに送り出すかにかかっているのだ。》
―「マサチューセッツ州における奴隷制度」(『ソロー語録』p.41 岩政伸治/訳 文遊社 2009.10.25)
と語っています。
一人一人の、朝から始まる一日一日の心の持ちようから世界を変えてゆくことができるのだ、という意味では同じことを言っているのでしょう。

 ・・・

私自身、元“本屋の兄ちゃん”としての興味から、この本を手に取りました。

“ブックディレクター・幅允孝”という人物を知ったのはいつどこでだったかは、記憶がありません。
しかし、一度その仕事がどういうものか見たい、知りたいという気持ちがありました。

今回、本の形でその一端を知ることができ、もう少し今度は生の形でその仕事ぶりを拝見したい、という気持ちも生まれて来ました。
これからの本屋のあり方というものを考える上でも、多いに興味があります。

頭に片隅にその名をメモして置こうと思いました。

 ・・・

因みに、88冊中、私の読んだことのある本は、『人間の土地』、『センス・オブ・ワンダー』『長距離走者の孤独』。
あと、『おそ松くん』『天才バカボン』『少年マガジン』がかすっているくらい。

ほとんど読んでないなあ、俺っていったい何を読んできたんだろう?

そうだ! 『LY書店の○冊』っていうものを試みるのもいいかも…。


幅允孝、ブックディレクターという仕事。|エキサイトイズム Vol.133 2009年1月26日
ブックディレクターの幅允孝さんに聞く(前編)~ 「普通の会社員として仕事を任されたのは幸運でした」
ブックディレクターの幅允孝さんに聞く(後編)~ 「ゆとり世代だって言われていても生きてりゃ食えるよ 」

*参考:
『図書館 愛書家の楽園』アルベルト・マングェル/著 野中邦子/訳 白水社 2008.9.29
―《古今東西、現実と架空の図書館の歴史をたどり、書物と人の物語を縦横無尽に語る。》
『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ/著 沼野充義/訳 未知谷 1997.6
 

『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン/著 三嶋輝夫・田中享英/訳 講談社学術文庫 1998.2.10
『ソロー語録』ヘンリー・デイヴィッド・ソロー 岩政伸治/編訳 文遊社 2009.10.25
 

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2012.01.18

左利きとマナー(1):メルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」295号告知

無料左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』の先週号の告知です。

 ・・・

第295号(No.295) 2012/1/14
「左利きとマナー(1)はじめに」は、
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その19― 左利きとマナー」の第1回目。

今年からまた新しいテーマ「左利きとマナー/作法」について考えてゆこう、というものです。
この問題はなかなか難しいもので、簡単に結論が出るものでもあにでしょう。
しかし、絶対に避けては通れないものであり、時間をかけて考察してゆきたいものです。

まずは私なりに総論としての結論をまとめてみました。

●形式は手段であって、目的ではない
●ルールとマナーの違い
●目の前の現実を見つめる
●利き手・利き側の違いを考慮したマナーへ

詳細は本誌で―。


*本誌でふれた本:
『幅書店の88冊 あとは血となれ、肉となれ。』幅允孝/著 マガジンハウス2011.6.23
―ブック・ディレクター幅允孝の選んだ本88冊を“幅”流に紹介する本のガイド。

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2012.01.16

名著と名作の違い

私の読書論-27-初心者のための読書の仕方を考える(11)
最初の一冊の選び方(8) 本選び(選書)の方法 III
―第73号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2012(平成24)年1月15日号(No.72)-120115- 私の読書論-27-初心者のための読書の仕方を考える(11)
最初の一冊の選び方(8) 本選び(選書)の方法 III


本誌では、古典の名著・名作を紹介しています。

この「名著」と「名作」の違いを、改めて確認しておきましょう。

「名著」とは、「名高い著書」「優れた著書」のことで、いわゆる“リアル”な本です。
フィクション(虚構)ではないものを指します。

主に、科学や思想、宗教、哲学等の論文、およびその解説書の類を言います。

ビジネス関係の本の自己啓発書なども、こちらに含まれるケースが多いようです。
また、文字通り「ノンフィクション」もあれば、「ドキュメンタリー」もあります。
「日記」や「自伝・伝記」も、基本的には嘘を書かないという前提の下に書かれているとされていますから、これも含みます。

本屋さんの区分で言えば、「教養書」と呼ばれるものです。

(ただし「日記」や「自伝・伝記」は、文学作品として扱うケースもあります。
この場合は「名作」、本屋の区分では「文芸書」となります。
ややこしいですね!)


