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2009.06.19

『落語の国からのぞいてみれば』から左利きを考える

以前、メルマガ『週刊ヒッキイ』の「おまけコーナー」でも少しふれていたのですが、このたび左利き仲間の間で話題に出ましたので、改めてここでもう少し詳しくふれておこうかと思います。

第143号(No.143) 2008/7/26「<左利きプチ・アンケート>第55回」


昨年2008年6月に出版された、江戸時代を背景にした落語から現代社会を考えるといった本『落語の国からのぞいてみれば』(堀井憲一郎/著 講談社現代新書1947)のなかに、落語のなかの左利き、江戸時代の左利きについて書かれた章がありました。

内容的には、面白い本です。
江戸時代と現代を見比べるといった趣向で、現代を別視点から捉えることで、明らかになる面があるだろう、ということでしょう。

こういう発想は、落語がブームになっているという背景も手伝ってのことだと思うのですが、なかなかタイムリーな企画でもあったと思います。


さて、この左利きに関する章は以下のような内容です。

第十四章 左利きのサムライはいない
 左で食べる落語家はいない/舞台のカミとシモ/左と右はどちらが偉いのか/刀を扱うときの左右のルール/社会コストの問題

昨年話題になった国分太一主演の落語の映画『しゃべれども しゃべれども』での右手箸遣いを枕に落語に登場する左利きを紹介しながら、サムライにおける刀の扱いなど、江戸時代と現代を比較し、社会的な話題を提供してゆきます。

特にこれといって私に異論はありません。
当時はそういうものだったのだろう、と思う程度です。

昔の社会では少数派の左利きの人に、それだけの配慮を示す余裕はなかった、ということも事実だったのでしょう。


ただ、一言いえば、だからといって、ただ今現在も昔同様の在り方を肯定するものではない、ということです。

社会コストの問題があるといっても、実際には色々と少数派に配慮した社会投資がなされるようになってきました。

これは、少数派への配慮を含む社会投資の必要性が、人権の問題もあり、社会的に見ても有効な投資に成り得る可能性があると判断する考え方も出てきて、誰もが無視できないと考えるようになったからでしょう。

例えば、歩道には点字ブロックが標準装備されるようになりました。
これによって、視覚に障碍のある人も外に出やすくなり、社会で活躍できる機会が増えたのではないでしょうか。
十全ではないにしても、一歩前進でしょう。


左利きの問題に関しても、単にいわゆる左利きの人(強度の左利きの人)だけでなく、左利きの要素を持つ人や右利きでも状況により左手や左体側を使う人、やむなく左手や左体側を使わざるを得ない人にとっても、福音となるのです。

左利きの人だけを優遇するのではなく、時と場合により左体側に重点を置く人にもプラスになるとわかれば、従来考えられていたような狭い範囲のニーズではなく、もっと有効性のある投資に成り得ると考えられるのではないでしょうか。

実際には、ちょっとした工夫で左右どちらでも使用可能となるものは、いくらでもあります。

そういう左右の共用性にも目を向ければ、もっと少ない費用で、右利き仕様に偏重した社会をもう少し緩和できるのではないでしょうか。

単にコストがかかるから、できなくても仕方がない、とはいえないような気がします。

左利きは少数派なのだから、それにちょっと頑張れば慣れることでもあるのだから、我慢しなさいよ、と言って済ませる時代ではなくなったように思います。

 ・・・

そして、実は私が一番気にかかったのは、巻末の参考資料編の中での発言です。

「参考文献的おもしろかった本解説」での大路直哉/著『見えざる左手』の感想がそれ。

これは左利きの人からの提言で、右利きが見落としそうな部分の指摘はおもしろかったが、読んでて、でも申し訳ないがおれは右利きなんで、と思ってしまったのも事実。

当然といえば当然の話ですが、いかにも左利きで困った経験を持たない右利きの人らしい意見?が読み取れ、<右利きだけでなく左利きにも優しい左右共存共生社会の実現を目指す>私にとっては、ちょっと残念な気がします。

