左利きの本だなぁ:児童文学編『すえっ子のルーファス』は左利き
エレナー・エスティス『すえっ子のルーファス』(1943年・1971年) 渡辺茂男訳 岩波少年文庫117 1995.6.8 第1刷発行 2004.7.16 新版第1刷発行 (小学5・6年以上)さし絵:ルイス・スロボドキン
[岩波ブックサーチャー]
『元気なモファットきょうだい』『ジェーンはまんなかさん』に続く"モファットきょうだい物語"三部作の末尾を飾る一冊。
第一次世界大戦(1914-1918)下のアメリカ、コネティカット州クランブリーに住むモファット家の四人きょうだい(シルビー、ジョーイ、ジェール、ルーファス)とお母さんの一家の13のエピソードからなる物語。
今回の中心人物は末っ子のルーファス。

モファット家のすえっ子ルーファスは、いつも元気いっぱい。左利きなので草野球で思いがけない大活躍をしたり、腹話術の練習をしてみんなをびっくりさせたり……。無邪気でいちずな男の子の奮闘ぶりをあたたかく描きます。
家庭でも学校のクラスでもただ一人左利きのルーファス。
家では誰も彼の左利きを右利きに変えさせようとしませんでした。家で食事するときは母親と向かい合ってテーブルの端に座って食べました。そうすれば右利きの人と肘をぶつけることがないからです。
しかし学校では、受け持ちの先生たちがルーファスの扱い方をはっきり決めることができず、ルーファスは自分が左利きか右利きかよくわかりませんでした。
彼は右手でも左手でも字を書くことができます。
一年生のときの先生は彼を左利きと考えて直そうとはしませんでした。二年生の時の受け持ちの先生は、ルーファスの左手で字を書く習慣をやめさせることが教師の義務だと考えました。
先生は彼の右手で書いたへたなペン習字に金星をつけてくれました。なにしろ彼は大変な努力をしているのですからその価値があるというわけです。ただその金星の上には「ルーファスはこのペン習字を右手で書きました」と書き加えられていました。他の生徒が不思議がらないように。
三年生になったときの受け持ちの先生は、彼はまちがいなく左利きなのだから、ルーファス自身もまわりの人もそれに慣れたほうがいいと考えました。
やっと問題が解決したルーファスはとてもしあわせでした。
先生は編み物を二度教えます。一度は右利きの生徒のために、二度目は左利きのルーファスのために―。
ルーファスは左利きであろうがなかろうが、普段はまったく何の差しさわりもありません。それに今では受け持ちの先生がルーファスの動作は左利きと認めているので、左利きで不便なのは誰かが握手しようとするときだけです。いつか左利きの人と合って、左手で握手してみたいものだと、ルーファスは思いました。
そんなルーファスの左利きが長所になるときが来ました。ジェーンの女の子だけの野球チーム「運命の四」のキャッチャーの"外野"に参加できることになったのです。そして初めての試合で彼は無事ピッチャーの暴投を左手にはめたグローブで好捕します。さらにホームランまで!
*
第一次大戦下の生活を描いたエピソードがいくつかあります。この作品が発表されたのも1943年、第二次大戦の真っ只中です。そういうことを考慮して読めばまた違った印象があります。
しかし、それ以前に子供たちのいかにも子供らしい日々の冒険があたたかく描かれていて楽しい読み物になっています。
種をまいたその夜にさっそく芽が出ていないかと掘り出して見る兄弟たちの姿や、先生の家を訪問しながら何も話せないで帰ってくるジョーイとジェーン、土管の中に光る動物の目に想像力を広げるジョーイとルーファスなどなど…。
なかでも私は、巻頭のエピソード、まだ学校に上る前のルーファスが図書館で本を借り出すまでのエピソードを描いた「ルーファス・モ」や、次のエピソード、戦場に向かう兵隊さんに自分で編んだ手編みの洗顔タオルをプレゼントして、御礼のハガキをもらう「列車いっぱいの兵隊さんたち」がお気に入りです。
特にこの「列車いっぱいの兵隊さんたち」は、感動しました。この話を私は昔どこかで見るか聞くかしたことがあるのです。記憶が定かではありませんが。そのときもいいお話だなぁと思ったものでした。
ルーファスもこのときに兵隊さんのアルからもらったハガキをいつもポケットに入れて持ち歩いています。もうひとつ「運命の四」でホームランを打ったときに氷屋のおじさんからもらったきざみタバコのからぶくろといっしょに。ルーファスの宝物であり、お守りとして。
ラスト「やっといい日がくるわ」では11月11日、やっと戦争が終わります。町中に鐘が鳴り渡り、新聞は号外を発行します。
一番上のシルビーの結婚が決まり、一家の新しい未来が始まる予感。
それぞれの思いを胸に、たきつけに使った号外の見出しの「平和」の文字が炎の中に浮かぶストーブを見つめあう家族…。
ママが言います。「そうね、みんな、あのことばが何を意味するか、わかるわね? やっと、みんなにいい日がきます、ということよ。」
それでは、左ききのルーファスの活躍をお楽しみください。
※
モファットきょうだい物語シリーズは、「レフティやすおの本屋」支店「こどもたちの世界」本棚「アメリカのこどもたち」で紹介しています。
第一作・2004.11.28 ほのぼの児童文学『元気なモファットきょうだい』
第二作・『ジェーンはまんなかさん』
第三作・2004.11.05 左利きの本だなぁ:児童文学編『すえっ子のルーファス』は左利き
第四作・2005.02.22 エレナー・エスティス『モファット博物館』
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