一方「名作」は、「名高い作品」「優れた作品」
すなわち、作りもの、虚構、創作です。

「小説」「戯曲」、「詩」、「短歌」、「俳句」などの文学作品。
本屋の分類では、「文芸書」となります。

(もちろんこの言葉は、文学作品―本以外にも、絵画や彫刻等の美術、音楽、映画等の他のジャンルの芸術作品一般に使います。)


で、問題は、「随筆・エッセイ」の類です。

創作的な「随筆・エッセイ」もあります。

一般には、「随筆」は《見聞・経験・感想などを気の向くままに記した文章》―『広辞苑』第六版。
「エッセイ」は《自由な形式で書かれた、思索性をもつ散文》―同。

思索性を基準に、「名著」と「名作」を分けるのが、わかりやすいかと思います。
すると、「随筆」は「名作」、「エッセイ」が「名著」ということになります。

もちろん、こんなふうに単純に分けられるという保証はありません。
実際には、非常に複雑といわねばなりません。

(先ほどの「日記」や「自伝・伝記」も同様でした。)

例えば、昨年惜しくも亡くなられた北杜夫さんの<どくとるマンボウ>シリーズはどうでしょうか?
ユーモア系のエッセイとしては文芸的でもあり、時に非常にシリアスで思索性に満ち、名著と呼びたい作品もいくつかあります。

北杜夫『どくとるマンボウ航海記』
―出世作。最初のエッセイ。海外渡航がまだ珍しかった敗戦後の時代、アジア、アフリカ、ヨーロッパを巡るマグロ漁の調査船船医としての体験を描く。
同『どくとるマンボウ青春記』
―文学にあこがれ、山に登る…寮生活の若き日々。旧制高校時代の<古き良き時代>の青春の記録。
 

「エッセイ」の語源となっている、モンテーニュの「エセー」は、文学的作品ともされながら、哲学書の範疇にも入っています。
そうすると、「名作」で「文芸書」であり、「名著」で「教養書」です。

モンテーニュ『エセー』
エセー〈1〉人間とはなにか 荒木 昭太郎/訳(中公クラシックス)
―3巻107章『エセー』新版を、〈1〉人間とはなにか〈2〉思考と表現〈3〉社会と世界 とテーマ別に全3巻に編集した選集の第1巻。
エセー〈1〉宮下志朗/訳 白水社
―文中に(a)(b)等の第1版以降の追加の履歴を示す記号を付した従来のものとは異なり、自然に読める翻訳としたシリーズの第1巻。
 

一見簡単そうで、実は個別に見るとややこしい。
現実というものは、そういうものなんでしょうね。

単純にはいきません。

※本誌で取り上げた本:
『これが「教養」だ』清水真木(しみず・まき)/著 新潮新書 2010
―「教養」とは何か? 本来の意味は? 現代においては? を解き明かす。

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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2011.12.31「名著と名作の違い」を転載したものです。
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2012.01.11

左利きには天才が多いって本当?―web R25より

『web R25』<W×Rウェブレビュー>の
「身体にまつわる都市伝説 第80回 左利きには天才が多いって本当?」
という記事が出ています。

“都市伝説”というぐらいですから、話題の一つとして聞き流せばよいのかもしれません。

しかし、左利きライフ研究家としては、やはりちょっと書き留めておいても良いかと思います。

池袋スカイクリニック須田隆興先生によりますと、

《「... 左利きの人が後天的に才能を鍛えられる要素はあるのではないでしょうか。世の中にある道具の大半は右利きの人向けに作られているため、左利きの人は必然的にトレーニングの頻度が多くなるからです」》
というお話。
《「... 手を使うという行為自体、良い意味で脳に大きな負荷を強いています。たとえば左利きの人が右利き用の道具を使う際には、“どう対応すべきか”という思考や検証が発生します。つまり、先天的に左利きの人は、幼い頃から自然に脳がトレーニングされてきたと考えられるでしょう」》
と解説されています。

