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2004.08.27

左利きの本だなぁ『左きき学 その脳と心のメカニズム』ジーニー・ヘロン編

ジーニー・ヘロン編集『左きき学 その脳と心のメカニズム』近藤喜代太郎 杉下守弘監訳(西村書店)昭和58(1983)年6月6日 第一版第一刷
NEUROPSYCHOLOGY OF LEFT-HANDEDNESS(1980)


~左利き研究の歴史を知ろう~

左利きの神経心理学の専門書です。序文にもあるように、二十数年前の「1980年当時の左利きに関する最新の研究成果の集大成」です。
残念ながら門外漢である私には充分理解の及ばない内容が多く、結局、左利きの問題の難しさを再認識するにとどまりました。
第15章の結びの言葉にあるように〈多くの場合にそうであるように、左利き者は、理解するのがより難しいのである。〉342p
ただ、第一部第一章「初期の学説、事実、空想」は左利き研究の歴史を知る上において役に立つものです。

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「まえがき」近藤喜代太郎

ⅰp〈利き手も脳の左右分化のひとつの表現であり、その研究を通して脳の神秘に迫るひとつの手掛かりでもあります。/左利きは古くから人々の注意を引き、それぞれの国や時代の水準を反映して種々の憶測が加えられ、また、少数者への寛容度を反映してさまざまに処遇されてきました。その意味で、左利きの問題は文化史の一側面ですし、それが脳機能の左右分化という立場から理解されるようになったのは、決してそう古いことではありません。〉

〈近藤は自身が左利きで、それぞれ深い関心と同感をこめて本書の翻訳に当たりました。〉

「序」J・へロン

ⅳp〈嘲笑され、叱られ、物差しで打たれ、後ろ手に縛られもした悪い手。左利き者は辱められ、非難され、悪意に満ちた攻撃を受けた。こうした歴史にもかかわらず、左利き者は静かに朽ち果てるどころか、生き残っている。ではなぜか? それは、本書が示すように、彼らが好んでではなく、“神経学的命令”によって左手を用いているからである。〉

ⅴp〈原理の解明は例外を通じて行われることが多いので、左利き者の研究はこれら脳研究で重大な役割を果たしている。左利き者の仲には脳の非対称性の様相の異なる集団があり、様々の左利きの類型を調べ、個々の検討を加えて脳の機構について多くを学ぶことができる。/これらの研究の対象が左利き者であっても、真の設問は左利きそれ自体ではなく、ヒトの脳がどのように機能するかに向けられている。/本書を左利き者にささげる。ヒトの脳の神秘への疑問に回答をもたらす、最も重要な手掛かりになる近代的研究によって、ついには左利き者のユニークな特性が見出されるだろう。〉

「第1章 左利き:初期の学説、事実、空想」ローレン・ユリウス・ハリス
4p(欄外注釈)

〈“サウスポー”は侮辱用語ではないが、少数者を差別する用語には相違ない。右きき党首は決して“northpow”とよばれるわけではない。〉

―〈高名な左利き者である〉マイケル・バースレイ「右利き世界のなかの左利き」についてふれている。(*邦訳書『右きき世界と左きき人間』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会/発売・産学社、他に『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会/発売・産学社)


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~本書を読んで、自分なりに考えたこと~

一般人である私にとって一番知りたいことは、左利きにとっての自然な姿とはどういうことか、ということであり、幼児期に特定の作業について右手使いに変更すること(昔の本であるため本書では「矯正」という言葉で表現している)により書字の手を変えることがその後の脳機能の発達に及ぼす影響について、であります。

右利きの人にとって左脳は、右手の運動をつかさどる側であり、言語を扱う側でもあるといわれています。すなわち脳の機能として、字を書くという運動と言語を操るということとの両方を同じ半球で同時に行えるということで、非常に効率がよいと思われます。

それに対して、左利きの場合は、反対の右脳側に言語機能を持っている人がいるといいます。そこで、その人が矯正の結果右手で字を書くとなると、手を動かす運動は左脳、言語を考えるのは右脳とてんでんばらばらに作業を進めなくてはならず、常識的に考えて非常に効率が悪いと思われます。両半球の間の連絡のいかんにその作業の成果がかかってくることになるのではないでしょうか。

純粋な?―ほとんどの右利きの人とは反対に右脳に言語機能を持っている―左利きの場合はやはり、書字は左手で行い、言語をつかさどる半球と同じ側で作業できるようにする方が効率的なのではないでしょうか。
そういう意味でも書字などの特定の作業について右手使いに変更することはよくないのではないでしょうか。
実際のところはどうなのでしょう?

また、左利きの程度がさほど強くない、一般に両手利きといわれている人でも、厳密に言うと、「両手使い右利き」と「両手使い左利き」があり、細かい作業に向いている方がその人の利き手といえるようです。それらの人では、言語の機能も両半球に存在し、脳の半球偏側化が比較的緩やかな人であるようです。これらの人たちにおいては特定の作業について右手使いに変更すること(昔の本であるため本書では「矯正」という言葉で表現している)も比較的受け入れやすいのでしょう。

とにかく、大半の「右利き」が画一的な存在であるのに比べ、「左利き」の場合は、「両手利き」の存在を含めて、生来のもののみならず、環境の因子も絡んで、非常にさまざまな要素を持ち、幅があるようです。

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 近年の脳・神経科学の発達は著しく、個別にそれぞれの範囲で研究されているため、総合的に判断することが非常に難しい状況にあるようです。
一般向けに平易に解説されたものも少なく、ましてや左利きに特化した啓蒙書を見ることはさらに稀です。
一般の素人には、数年前のものを自分なりに消化して読み取る以外に、適切な方法が見当たらないというのが正直な感想です。

比較的最近のもので左利きを正面から扱ったものとしては、八田武志『左利きの神経心理学』医歯薬出版(1996)があります。
もっとも簡単に、左利きのちょっとした脳神経学的観点からの知識を手に入れるなら、今年発行された『新・脳の探検』下巻(フロイド・E・ブーム他著 中村克樹/久保田競監訳 講談社ブルーバックス)に「利き手と大脳半球」というコラムがあります。


~過去の<左利きの本だなぁ>の記事~
2004.04.04『左利きの秘密』箱崎総一
2004.05.10『左利きの本―右利き社会への挑戦状』ブリス、モレラ
2004.07.07『左ききの本』マイケル・バーズリー

*参照―『レフティやすおの左組通信』「左利きphoto gallery〈HPG2〉左利きの本だなぁ」

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