右利きの人の素直な感想といえば、そうなのでしょう。
たぶん多くの右利きの人は、このような感想をお持ちなのかもしれません。

しかし、素直な意見なら良い、というものでもないでしょう。

本として公刊するということは、社会的な意見の表明でもあるわけで、当然その発言には、社会的な責任というものもついて回るはずです。

「申し訳ないがおれは右利きなんで」と締めてしまったのでは、世の中の大半の少数派や弱者といわれる人たちは浮かばれません。

たとえば、このを「申し訳ないがおれは右利きなんで」の「右利き」を他の言葉に置き換えて考えてみればどうなるでしょうか。

有色人種の苦難の歴史は知っているが「白人なんで」、障碍者の大変さも認めるが「健常者なんで」、高齢者の気持ちはわかるが「まだ青年なんで」、女性の立場も理解できるが「男性なんで」、云々。

今どきこんなことを発言をすれば、マスコミからも世間一般からも、袋叩きにあったり総スカンを食らってもおかしくないでしょう。
無責任な発言と、良識が疑われかねません。

でも、左利きのことだから、マスコミからも世間の誰からも非難されずに済んでいるのではないでしょうか。

いくら落語の話を扱っているからといって、何でもかんでも軽く冗談半分におもしろおかしく締めればいい、というものではありません。

  


※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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2009.06.06

お知らせ:左利きプチアンケート第61回左利きに関する本を読みますか?

Hidarikikinohon
わがホームページ『左利きを考える レフティやすおの左組通信』恒例<左利きプチ・アンケート>のお知らせです。

今年に入ってからは、二ヶ月に一回の更新になりました。

(ただし、今月末からは過去の受付停止したアンケートのなかから、これはというものを再発行(再版)という形で復活させることにしました。よろしく!)

 ・・・

<左利きプチ・アンケート>第61回左利きに関する本を読みますか?

昨年(2008)末あたりから、左利きに関する本があれこれと出ています。
書籍では、雑学系の何番目かのドジョウを狙った風の『左ききのトリセツ』や
左利きの不便さを描いた『左利きの人々』。
雑誌では『モノ・マガジン』の18年ぶりの左利き用品特集号。
最近では、左利きの子供を対象にした子育て、教育・保育のアドヴァイス本『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』など。

左利きに関する活動を続けてきた私には、うれしいことです。

でも最近は、本を読む人が減っているともいいます。
一つは、テレビやネットなど情報源が多様化していること。
もう一つは、娯楽としても他に楽しみが増えているからです。

本好きには、ちょっと淋しい傾向ですが、
特に情報源として本を利用する人が確実に減っているように思います。

これは淋しいだけではなく、ものごとを理解する上では、多少問題があるかもしれません。

さて、そこで―

私は、もっぱら左利きの本というだけで読んでしまうほうです。

が実際には、内容によって興味が持てれば、信頼できそうなら、あるいは読みやすそうなら読むけれど、そうでなければ読まない、という人もいます。

信頼する友人や知人の薦めなら読むかも知れないが、そうでなければ読もうとは思わない、という人もいるでしょう。

いくら左利きの本だからといっても、本はほとんど読まないよ、という人も当然いるでしょう。

あなたは左利きの本を読みますか? 
以下の選択肢の中から最もふさわしいと思うものを一つ選んでください。

*投票者の利き手別で選択肢を用意しています。ご自身でご自分の利き手を右もしくは左と、どちらか判断した上で投票してください。

*一言言わせて、という方は投票後に表示されます一番下の「ご意見ボード」をご利用ください。
貴方のご意見ご感想をお聞かせください。

※ メルマガから投票できます。
 アンケートの該当選択肢の下のURLをクリックしてください。
 ぜひ、ふるって投票にご参加ください。
 (注意:誤ってクリックした場合、取り消しはできません。)


1(右利きの投票者)左利きの本というだけで読む
2( 〃 )内容によっては読む
3( 〃 )信頼する人の薦めなら読む
4( 〃 )左利きの本でも読まない 
5(左利きの投票者)左利きの本というだけで読む
6( 〃 )内容によっては読む
7( 〃 )信頼する人の薦めなら読む
8( 〃 )左利きの本でも読まない