「左利きには天才が多い」説の中身は、《幼少期から鍛錬された脳が、常人とは違ったポテンシャルを発揮する…》ということか、と。
〆として、《日常生活であまり利き手ばかりに頼りすぎず、脳トレを意識してみるのもいいかもしれない。》というのですが…。

“脳の違い”ということも書かれています。

《「利き手」を医学的にひもとくと、「右利きの人は言語機能の優位半球が左脳にあり、左利きの人は右脳にある、というのが定説」と須田先生は解説する。つまり、利き手によって脳の使い方が変わるともいえそうだ。》
と。

ただ脳と言語と左利きについて書かれた本(例えば、『言語と脳』杉下守弘/著 講談社学術文庫 2004)を読みますと、
失語症の研究から、

《右利きでは左脳が言語優位半球であるのが普通》であるが、左利きの場合は左脳が言語優位半球である人が多いけれども、右脳が言語優位半球である人が二十%ほど存在する》
「第三章 左利きの人の言語と脳」p.69 とあります。


一概に「左利き=右脳が言語優位半球」とは言えないようです。
この辺のところが、左利きの問題を複雑にしているように思います。


とにかく、言語優位脳に関してはどうであれ、日常生活の中で左利きの人が工夫を余儀なくされ、その結果として後天的に脳が鍛えられるという点は、充分あり得る話だと納得できます。

ただそこから、「左手・左側を使えば、即右脳が鍛えられるか」というと、その辺は疑問だと思うのですが…。

先に、2012.1.9 魚に「右利き左利き」 人間の脳解明に期待-MSN産経ニュースから
でも書きましたように、

人間の脳は、通常左右の脳が総合的に働いているので、右脳がどうとか左脳がどうということは、一概に言えないそうです。
『脳科学の教科書 神経編』理化学研究所脳科学総合研究センター/編
 岩波ジュニア新書680 2011.4 


右利きの人が恵まれた環境(右利き仕様の社会構造)により甘やかされている→怠惰に陥りやすい、無能化する危険性がある、また身体的にも非“利き”側が劣化している、という事実は否定できません。
それに比べて、左利きが冷遇されているがゆえに工夫を求められる→創造性豊かになる、また身体的にも非“利き”側が鍛えられる、という事実も確かです。

本日の結論として、
《甘やかされた人間は怠惰から無知に陥るが、努力するものからは知恵が生まれる。》(レフティやすお)
とでも書いておきましょう。

*『R25』での左利き記事のなかに、私の関係するものがありますので、メモしておきます。
2007.12.6 R×R 右利きが左利きより多いのはなぜ?
『レフティやすおのお茶でっせ』2007.12.6 『R25』左利き記事にコメント掲載される

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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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2012.01.10

きょう一月十日は本戎

今日はえべっさん、本えびすです。

えべっさんというものが、全国的なものなのか知りませんが、
関西ではこの九日十日十一日の三日、えべっさんが賑やかです。

(ただし大阪の八尾では、その名にちなんで、八日えびすと言って、
八日九日十日に行われます。)

2012010911_fuse_ebisu

(画像:布施戎神社の新聞折り込みチラシ)

うちの近くには、布施戎神社があり、
参道に当たる商店街には出店が並び、参拝客でにぎわいます。

元々、商店街の人たちが商売繁盛を願い、神社をこの地に招いたというのが発祥のようです。

その思いがかない、地元商店街もこの時とばかりに大賑わいという感じです。


私は子供の頃に父親に連れられてきた思い出があります。
昔懐かしいとも言える風景です。

そういえば、子供の頃、年末の大掃除のときに畳の隙間から小判が出て来て大喜びしたことも思い出します。
もちろんこれは、えべっさんの福笹についていた作りものでしたが…。

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2012.01.09

魚に「右利き左利き」 人間の脳解明に期待-MSN産経ニュースから

新年早々左利きの記事を書こうと思いつつ、そのままになっていました。

120107sankeisinbun_sakana

(画像:7日朝、産経新聞で見た記事)

そこに飛び込んできたニュースがこれ。
これ幸いと、飛びついた、という次第。

魚に「右利き左利き」 人間の脳解明に期待 - MSN産経ニュース
(動画ニュース)
魚に「右利き左利き」 名古屋大研究員らが撮影

《名古屋大の竹内勇一研究員らの研究チームが》、《餌を捕る時に左右性(右利き、左利き)があるとされる魚の捕食行動を明確に撮影、分析することに成功した》と、《6日付の米科学誌プロスワン電子版に発表した》
―というものです。
《人間の利き手と脳構造の関係解明への応用も期待できそうだ。》
―とあります。

