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2004.03.05

『OUT』桐野夏生

『OUT』桐野夏生  講談社/講談社文庫

MWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長編賞の候補にノミネートされた初の日本人作家の作品というので読んでみた。

怖いお話です。もともとこういう陰惨なお話は好きじゃないのです。やくざが出てきたり、切った張ったがあったり、血しぶきが舞ったり、臓物が…、というような話は。

ミステリは好きで、ホラーも好きですが、どこか作り物という余裕のある話が好きです。

あまりに陰惨なお話で途中で読むのをやめようかとも思いました。しかし、さめたというか、乾いたというか、ある種非現実的な、孤独な心象を持つ主人公の雅子に惹かれて読み進みました。

しかしこの話は、嘘といいつつ、どこかリアルです。各家庭のあり方というか壊れ方というか。

ジャンルでいえば、いわゆるクライム・ストーリイ、犯罪小説というものです。
弁当工場で夜勤パートとして働くふつうの主婦四人が犯罪に手を染めてゆくことになる。
どうしてこんなことに…、といいつつそれぞれに事情を抱え、深みにはまってゆく―。

『ぼっけい、きょうてい』のときも書きましたがやはり女は怖い、と思う。
こんな話を書く女性も、話のなかとはいえこのような事件を起こす女性も。

男は夢に生き、女は現実に生きる。そんな物語でしょうか。
いくつになっても自分の見果てぬ夢を追うことしかできない男たちと、否応なく現実の中で生きてゆかなければならない女たち―。

そんな中で自分の自由を求める女、雅子の強さはどこから来るのでしょうか。
うらやましい、羨望の目で見てしまいます。惹かれてしまいます。

(ここからは結末に触れますので、未読の方は、そのつもりで…。)

最後は、毀れた男と毀れ切れない女の戦いとなり、死んでしまう性である男性が死に、生き残る性である女が生き残るというごく当然の結果に―。(自殺は男性の方が多いといわれます。またパートナーを亡くした男性は長生きできないのに対し、女性は長生きするといいます。)

ラスト「背中でドアが閉まったのなら、新しいドアを見つけて開けるしかない。」と再出発する雅子になんとも言えず、さわやかなものを感じました。

陰惨な話のはずなのに、心地よい読後感を抱いたやっちゃんでした。

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)
桐野 夏生

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Comments

実はさっき読み終えて、興奮覚めやらぬままOUTで検索してメール送らせていただいています。ああ、面白かった。凄惨な話しなのになんとなくさわやかな感じも受けました。やっぱり、小説はこうでなくちゃ。この本から比べると、「蹴りたい背中」や「インストール」はちょっと甘っちょろいですね。それなりに面白かったですが、。。。そちらの方は作者が若いんで、仕方ないんでしょうが。

OUTの面白さは、登場人物が多いこと、取材が行き届いていることでしょうか。よく作者は細かいところまで調べました。お弁当工場の描写とか、街金とか良く調べたものです。知らない世界に入り知らない世界にちょっとあそびました。本当のエンターテイメントはこの小説だ、と思いましたね。

Posted by: うりこ姫 | 2004.04.16 at 10:11 PM

うりこ姫さま、こんばんは。
コメントありがとう。
私、桐野さんの本を読むのはこれが初めてだったのですが、MWA賞にノミネートされたと聞いて読むことにしました。
さすが、の一言でした。結末は何通りか候補があったらしいですが、私はこれが気に入っています。
この作品、一般に女性には受けがいいようです。年配の方にも。
ある程度人生を生きた人でないと書けないものというのがあると思います。
逆に若いうちでないと書けないものもあるようです。
でも、どちらも楽しめる気楽な読者の立場が一番ですね。
ホームページに「小説らしきもの」を載せていますが、書くのは楽しいですが、ものにするのは大変です。
見ないでくださいね。(といいつつ強要している、のでしょうか?)
ではまたお越しください。

Posted by: レフティやすお | 2004.04.16 at 11:12 PM

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