 ※ お手数をおかけしますが、投票は『レフティやすおの左組通信』表紙<左利きプチ・アンケート>

 *このアンケートは、09.5.24-7.24まで9週間(予定)に渡って『左組通信』表紙で実施されます。

 ※ メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第181(No.181) 2009/5/23「<左利きプチ・アンケート>第61回」からも投票できます。(今回もメルマガからの先行投票を実施しました。)

 ※ 現在の結果を見るのは、こちら

 ※ 関連<左利きプチ・アンケート>:
第59回09.1.25 左利きの問題は左利きの人だけのものか?
第47回07.11.25 左利き(利き手)研究会は必要?参加協力する?
第45回07.9.23 左利きのための生活技術指導者・コーチは必要か?
第30回06.7.2 あなたの知りたい左利き情報はなんですか
第26回06.2.19 左利きの本を読んだことがありますか
第13回05.1.30 推理物のテレビ・ドラマの〈左利きが犯人〉をどう思いますか

  その他の<左利きプチアンケート>:目次




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2009.06.04

北杜夫著『船乗りクプクプの冒険』集英社文庫新装版で復刊

Kupukupuhuruhon_sinkan
実は、先日この本の昔の版を古本屋さんの100円のワゴンで見つけ買ったばかりでした。

最近は北さんの本を全く買っていませんでした。
作品もほとんど読んでいない状況です。

それなのにどうしてまた、この本を買う気になったかといいますと、そのまた少し前に、文春文庫

『怪盗ジバコ〈新装版〉』(「快盗」ジバコじゃなかったっけ?)が再刊されていたの

を目にし、懐かしく思ったからでした。

『ジバコ』は、北さんの数ある“軽小説”―ユーモア小説の一つであり、そのまたベスト・スリーに入るものでしょう。

で、ベスト・スリーの一番の作品こそ、この『クプクプ』なのです。
(ちなみに、もう一つは『さびしい王様』です。)

それで、もし見つけたら欲しいなあ、と思っていたのでした。

まさかこんなに早々と復刊するなんて!


でも、私の買った古本は、ヒサ・クニヒコ氏のイラストがカバーの本で、これは大のお気に入りです。(画像左、右は新刊の新聞広告)

今度の方・荒川良二氏のイラストも可愛いのですが、やはり私には、あの『さびしい王様』のヒサさんのイラストがいいですね。
もちろん本文イラストもヒサさんが描いているのです。

今回のものには、本文挿絵がありません。
非常に、残念です。


私が昔持っていたのは、確か角川文庫版でした。
そのカバー・イラストは、お魚が海上を跳びはねているイラストだったように記憶しています。

著者自身が「キタ・モリオ」として登場し、無責任な?この作家の書いた本(『船乗りクプクプの冒険』)の世界に読者だった少年が入り込んでしまい、冒険が始まるという奇想天外なファンタジー。

その昔一世を風靡したテレビ人形劇『ひょっこりひょうたん島』の元ネタにもなったといわれるチョー名作です。

それなのに、手放してしまいました。
そのときの事情です。

手放したときは、きっと他にもっとスゴイと思う本があって、そちらを手元に置いておくために処分せざるをえなかったのでしょう。


今でも私の手元における本の総容量は、横に並べて「15メートル程度」が限度です。

文庫本で平均1メートルに付き50冊として、750冊。
四六版単行本で1メートル35冊、525冊。
平均40冊強として、600冊超というところです。

今までに買った本は千冊超。
400冊あまりは処分したことになります。

そのうちの1冊だったのです。


でもこの頃、昔持っていた本を(版は異なってはいても)買い直すようになっています。
本当に手元に置いておきたい本が、わかってきたのでしょうか。
単なるノスタルジアではないように思います。


まあ、そんなこんなです。

この本がハリー・ポッターを読んでいるような若い世代の人にどのように受け取られるのか、ちょっと楽しみです。

日本にもこういうSFっポイユーモア・ファンタジーを書く人がいたのだと、改めて北さんが見直されるのを期待しています。

でね、この人は、「どくとるマンボウ」シリーズというユーモア・エッセイの書き手でもあり、短編「夜と霧の隅で」、長編『幽霊』『楡家の人々』等々といった純文学の書き手でもある、スゴイ人なのです。


怪盗ジバコ〈新装版〉(文春文庫)

船乗りクプクプの冒険(集英社文庫)

(旧版)

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