記事の冒頭まとめの言葉には、《人間の利き手》とありますが、
記事内の竹内研究員の言葉では、

「今後、魚の左右性に関係する神経系を特定し、人間の“利き”と脳のメカニズム解明につなげたい」》
―と“利き”という表現になっています。

この辺のニュアンスは、私は重要なポイントだと考えています。

「利き手」と言い切ってしまうと、一般の人にはわかりやすいかもしれませんが、
範囲が絞られていまします。
利き手以外にも、利き足や利き目・利き耳などがあります。

あくまでも“利き”というのは、身体全体にわたる偏りの傾向を示すものだと思います。
実際にどちらの側(の手)を使うかというより、どういう傾向があるか、ということです。

人間の場合、意識的に使う場合と無意識に使う場合、また意識していなくても、習慣的に使う場合があります。
学習により習慣化する行動というものがあるわけです。

そういうものを除外して、あくまでも真に“非”意識的な傾向を“利き”と呼ぶのだ、と私は理解しています。

 ・・・

閑話休題―。

昔は、人間にだけ「利き手」がある、と考えられてきました。
「手」を持つのが、人間だけ、という考え方もありますから。

たぶんに、これはキリスト教文明の影響ではないか、と思うのですが、
キリスト教では人間と他の動物とはまったく別格の扱いですから。

理由の一つに、
「ヨーロッパにはサルがいなかったからではないか」という説があります。

人間と他の動物が一つながりのもの、という考えを導き出す
「進化論」をダーウィンが発表するのを何年も押さえていたのは、
一つにはこのキリスト教会からの弾圧を恐れたから、といわれています。


話を戻しまして―。

「左右の非対称性」という考え方をすると、
様々な動物に「利き手」に相当するものが見つかるようになりました。

テレビでも犬や猫の利き手、
シロクマの利き手調査をやっている番組も見たことがあります。

今では人間特有の現象という考え方はないようです。

 ・・・

昨今では、オリンピックの代表選手などが、右利きでも左手で箸を使う訓練をしたり、
右脳革命―創造力活性化の決め手 (新潮文庫)
』(T.R.ブレークスリー/著 大前研一/訳 プレジデント社 1981、新潮文庫 1993)以来、
左脳に偏った思考に柔軟性を持たせるために右脳を鍛える、
といった理由で、左手を使え、という話があります。

身体の左右のバランスを取るのは、理解できますが、
思考や発想がどうこうというのは、考え過ぎのような気がします。

ちゃんとした脳科学の本

『脳科学の教科書 神経編』理化学研究所脳科学総合研究センター 編
 岩波ジュニア新書680 2011.4


など読んでみますと、ほとんど否定的です。

人間の脳は、通常左右の脳が総合的に働いているので、
右脳がどうとか左脳がどうということは、一概に言えないそうです。

巷に溢れる“エセ”脳科学の本といわれているものには
色々と出ていますが…。

なにはともあれ、
“利き”の解明に近づく第一歩として、大いに期待しています。

*利き手と左利きの研究に関する本:
(日本)
『左対右 きき手大研究』八田武志 化学同人(DOJIN選書 18) 2008.7.20
―1996年11月刊『左ききの神経心理学』以降、世界で研究された成果を一般向けに読み物とした本。
(イギリス)
『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス/著 大貫昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006.10
―20年にわたる利き手・左利き研究の成果をまとめた本。
(世界)
『「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎』デイヴィッド ウォルマン/著 梶山 あゆみ/訳 日本経済新聞社 2006.7
―自身左利きの科学ジャーナリストが、左利きの謎に挑み世界を駆けるサイエンス・ノンフィクション。
  

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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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2012.01.05

吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK

ゲスト講師のプレゼンを受けて、古今東西の“名著”を25分の番組4回100分で読み解く番組、
「NHKテレビ100分de名著」2012年1月の放送は、吉田兼好『徒然草』です。

