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2007.07.22

異色作家短篇集(新装版)20 エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇

異色作家短篇集(新装版)第18巻『狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇』異色作家短篇集(新装版)19『棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇』に引き続き、

早川書房/刊 異色作家短篇集(新装版)第20巻 若島正/編『エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇』を読みました。

異色作家短篇集の掉尾を飾るオリジナル・アンソロジー三巻の第三弾、いよいよ最終巻になりました。米英をのぞく、世界中から集めた作品十一篇を収録

ハヤカワ・オンラインのページによると、以下のようになります。

地球は広い まだまだ続く 不思議な国への長い旅

世界には数多の異色作家が存在する。フランス、イタリアなどの西欧勢から、東欧、ラテン・アメリカ、さらには台湾やエジプトに至るまで、世界の鬼才が集う全十一篇で異色作家短篇集の有終を飾る。

【収録作品】容疑者不明(ナギーブ・マフフーズ)/奇妙な考古学(ヨゼフ・シュクヴォレツキー)/トリニティ・カレッジに逃げた猫(ロバートソン・デイヴィス)/オレンジ・ブランデーをつくる男たち(オラシオ・キローガ)/トロイの馬(レイモン・クノー)/死んだバイオリン弾き(アイザック・バシェヴィス・シンガー)/ジョヴァンニとその妻(トンマーゾ・ランドルフィ)/セクシードール(リー・アン)/金歯(ジャン・レイ)/誕生祝い(エリック・マコーマック)/エソルド座の怪人(G・カブレラ=インファンテ)


いやあ、やはり世界は広い、を痛感させられました。

18巻『狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇』、19巻『棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇』は、知った作家がずらっと並んでいて、たとえ一作二作でも既読の作家たちが大半でした。

さすがにこちらは違います。
知った人すらほとんどいない。
かすかに読んでるのが、クノーとレイぐらいか。

浅学ゆえに、二人のノーベル賞作家すら名前も知らない有様。
(一人は、ナギーブ・マフフーズ―1988年アラビア語圏初のノーべル賞受賞。二人目は1978年受賞アイザック・バシェヴィス・シンガー。)

こういうアンソロジーを読むことの利点の一つは、知らない作家に触れ、読書の間口を広げるきっかけを作れるところでしょう。

そういう意味では非常にうれしい一冊です。

全体の感じからいうと、ユーモアものが多いのかな、という気がしました。
ユーモアといっても、健全な、単純な笑いを誘うものばかりとは限りません…。


さて、私のベストは―

チェコ生まれでカナダに亡命したという、ヨゼフ・シュクヴォレツキーの「奇妙な考古学」
まあ、本格的なミステリ(本格もの、のではない!)ですが、チェコを舞台にした、ブルーフカ警部補のシリーズ作品。
かつて自分が手がけた事件を再捜査することになるが…。
考古学者が掘り出した殺人事件がからんでくるところが、面白い。

次は、やはり、ノーベル賞作家は違うのか?(というわけでもないのですが。)
ポーランド生まれでアメリカに移住した、アイザック・バシェヴィス・シンガー「死んだバイオリン弾き」
ポーランドのユダヤ教徒の娘に取り付いた死霊とその退治の物語だが、こういう土俗的?な感じがいい。

ここまでは比較的長めの短篇(中篇)がいい。


で、もう一つの中篇が、表題作の「エソルドの怪人」。

これが、編者の書いているように、映画狂の作者による<怪作>。
しかし、当方『オペラ座の怪人』も未読未見、『ファントム・オブ・パラダイス』も未見では、意味不明もいたしかたなし、か。
しゃれが多くて、よく訳したな、というのが唯一の感想といったところ。

私のベストの三番目を選ぶなら、これではなく、
トンマーゾ・ランドルフィ「ジョヴァンニとその妻」当たりか。
天才的な<音痴>夫婦のお話。

あと、アイデア的には、エリック・マコーマック「誕生祝い」か。

ほかに、フランケンシュタインを下敷きにしたユーモアSF「トリニティ・カレッジに逃げた猫」、奇人たちのお話「オレンジ・ブランデーをつくる男たち」、死体の金歯をいただく盗人のお話「金歯」なども、それぞれにおもしろく読みました。


昨今、海外ミステリの翻訳が盛んではありますが、これをきっかけに、英米に偏らず広く世界中の名作を掘り起こして紹介していただきたいものです。

私もこれを機に、もっと多くの様々な国々の色々な作家に触れてみようと思いました。


最後に、風見賢二の巻末解説「ぼくはこれで柔らか頭になりました」を楽しく読みました。

ほぼ同年代らしく、同じような本を読んできました。
私は風間氏とは違い、元々エンタメ系の読者でしたので、始めっからこういう本を読んできました。

最近は、かなり読む本も変わってきています。
今回いくつかの再刊されたものを読んでみても、面白いと感じるものも変わってきてはいるようです。

それでも、やはりこの異色作家短篇集的な作品が、自分にとって一番楽しめます。


他社の同様な、異色作家短篇集的な作品集も幾つか読んできました。

幸い私のようなオールド・ファンだけでなく、若い人たちの間でも、それなりに読まれているようです。

これからもこういう傾向の作品が継続的に紹介してもらえればいいのになあ、と願っています。



異色作家短篇集 新装版 20
エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇
The Phantom of the Essold and Other Stories
若島 正(編)
早川書房 2007.3.23刊


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