ゲスト講師は、『ヘタな人生論より枕草子』や『ヘタな人生論より徒然草』の著者でもある、荻野文子(予備校講師・文筆家)さん。

『ヘタな人生論より徒然草』河出書房新社(河出文庫版あり)2003.5 に対する出版社の内容案内は、

《徒然草から「兼好流・生きるヒント」のエッセンスを抜粋。現代語訳とともに、人生を歩むうえでのモノの見方や考え方を、著者ならではの軽妙洒脱な語り口で解説する。》

 

『徒然草』と言えば、『枕草子』と並んで随筆の古典として有名です。

《つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。》

私の印象では、女性の手になるだけあって、女性向けで抒情的で内向きの私的な随筆集という感じの『枕草子』に対し、
『徒然草』は、男性の書いたものだけに、男性向けで叙事的で雑学的な外向きの人生読本といったところです。

武家の時代である鎌倉時代の末期の人・兼好は、下級貴族の出としては、歌人としての名声とともに、それなりに出世したようです。
しかし、仕えていた帝の失脚とともに、宮仕えをやめ、出家。
出家といっても、歌人として都にも出向き、世間とは付かず離れずの暮らしぶりであったようです。
そして、後に『徒然草』と呼ばれる随筆を書き始めます。

人生の観察者として生涯を振り返りつつ、思うままに綴った、ちょいと思索的な随筆という意味では、モンテーニュ『エセー』にも似ているかもしれません。


鴨長明の『方丈記』がどことなく出世街道から外された人の恨みつらみのようなものを感じさせるのに比べて、兼好の『徒然草』には、自ら身を引いた人らしい醒めた視線、冷静に世間を見つめる態度といったものを感じます。


全243段からなる短文による随筆集です。

ですから、とっつきやすくどなたでもそこそこ読めます。

読めば納得!の文章もあれば、時に何これ?というものもありで、
なかなか興味深いものです。

例えば、
第百十七段に《友とするにわろき者、七つあり。》と言います。
一に《高くやんごとなき人》、二に《わかき人》、三に《病なく身つよき人》、四に《酒を好む人》、五に《武く勇める兵(つわもの)》、六に《虚言する人》、七に《欲ふかき人》
要するに付き合うのに疲れる人。

逆に《よき友に三つあり。》
一に《物くるる人》、二に《くすし》(お医者さんですね)、三に《智恵ある友》
知り合いにいると、便利な人。

「なるほど」と言えば「なるほど」ですが、ちょっと自分に都合がよすぎるきらいもあります。

第百三十四段には、《おのれを知るを、物知れる人といふべし。》とあり、まさにソクラテスの「汝自身を知れ」のパターンが見て取れます。

第三十五段には、《手のわろき人の、はばからず文かきちらすは、よし。みぐるしとて、人にかかするは、うるさし。》―字が下手でも自分で書きなさい、という。

 ・・・

私のおススメ入門書としましては、
昨年惜しくもご逝去された谷沢永一先生の『知識ゼロからの徒然草入門』(幻冬舎 2006.12)。


主にサラリーマン向けといった感じですね。

これはという話題を選んで、古谷三敏さんのイラスト付の見開き2ページで解説してゆきます。

《古文の全文に拘わらず、現代人に必要な部分のみを摘出(ピックアップ)し、通読できる訳文を意図した》
ものとあります。

いかにも人間通の谷沢さんらしい選択と解説が楽しめます。

(上の例はこちらから取りました。)

 ・・・

さて昨夜は、その一回目。

第1回 心地よい人づきあいとは

【放送時間】 2012年1月4日(水)午後10:00~10:25/Eテレ(教育)
【再放送】 2012年1月11日(水)午前5:35~6:00/Eテレ(教育)
      2012年1月11日(水)午前11:30~11:55/Eテレ(教育)

上にも書きました友だち選びについて、人付き合いについて、そして男女のこと。
人間関係に関してのお話でした。

人付き合いというものは、こちらの思いと向こうの思いの双方向性のものです。
こちらから行く場合、向こうから来る場合―。
赴くときと受け入れるときと―。
その両面から物事を捉えるのが兼好流というところでしょうか。

《同じ心》がキーワードだと荻野さんの言葉―。
そういう《同じ心》を持つ人と出会えれば、誠によき人生となるのでしょうが、現実は…。

一生独身を通したという兼好の人間に対する思いの複雑さ。
私も独身の身だけに分からぬこともありません。

 ・・・

荻野文子さんが、今後どのように読み解いて下さるのか、大いに楽しみです。

第2回 1月11日放送 上達の極意
第3回 1月18日放送 世間を見抜け
第4回 1月19日放送 人生を楽しむために

現在テキストも発売中!

○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
兼好法師『徒然草』2012年1月
2011年12月24日発売
定価550円(本体524円)

※原典:
『徒然草』島内裕子/校訂・訳 ちくま学芸文庫 2010.4
『新訂 徒然草』西尾実・安良岡康作/校注 岩波文庫 1985.1
 

『改訂 徒然草―付現代語訳』今泉忠義/訳注 角川ソフィア文庫 1957.2
『徒然草』角川書店/編 角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 2002.1
―現代語訳と原文で古典のエッセンスに触れる入門書。
 

*他のNHKテレビ「100分 de 名著」の記事:
2011年11月放送:2011.10.31 アラン『幸福論』喜びは、行動とともにある!
2011年12月放送:2011.12.6 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』悲しみを、乗り越えよ-「100分 de 名著」NHK

2012年2月放送:2012.1.29
新渡戸稲造『武士道』日本的思考の根源を見る-「100分 de 名著」NHK
2012年3月放送:2012.3.6
仏教は「心の病院」である!NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』2012年3月
同:2012.4.2
NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで
2012年4月放送:2012.4.3
紫式部『源氏物語』NHKテレビ100分de名著
2012年5月放送:2012.5.2
確かな場所など、どこにもない―100分 de 名著 カフカ『変身』2012年5月
2012年6月放送:2012.6.6
<考える葦>パスカル『パンセ』NHK100分 de 名著2012年6月
2012年10月放送:2012.10.2
鴨長明『方丈記』NHK100分 de 名著2012年10月
2012年12月放送:2012.12.5
<心で見る努力>サン=テグジュペリ『星の王子さま』NHK100分de名著2012年12月
2013年1月放送:2013.1.11
呪文に頼るのもよし?~100分de名著『般若心経』2013年1月
2013年2月放送:2013.2.5
待て、そして希望せよ~NHK100分de名著『モンテクリスト伯』2013年2月
2013年3月放送:2013.3.28
どんな時も、人生には、意味がある。フランクル『夜と霧』~NHK100分de名著2013年3月(再放送)
2013年4月放送:2013.4.11
真面目な私とあなた―夏目漱石『こころ』~NHK100分de名著2013年4月
2013年5月放送:2013.5.20
水のように生きる『老子』NHK100分de名著2013年5月
2013年6月放送:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月
2013年7月放送:2013.7.9
哲学とは、愛である『饗宴』プラトン~NHK100分de名著2013年7月
2013年11月放送:2013.11.10
「物語」に終わりはない『アラビアンナイト』~NHK100分de名著2013年11月
2013年12月放送:2013.12.11
切り離された者たちへ~ドストエフスキー『罪と罰』~NHK100分de名著2013年12月

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※本稿は、レフティやすおの他のブログに転載しています。
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2012.01.03

3カ月連続「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」ランキングでトップ10入り

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「まぐまぐ」から発行しています、私のメルマガ「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」が、
10月31日11月30日、そして2012年1月2日と、ほぼ3カ月続けて、たとえ月に一度でも
(毎日チェックしているわけではありませんので、本当のところはよくわかりませんが。)
<デイリーアクセスランキング アート・文芸カテゴリ>部門で、トップ10入りしました。

画像をご覧いただけばおわかりのように、
他のメルマガは、日刊や週刊、著名人や有名出版社のメルマガといった、発行部数が数万単位、何千単位のメルマガが並んでいます。

対してうちのメルマガは、発行人は無名の一市民、月二回の発行、部数は70前後。

この<アート・文芸>部門は、
 文芸 661誌(うち<古典>は12誌)
 美術・デザイン 265誌
 写真 58誌
総数 984誌(2012/01/02 08:28:02 更新)です。

そのなかで、月一とはいえ、トップ10入りするというのは、
つい自慢したくなるのも無理はない、とご理解いただけるのではないでしょうか。


人気の秘密?があるとすれば、
これもひとえに扱っている、古典の名著・名作の力でしょう。

もちろん、今をときめくタレントや人気作家の作品など扱えば、常時トップ10入りできるのかもしれません。

しかし、自分の守備範囲でないものに手を出しても、中身が伴わないものになります。


ただ、この月一人気が定期購読につながっていない状況を考えますと、複雑な思いもありますが…。

少しでも見てもらえるのなら、それはそれで嬉しいですし、これを力にさらに精進を重ね、中身の伴うものを出し続けてゆきたいものです。

◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆
最新号:
2011(平成23)年12月31日号(No.72)-111231-本当に大切なこと―2011年を振り返る

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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2012.1.3「3カ月連続「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」ランキングでトップ10入り」を転載したものです。
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2012.01.02

本当に大切なこと、またはソローのこと―2011年を振り返る

―第72号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2011(平成23)年12月31日号(No.72)-111231-本当に大切なこと―2011年を振り返る

今年もご愛読ありがとうございました。

本誌では、今年を回顧しながら、この機会にこれだけは読んでいただきたいと思う本をいくつか取り上げています。

中でもヘンリー・デイヴィッド・ソローはここ数年、私の最も注目し、読み継いできた作家・思想家です。

代表作『ウォールデン 森の生活』は、今まで何度も書いていますように、彼がエコライフ・シンプルライフを実践した魂の記録です。

この森での暮らしの最中にあの有名な事件が起こります。
そう、人頭税支払拒否により牢屋に入れられるのです。

たった一日のことではありましたが、これを契機に彼は講演で、政府による奴隷制やメキシコ戦争といった事柄に対し反対する「市民的不服従」「非暴力抵抗主義」を訴えます。

これらの著作により、彼は“世界を変えた”とたたえられています。

彼が本当に言いたかったことは、単に「自分らしく生きよう」ということでしょう。
あるいは「人間らしく」、もしくは「“HIGH LIFE(高貴な生活)”を」「物ではなく心の充足を」と言い換えても良いかもしれません。

東日本大震災・原発事故を経た今こそ、エコライフ・シンプルライフ、そして多様性を容認する生き方が必要です。

その先駆者としてのソローをぜひ知っていただきたい、と思います。

まずは、

『平和をつくった世界の20人』岩波ジュニア新書
―ソローに始まり、ガンディー、キングといった非暴力、平和の教育・実践、多様性、あらゆる生命、地球環境を大切にする人たち20人を挙げ、それぞれの小伝と言葉を紹介。
『ソロー語録』岩政伸治/編訳 文遊社
―自然愛好家、奴隷制反対論者等の顔を持つソローの著作『ウォールデン』他から名言集。ソローへの入門としても良し。


そして、代表作『ウォールデン 森の生活』をお読みいただきたいものです。

『ウォールデン 森の生活』今泉吉晴/訳 小学館 2004.5.1
―山梨県の森に小屋を建て「森の生活を始めた」学者による訳書。原書を模した装丁にビニールカバー装。高価なのが難点? 著者のイラストや訳注を欄外に収めてあり、眺めて楽しい本。本書は19世紀半ばに出版された、エコライフ、シンプルライフの先駆者であるソローが自ら実践した森での暮らしの魂の記録。
『森の生活 ウォールデン』上下 飯田実/訳 岩波文庫 1995.9
―《湖とその周辺の写真多数を収め》た二分冊。巻末に詳細訳注。
『森の生活 ウォールデン』佐渡谷重信/訳 講談社学術文庫961 1991.3
―各章末に訳注を配す。


次いで、「市民的不服従(市民の反抗)」もお読みいただければ、良しと言えるでしょう。

『ソローの市民的不服従―悪しき「市民政府」に抵抗せよ』佐藤雅彦/訳 論創社 2011.3.20
―講演録らしい訳文で再現した。パラグラフごとに分けて読みやすくし、背景の解説を入れわかりやすくした。
『市民の反抗 他五篇』飯田実/訳 岩波文庫
―「市民の反抗」他、「ジョン・ブラウンを弁護して」等、各ジャンルからソローの代表的エッセイを選んだエッセイ選集。
『一市民の反抗 良心の声に従う自由と権利』山口晃/訳 文遊社
―巻末に原文(英語)を掲載。


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2011年「楽しい読書」古典の名著・名作編バックナンバー
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2011(平成23)年1月31日号(No.51)-110131-
東洋から西洋へ『茶の本』岡倉天心
2011(平成23)年2月28日号(No.53)-110228-
人知らぬ恨「舞姫」森[鴎おう]外
2011年3月31日号(No.54)-110331-特別編
宮沢賢治の詩「永訣の朝」
2011(平成23)年4月30日号(No.56)-110430-簡素で高貴な生活
『ウォールデン 森の生活』H・D・ソロー
2011(平成23)年5月31日号(No.58)-110531-非暴力抵抗主義
『市民的不服従(市民の反抗)』H・D・ソロー
2011(平成23)年6月30日号(No.60)-110630-
二つの愛の形『赤と黒』スタンダール
2011(平成23)年7月31日号(No.62)-110731-
最初の一冊:各社「夏の文庫」フェアから―
2011(平成23)年8月31日号(No.64)-110831-《死すべき者》人間
 ~二大英雄叙事詩~ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』
2011(平成23)年9月30日号(No.66)-110930-《死すべき者》人間~
 <アキレウスの怒り>『イリアス』ホメロス
2011(平成23)年10月31日号(No.68)-111031-《死すべき者》人間~
 夫婦と家族『オデュッセイア』ホメロス
2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節
『あるクリスマス』カポーティ

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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2011.12.31「本当に大切なこと、またはソローのこと―2011年を振り返る」を転載したものです。
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2012.01.01

新年明けましておめでとうございます!

2012nenga_leftyyasuo


早いもので21世紀も12年目。

今の家に引っ越してから10年が過ぎました。
(12月29日にガス給湯機がダウン、10年を一月過ぎてたので有料修理!)
パソコン歴も同じく丸10年。
このブログ『お茶でっせ』は丸8年が過ぎ、記事数も700にあと数本。

 ・・・

昨年は色々と大きな出来事が重なり、大変な一年となりました。

「おめでとう」気分ではないよ、という方もいらっしゃるかと思いますが、
人間というものは生きていることに価値がある、という見方もできましょう。

わが敬愛するヘンリー・デイヴィッド・ソローは、こう書いています。 

《惨めな人生でも、現実に向き合い、生きるべきだ。
 それを避けたり、悪態をつくべきではない。
 生きることそのものは、自分のありようほどひどくはないのだ。
 生活は富めるときほど貧しく映る。
 あら探しの好きな者は天国にだってあらを見つけるだろう。
 貧しくても自分の生活を愛そう。
 救貧院にいても、気持ちのよい、刺激のある、楽しい時間があるだろう。
 夕日は金持ちのお屋敷にも、救貧院の窓にもまぶしく映るだろう。
 春の訪れに、雪も同じようにドアの前で溶けだすだろう。
 穏やかな気持ちさえあれば、救貧院にいても満足し、
 宮殿に住んでいるように元気よく生きていけるにちがいない。》
 ―『森の生活』~『ソロー語録』「生きる」p.62より


また、こうも書いています。 

《それが生であろうと死であろうと、
 僕らが必要なのは現実のみである。
 もし僕らがまさに死にかけているなら、
 その間際には喉からもれるあえぎ声を聞き、
 手足の先の冷たさを感じよう。
 生きているのであれば、
 しっかりと生きることから始めよう。》
 ―『森の生活』~同「生きる」p.64-5より


『ソロー語録』岩政伸治/編訳 文遊社 2009.10
―自然愛好家、奴隷制反対論者等の顔を持つソローの著作『ウォールデン 森の生活』他から名言集。ソローへの入門としても良し。

たとえどのような状況にあろうとも、
人はただ今この時を生きるしかないのです。

同じ生きるなら、苦しくても「楽しい」と思って生きる方がいいのかもしれません。

「それはお前が恵まれているから言えることだ」
と反論されるかもしれません。

そうかもしれません。

しかし、たとえそうであれ、
人間というものは、人それぞれに悩みを抱えて生きているものです。

他人から見れば、大したことはないと思えることであれ、
本人にとっては大きな問題なのです。

上を見ればキリはなく、下を見てもキリはないのです。

生まれて来た限り、人はただ生きるのみです。
死が訪れるそのときまで。


空海の言葉にあるそうですが、
雲に隠れていたとしても太陽はその上で輝いているのです。

希望を持って生きてゆきましょう!

では、
今年もよろしくお願い致します。

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※本稿は、レフティやすおの他のブログに転載しています。
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